ゆっくりいじめ系2952 お化けまりさ4

五日目
外はいまだ雨。


ゆっくり一家は皆、一様に青い顔をしていた。
一晩中聞こえてきたお化けの笑い声に怯え続けた。
ようやくウトウトとしかけても、
別のゆっくりが上げる恐怖の叫びによって眠りを醒まされ、
強制的に不気味な笑い声を聞かされる羽目になる。
そんな事を繰り返しながら、朝を迎えた。

「むしゃっ!むしゃっ!むしゃっ!ゆっぐりでぎなぃぃぃぃ!!!」
「はふっ!はふっ!ゆひぃぃぃ!?ゆげっ!ゆげっ!」

前日の夕食を取らなかった一家は、流石に空腹に勝てず、
ゆっくりできない巣の中で食事を開始した。

だが、巣の中央から怖いお化けに見下ろされ、
時折、思い出したように不気味な笑い声が聞こえてくる。
中には、その声に驚いて食事を喉に詰まらせる子供もいた。

人間に与えられた、美味しいごはんを食べていても、
まったく味わう余裕などなく、
ただただ、空腹を満たすためだけに、一刻も早く餌を掻き込むだけ。
少しもゆっくりできない食事だった。



それから数時間後

「おねーちゃん!ゆっくりれいむとあそんでね!
 ゆっくりできるおうたもきかせてね!!」

怖いお化けを見ないで済むよう、固く目を瞑っていた母れいむは、
そんな楽しげな声に、何事かと目を開いた。
そして、目と口を大きく開いたまま固まる。

そこで見た光景は、次女子れいむが、空中にぶら下がる赤まりさに向かって
ピョンピョンと嬉しそうに飛び跳ねながら、話しかけている姿だった。

「ゆゆ~ん♪おねーちゃんは、とってもゆっくりできるね!」

楽しげに赤まりさに話しかける子れいむの目には、光が宿っていない。

「ゆ・・・ぁぁぁぁ・・・・
 じ、じっがりじでぇぇ!!おぢびぢゃんん・・・!!」

母れいむが絶叫するが、子れいむの楽しそうな一方的な会話は続く。
そして、それが不意に。

「ゆ!?ゆびゅらぁぁぁぁ!?おばげぇぇぇ!?!?」

恐怖の絶叫に変わる。

「ゆ゛ん゛や゛ぁぁぁぁぁ!!!お゛ね゛いぢゃんごべんなざいぃぃぃ!!!
 ばざどじゃないの゛ぉぉ!!れいぶ、ばざどじゃないの゛ぉぉ!!
 ゆるじでぇぇぇ!!!おねいぢゃん、ゆるじでぇぇぇ!!!」

もうこの世にはいない、
自分がとどめを刺してしまった姉に向かってしきりに謝る。
そして、また何の拍子か、コロリとスイッチが切り替わる。

「ゆゆ~♪おねーちゃんが、おしょらをとんでる~♪」
「おねいぢゃん、ごっちごないぢぇぇぇ?!れいぶがばるがっだでずぅぅ!!」
「ゆ♪おねーちゃん、すーりすーりちようね♪こっちにおりてきてよぅ!」

「ゆぐ・・・ゆぐ・・・・おちびぢゃん・・・・・」

忸怩たる涙を流すだけで、何もできない母れいむ。

「れいむおねえぢゃん・・・じっがりじでなんだじぇぇ・・・!!」
「「ゆぇぇん!おにぇちゃんが、
  ゆっきゅりできなくなっちゃたよぉ!!ゆぇぇん!」」

子まりさと赤れいむ達も、
子れいむがどうなってしまったかを漠然と察し、涙を流した。


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六日目
雨。


昨夜、残ったゆっくり一家は、一晩中、お化けの笑い声に加えて、
次女子れいむの楽しげな声と恐怖の絶叫を、交互に聞かされ、
栄養は十分取れているにも関わらず、やつれた表情をしていた。


昨日よりも、更にゆっくりできない食事。
その最中だった。

「ゆきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

次女子れいむが突如奇声を発し、
満面の笑顔を浮かべて壁に向かって跳ねて行く。

「ゆっきゅり!!ゆっきゅり!!ゆっきゅり!!」

呆然とする家族が見守る中、何度も何度も、壁に向かって跳ね、
頭を硬い岩壁に打ち付ける。


「・・・・・?!ゆぁぁっ!!おねえちゃん!
 ゆっくりみてないでとめてね!!」

動けない母れいむが、三女子まりさに向かって呼びかける。
だが、子まりさは動かない。
餡子脳の想像を越える事態に、完全に思考がフリーズしていた。

「ゆっぐりじないで、はやぐどめろぉぉ!ごのぐずぅっ!!!」

母れいむが、子供達が聞いたこともないような大声で怒鳴った。
普段なら、決してこのような言葉は使わない母れいむだったが、
母れいむもまた、既に極限まで神経を摩耗していた。

その怒声にビクッと怯え、突き動かされるように飛び出す子まりさ。
赤れいむ達までもが、親に叱られると思ったのか、
ゆんゆんと泣きながら一緒になって飛び出す。

「おねえぢゃん!もうやめるんだじぇぇぇぇ!!」

子まりさが泣きながら、子れいむの髪を咥えて、引き倒す。
そのまま、押さえつけるように体を乗せる。

「ゆっきゅり!!ゆっきゅり!!ゆっきゅり!!」

だが、子れいむは意に介さず、ブンブンと体を揺すって立ち上がった。

「ゆぎゃっ!!」

子ゆっくりとは思えないもの凄い力に、
子まりさはあっさりと弾き飛ばされる。

「「おにぇーちゃぁん!!」」
「ゆぴゃ!?」「ゆべっ!!」
当然の如く、赤れいむ二匹も吹き飛ばされて地面に転がされる。

「だ・・・じぇぇぇ・・・!?」

子まりさは、なおも食い下がり、
子れいむの髪を咥えて引き留めようとするが、
子れいむは、子まりさを引きずりながら、再び壁への頭突きを再開する。
子れいむの頭が裂け、餡子が溢れ出す。

「ゆっきゅり!!ゆっきゅり!!ゆっきゅり!!」
「もうやめちぇぇぇぇ!!!」「ゆわぁぁん!!!やぢゃよぅ!!」

赤れいむの泣き声も虚しく、子れいむの頭部からどんどん餡子が溢れる。


「ゆっきゅり・・・ゆっきゅり・・・ゆっきゅり・・・
 ゆっきゅ・・・おねー・・・・・・・ちゃん・・・・・・」

跳ねようとするかのように、もぞもぞと動く、子れいむ・・・の饅頭皮。
既に餡子の8割を体外に漏らし、
ゆっくりの体を為していないただの萎んだ饅頭皮と化していたが、
それでも、声を上げ、懸命に飛び跳ねようとしているようだった。
その声も、数分後には完全に沈黙した。


言葉を発しなくなった、子れいむだったモノを、
ただ呆然と眺める残った一家。
そこに楽しそうな笑い声が浴びせられる。

「くしゅくしゅ・・・まちゃ、ちんじゃったにぇ・・・・」

「「「「~~~~~~!?」」」」

声無き絶叫を上げて、ガタガタ、ブルブルと震え出すゆっくり一家。
一家揃って、仲良くちーちーを漏らしていた。

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七日目
まだ雨。


「くしゅくしゅ・・・・・・くしゅくしゅ・・・・・・・・」

楽しそうなお化けの笑い声に震え上がりながら、食事をしている子供達。
ムーシャムーシャも、ウメメッチャウメコレもなく、
もそもそと機械的に餌を口に運ぶだけの食事。
美味しい筈のごはんは何の味も感じられなかった。

「ゆぅぅぅぅ!!おねえちゃん!
 ゆっぐりじないで、はやぐおがあざんのごはんをもっでぎでね!」

一匹だけ、そんな楽しくないごはんにあぶれていた母れいむが、
子まりさにイライラとした口調で命令する。
既に子供を三匹失い、睡眠不足も祟ってヒステリックになってきている。

身動きの取れなくなった母れいむは、
今まで、子供達に食事を運んでもらっていたが、
子ゆっくり達は母れいむの頭上のお化けを怖れるあまり、
母れいむに近づくのを極度に避けるようになっていた。


「ゆ・・・・・」

渋々と言った体で、子まりさがビスケットを一枚咥えると、
そろそろと母れいむに近づき始める。

「ゆぅ・・・・だじぇぇぇぇ・・・・・・」

だが、お化けに近づくのが怖くて、途中でその歩み止まる。
しばしの逡巡の後、子まりさは、
ビスケットを母れいむに向かって放り投げた。
だが、お化け怖さに、
ろくに母れいむの方を見ていなかった子まりさの狙いは逸れ、
ビスケットは母れいむの額に当たって地面に転がった。

「ゆ・・・・ぎぎ・・・・・・・・ゆぐっ?!」

母れいむは、舌を伸ばしてビスケットを拾おうとするが、僅かに届かない。
なおも舌を伸ばそうとすると、ズキッ!と破れた頭部が痛み、
少量の餡子がこぼれた。

「とどかないよ!ちゃんとおかあさんのところにもってきてね!!
 はやくしてねっ!はやくしてねっ!!」

母れいむが、怒気の籠もった声で、子まりさを怒鳴りつける。

「ゆぎゅぅぅ・・・・じぇもぉぉ・・・・・・・」

涙ぐみながら、拒絶する子まりさ。

「おかあさんはけがをしてるからうごけないんだよっ!!
 はやくしてね!!こののろまっ!」
「・・・・・・・」

母れいむの心ない罵声に、子まりさはブルブルと震えている。
巣の隅で身を寄せ合いながら、その様子を伺っている赤れいむ達も、
ゆぎゅゆぎゅと泣いている。

「ばやぐじろぉっ!!ごのの゛ろ゛まぁぁっ!!でぎぞごないぃぃ!!」

ついに母れいむが完全にブチ切れる。
その表情は鬼気迫ると言った言葉がふさわしいモノだった。
半ば錯乱状態にあるとは言え、
あの優しかった母れいむからは想像もつかない。
ゆっくりも変われば変わるものである。

「ゆ・・・ゆ・・・ゆぎぃぃぃっっ!!!!!!
 もういやなんだじぇぇぇぇ!?!?!?!
 もとはといえば、ばばぁがあんなおばけをつれてくるから
 いげないんだじぇぇ?!
 でぎぞごないは、ばばぁのほうなんだじぇぇぇ!!」
「!?ゆがぁぁぁぁぁっ!!
 お゛やにむ゛がっで、どおぉぉじでぞんなごどいうのおぉぉぉぉ!?
 じねぇ!!ゆっぐりでぎないばがなごどもは、ざっざどじねぇ!!」
「ゆびゃぁぁ!ゆびゃぁぁぁ!!」
「けんかちちゃやぢゃぁぁ!おきゃーしゃぁん!おにぇちゃぁん!!」


「くしゅくしゅ・・・たのちいにぇぇ・・・
 まりしゃ、たのちいよ・・・にんげんしゃん・・・」

赤まりさが、阿鼻叫喚のゆっくり一家の様子を高見から見下ろしながら、
誰にともなく呟く。
既に昨日から、投与された濃縮未還元オレンジジュースの効果は切れ、
空腹に苛まれ餓死寸前であったが、
今の赤まりさには、そんな事はまったく気にならなかった。

だって、まりしゃの下には、
ゆっくりできる美味しいごはんさんなんかよりも、
もっともっとゆっくりできる、楽しいモノがあるんだもん。


そして、赤まりさは、最期までクスクスと笑ったまま、
ゆっくりと息を引き取った。


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八日目
しとしとと降る、雨、雨、雨。


昨日の夜から、お化けの笑い声は聞こえなくなっていた。
聞こえなくなっていた筈なのに、ゆっくり達の耳には、
昨日まで以上にはっきりと、不気味な笑い声が絶えず聞こえていた。

無論、それは精神的な疲れから来る幻聴だったが、
例えそうとわかったとしても、聞こえるものは聞こえる。
お化けの赤まりさは、息絶えた後も、
昨日までと変わらぬ不気味な姿で吊り下がっている。
剥きだしのギョロリとした目が、ゆっくり一家を見つめている。
剥きだしのピンク色の歯茎が、ゆっくり一家に笑いを向けている。

「ばやぐ、でいぶに、ごばんをもっでごいぃぃ!!」

昨日から食事を取っていない母れいむが怒鳴り声を上げながら、
子まりさに罵声を浴びせ続けている。
だが、子まりさは何の反応も返さず、洞穴の奥に佇むばかり。
他に聞こえるのは赤れいむ達の、ゆぐゆぐという控えめな泣き声だけ。

「ざっざどじろぉぉぉ!!ぐずがぁぁぁぁ!!!!
 おねえちゃんだぢじゃなぐで、おまえがじねばよがっだんだぁぁ!!」

あまりと言えば、あまりな言葉。
その言葉に

「ゆぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
 もういやなんだじぇぇぇぇぇっっ!!!!!」

母れいむの罵声すらも凌ぐ大声で、子まりさが怒鳴り声を上げた。
その声に気圧され、母れいむの声が止む。

「ごんないえは、やなんだじぇぇぇぇ!!!
 ごんなばばぁは、いらないんだじぇぇぇぇ!!!!!
 ばりざはもうごんなどごろには、いられないんだじぇぇぇっ!!!!!」

そう叫ぶと、いまだ小雨が降りしきる外に向かって
ビョンビョンと跳ねて行く。

「ゆ゛あぁぁぁ!?だ、だめだよ!!おそとはゆっくりできないよ!!
 もどってね!!もどってね!!」

子まりさの絶叫に、親としての理性を取り戻した母れいむが
懸命に制止の声をかけるが、
もはや子まりさは、母れいむの言葉を聞く耳を持たない。

「ばりざはゆっぐりずるんだじぇぇぇ!!!
 ゆっぐりざぜないばばぁは、じねばいいんだじぇぇぇぇ!!!!」

子まりさの声はすぐに遠ざかり、しとしとと降る雨の音しか聞こえなくなる。
そして、この子まりさが、この巣に戻ってくることは二度となかった。



「ゆっぐ・・・!ゆっぐ・・・・・・!だじぇぇぇ・・・・・!」

もう数日すれば雪に変わるであろう冷たい雨の中、森の中を跳ねる子まりさ。
まりさ種の帽子は幾らかの耐水性がある。
しばらくは雨にも耐えられるだろう。
だが、長時間雨に濡れ続ければ溶けてしまう。
既に森の木々の葉は枯れ果て、雨宿りができるような場所も殆ど無い。
仮にみつかったとしても、ろくに狩りの経験も無い子まりさが、
今のこの季節に、食料を見つける事は、まず不可能と言っても良い。

だが、それでも、子まりさはもうあのお家には戻る気はなかった。


連日降り続く雨に濡れた地面を跳ねるに従い、
少しずつ、少しずつ、子まりさの底部がふやけてくる。

果たして、この子まりさは、
ゆっくりぷれいすに辿り着くことができるのだろうか?

行く宛ても何も考えないまま、
子まりさは、森の中、人里がある方向に向かって跳ね続けて行った・・・


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十日目
晴れ


「ゆん♪ゆん♪」「ゆゆ~ん♪」

巣の外で二匹の赤れいむの楽しそうな声が聞こえる。
朝、目が覚め、ようやく雨の上がった空に気づき、
二匹はこんな巣には一秒でもいられないとばかりに飛び出して行った。

流石に自活能力ゼロの赤ゆっくり、
子まりさのように巣から逃げだそうとはしないまでも、
雨が止んだのなら、怖いお化けがいる巣の中になど、居たい訳がない。


「ゆぅ・・・・・・・・・・・・」

一匹取り残された母れいむが、
目の前の怖いお化けに視線を合わせないようにしながら、
力無い声を上げる。
死んだ赤まりさは、ゴムの層で包まれていることと、気温が低いことから、
いまだ腐敗が始まらず、土に還ることも、虫などに食われることもないまま、
原型を留めていた。

子まりさがいなくなってから、母れいむは赤ゆっくり達を、
時に脅し、時になだめすかしながら、なんとか餌を運ばせていた。
だが、今日は、そんな母れいむの言葉に耳を貸さず、
自分達のごはんだけ口に咥えて外に飛び出して行ってしまった。

今頃は、楽しい食事も終わり、
久しぶりにお化けの出ない明るい空の下で
ゆっくりお昼寝を楽しんでいることだろう。


明るい日差しが差し込んできた巣の中で、
怒りをぶつける相手のいなくなったこともあり、
母れいむは数日ぶりに落ち着きを取り戻していた。

どうしてこんなことになってしまったのだろう?

そんな自問自答を繰り返す。

落ち着きを取り戻した母れいむは、ここ数日の己の所業を、
子供達に向けた態度を死ぬ程に恥じていた。

「ゆるじでねぇぇ・・・おかあざんをゆるじでねぇぇ・・・・」

外で無邪気に寝息を立てている赤れいむ達と、
家を飛び出した子まりさに対する悔悟の言葉を呟き、
忸怩たる涙を流す。

赤ちゃん達が戻ってきたら、ゆっくり謝ろう。
そして、また、家族で一緒にゆっくりしよう。
そうしたら、お家を出ていったまりさも戻ってくるかもしれない。


その思考が中断される。

「・・・・ぇ!!!」
「・・・・ぁぁl!!!」

外から赤ちゃん達が叫ぶ声が聞こえたような気がした。

「ゆっ!?れいむのあかちゃん!?どうしたの!?おへんじしてね!!」

「ゆぇぇぇぇん!!!!あぢゅいぃぃぃ!!!!」
「やめちぇぇぇぇ!!!いちゃいよぉぉぉ!!あちゅいよぉぉぉぉ!!!!」

返ってきたのは、赤ゆっくり達の悲鳴だった。


「あかちゃん!?あかちゃん!?どうぢだのぉぉぉぉ!?!?」

最後に残った赤ゆっくり達の泣き声に、
餡子が漏れるのも忘れ、巣の入り口に向かって這おうとする。
だが、何日にも渡り、一カ所の地面に座り続けていた底部は、
土に張り付いており、思うように動くことができない。

「あがぢゃぁぁん!!!!でいぶのあがぢゃぁぁぁん!!!!」

泣き喚く母れいむ。
不意にその体に影が落ちた。


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「やあ、れいむ。」

母れいむの目の前で、あの時の人間が爽やかな笑顔を浮かべていた。
身を屈めて、巣の中に入って来る。

「ゆ・・・?おにいさん・・・・・?」

疑問の声をあげる母れいむ。
しかし、すぐにハッとする。

「おにいさん!れいむのあかちゃんみなかった!?
 れいむのあかちゃんがおそとにいたの!!」

真っ先に赤ちゃんゆっくりの事が気になり、問いかける。

「ん?コレのことかな?」

ポイと、れいむの目の前に何かを転がすお兄さん。

「ゆぇぇぇ・・・ゆぇぇぇぇ・・・あちがうごきゃないよぉ・・・・・」
「みゃみゃぁぁ・・・れいみゅのあちがあちゅいよぉ・・・・・」

ライターで底部を真っ黒になるまで焼かれ、
香ばしい匂いを漂わせる赤れいむ達だった。


「ゆ゛ぅぅぎゃあ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁぁ!?!?
 あがぢゃぁぁぁんん!?どうじだのぉぉぉ!?
 だれにやらでだのぉぉぉぉ!?」
「ゆぇぇぇん・・・・きょのきょわいおじしゃんだよぉ・・・・・」

母れいむがハッと息を呑み、お兄さんを見つめた。
赤れいむの言葉を肯定するかのように、
ニコニコと母れいむに笑顔を浮かべるお兄さん。

「ど、ど、ど、ど、どうじで、
 どおじで、おにいざんがごんなごどずるのぉぉぉぉ!?!?」

優しい人間さんだった筈なのに。なんで。どうして。
信じられないというように叫ぶ母れいむ。


「だって、れいむ、れいむはお兄さんが預けた赤ちゃん、
 ゆっくりさせてくれるって言ったのに、
 赤ちゃんを苛めて、ゆっくりさせてあげなかったじゃないか。
 お兄さん、れいむが赤ちゃんに言ったこと、みんな聞いてたんだよ。」

お兄さんが、笑顔のまま、頭上の赤まりさだったものを指差し、
母れいむを責める。


今までの家族のやり取りは、赤まりさの体内に仕掛けられた、
超極小隠しマイクを通して、日夜全て楽しく聞いていた。
四十八のギミックの二十一番「ゆっくり盗聴器」。
勿論、超高性能な隠しマイクは世界最高峰の技術力を誇る、
頭に"に"の付くあのメーカー製だ。
他にも赤まりさには、まだ四十を越える素敵ギミックが満載されているが、
これ以上紹介できるスペースが無いのが、誠に残念である。


「ゆゆっ!?ち、ちがうよ!?
 アレはあかちゃんじゃないよ!!おばけだよ!!
 そ、そうだよ!!おにいさん、れいむをだましたね!!
 あんなの、あかちゃんじゃないでじょおぉぉ!!!」

「あーあ・・・おにいさんガッカリだよ。
 れいむは、ゆっくりできないゆっくりなんだね。
 ちょっと他の子と見た目が違うからって、
 お兄さんの可愛いまりさちゃんを苛めるなんて・・・」

「ちがうよぉぉ!!!そんなのゆっくりのあかちゃんじゃないよぉぉ!!」

「違わないよ。見ててごらん。」

そう言って、地面に転がした赤ゆっくりのうちの一匹、
六女赤れいむを拾い上げると、左手の掌に乗せた。


「ゆゆっ?!やめてね!やめてね!!
 れいむのあかちゃんに、もうひどいことしないでね!!」

何かをされると予感したのだろう。母れいむが、涙目で訴える。
その声を受けながら、お兄さんが赤れいむの柔らかいほっぺを摘むと、
そこから、ビリビリビリと饅頭皮を剥がし始めた。

「ゆびゃあぁぁぁぁっっ!!いぢゃーい!!いぢゃーい!!!!」

泣き喚く赤ゆっくりの饅頭皮を乱雑に剥いてゆく。
そして、できあがったソレを、赤まりさの死体と並べるようにして、
掲げて見せた。

黒い餡子の塊。
その中に浮かぶ、剥きだしの二つの眼球と、
剥きだしのピンク色の歯茎と白い歯。

それが二つ。


「ゆっぴゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?!?!」

母れいむが目玉を飛び出させながら、悲鳴を上げる。

「ほらね。ゆっくりなんて、皮を剥いちゃえば、みんなこんな顔だよ?
 こっちの赤ちゃんだって、元はれいむの赤ちゃんに負けないくらい
 とっても可愛い顔をした赤ちゃんまりさだったんだよ?」

「ゆあぁぁ!!!ゆあぁぁぁっ!!!!!
 ゆあ・・・・?ちょ、ちょっとまって!
 どうして、そのこもかわいいあかちゃんだったってしってるの!?
 おかしいよ!!だっておにいさんが・・・」

いじめられていたあかちゃんをたすけてくれたんでしょ?
だったら、いじめられるまえの あかちゃんのかおなんてしらないでしょ?
おにいさん、うそついてるんでしょ!

そう続けようとした母れいむの言葉を、お兄さんが引き取って続ける。

「うん。そうだよ。
 お兄さんが、この赤ちゃんの可愛いお顔の皮を剥がしたんだよ。」

「ゆっ・・・・!?・・・・・ゆ・・・
 じゃ、じゃあ・・・・あかちゃんのおやも・・・・・・・」

「もちろん、お兄さんが殺しちゃったよ?」

「ゆ・・・が・・・・・ゆがぁ・・・・・・・・」

「親のゆっくりだけじゃないよ。
 この赤ちゃんにはね、他にも可愛い赤ちゃんの姉妹が、まだ四匹もいたんだ。
 でも、ぜーんぶ、お兄さんが潰しちゃった♪」

四匹の内の一匹は、お兄さん愛用のゆぉーくまんとして
頑張ってくれていたえずき赤れいむだったが、
どうやら我慢できなかったらしい。

「ゆ゛、ゆ゛、ゆ゛がががぁぁぁぁ!!!!
 お゛まえのぜいだぁぁぁ!!!
 お゛まえのぜいで、でいぶのおぢびぢゃんだぢがぁぁっ!!
 がえぜぇぇ!!!でいぶのがわいいおちびぢゃんだぢをがえぜぇぇ!!」

目の前の人間が諸悪の根元だったと、ようやくに理解した母れいむ。
何とも餡子の巡りの遅いことである。
威嚇のため、ぷくぅぅと膨れようとしているようだが、
頭に大穴が開いているので、そこから空気が漏れてちっとも膨らまない。

「おお、こわいこわい。ほら、返すよ。」

そう言って、お化けになった赤れいむを置いた左手を、
母れいむの目の前に差し出し、

「えい♪」
「ゆびゃっ!?」
ぶちゃっ!

楽しげな掛け声と共に右手で潰した。
そして、左手に残った餡子を、あんぐりと開いた母れいむの口に突っ込む。

「ゆ゛ぶっ!?んゆ゛ゆ゛ゆ゛~!?!?」

暫く母れいむが目を白黒させた後で、手が引き抜かれる。
母れいむの口の中に、甘い甘い餡子の味が残る。
その味に呆然とする母れいむ。

「・・・ど・・・どうしてぇ・・・・どうしてこんなことするのぉぉ・・・
 れいむのあかちゃん・・・なんにもわるいことしてないのにぃぃ・・・・」

先程までの怒りも忘れ、すすり泣く母れいむ。

「そうだね。あかちゃん達は何にも悪いことはしてないよ。」

「だったら・・・どうしてぇ・・・」
 あかちゃんは・・・とってもかわいくて・・・
 ゆっくりできるでしょぉ・・・つぶしちゃうなんて・・・」

「そうそう!そうだよね!
 赤ちゃんはとっても可愛くてゆっくりできるんだよよね!
 やっぱり潰しちゃうよね~!!
 こうね、プチュッ!とね!プチュゥッ!プチュゥゥゥッ!」

れいむの言葉に我が意を得たりと言った表情で嬉しそうに頷く、お兄さん。
ハァハァと息を荒くし、涎を垂らしながら、
残った赤れいむに熱い視線を送っている。
その熱い眼差しに、赤れいむがゆぴゃぁぁぁぁ、と可愛らしい悲鳴で答える。

その言葉に、お兄さんの本性を理解した母れいむが、真っ青になり、
傷口から餡子が漏れ出す程にガクガクと震え、涙を流す。

赤ちゃんはとっても可愛くてゆっくりできる。

そこまでは互いに意見は一致したが、
れいむは、赤ちゃんは可愛いから潰さないでね派、
お兄さんは、赤ちゃんは可愛いから潰すに決まってるでしょお?!派。
一人と一匹の価値感は平行線を辿る。
互いに何を言ったところで無駄だ。
ならば最後に勝つのは、力がある側。餡子脳ながらにそう理解したのだろう。

「ゆぅぅぅぅ・・・ごべんねぇ・・・・
 おちびちゃんだぢ・・・ごめんねぇ・・・」

自分が、こんな恐ろしい人間に関わってしまったばかりに。
こんな人間を信用してしまったばかりに。
もう二度とゆっくりできなくなってしまった子供達に、
己の餡子脳さ加減を謝る。


「じゃあ、こっちの赤ちゃんは貰っていくね。
 可愛いれいむちゃぁん、お兄さんが可愛がってあげるからねぇぇ。」

「ゆきゃぁぁぁぁ!!きょわいおじしゃんやぢゃあぁぁぁ!!!」

「かえしてぇ・・・れいむのあかちゃん、かえしてよぉぉ・・・・」

「れいむには、こっちの赤ちゃんがいるじゃないか。
 れいむは、この子の傍にずっと居てくれるんでしょ?
 お兄さん、ちゃんと聞いてたよ。」

「ゆやぁぁぁぁ・・・やだようぅ・・・れいむのあかちゃぁん・・・
 かえしてぇぇ・・・かえしてぇぇぇ・・・・・・・」



れいむの言葉を無視して、
お兄さんは、背負ってきた荷物から色々と道具を取り出すと
何やらごそごそとやっている。

肌色の饅頭皮を取り出し、れいむの破れた皮の部分にペタリと貼り、
貼り合わせた箇所に小麦粉を水で溶いて塗ってやる。
新しい饅頭皮は、つい30分程前に、この巣の近くで不慮の事故死を遂げた
ゆっくりれいむの饅頭皮。
それを遺族ゆっくりの同意の元、大変快く提供を受けた品で鮮度は抜群。
きっと移植手術は成功するだろう。
補修した箇所は、元々髪の毛が生えていた場所だったので、
ハゲてしまったように見えるのはご愛敬。


続いて「ちょっとチクッとしますよぉ」と言いながら、
鉄製の細い杭を取り出す。頭にロープ等を通す輪のついた鉄杭だ。
それをゴンゴンと金槌で地面に斜めに打ち込み始めた。
押さえつけたれいむの頭の上から。

「ゆごぉぉぉぉっっ!!?ゆばらぎぃぃっ!!!」

ゆっくりしていないれいむの悲鳴の後にできあがった物は、
赤ちゃんを産む時の蔦のように、頭から斜めに杭を生やしたれいむ。
杭が突き破った饅頭皮の周辺に、
暴れて破れないように水溶き小麦粉を塗って補強してやる。


それから、カッターを取り出すと、慎重に慎重に、
「ゆっぐ・・・ゆぎぃぃぃ・・・・」と
鉄杭を刺された痛みに呻いて大人しくなっている、
れいむの饅頭皮の一部を切り取る。

「ゆあぁぁぁぁ!!でいぶのぢゃーみんぐな、ふだえまぶだがぁぁ!!!」

瞼を切り落とされたれいむが涙を流す。


仕上げ。
木の根に引っかかっていた赤まりさを解いてやる。

「・・・お前・・・なかなか虐待の素質あるなぁ・・・・
 人間に生まれていたら、いい友達になれたかもな・・・・」

もう何も聞こえない赤まりさに、
優しく声をかけながら、そっと撫でてやると、
その鎖を、母れいむの頭から伸びた杭の輪っかの部分に
しっかりと結びつけてやった。

「ゆびゃぁぁぁぁぁ!!!おばげぇっ!!おばげはも゛ういや゛ぁぁっ!!
 !?めがどじらでないぃぃ!?どうじでぇぇぇ!?どうじでぇぇぇ!?
 おばげみだぐないぃぃっ!!おばげみえないでぇぇっ!!
 いぎゃあぁぁぁっっ!!!!」


最後にオレンジジュースの入った、
大きなペットボトルのような容器を取り出す。
ボトルの入り口には、何重にも綿のような物が詰まっている。
そして蓋の部分についていた差し込み口に、
透明なビニールチューブを差し込むと、
チューブのもう一方の箸をれいむの体に深く差し込んだ。
濃縮オレンジジュース点滴である。
綿を通って、じんわりと染み出してくる栄養満点の点滴は、
これから何ヶ月も、れいむの命を繋いでくれることだろう。


「これでよし、と・・・・」

パンパンと手を叩くと、お兄さんは残った赤れいむを懐にしまい、
狭い洞穴を後ろ向きに這って出て行く。


「ゆびゃっ!?ま、まっで!!おにいざんまっで!!
 でいぶをびどりにじないで!!おばげどいっじょにじないでぇぇっ!!
 おいでがないでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!おにいざぁぁん!!!!」

「じゃあね、まりさちゃん。お兄さんも楽しかったよ。」

その声に込められているのは、純粋な親愛の情だった。

「・・・お母さんと」


ゆっくりしていってね。


赤まりさは、剥き出しの目と歯茎で笑って、その声に答えた。


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数ヶ月後、れいぱーありすの集団に襲われて死亡するまで、
母れいむは生き続けた。

鉄の杭の周りに、何本も蔦を生やし、真っ黒に全身を黒ずませて朽ち果てた、
母れいむの最期の表情は、とても安らかであったと言う。




おわり






あとがき

ゆっくりボールマンさんよりお許しをいただき、
「ゆっくりボールマン2世」を名乗らせていただく事になった者です。
どう見ても名前負けです、ほんとうに(ry

元々、前作一本で消えるつもりでしたが、
折角名前も頂いたし、もうちょっと書いてみようということで、
スレでリクエスト貰ったネタを使って、思いつくままに書き散らしてみました。
でも直接的虐待が少ないんで、書いてる自分自身が物足りないです。

それと、あっさりとした短編にするつもりが、結局この長さ。
もうちょっと短く纏める努力をしないとダメですね。

余力があれば、逃げた三好まりさで
もう一本ぐらい書きたいなーと思ってます。
今度は短いので。

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最終更新:2011年07月29日 18:19
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