ゆっくりいじめ系659 ゆっくり大学虐待学部


※虐待というよりギャグ……?
※オリ設定多し。




ゆっくり大学虐待学部』


 教室の扉が開くと、ゆったりとした歩調で老教授とその助手が入室した。
 老教授の姿を見るや、室内の学生は途端におしゃべりをやめて、教室前方へと視線を集める。
 老教授が教壇に立つのと、講義開始のチャイムが鳴るのはほぼ同時であった。

 ここはゆっくり大学。
 ゆっくりを愛でる者、ゆっくりを研究対象と見る者、そしてゆっくりを虐待したい者。
 志の違いはあれど、ゆっくりに対する並々ならぬ感情を抱く者達が、知識と技術を身につけるべく、日々研鑽する学び舎である。

 老教授が本日のレジュメを配布する。そのプリントには、「ゆっくり虐待概論Ⅰ ②四種類の虐待」と題名が書かれていた。

「えー、本日は主だった虐待の説明を行ないます。虐待は、おおまかに四種類に類型化され……」

 しわがれた声で説明しながら、黒板に板書していく老教授。
 筆圧が弱いのか、書かれる文字は薄く不鮮明で、どこか頼りない。

「虐待の類型としては、身体的虐待、心理的虐待、ネグレクト、そして性的虐待があります。ではまず身体的虐待から……」

 傍らに控えていた助手がさっと動いた。台車に乗せられた1m四方の透明な箱に手を入れる。
 中には十数匹のゆっくりが入れられており、助手が掴み出したのは、バレーボールサイズのゆっくりれいむであった。
 助手がれいむと鉈を教授に手渡す。

「身体的虐待とは、文字通り身体的に虐待を行うことです。シンプルである分、そのバリエーションは豊富です」

 なにやら騒ぐれいむを教卓に押し付け、無理矢理黙らせながら、教授は説明を続けた。

「身体的虐待を行なう上で、最も注意しなければならないのが、殺してはならないということです。
 みなさんが行うべきは虐待であり、虐殺ではありません。
 もちろん、虐待の果てに殺すことは一向に構いませんが、即死……即座に死なせるようなことがあってはいけません。
 日本には古来より寸止めの美学というものがあります。
 全裸より半裸、ポロリよりもチラリ。無論、私も着衣エロの信奉者であり、特に裸Yシャツにニーソックスの組み合わせが……と、失礼。話が脱線しました。
 ともあれ、ミニスカートとニーソックスの間の絶対領域に萌えを見出すもののあはれの心は、虐待魂にも脈々と受け継がれております」

 老教授の説明を説明に耳を傾けながら学生達は真剣にノートやレジュメにメモを取っていく。

「身体的虐待の詳しい説明は、レジュメに書いておいた参考文献を元に各自学習しておいて下さい」

 レジュメ末部の参考文献一覧には、「八意永琳、『絶対やりたい、ゆっくり虐待』、幻想書房、2008」と書かれている。

「虐待の過程では、そう簡単に殺してはいけません。生かさず殺さず、じっくりと徹底的に嬲り尽くし、体の芯まで虐待できるような方法を選びましょう。例えば……」

 鉈を持つ老教授の手が一瞬、かき消えると共に、「トン」という小さな音が教室内に響いた。
 教室内の全ての学生は、一体何が起きたのか分からなかっただろう。
 ただ一人、一部始終を目に焼きつくさんと目をこらしていた助手だけが、戦慄と共に理解していた。
 老教授は、何事もなかったように、教卓上の霊夢を左右に開いて見せた。
 教室にどよめきが広がる。ここでようやく学生は理解した。
 老教授が、鉈を使い、恐るべき速さで一刀両断したのだ。あの小さな音は、鉈が教卓に接触した時の音だったのだろう。

「ゆっくりは、このように切断してしまいますと、即死してしまいます。切る時は場所を考えて切りましょう」

 助手が、二匹目のゆっくりれいむを取り出して、教授に手渡した。

「頬や頭の一部を狙うのがセオリーです。基本は、餡子が一度に大量に失われないようにすることです」

 学生に向かって説明しながら、手元のれいむを全く見ずに、次々と鉈で頬や頭を切断していく。
 薄皮とわずかな餡子のみをかすりとっていくその洗練された鉈使いに、教室中の学生が息を飲んだ。
 室内の誰もが、「ゆ、ゆ、ゆっ!」と叫ぶれいむのことは気にもとめていなかった。

「しかし、こうしたところでゆっくりにはさほど苦痛を味わせることはできません。真の虐待はこの後です」

 ここでようやく教授はれいむに目を向けた。
 手元のれいむは苦痛に顔を歪め、涙ながらに抗議をしている。

「い゛だい゛よお゛っっっっ!!! れ゛い゛む゛になんてこ゛と゛ずるのお゛お゛っっ!?」

 教授の口元が釣り上がった。

「うっせぇ! 腐れ饅頭がっ!!!」

 咆哮と共に、教授の五指が露になったれいむの餡子に深く突き刺さる。

「い゛ぎい゛いいっっっっっ!!??」

 激痛に目は血走り、全身が小刻みに痙攣を繰り返す。
 れいむのその様子に教授の心が昂ぶる。

「ここか~~? ここがいいのか~? んんっっ!?」
「ひぐっ、あぎゃ、げっ、ごっ……!」

 突き刺した指で、れいむの餡子を内部からぐちゃぐちゃにかき回す。
 まるで指揮者のタクトに従う楽団のように、教授の指の動きに合わせてれいむが絶叫を上げ続けた。
 そして一際大きくぶるっと体を震わせると、苦悶の表情を顔にはりつけたまま、れいむは絶命した。

「……と、このように、餡子に直接刺激を与えることが、ゆっくりに苦痛を与える最も効果的な方法であります。
 今回は時間もないのであっさり殺しましたが、その気になれば何時間でもいたぶることが可能です」

 助手から渡された手ぬぐいで手を拭きながら、落ち着いた様子で教授が説明を行なう。

「続いて針や釘などを用いた虐待の例を紹介しましょう」

 助手が、三匹目のれいむ、束になった針、はさみを手渡した。

「ゆっくりは、内部の餡子を大量に失うことで死に至りますが、度を過ぎる激痛によるショック死も可能です。さきほどのように」

 ここで一人の学生が手を挙げた。

「質問です」
「どうぞ」
「度を過ぎる激痛とおっしゃいましたが、具体的にはどの程度の苦痛を与えれば死ぬのですか?」
「痛みを数値化して定量的に比較することは不可能ですが、大まかな目安として、内部中枢の餡子を傷つけなければ、
 まずショック死はしないと考えてよいでしょう」
「中枢の餡子なんてものがあるのですか?」
「そうです。それが、他の動物における脳の機能を担っているのかはまだ分かっておりません。
 しかし、苦痛に対するある種の急所となっており、その部位に対する刺激には非常に弱いことは明らかになっています」
「……なるほど。ありがとうございました」
「ちなみに、餡子を大量に失う、中枢の餡子が傷つく以外に、温度上昇による死もあります。
 恐らく、餡子の組成が変化することが死につながるのでしょう」

 教授は他に質問がないか確認すると、講義の続きに入った。

「針や釘を刺すことで苦痛を与えるのも、身体的虐待の中では比較的ポピュラーな部類に入るでしょう。
 餡子を外に漏らさず、中枢の餡子を傷つけなければ、手軽に半永久的な苦痛をゆっくりに与えることができますから」

 と言って、れいむの頭に針を刺した。 

「いたいっ! なにするのおじさん! これじゃゆっくりできないよ!」

 れいむの文句を無視してさらに説明を続ける。

「実は、ただ針一本を刺すだけでは、それほど苦痛を与えることはできません。そこで一工夫」

 教授の目配せに従い、助手がれいむの頬を両手で圧迫し、固定した。
 れいむが動けなくなったことを確認すると、教授はれいむの右のまぶたをつかむと、はさみで切り取っていった。
 本来ならばここでれいむの絶叫が聞こえるのだが、助手のせいで口は動かせない。
 しかし、教授の目に映るれいむの瞳は、確かに激痛と、教授に対する怒りと憎しみを訴えていた。
 もちろん、そんなそよ風のような悪意では、百戦錬磨の教授を動じさせることなどできない。
 れいむの訴えなどには意も介さず、左のまぶたも切り取った。

「ゆっくりにとっても目は急所です。そこで、刺すなら目を刺しましょう。
 もちろん、刺しやすくするために、事前にまぶたを切るのは忘れずに。では早速……」

 助手が、れいむへの圧迫を加減した。もちろん、れいむの叫び声を聞こえるようにするためである。

「おじ……「バルス」いぎゃあああっっ!! め゛がっ、れいむ゛のめ゛がぁぁぁっっ!!」

 教授がれいむの右目にぷすりと針を刺した。

「目を攻撃するときは、『バルス』の掛け声は必須です」

 そう言うと、教授は次々とれいむの眼球に針を突き刺していった。

「バルス」
「ひぎゃっ……!!」
「バルス」
「い゛っっ!!」
「バルス」
「み゛ゃっぁ……!」
「バルス、バルス、バルス、バルスバルスバルスバルスバルスバルスバルスバルスバルスゥゥゥ!!」

 興が乗ってきた教授の両手が、常人では不可視の速度で動き続ける。
 途切れることなく次々と針が突き刺される激痛に、れいむが心からの絶叫を上げた。

「いじゃい、いじゃい、いじゃぁぁーいっ!! れいむ゛のめ゛、れいむ゛のめ゛ぇぇっっ!!! ……ふぐっ」

 頃合を見て、助手がれいむの口に詰め物を入れて黙らせた。
 そして、学生達によく見えるよう、れいむを頭上に掲げる。
 すでにれいむの両目には、おびただしいほど無数の針がびっしりと突き刺さっており、まるで眼球からビームが発射されているようであった。
 その状態でぷるぷると体を震わせるれいむに、思わず何人かの学生が失笑の声を漏らした。

「当然この程度ではゆっくりは死にません。この状態で放置しておけば、永続的な苦痛を味わせることができるでしょう。
 が、いつかはこの痛みにも慣れてしまうかもしれません。その時は……」

 教授の手が、れいむの眼球に突き刺さっている針の束へと伸びる。
 針の束を掴むと、眼球ごとそれをぐっと内部に押し込んだ。さらにぐりぐりと回し、内部の餡子をかき混ぜる。

「……………………っっっっ!!!!!」

 悲鳴を上げられないれいむは、全身を震わせる不恰好なダンスで、苦痛を表現する。

「こうした一連の方法は、八意名誉教授の著作に書かれております。各自参考にしつつ、独創的な虐待方法を考案・実践していって下さい。
 では続いて、心理的虐待について」

 瀕死のれいむを助手へと手渡し、次の講義内容へと入った。

「みなさんもご存知のように、ゆっくりは基本的に⑨です。
 ですが、生意気にも身分不相応なプライドや大切なものを持っており、そうしたウィークポイントを木っ端微塵に打ち砕いてやることが、心理的虐待の醍醐味です。
 心理的虐待を行なう上でのポイントは、ゆっくりが、どのようなウィークポイントを持っているのかを見極めることです。例えば……」

 助手が、透明な箱から一匹のゆっくりを取り出した。今度はれいむ種ではなくまりさ種である。
 透明な箱から取り出されたゆっくりまりさは、すぐさま教授に怒りの声をぶちまけた。

「どうしてまりさたちにこんなひどいことするの?! ゆっくりあやまって、まりさたちをおそとにだしてよね!」

 即座に助手がまりさの口を塞ぐと、教授が説明を始めた。

「透明な箱に入っているゆっくり達は、全て同じ群れにいたゆっくりです。そしてこのまりさは、その群れのリーダーです。
 ゆっくりまりさといえば、ずる賢く傲慢な上、平気で仲間を見捨てるという邪悪極まりないゆっくりですが、
 稀に、このまりさのように、正義感溢れる個体も存在します。
 仲間を助けるためには自分の命も危険にさらす、強く勇敢なゆっくり。だからこそ……」

 教授の瞳に、まるで肉食獣のように剣呑で獰猛な光が薄っすらと灯る。

「いたぶりがいがある、というものです」

 ここで助手がまりさの口から手を離すと、再びまりさが猛抗議する。

「おじさん! なにいってるかわからないけど、まりさはこのむれのりーだーなんだからね! 
 まりさたちをおそとにださないと、まりさがおじさんをひどいめにあわせるよ!」
「みんなを外に出してほしいのかい?」
「あたりまえだよ!」
「じゃあ、おじさんと一つ賭けをしないかい? その賭けに勝ったら、みんな外に出してあげよう」
「ふふん! まりさはつよいんだからね! どんなかけでもぜったいかつよ!」

 教室中の学生は全員思った。こいつ⑨だ、と。賭けの内容を知らずに承諾するなど、普通はありえない。
 しかし、学生達は、皆同じ結論に達して納得する。
 (まぁ、ゆっくりだし)
 学生達がそんなことを考えている傍ら、助手が賭けに使うであろう、道具を取り出した。
 透明な箱と同じ材質でできていると思われる、といのような物体。長さは約1mほどであり、成体のゆっくりが通れる程度の広さがある。
 特徴的なのは、その床面であった。
 両端の床面は平らになっているのに対し、その途中、平らな面と平らな面の間は、びっしりと棘で覆われているのだ。
 その奇怪な道具を怪訝な目で見るまりさに対し、教授が賭けの説明をする。

「君には、この床の端から端まで歩いて、自分の帽子を取り返してもらおう。端から端まで歩いて、だ」

 そう言うと、まりさの帽子――ゆっくりが自分の命よりも大切にしているという帽子――を奪った。

「あ゛あ゛あ゛ーーーー?! まりさのおぼうしーーーーー!! かえじでーーー!」

 怒りと悲しみに満ちた声を出すまりさ。
 ゆっくりからしてみれば、これだけでも十分心理的虐待になるのだが、当然、それだけで虐待が終わるはずもない。
 まりさの悲痛な声をBGMに、教授はまりさから奪った帽子をといの一端においた。
 そして、帽子の頭に火をつける。

「じゃあ、まりさ。この床を歩いて帽子を取り返すんだ。制限時間は……帽子が焼けるまでだ」
「あ゛ーーーー! ぼうじ、ぼうじがぁーーーー!」

 わめき散らすまりさを掴み上げると、といの端に置いた。
 まりさは、メラメラと燃えながら煙を上げる帽子に向かって一直線に向かっていった。
 今から渡ろうとする床が、どのような構造をしているのかも忘れて。

「い゛だっっ!!」

 体の下部から伝わる痛みに驚き、慌ててといの壁面を飛び越えるまりさ。
 その様子に穏やかな笑みを浮かべた教授が、まりさの耳元でささやく。

「駄目じゃないか。ちゃんと向こうまで渡らないと。ああ、それと、もし帽子を取り返せなかったら罰として……」

 透明な箱の中から、一番体の小さな赤ちゃんまりさを取り出す。
 そして、まりさの目の前であっけなく握りつぶした。

「あ゛ーーーー! ま゛り゛ざのあか゛じゃんーーーーー!!!」
「こうして、群れの全員を殺してしまうからね」
「あ゛あ゛あ゛っっ!?」

 透明な箱に入っている全てのゆっくりが声を上げた。

「ひどいよっ!」
「なんでぇっ!?」

 もちろんまりさも黙ってはいない。
 自分の帽子と、群れの仲間。
 2つの大切なものを人質に取られ、まりさが涙を流しながら叫んだ。

「どうじでごんなごとするのぉぉっっ!? ひどいおじざんはいますぐじねぇっ! ゆっぐりじねぇぇっっ!!」
「そんなこと言ってる間に、ほら、帽子が焼けてしまうよ?」
「あ゛あ゛あ゛ーーーー!!」

 急いでまりさは、といを渡ろうとした。が、何度挑戦しても、棘の痛みに耐え切れずにといから逃げ出してしまう。
 透明の箱からまりさを心配そうに見ながら応援していたゆっくり達だが、しだいに、その声はまりさを罵倒するものへと代わって言った。

「どうしてそんなところもわたれないの!?」
「わたれなかったられいむたちはゆっくりできなくなるんだよ!?」
「なさけないまりさはゆっくりしねっ!!」

 懸命に頑張る自分に対し、なぜこんな言葉が投げかけられのか。
 理不尽極まりない仕打ちに涙しながら、それでも帽子と仲間を守るために、何度も棘の床にまりさは挑み続けた。
 すでにまりさの体はズタズタに引き裂かれており、餡子が徐々に漏れ出している。
 だが、それが幸いとなった。餡子が棘にまとわりついているため、しだいに棘の痛みがやわらいできたのだ。
 そして、何度目かの挑戦の果てに、ついにまりさは帽子にまでたどり着いた。

「ゆ゛ぅぅぅ……」

 しかし、ここでまた難問が待ち構えていた。燃え盛る帽子の火をどうすれば消せるのか。
 必死に餡子脳を働かせても、名案が浮かばない。
 口で咥えて何度も床に叩きつければ消せるかもしれないが、燃える帽子を咥えることなどできはしない。
 ゆっくりお得意のボディプレスも、体が傷ついたこの状態でやれば自分の命が危うい。

「ほら、どうするんだい? もうほとんど燃え尽きているよ?」
「ゆ゛ぐぅぅぅ…………」

 苦悩するまりさ。しかし悩む時間はもうない。


「はやくぼうしをとりかえしてね!」
「はやくはやくぅ!!」
「まりさのばかぁ! ゆっくりしてたられいむたちはゆっくりできなくなるんだよ!?」

 透明な箱から聞こえてくるのは、まりさの苦悩など構いもしない言葉ばかり。
 身勝手な言葉に急かされ、ついにまりさは乾坤一擲の賭けに出た。飛び上がって、帽子の上にのしかかる。
 だが、

「あ゛あ゛づいぃぃぃっっっ!!」

 まりさの予想以上に火は熱かった。それになにより、餡子が直接火で炙られるのである。
 ゆっくりにとってそれは一瞬でも我慢できるものではなかった。
 あまりの熱さと痛みに、まりさはゴロゴロと床を転がる。棘のついた床の上を。

「いぎゃあああっっっ!!」

 痛みから逃れるために転がったのに、そこで待ち受けていたのはさらなる苦痛であった。
 もはやまりさに許されるのは、全身を棘によって傷つけられながら、わけもわからず転がるばかり。
 苦笑を浮かべた教授が、まりさをといの外へと出してやる。

「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ……」

 もうまりさは限界であった。全身は切り傷だらけ。一部は火傷も負っている。
 だが、それでも立ち上がらなければならない。
 帽子のため。
 仲間のため。
 それはつまりは自身の誇りのためであった。
 傷ついた体を無理矢理起こす。
 そして見た。

「……ゆっ……?」

 あるべきはずの物がない。
 自分が必死に守ろうとした、命よりも大切な物が。
 それが何を意味しているのか。まりさの餡子脳が理解する前に、教授がささやく。

「残念。帽子、燃えちゃったね」
「――――ゆ゛ぅぅぅぅぅっっっっっーーーーーーーー!!!!」

 まりさの絶叫がこだました。
 響く絶望の慟哭は、もちろんこの場の人間にとっては心地よい調べでしかない。
 絶望のどん底に落ちたまりさを、さらなる絶望へと誘うべく、教授が小さな声でつぶやいた。

「それじゃ、約束通り、群れのみんなには死んでもらおうか」
「……っ!」

 その言葉にまりさの体が反応した。
 そうだ、まだ自分には仲間がいる。例え帽子は守れなくても、仲間だけは守り通さなければならない。
 まりさは恥も外聞もなく、教授に懇願した。

「……お、おねがいです……。まりさはどうなってもいいから、みんなはたすけてあげて……」

 ここで自分は殺される。だが、それで仲間を守れる。そして自身の誇りを守れる。
 まりさは、ゆっくりにしては非常にめずらしい、誇り高きゆっくりであった。

「そうか。そんなに群れのみんなが大切かい?」

 だから、

「……たいせつです……」

 そんなまりさだからこそ、

「でも、群れのみんなはまりさのことをどう思っているかな?」

 虐待のしがいがあるのだ。

「…………ゆ?…………」

 教授の言葉に、ゆっくりと仲間が待つ透明な箱へと視線を向けた。
 まりさの目が大きく見開かれた。
 そしてこぼれる大粒の涙。
 まりさの目に映ったのは、慰めるでもなく、同情するでもなく、奮闘に敬意をはらうでもなく、憤怒と憎悪に満ちた目で自分を睨み付ける仲間の姿であった。

「まりさのばかぁっ!」
「もうまりさとはゆっくりできないよ!」
「じねぇっ! じねぇぇっっ!!」
「なさけないまりさなんていらないよ!」
「れいむのかわりにまりさがしねぇっ!!」

 罵詈雑言の嵐がまりさの耳に届いた。
 だが、もうまりさはその言葉の意味を理解することはできないだろう。
 まりさは仲間を失った。それも最悪の形で。
 帽子と仲間。その二つを同時に失ったまりさの瞳には、すでに光は灯っていない。
 絶望のさらなる底の絶望に心を蝕まれ、まりさは生きながらに死を迎えた。
 教授はその様子に満足げな笑みを浮かべると、学生へと体を向けた。

「このように、心理的虐待を行うときは、まず相手の心理的な弱点を探し、そこを徹底的にえぐるのです。
 そのためには、事前の入念な調査が必要になるでしょう。
 なお、大雑把に言えば、ゆっくりが持ちやすいプライドといえば、今回のような仲間意識の他に、自分自身の強さや容姿などの自惚れなどがあります。
 もちろん、ゆっくり全般の弱点である飾りを攻めるのはセオリー中のセオリーです」

 そう説明する間に、助手が生ける屍と化したまりさを片付けていく。
 もちろん、殺したりなどはしない。後できちんと元の巣へと返すのだ。

「さて、続いてはネグレクトです。
 ネグレクトとは、育児放棄のことであり、人間に対しては、食事を与えない、風呂に入れない、などが挙げられます。
 ゆっくりに対しては……、みなさん、お分かりですね?」

 そこで助手が用意するのは、おなじみ、透明な箱である。サイズは、ちょうど成体ゆっくり一匹が入るほど。

「ゆっくりを箱の中に入れ、放置する。これが基本でしょう」

 そう言って教授は、さきほどまりさを罵倒していたゆっくりの一匹を箱の中に入れた。

「……ゆゆっ!? なにするのおじさん! おじさんとはゆっくりできないよ! はやくここからだしてぶぎゅっ!?」

 騒ぐゆっくりれいむの頭上に、無言で拳を落として黙らせる教授。

「ただし、ただ箱の中に入れているだけでは、あまり面白みがありません。
 様々な工夫を施し、よりゆっくりがゆっくりできない環境にして苦しめてあげましょう。
 なお、ゆっくりできない透明な箱の例を、各自考えてきて下さい。次週までの課題とします」

 「えー?」と学生達から声が漏れるのは、いつもの光景だ。

「参考までに、私の最近のお気に入りの方法を教えましょう。夏の暑い時期にぴったりの方法です」

 助手が、教授にスプレー缶を手渡した。
 箱の中のゆっくりを見つめる教授の瞳がギラリと光る。

「暖符「温暖化フェノメノン―Lunatic―」!!」

 教授はそう叫びながら、箱の中にスプレーの中身を放出した。 

「ゆゆゆっっっ!?」

 突如として箱の中に得体の知れない気体を注入され、れいむが驚きの声を上げた。
 だが、差し当たっては害がないことが分かると、すぐさま教授への罵倒を続けた。
 もちろん教授はそんな罵倒には耳を貸さない。わめくれいむを無視して説明をする。

「さて、今注入した気体は水蒸気、温室効果が最も高いといわれる気体です。
 この暑い夏、水蒸気がたっぷりと入ったこの箱の中は、相当な暑さになるでしょう。
 今日から明日まで、この箱は放置します。明日、中のゆっくりがどうなっているか観察して下さい。
 なお、Hardでは一酸化二窒素、Normalではメタン、Easyでは二酸化炭素を使います。
 ま、ゆっくり相手にLunatic以外を使うことはないのですが」

 「実験中 手を触れないで下さい」と書いた紙を貼って、助手が箱を窓際へと移した。

「最後に、性的虐待です。発情したゆっくりありすをけしかける方法が一般的ですが、すっきり寸前に行為を中断させるという方法もあります。
 さらには、ゆっくりに対し自ら直接HENTAI行為に及ぶ剛の者も存在します。
 みなさんが目指すのは虐待であり、決してHENTAIではありません……が、昔から虐待とHENTAIは紙一重と言われます。
 虐待の一環としてHENTAI行為に及ぶのも悪くはないでしょう」

 そう言うと、教授はおもむろにズボンのチャックを開けると、その隙間から、いきり立った剛直を取り出した。
 老体には似つかわしくない精気漲る逸物に、教室中が息を飲む中、

「やりませんか?」

 教授のその問いに、全学生が一斉に首を横に振った。

「そうですか。では、ゆっくりに相手してもらいましょう。私はゆっくりでも構わず食ってしまう男なので。もちろん、性的な意味でです」

 助手が、一匹のゆっくりありすを箱から取り出すと、激しい振動を加え始めた。

「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ……!」

 たちまち情欲に溺れ、だらしなく表情を緩めるありす。
 その様子を確認した助手が、箱の中から一匹のまりさを取り出した。

「ま゛ぁり゛ざぁーーー!!」

 まりさの姿を見るや否や、ありすはよだれをたらしながら襲い掛かった。

「やあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっ!! やめて、やめてねっ!」
「んほほほぉぉぉぉっっっっっ!!!! いやがるま゛り゛ざもがばい゛い゛い゛い゛ぃぃぃ!!!」

 ありすはまりさにのしかかり、激しく体をこすりつけると、絶頂への階段を駆け足で昇り始めた。
 まりさの都合などは一切構わない。
 ただ、己の欲望を満たすために、まりさを仮借なく攻め上げる。
 そして一分と経たずにすっきりする、その寸前に、

「……すっぎりぃぃ!???」

 助手の手によってありすの体は持ち上げられた。

「なにずるのぉぉ!? ありずのすっきりのじゃまをしないでねぇぇぇ!!」

 興奮状態で怒鳴り散らすありすに、教授が近づいた。

「すっきりしたいですか?」
「あ゛だりまえ゛でしょぉぉぉ!! い゛い゛がらはやくまりさとすっぎりさせでぇぇぇぇぇ!!!!」
「いいでしょう。すっきりさせてあげましょう。ただし……、相手はまりさではなく私ですがねっ!!!!!」
「……ふぐっっ!?」

 ありすの口を教授の怒張が貫くと同時に、殺人的なピストン運動が始まった。

「ふんっ、ふんっ、ふんっ、ふふふんっ、ふふふんっ、ふふふんっ!!!!」
「びゅ゛゛゛ーーーーーーーーーーーーっっっっっっっっ!!!???」

 上げるべきは悲鳴か抗議の声か。
 しかし、許容量以上のものをねじこまれたありすは、まともに声を発することもできない。
 無論、がっしりと教授に掴まれている以上、逃げ出すのは絶望的である。

「ふふふふふふふふふふふふふふふんんんんんんっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!! ……うっ!!」 

 暴虐の限りをつくしていた教授の先端が、ついにありすの口内にカスタードとは似て非なるものをぶちまけた。
 口内に収まりきれないほどの大量の粘液。口の端から少量こぼれた他は、ありすの体内へと侵入する。
 津波のように押し寄せる白濁液に、ありす体内のカスタードは奥へ奥へと押しやられ、そしてついに行き場を失ったカスタードが、 

「ゆ゛ぶっっっっっっっっっっっっっっ!!!」

 ありすの眼球を吹き飛ばし、眼孔から勢いよく噴出した。
 目から涙のようにカスタードをボトボトとこぼしながら、ありすは小刻みに痙攣を繰り返す。
 口から教授の分身が引き抜かれると、妙に流動性の高いカスタードをこぼした。

「……と、これが性的虐待の一例です。ここで一つ注意を。HENTAIに没頭するあまり、虐待を疎かにしてはいけません。
 単に陵辱するのではなく、心身ともに傷つけることを忘れないように。射精するにしても、後頭部を打ち抜くくらいの気概で望みましょう」

 その言葉を待っていたかのように、教室内に、チャイムが鳴り響いた。

「では、これで今日の講義を終わりにします。各自、課題を忘れないようにして下さい。それではまた次週に」





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最終更新:2008年09月14日 08:16
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