作者:白兎
※前編に虐殺シーンはありません。
※独自設定多数。
ある群れに、一匹の子ぱちゅりーがいた。
珍しいことではない。
ぱちゅりー種など、どの群れにも何匹かはいるものだ。
れいむ種やまりさ種と比べれば数が少ない、というだけのことである。
しかし、その子ぱちゅりーには、他のぱちゅりーと異なる点がいくつかあった。
まず、家族構成が変わっていた。
彼女の父親はぱちゅりーであり、その母親もまたぱちゅりーだった。
普通、
ゆっくりは、同種間のすっきりを忌避する傾向にある。
それは、多くの動物たちがそうであるように、近親交配を避け、
少しでも遺伝子の多様性を維持しようとする本能的なものであった。
むろん、
ゆっくりの場合は、遺伝子ではなく餡子なのであるが、事情は同じことだ。
なぜ両親ともにぱちゅりーなのか。
その答えは、この両親が子ぱちゅりーを産むにいたった経緯にある。
彼女の父親だったぱちゅりーは、生まれつき病弱で、
親友だった別のぱちゅりーにいつも面倒を見てもらっていた。
このもう一匹のぱちゅりーというのが、子ぱちゅりーの母親にあたる。
父ぱちゅりーは、ひとりで狩りをすることもできなかった。
だから、母ぱちゅりーは、父ぱちゅりーとともに冬を越そうと決心した。
つがいになるつもりはなかった。
正確に言えば、2匹は、一度もつがいになったことなどなかった。
その年の冬、稀に見る寒波が山を襲い、父ぱちゅりーは自分の死期を悟った。
食糧はまだ十分にあったが、気温の低下に体が耐えられなかったのである。
父ぱちゅりーは、親友の母ぱちゅりーに、とんでもないお願いをした。
ゆん生で一度でいい、すっきりしてみたいのだわ、と。
母ぱちゅりーは驚き、最初はそれを拒んだ。
ぱちゅりー同士が子を作るなど、聞いたことがなかったからだ。
2匹の間で、その話は無かったことにされた。
それから3日後、外はますます冷え込み、巣の中も真冬のような寒さに包まれた。
父ぱちゅりーがいよいよ衰弱していく中、母ぱちゅりーは突然つぶやいた。
すっきりしてもいいのだわ、と。
その夜、2匹は生まれて初めてのすっきりをし、父ぱちゅりーはそのまま息を引き取った。
永遠に
ゆっくりしてしまった父ぱちゅりーは、いかにもすっきりとした表情を浮かべていた。
母ぱちゅりーは、泣く泣くその死体に切り口を入れ、まだ温かい生クリームを取り出すと、
それを使って入り口の補強工事を始めた。
油脂をたっぷり含んだ生クリームは、グリセリンと同じように防寒剤となり、
巣の中はとても暖かくなった。
それはまるで、死んだ父ぱちゅりーと寄り添い合っているかのような、そんな温かさであった。
ゆっくりの中でも比較的賢いぱちゅりー種である。
出産方法などは、事前に話し合っておいた。
動物型にんっしん。厳しい冬を耐えるには、植物型にんっしんでは危険過ぎる。
小さな赤
ゆっくりから育てていくのは、到底不可能に思えた。
しかし、動物型にんっしんでも、2匹、3匹と産まれては困る。
食糧などを勘案して、育てられるのは子
ゆっくり1匹だけだ。
そこで、父ぱちゅりーと母ぱちゅりーは、巣の中の葉っぱで避妊具を作り、
それをぺにぺにに巻いて、精子餡の量を調整した。
人間の場合とは違い、赤
ゆっくりの数は精子餡の量に比例する。
大量の精子餡を放出するれいぱーが母体の死に直結するのも、このためだ。
3週間後、ぷっくりと下顎を膨らませた母ぱちゅりーは、
巣の中で
ゆっくりラマーズ法を実践しながら、陣痛に苦しんでいた。
ゆっゆっふぅ、ゆっゆっふぅ、と白い息を吐く母ぱちゅりー。
そして、次第に割れ目が大きくなり、赤
ゆっくりがじわじわと顔を出す。
自分の位置からは見えないが、母ぱちゅりーには我が子の動きがはっきりと分かった。
ぽん
コルク栓を抜いたような音とともに、赤
ゆっくりが産道から飛び出した。
木の葉や綿毛で作った毛布をクッションにして、地面にぶつかったときの衝撃を和らげる。
ふぅー、と大きく息を吐いた後、母ぱちゅりーは産まれたばかりの赤
ゆっくりを見た。
それは、案の定と言うべきか当然と言うべきか、ぱちゅりー種であった。
元気よく挨拶する赤ぱちゅりー。
「ゆっくりしていってね。」
母ぱちゅりーの目に、すっと涙が流れた。
死んでしまった親友への涙か、それとも、母親になれたことの喜びか。
そんな母親の複雑な思いを、赤ぱちゅりーは知る由もなかった。
赤ぱちゅりーはとても
ゆっくりした子で、2匹は何とかその冬を乗り越えることができた。
春が来て、山のほうぼうから
ゆっくりたちが顔を出す頃になると、
母ぱちゅりーも、入り口を塞いでいた木の枝や苔をはずし、
久々に見るお日様に向かって、
ゆっくりー♪、と喜びの挨拶をした。
そして、皮となった親友の死体を埋め、そこにお墓を作った。
父親のことは、成長して子ぱちゅりーになった我が子にも内緒にしておいた。
ぱちゅりー同士の子だと知れれば、何をされるか分かったものではない。
だから、母ぱちゅりーは、仲間に尋ねられると、いつもこう答えた。
これは、一本杉の根元に住んでいた、まりさの娘だ、と。
一本杉のまりさは越冬中の雪崩に巻き込まれており、まさに死人に口無しであった。
そんな母ぱちゅりーが、我が子のおかしさに気付いたのは、
4月に入り、山桜が
ゆっくりと咲き始めた頃のことだった。
「おかあしゃん。ちょうちょしゃんがゆっくりとんでりゅよ。」
「ほんとだね。ちょうちょさんはとっても
ゆっくりしてるね。」
「ゆわーん!いちゃいよー!まりしゃおねえしゃんがいじめりゅー!」
「いじめちぇないのじぇ。ちょっとおふじぇけしただけなにょぜ。」
「らんぼうさんはだめだよ。いもうとはまだちいさいから
ゆっくりあそぼうね。」
野原の片隅で、花と虫に囲まれながら、日光浴を楽しむれいむ一家。
彼女のつがいだったはずのまりさは、もういない。
親れいむの話では、冬越しの間に風邪をひき、そのまま死んでしまったのだという。
親れいむは夫の死を乗り越え、形見のおちびちゃんたちを世話している。
だが、親ぱちゅりーは薄々勘付いていた。
彼らは、予定外のすっきりで冬籠り中ににんっしんしてしまい、食糧が足らず、
親まりさが自ら命を絶つことで家族を救ったのだ、と。
話をもとに戻そう。
親れいむのそばで遊ぶ子
ゆっくりたちは、子ぱちゅりーと同じ早生まれ、
通称、冬生まれである。
親れいむの話からすると、産まれた時期もほぼ一緒のようだ。
ところが、その子
ゆっくりたちは、子ぱちゅりーとは似ても似つかない。
いや、逆だ。子ぱちゅりーが、その子
ゆっくりたちとは似ても似つかないのである。
「むきゅん。おかあさん、きょうもごほんをよんでほしいのだわ。」
「もちろんいいのだわ。ぱちぇはほんとにごほんがすきなのね。」
お分かりいただけただろうか。
この子ぱちゅりー、れいむ一家の子どもたちと違い、
何の問題もなく言葉を話せるようになっている。
これは、ぱちゅりー種だという事実だけでは説明がつかない現象だった。
まだ生後3ヶ月しか経っていないのである。
「このまどうしょによれば、ひとざとには、ちょこれーとでできたおしろがあるのだわ。」
子ぱちゅりーが持って来たのは、河原で拾った1枚のちらしだった。
大方、キャンプ客が、何かを包むために持参したのだろう。
ちらし一面に、甘い食べ物がところ狭しと並んでいた。
「むきゅん。おかあさん、そんなおしろがあるのかしら。」
子ぱちゅりーが、いぶかしげに尋ねた。
「どうしてうたがうのかしら?」
母ぱちゅりーは驚いた。
これまで、自分がごほんを読んでいるときに、口を挟まれたことがなかったからだ。
ゆっくり一般に言えることだが、文字に関するぱちゅ種の解釈は絶対なのである。
「むきゅん。ちょこれーとさんはあついとすぐにとけてしまうのだわ。
そんなものでおしろをつくったら、だれもすめないのだわ。」
ぱちゅ親子が住む群れは、一度も人間の里に下りたことがなかった。
それが最も安全な方法だと、先祖代々伝えられていたからだ。
しかし、近くの河原がキャンプに適しているため、
夏場には人間のほうから群れの近くへやって来ることがある。
そして、彼らの中には、ゴミを持って帰らない人たちもいる。
そのおかげで、チョコレートというお菓子も、群れの
ゆっくりたちにはよく知られていた。
とっても甘くて
ゆっくりできる、伝説のあまあまさんである。
親ぱちゅりーですら、それを口にしたことは一度しかない。
「でも、このまどうしょには、ちょこれーとのおしろがあるのだわ。」
親ぱちゅりーは、うねうねと動く髪の毛でちらしを指した。
「それはおしろじゃなくて、おしろのかたちをしたちょこれーとなのだわ。」
「むきゅん。そうかもしれないわね。」
親ぱちゅりーは思った。
この子は、てんっさいかもしれない。
それも、自信過剰なまりさ種がよく使うような意味ではない。
思えば、父ぱちゅりーも、病弱ではあったが、頭の回転は群れ一番だった。
それを知っているのは、世話をしていた母ぱちゅりーだけだったけれども。
「おかあさん、このしろいものはなんなのかしら?」
「むきゅん。それはね…。」
こうして、ぱちゅ親子は、今日もごほんを読みながら一日を過ごした。
6月。梅雨の訪れ。
今や子ぱちゅりーも半年の歳月を経て、子
ゆっくりから大人
ゆっくりになろうとしていた。
そして、その間の成長ぶりは、親ぱちゅりーの予想を遥かに上回るものだった。
「お母さん。ぱちゅは今日、面白いことに気付いたのだわ。」
子ぱちゅりーは、地面に木の枝で何かを書きながら、母親に話しかけた。
いつまでも降り続ける雨の中、子ぱちゅりーは、こうやって時間を過ごしている。
「どうしたのかしら。」
「むきゅん。3匹のまりさが、木の実を4つずつ拾ったら、何個になるのかしら。」
母ぱちゅりーも木の枝を取り、地面に式を書く。
4+4+4=12
「12個なのだわ。」
普通、
ゆっくりの中で計算ができるのは、ぱちゅ種だけである。
その計算とやらも、足し算と引き算のみから成る簡素なものだったが、
10以上の数を「たくさん」としか認識できないまりさ種やれいむ種と比べれば、
格段の能力差に違いなかった。
「そうなのだわ。でも、こうすると、もっと速く計算できるのだわ。」
4×3=12
母ぱちゅりーは、おめめをぱちくりとさせた。
彼女には、娘の書いた計算式が、何を意味するのか分からなかったからだ。
ゆっくりは、掛け算を知らない。
「足し算で同じ数が連続するときは、その連続する数を使って、計算できるのだわ。
この新しい計算方法に重要な組み合わせは、81通りあるのだわ。」
母ぱちゅりーは、子ぱちゅりーの言っていることが理解できなかった。
子ぱちゅりーの能力は、その母を凌駕していたのである。
だが、ひとつだけ分かったことがあった。
この子は、本物のてんっさいだということだ。
「むぎゅ。」
親ぱちゅりーは、そっと子ぱちゅりーを抱きしめた。
長い髪の毛で顔を撫で、すりすりをしてやる。
「ぱちゅはほんとにいいこね。おとうさんもよろこんでるのだわ。」
「むきゅきゅ。お母さん、苦しいのだわ。」
その夜、母ぱちゅりーは、花の蜜とムカデでお祝いをした。
「むきゅん。何のお祝いなのか分からないのだわ。」
こういうところには、てんで疎い子ぱちゅりーである。
だが、そんな彼女も、母親の喜んでいる姿を見ると、
うっとおしい湿気など、吹き飛んでしまうのだった。
7月。晴れ渡った夏空の下で、ぱちゅ親子は狩りに精を出していた。
他の
ゆっくりたちも、家族連れであちこち飛び回っていた。
目立つのはまりさ種とちぇん種だが、れいむ種もちらほら見かける。
この時期になると、春に産まれた子どもたちもすっかり大きくなり、
子育てに手間がかからなくなるのだ。
子
ゆっくりたちは、親の狩りに同行し、生きるために必要な知識と技術を学ぶ。
父ぱちゅりーの世話をしていたためか、母ぱちゅりーは狩りが上手かった。
上手いと言っても、ぱちゅ種にしては、という条件付きだが。
それでも自分たちの食糧を集めるのには、一度も困ったことがない。
頭を使って山菜の群生地を探したり、虫の巣を見つけたりして、
体力任せにうろうろするまりさたちよりも、効率がよいくらいである。
それと対照的なのが、子ぱちゅりーであった。
すっかり大人になったというのに、自力で虫を捕まえることができない。
ぴょんぴょんと後を追っては、石に躓いて転んでしまう。
「むきゅん!虫さん待つのだわ!むぎゅ!」
今日も今日とて、何度目か分からない盛大な転び方をする子ぱちゅりー。
「むきゅん。ちょっときゅうけいするのだわ。」
「むきゅん…。」
いくら頭がいいとは言え、実践は別物である。
動植物に関する知識は完璧なのだが、動かないもの以外には応用がきかなかった。
とはいえ、親ぱちゅりーも、娘の鈍重さをそれほど気にはしていなかった。
欲張りさえしなければ、花や草、木の実だけでも生きていけるからである。
特に、この子ぱちゅりーほどの知識があれば、誤って毒草を口にすることもなく、
いろんな場所で食べ物を探すことができるだろう。
ただ、ごちそうのムカデさんを食べられないことだけは、不憫に思っていた。
ムカデさんは、本当に美味しいのだ。
「おひるごはんにするのだわ。」
「むきゅん。今日はお花さんの蜜を呑むのだわ。」
子ぱちゅりーは、自分で摘んだ花の蜜をちゅーちゅーと吸い、
親ぱちゅりーは、自分で穫った毛虫をむーしゃむーしゃする。
交換はしない。
それは、子ぱちゅりーのためにならないからだ。
毛虫を口一杯に頬張りながら、母ぱちゅりーは子ぱちゅりーを盗み見る。
子ぱちゅりーの顔は最近痩せており、どうも元気が無い。
娘が理由を語ることはなかったが、母ぱちゅりーには分かっていた。
友達ができないのである。
母ぱちゅりーは、子ぱちゅりーの偉大さを理解していた。
ただし、何となくスゴい、という意味でだった。
子ぱちゅりーは毎日「まどうしょのかいどく」に取り組んでいたが、
それを横目で見る母ぱちゅりーには、娘が何をしているのか見当もつかないことが多い。
ぱちゅ種の、しかも比較的優秀な個体ですらそうなのだ。
他の
ゆっくりがどういう反応を示すかは、火を見るより明らかである。
子ぱちゅりーは、「かわりもののぐず」とみなされていた。
「むきゅん。美味しかったのだわ。」
「むきゅん。ちょっとおひるねしましょう。」
ぱちゅりー親子は、近場にある老木へと向かった。
その根元には、
ゆっくりが寝るのにちょうどいい穴蔵がある。
春にそれを見つけた2匹は、草や苔でその穴を塞ぎ、ときどき別荘代わりに使っていた。
親子が薄暗い穴に身を隠すと、ひんやりとした土と空気に心が休まる。
「むきゅん。ごくらくなのだわ。」
「ここは太陽さんが当たらないから、昼間も涼しいのだわ。」
8月。ゆん生の中で最も楽しい季節がやってきた。
子どもたちはみな成長し、あちらこちらに家族連れの
ゆっくりがあふれ返る。
おうたを歌うれいむ一家、どろんこになりながら遊ぶまりさ一家、
わかるよーと言いながら鬼ごっこをするちぇん一家、
そんな中でも、とかいてきな慎みを失わないありす一家。
ぱちゅ一家は、そのいずれにも与することなく、自分たちの夏を
ゆっくり楽しんでいた。
そんなある日のこと。
「お母さん、話があるのだわ。」
真剣な顔付きで、娘が口を開いた。
母ぱちゅりーも、自然と居住まいを正す。
「むきゅん。どうしたの。」
「ぱちゅは、河原に行きたいのだわ。」
ついにこの日が来てしまった。
母ぱちゅりーは、心の中でそう思った。
8月になると、人間の親子連れが、近くの河原に集まって来る。
この群れの
ゆっくりなら、誰でも知っていることだ。
だから、この時期、川に行くことは禁じられていた。
それでも、母ぱちゅりーには、娘の考えが手に取るように分かった。
にんげんさんを見てみたい、と。
「にんげんさんにあいたいのね。」
「むきゅん。ぱちゅは、人間さんを見たいのだわ。会うんじゃないのだわ。」
「それはおなじことなのだわ。」
「同じではないのだわ。遠くから見るだけで、お話はしないのだわ。」
「みんなさいしょはそういうのだわ。でも、おはなししたくなるのだわ。」
人間は、
ゆっくりにとって、親しくもあり危険でもある、そんな存在だ。
同じ言葉を話す別々の種族。
違いは多々あれど、コミュニケーション手段が同じだという事実は、
人間にとっても
ゆっくりにとっても非常に魅力的である。
だからこそ、人間は
ゆっくりに、
ゆっくりは人間に近付いて行く。
やはり駄目か。
子ぱちゅりーは、心の中で落胆した。
「あなたがいきたいのなら、いくといいのだわ。」
「むきゅん!本当!?」
意外な母の言葉に、思わず飛び上がってしまう子ぱちゅりー。
しかし、すぐに冷静さを取戻した。
おそらく、何か注文をつけてくるだろう。
子ぱちゅりーは、母親の言葉を待った。
「どうしたのだわ。いかないのかしら。」
「むきゅ…本当に行っていいのかしら…。」
「すきにするといいのだわ。」
母ぱちゅりーは、それ以上何も言わなかった。
彼女は、子ぱちゅりーの予想とは全く違う態度で、娘の意志を尊重したのである。
すると逆に不安になってしまうのが、
ゆっくり心というもの。
子ぱちゅりーは、母が自分のことを心配してくれていないのではと思った。
そんな娘の不安を察した母ぱちゅりーは、
ゆっくりと話を続ける。
「むきゅん。ぱちゅはおかあさんをこえてしまったのだわ。
おかあさんは、もうぱちゅのかんがえがよくわからないのだわ。」
「むきゅ!?」
ショックだった。
冷たい群れの中で、唯一の理解者だと思っていた母。
その母親が、自分のことをもはや理解できないと言うのである。
子ぱちゅりーの目がうるむ。
「ないちゃだめなのだわ。おかあさんは、ぱちゅがきらいじゃないのだわ。」
母ぱちゅりーは、娘を髪の毛で優しく包んでやる。
「おかあさん、わからないことには、さんせいもはんたいもできないのだわ。
だから、ぱちゅがやりたいようにやればいいのだわ。ぱちゅのかんがえは、
きっとおかあさんよりもただしいのだわ。」
「むきゅ…お母さん…。」
その夜、2匹は久しぶりに一緒のお布団で寝た。
優しい母の温もりを感じながら、子ぱちゅりーは明日の冒険に胸をはずませ、
なかなか寝付くことができなかった。
これまでに書いた作品
ダスキユのある風景(前編)
ダスキユのある風景(中編)
ダスキユのある風景(後編)
英雄の条件
ふわふわと壊れゆく家族
♂れいむを探して
乞食れいむのおうた
最終更新:2022年01月31日 03:16