私はこのカフェの店主 客からは店長と呼ばれている。
私の店にはれみりゃがいる。
私の店、とは言っても私が飼っているのではなく、
2階の雨風を防げる軒下に藁を敷いて住みついているのである。
(ツバメの巣の糞避け板を床にしているようだ)
このれみりゃ、このお店が出来る前のお店の店主の飼いゆっくりだったらしく、
前の飼い主が与えた銅バッチを今でもつけている。
地主から聞いた話ではそのお店はお菓子屋だったようで、
お菓子屋はいつも甘い香りに包まれていたらしい。
そのせいだろうか、毎日のように野良ゆっくりが流れ着いては甘いものを要求し、
お店に人がいない時には襲撃まがいのことをしていて店主は頭を悩ませていたらしい。
この街ではゆっくり食品衛生条例というものがあり、
野良ゆっくりを食品として販売するには煩雑な手続きを要する。
その為、野良ゆっくりをいくら潰しても再利用することができず
ゴミが増えるだけで迷惑極まりなかったようだ。
その店主が一計を案じ、野良ゆっくり対策のために買ったのがあのれみりゃというわけである。
それなりに効果はあったようだが、その店主に商才がなかったらしい。
れみりゃを飼って3ヵ月後に店が潰れてしまった。それが今から1年前の話である。
商才は無かったが飼いゆっくりの育て方には定評があったようで、
このれみりゃは食べていいゆっくりと食べてはいけないゆっくりの見分けがつくのである。
食べていいゆっくりとは、ご存知の通り野良ゆっくりであり、
食べてはいけないゆっくりとは飼いゆっくりである。
例えば、今、飼い主と一緒に散歩しているゆっくりれいむが店の前を通り過ぎようとしている。
れいむ 「ゆっ! ゆっ! おにいさんもっとゆっくりあるいてね! ゆっ! ゆっ! れいむのあんよがつかれてるよ!」
声のトーンがコントロールできないようであり、運動不足、しつけが足りない飼いゆの証しである。
頭にきらめく銅バッチは薄汚れているごくごく普通にいる飼いゆっくりだ。
しかし、これだけうるさくても、れみりゃは巣の中で「う〜 う〜」と寝息をたてているだけで、
飛び掛って食べようとしない。
みなさんが思っているように私も最初は気づいていないものだとばかりおもっていた。
でもこれが野良ゆっくりだとれみりゃは見逃さない。
ちょうどいいところに、野良のまりさ種がやってきた。
この店は前がお菓子屋ということもあり、
この界隈のゆっくりたちには「あまあまがあるゆっくりぷれいす」と認識されているらしい。
そもそもゆっくりを珍しがっていた前の店主がお菓子の売れ残りをあげていた事にも問題はあるのだが・・・
まぁ、いない人のことを言ってもしょうがないので割愛する。
さて、野良まりさはゆっくりぷれいす、つまり私の店のドアをドンドン叩きだした。
このドアは前の店主がつけた丈夫な樫の木でできていて、ゆっくり程度じゃ壊れない代物である。(高かったらしい)
「おじさん!!素敵なまりさがきてやったのぜ!!
まりさのスーパー頭脳にかかればここにあまあまがあるのはすぐにわかるのぜ!!
おじさん!中にいるのはわかっているんだぜ!!」
野良まりさの言うとおり私は店の中にいる。
今日は定休日だがゆっくりたちの面倒を見ないといけないし、することもないので
店の中で赤ゆを茶菓子にコーヒーを飲んで新聞を読んでいた。
ちなみに話は脱線するが、この赤ゆたちの入っているカップには面白い構造をしている。
直径10cm高さ5cmの底が少し深いどこにでもある食器なのだが、
食器の下には熱を伝える装置がついている(充電式)、設定温度はお好みで20〜50℃ぐらいである。
ちょうどゆっくりできない温度まで上げれるものと考えてもらえればいい。
これだけなら熱さで泣き喚いてる赤ゆを順番につま楊枝を刺していくだけなのだが、
この食器には真ん中に2cm×2のすこし高い突起部分がある。
ここには熱が通っておらず、食器に入れられたゆっくりたちは先を争ってここに群がるというわけである。
ついさっきまで仲のよかったゆっくりたちがここでは他の姉妹を蹴落とそうと必死になっている。
見るだけでも面白いのだが、真ん中のゆっくりをたべると
赤ゆA 「ちゅぎはれいみゅがきょきょにいくべきなんだよ」
赤ゆB 「まりちゃのすーぱーぴゃわーにかちぇるわけないでちょ わかっちゃらちゃっちゃとどいちぇね」
赤ゆC 「やみぇてねれいみゅがゆっきゅりできないよ」
などとイス取りゲームよろしく、先を争っている。
食べられる怖さなど二の次である。
設定温度を落とすと
『食べられる怖さ』>『熱くてゆっくりできない温度』となり、
赤ゆD 「どうちて れいみゅをたべるの!!」プクー
赤ゆE 「きょきょはゆっくちできないー」
赤ゆF 「みゃみゃー!たちゅけてよー!」
とさっきよりワーワーうるさいもんである。
バターを溶かしたり食べ方は色々と考えていこうと思う。
さてさっきのまりさだが
〜〜5分後〜〜
「じじぃ!はやくあまあまもってこいっていってるでしょ!ばかなの?
まりさのいうことが聞けないばかなじじいはさっさとあまあまもってこい!!
あまあま持ってきたら命だけはゆるしてやってもいいのぜ!!!!」
まりさの罵倒がヒートアップしていた。
その時、まりさの後ろに腐りかけたチーズケーキが落ちてきた。
まりさは気づいて
「ゆ?あまあまが落ちてるよ!
これはきっとじじぃが持ってきたんだぜ!
姿を見せないのはまりさ様が怖かったんだぜ きっと!」
さんざん自画自賛をしてから半分食べて半分を帽子の中に入れた。
きっと巣に持ち帰って家族に与えるんだろう。
ちなみにこの腐りかけたチーズケーキ
もちろん私が与えたものではない。
このあたりではむやみに野良ゆっくりに餌を与えるのは条例で禁止されているからである。
このチーズケーキ、もともと私が数日前にれみりゃにあげたものである。
与えたのはいいが、元々お菓子屋に飼われていたれみりゃはグルメだったらしい。
口をつけずに巣の近くに放置していた。
食べないのなら捨てるように言ったのだが、「う〜う〜」言って首を振るばかりであった。
そのチーズケーキがまりさの後ろに落ちてきた。
「しかたないのぜ!今回はこれでゆるしてやるのぜ!
次も来るからじじぃはあまあまを用意して待っているのぜ!」
と、まりさは一応の収穫に満足したのか帰路についた。
その時!そのときである!
今まで息を潜めていたれみりゃが巣から飛び出し、帰ろうとするまりさ目掛けて滑空していった。
その姿はまるでねずみを狙うフクロウのようであり、鷹のようであった。
私はそのままガブリッ!といくものだと思っていたが、それは違った。
れみりゃは滑空の威力を使ってまりさに体当たりをくらわせたのだ。
まりさ 「プギャ!!ゆべっ!」デン!デン!
れみりゃのほうが体格が小さかったが滑空の威力が加わっていたため、
まりさは体当たりの衝撃によって二転三転ころころと転がってしまった。
アスファルトの上を転がったのである。怪我は無いがまりさの体は擦り切れて痛々しいものだった。
そのまりさに向かってれみりゃは鋭い歯をたてて噛み付いた!
「ひぅ!」
噛み付いた場所はお尻の少し上、うなじの下である。
普通、れみりゃ種がまりさやれいむに噛み付くとき、ほっぺたに噛み付くことが多い。
理由としてはいくつかある。
一つはほっぺたの近くはやわらかく、中枢餡子に近いため他の部位より美味しい餡子を早く吸えるのである。
他には、その姿がありありと見せつけられるようにほっぺたを噛み付かれることでまりさ達は抵抗さえしないことも多々あるのである。
つまり暴れるのを防ぐのが理由である。
そして一番の理由はなんといっても、恐怖が倍増されることによって甘みが増えるのである。
お尻の上を少し噛み付いたのは何か理由があるのか?と
一年近く同居しているれみりゃの狩りに私は少しばかり興味を持った。
れみりゃはまりさに噛み付いた後、口の中に隠し持っていた細い木を
噛み付いて出来た傷口に突っ込んだ。
本当に細い木で、箸のような細さであった。
「ゆぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
まりさの悲鳴があたりにこだました。
れみりゃは数回まりさの周りを飛び回っていたが悲鳴を上げてのたうち回るまりさを尻目にどこかに飛び去っていってしまった。
まりさは噛まれた痛みや小枝が餡子をえぐる痛みに対し気持ち悪いように体をぐねらせていた。
そして、痛みにもだえながらも『なぜれみりゃが去っていったのか?』と考えていた。
いくら自尊心の高いゆっくりであっても、れみりゃがまりさを恐れたとは思えなかった。
いつまでも考えつづける餡子脳があるわけでもないし、
噛まれた箇所がお尻に近く餡子も厚かったのでなんとか歩くことが出来た。、
数分休憩した後まりさは巣に帰ることに決めた。
体当たりの衝撃で帽子の中でシャッフルされたチーズケーキを食べ、
来るときの1/5ぐらいの速度でのっそりのっそりと歩き出した。
歩くたびに体の中に刺さった小枝が痛いのだろうか
「ゆぐっ!ゆぎっ!」と声を上げている。
ゆっくりと帰っていくまりさはとてもじゃないがさっきまでの威勢は無い。
レイパーアリスに絡まれたら即死だろう。
しかし、アリスたちに出会ってもまりさはきっと巣にたどりつけるだろう。
れみりゃが彼を尾行しているのだから・・・
れみりゃはグルメである。
目の前のチーズケーキに手を付けず、手負いのまりさを捕食することを我慢できるぐらいに。
帰路につくまりさとそれを尾行するれみりゃを見送りながら、私はれみりゃの狩りについて考えてみた。
まず、チーズケーキ
れみりゃはまりさがチーズケーキに気をとられている隙に体当たりを食らわせた。
れみりゃは自分がここに住んでいることをまりさ達に知られたくなかったのであろう。
野生のゆっくりは捕食種がいる所には近づかない。れみりゃはそれを本能で知っていたのである。
その為チーズケーキを使うことで『いきなり現れた』演出を行ったのである。
(当店にとってはれみりゃが自己主張してくれたほうがありがたいのだが)
次に噛み付いた箇所と木の棒
おそらくである。れみりゃは子ゆっくりを好んで食べるのだろう。
そのためには巣の案内をまりさに行わせ、同時にまりさを無力化するのが望ましい。
だからお尻の少し上を噛み付いたのであろう。
れみりゃはこの後巣まで尾行し、まりさ達がいる前で赤ゆを捕食するだろう。
その時、まりさはどういう行動をするだろうか・・・
十中八九怒りにまかせ多少の痛みにこらえながらもれみりゃの食事を妨害するのは明白である。
その時、臀部が痛かったらまりさの体当たりは半減するものである。
さらに木の棒が刺さっていることにより痛みは倍増されるということである。
巣まで帰っている間に木の棒は深く刺さっている。
相方のれいむなりアリスなりに手伝ってもらっても引き抜くことは不可能である。
しかしながらお尻付近に刺さった細い木の枝である。
狩りや遠出さえしなければ日常生活に不自由しないだろう。
キズが回復し時間が経過すればまた子作りをするだろう。
その時は手負いのまりさに茎を実らせているかもしれないが・・・
遠出ができない彼らは新しい巣を探すだろうか?
巣を変えたとしてもおそらく近場ですませるだろう。
そうなると将来生まれるであろう彼らの赤ゆ達はれみりゃの食料になってしまうという寸法である。
まぁ、ここまで考えてはみたものの、
赤ゆっくりが生まれているかどうかわからないものである。
れみりゃの狩りが成功したかどうかは彼が帰ってきてから聞くことにしよう。
彼の狩りが成功することを祈りつつ私は最後の赤ゆを噛まずに飲み込んだ。
赤ゆ 「ゆ゛び゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛み゛ゃ゛み゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛
ゆ?きょきょどょこ?くりゃい゛よ゛!ゆっちくできなよ゛!
ゆゆゆ???あみゃあみゃのにぉいが・・・」
私は最後にコーヒーを飲もうかと思ったが、赤ゆが幸せそうに姉妹を食べているのをきいて、しばらくそっとしておくことにした。
最終更新:2011年07月30日 02:17