※舞台は何故かゆっくりが当然のように存在している外界です。
数年前に突如現れ、急速に社会に浸透していった(ような気のする)ゆっくりと呼ばれる謎の生物。
人間の生首が膨張したような容姿のそいつらは饅頭のクセに生きていたり、どこから来たのは全く不明だったりとあまりに謎が多すぎるゆっくり達。
が、目新しいものや珍しいものを好む人々はその「ゆっくりしていってね!」とか「ゆーっ!」などと珍妙な鳴き声をあげる未知の存在をあっさりと受け入れた。
そして俺はそんな不思議に満ちた生命体の研究や飼育用の商品の開発に携わっている“ゆっくりカンパニー”のしがない一社員だ。
現在、俺はゆっくりの条件反射に関する実験を行っている。
実験内容は恐ろしく古典的なものでパブロフの犬そのまんま。
餌を与える前に音を聞かせて、実験体に内蔵された遠隔操作できるライターを点火するときにも音を聞かせる。
この実験で使用するゆっくりは生まれたてのゆっくりれいむの赤ちゃんが4匹。
赤ゆっくりれいむAには餌を与えるときにも、点火する時にも何の前触れもなしにいきなりそれらの処置を施す。
赤ゆっくりれいむBには餌を与えるときには何の音も聞かせず、点火するときにだけ録音した親の「ゆっくりしていってね!」という鳴き声を聞かせる。
赤ゆっくりれいむCには餌を与えるときに「ゆっくりしていってね!」という録音した親の鳴き声を聞かせ、点火するときには何の前触れもなし。
赤ゆっくりれいむDには餌を与えるときにも、点火するときにも事前に親の鳴き声を聞かせる。
つまり、「ゆっくりしていってね!」という音声に対して条件付けを行うのがこの実験の目的だ。
【実験開始】
「ゆ~ゆゆ~、ゆぎゃっ!?」
仲間こそ居ないが遊具は十分に用意されている実験用のマジックミラーケージの中で機嫌良く遊んでいた赤れいむは俺が思いつきで点火した瞬間に短く悲鳴を上げた。
「ゆっぎゅりいいいいいい!ゆっぎゅりいいいいい!!」
突然、内側を火であぶられた赤れいむAの表情は苦痛と恐怖に歪んでいる。
「ゆううううう!ゆうううううう!」
大きな声で泣きじゃくり、跳ね回って助けを求めるが誰も助けになど来るはずがない。
「ゆううううう!ゆううう・・・」
痛みが引いたのか、それとも諦めたのかは定かではないし、この実験の趣旨とは関係がないので気にするつもりもないが、やがて泣くのを止めて再び遊び始めた。
しかし、親ゆっくりサイズのやわらかいボールに頬ずりしたり、滑り台から滑り降りたり、トランポリンに乗って跳ねたりしている様子に点火される前のような活発さはない。
「ゆー・・・ゆー・・・」
そんな見ているほうが虚しくなるような現実逃避じみた行動でも、30分も続けていれば遊びの楽しさが恐怖や孤独を慰めてくれるらしい。
「ゆ~、ゆ~ゆゆゆ~♪」
気がつけば内部を焼かれる前の元気さを取り戻していた。
それから1時間ほど1匹で遊んでいる赤れいむAを観察し、餌を与えてやる。
「ゆ!ゆっくり~!」
すると、お腹の空いていた赤れいむAは早速餌に飛びついた。
「む~ちゃむ~ちゃ、ちあわちぇ~!」
目に涙をためながら、本当に嬉しそうに餌を食べている。このタイミングで点火しようかと考えたが、変な条件付けが成立して食事をしなくなると都合が悪いので、それは次の食事に回すことにした。
10分ほどで餌を食べきった赤れいむAはしばらくその場でゆっくりしていたが、やがて眠くなったのかウトウトと舟をこぎ始めた。
そして、気がつけば「ゆぅ・・・ゆぅ・・・」と可愛らしい寝息を立てている。
が、食後の安眠は突然の痛みによって終わりを告げることになった。
「ゆうううううううう!?」
幸福を打ち砕く2度目の点火。唐突かつ理不尽な痛みに赤れいむAは思わず飛び跳ね、床を転げ回った。
「ゆぎゅううううううううう!ゆぎゅううううううううう!」
それから、さっきと同じようにじっと観察する。
「ゆぎゅううううううう!ゆうううううう!!ゆぅううう・・・」
先ほどより大分早く痛みから立ち直った赤れいむAは再び眠ろうとするが、なかなか寝付けない様子ですぐに目を覚ましてはぶらぶらとそこらじゅうを歩き回っていた。
恐らく、眠っているときにまた点火されることを恐れているのだろう。
幼い身で頼るものもいないたった1匹の世界に放り込まれた孤独なゆっくり。その様子を見かねた俺はケージの中に甘いチョコレートを放り込んだ。
「ゆぅ?・・・む~ちゃむ~ちゃ、ちあわちぇ~!」
赤れいむAは本当に幸せそうに口元が汚れるの気にせずチョコレートを頬張る。
その表情を眺めながら、俺は3度目の点火を試みた。
赤れいむBはすやすやと寝息を立てていた。しかし、そのことは実験に何の影響も及ぼさない。
『ゆっくりしていってね!』
「ゆっきゅりしちぇっちぇね!」
何故なら、ゆっくりにはこの言葉を聞かされると反射的に返事をしてしまうからだ。
その行動は本能の領域に突入しており、食事中でも、睡眠中でも、交尾中でも反応してしまう。
「・・・?・・・ゆぅ?」
突然響き渡った声の主を探す赤れいむB。その様子を確認したところですぐさま点火する。
「ゆぎょおおおおおおおおおおお!?」
さっきの赤れいむA同様に痛みで悶絶する赤れいむB。目からは涙がぼろぼろと零れ落ちていた。
「ゆうううううう!ゆうううううううう!!」
これまたさっきの赤れいむAと同じように転げまわりながら助けを求めるが、当然のように誰も助けてはくれない。
その光景を俺は無感動に眺めていた。
不思議とさっきほどの罪悪感も同情の念も湧き上がってこない。
「ゆっぎゅちいいいい・・・ゆうう・・・」
これまたさっきの赤れいむAと同じように落ち着き始めると、せわしなくそこらじゅうを歩き始めた。
「ゆー、ゆー・・・」
しかし、この実験は条件付けをするためのものだ。落ち着いてきた頃合いを見計らって、再びあの音声を再生する。
『ゆっくりしていってね!』
「ゆっくりしていってね!」
音声に対して反射的に返事したれいむが再び声の主を探そうときょろきょろ首を振り始める。
「ゆっぎゅぢいいいいいいいいい!ゆぎいいいいいいいい!」
それからきっちり5秒後、躊躇うことなく2度目の点火を行った。
「ゆっぎゅぢいいいいい!ゆぎぃいいいいいいい・・・・・・」
俺は淡々と観察を続ける。やはり、赤れいむA同様に2度目のほうが立ち直りが早かった。
たった2例に過ぎない。しかし、一度目は誰かの助けを期待していて、二度目はその期待がない立ち直りが早かったのだと思う。
次のCとDでは点火時間を調整して、一方がより大きな痛みでも同様の結果を得られるのか確認すべきだろう。
「ゆっぐ・・・ゆっぎゅりいいいいいい・・・」
そんなことを考えている間に赤れいむBは痛みから立ち直った。もっとも、まだ呼吸は荒いが。
呼吸が整い、落ち着くのを待って今度は何の前触れも無しに餌を与える。
その匂いをかぎつけた赤れいむBはすぐさま餌に飛びついた。
「ゆ!ゆ~!・・・・・・む~ちゃむ~ちゃ、ちあちぇ~!」
赤れいむAもそうだったが、本当に幸せそうに餌を食べている。食べ方が少々意地汚いが、それもまた愛嬌なのではないだろうか?
「ゆ!ゆっくり~!ゆゆゆ~~♪」
そうしてお腹の膨れた赤れいむBは楽しそうに歌い始めた。
俺はその決して上手くない歌にゆっくりと聞き惚れ、それが終わると同時にあの音声を流した。
『ゆっくりしていってね!』
「ゆっくりしていってね!・・・ゆうううう!?」
3度目の正体不明の声。赤れいむBが声の主を探すよりも先に怯えだしたことを確認した俺は、5秒後に3度目の点火をし、次のケージに向かった。
赤れいむCはケージの中で楽しそうに跳ね回っている。子ゆっくりサイズのボールがお気に入りらしく、その上に飛び乗っては、滑り落ちてを繰り返していた。
「ゆっゆゆ~♪ゆ~ん!ゆーっ!」
ポヨンっとボールに体当たりを仕掛けてはプニッと地面に着地する。実に可愛らしい。
俺は赤れいむCが跳躍した直後を見計らって、いきなり内蔵ライターを点火した。
「ゆっぎゅうううああああああああ!うううう!!ゆぎゃっ!?」
空中で突然の痛みに襲われた赤れいむCはボールにぶつかり、反動で弾き飛ばされて地面に叩きつけられた。
「ゆぎょううううううう・・・!ゆぎゅあああああ・・・!」
今までの赤れいむ2匹と違って床に叩きつけられた分のダメージがあるせいか、少しだけ口から餡子を吐き出してしまった。
しかし、致命傷には程遠いらしく、元気に地面をのたうち回っている。
「ゆううううう・・・ゆうううううううううう・・・」
それでもさっきの赤れいむたちと男歩同じくらいの時間であっさりと立ち直った。
「ゆぅ・・・」
とは言え、さすがに餡子を吐き出した分でぐったりしている。
このままでは次の点火の際に面倒なことになるかもしれないので、もう一つの実験も兼ねて例の音声を鳴らす。
『ゆっくりしていってね!』
「ゆっきゅりちちぇっちぇね!・・・ゆぅ?」
出所不明の声に困惑している赤れいむCのそばにさっと餌を落とす。
「ゆ・・・!む~ちゃ・・・むーちゃ・・・」
やはり吐血、もとい吐餡の分が効いているのだろうか。他の赤れいむより目に見えて食事のスピードが遅い。
「む~ちゃむ~ちゃ・・・ちあわちぇ~!」
それでも回復力が売りのゆっくりだ。存分に食事を堪能し終えたころには点火によって受けたダメージはすっかり消えてしまっていた。
そして、傷の癒えた赤れいむCは何をするでもなく地面に寝そべってごろごろと転がり始めた。
そこですかさず2度目の点火。非常にゆっくりしていた赤れいむCは突然の熱と痛みで飛び上がる。
「ゆうううううう!」
そして、これで6度目になる変わり映えのしない苦しむ姿を俺の前に晒した。
唯一つだけ違うことがあるとすれば、他の赤れいむたちの時にはすでに消えていたライターの炎が今もなお萌え続けていることくらいだろうか。
「ゆ゛き゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!?」
ざっと今までの3倍の点火時間。先ほどの点火とは比べ物にならないダメージを受けた赤れいむCは白目を剥いて床を転げまわっている。
口からは餡子と泡を吹き体中から妙に粘着質な液体が分泌されている。恐らく脂汗みたいなものだろう。
どうやらダメージが大きすぎたらしく、ぴくぴくと痙攣している。さすがに死なせるとあとあと問題になるので、蘇生のためにこっそりとオレンジジュースを飲ませた。
「ゆぅ・・・?う!?ゆっぎゅぢいいいいいい!」
意識は取り戻したがそれでもやはりまだ痛いらしい。またしても悲鳴を上げながら転がっている。
しかし、そのうち回復することは明らかなので赤れいむCの苦悶なんてお構いなしに再びあの音声を再生した。
『ゆっくりしていってね!』
「ゆっきゅりちちぇっちぇね!・・・ゆきぃいいいいい・・・!」
声の出所を探す余裕はさすがにないらしい。再び痛がりながら涙を流す。
が、餌を置くとのろのろと起き上がると、餌の元へと向かっていき、むしゃむしゃと食べ始めた。
「む~ちゃ、む~ちゃ・・・む~ちゃむ~ちゃ・・・ちあわちぇ~!」
ようやく食べ終わり、元気を取り戻したところで、もう一度あの音声を再生する。
『ゆっくりしていってね!』
「ゆっくりしていってね!」
その言葉の直後に誰かを探すのではなく、モノ欲しそうに辺りを見回す赤れいむCの姿が確認できた。
適当なお菓子をケージの中に放り込んで、赤れいむDのケージへと向かっていった。
このケージの中の赤れいむDに関してはとにかく『ゆっくりしていってね!』を聞かせなければ始まらない。
よって俺はそのケージの前に来た瞬間に中の赤れいむDの様子を確認することもせずに例の音声を再生させた。
『ゆっくりしていってね!』
「ゆっきゅりちぇっちぇね!・・・ゆぅ?」
ここまではほかの赤れいむと全く同じ展開だ。しかし、この後の展開はやや違う。
赤れいむDが返事してから5秒後に点火。ただし、通常の2倍の時間点火し続ける。
これ以上やりすぎると赤れいむCのときのように致命傷を与えかねないので、あくまで2倍程度に収めておいた。
「ゆぎゅいいいいいいいいいいいいいい!ゆぐうううううう!」
とはいえ、幼い身には十分すぎるダメージなのだろう。白目を剥いて必死に跳ね回っている。
「ゆぎょおおおおおおお!ゆぎょおおおおおおおおおおお!」
目からは涙がぼろぼろ零れ落ち、我を忘れて叫んでいるため口からは涎が垂れ流しになっている。
その様子を落ち着くまで観察し続ける。
落ち着くまでの時間は最初の2匹より若干長いような気もしたが、誤差の範囲内といった程度。
落ち着きくと、他の赤れいむ同様に弱りながらも逃避行動的な遊戯を始める。
滑り台で遊んだり、ボールとじゃれたりしているうちに徐々に心身ともに充実してきたらしく、やがて元気になった。
そこで二度目になる音声を聞かせる。
『ゆっくりしていってね!』
「ゆっきゅりちちぇっちぇね!・・・ゆぅ?」
またしても声の出所をきょろきょろと探している赤れいむDの近くにチョコレートを置く。
「ゆゆっ!ゆ~っ!」
これまた他の赤れいむと同じような反応を示し、元気良くチョコレートに飛びついた。
「む~ちゃむ~ちゃ、ちあわちぇ~!」
と、ここですかさず3度目の音声。
『ゆっくりしていってね!』
「ゆっきゅりちちぇっちぇね!・・・ゆぅ?」
5秒ほど赤れいむDが声の出所を探している様子を観察したところで2度目の点火。
「ゆぎぃいいいいいいいいいいいいい!ゆううううううううううう!」
どうやら白目を剥くのは危険信号だったらしい。他の赤れいむたちと同じ時間の点火ではその兆候は見られなかった。
と言っても、当然痛いものは痛いわけで。赤れいむDは呻きながら床を転げまわっている。
しかし、これまた他のゆっくりと大差ない時間で痛みから立ち直り、また遊び始めた。
立て込んでいるのでさっさと4回目。
『ゆっくりしていってね!』
「ゆっきゅりちちぇっちぇね!・・・ゆっ!?」
赤れいむDは明らかに警戒していた。怯えきった表情であたりの様子をせわしなく伺っている。
そうして警戒しているうちに俺が置いたお菓子の存在に気付き、元気良く食べ始めた。
で、食べ終えたところで5回目の音声再生。
『ゆっくりしていってね!』
「ゆっきゅりちちぇっちぇね!・・・ゆぅぅ?」
赤れいむDは喜ぶでもなく怯えるでもなく、その音にどういう意味づけをして良いのか分からず困惑していた。
それは他の赤れいむでは見られなかった反応だ。
俺はとっとと3度目の点火を行って、その場を後にした。
【1週間後】
いつ何時点火されるか分からない赤れいむAは他の赤れいむとは比較にならないほど衰弱していた。
点火回数は他の赤れいむと殆ど一緒だから肉体的にはさして他と変わりないはずなのだが、やはり常に痛みに怯えなければならない生活が堪えたのだろう。
しかし、それ以上に面白い発見があった。不思議なことに赤れいむAは滑り台を使わないどころか使おうともしないのだ。
理由は2度ほど滑り台で遊んでいるときに点火されたことがあるから。自分の中で勝手に条件付けを行っているらしい。
「ゆっきゅちーゆっきゅちー・・・」
弱々しく鳴きながらずるずると地べたを這いずる赤れいむA。
跳ねないのは跳ねているときに点火されて大怪我をしたことがあるからだ。
「ゆっきゅちちちゃいよー・・・」
虚勢を張って「ゆっくり」と鳴いていてもゆっくり出来ていないことは重々承知しているのだろう。
時々そんな悲しげな声が漏れる。
しかし、この赤れいむがゆっくりできる日は永遠に来ないだろう。
寝るときには、いつ痛みに襲われるか分からない恐怖で眠りが浅くなる。
食べるときも、食事中に点火されて窒息しかけた経験から急いで食べ物をかき込み、食べているときに点火された食材には怖くて口がつけられない。
遊ぶときにも、痛みを恐れで元気いっぱい跳ね回ることも滑り台で遊ぶことも、ボールと喧嘩することもできない。
・・・いつ痛みに襲われるかわからないことを学習してしまった赤れいむには自由と余裕がなかった。
「ゆっぐ・・・ゆぅううううう・・・」
そして、何の前触れもなしに泣き出す。赤れいむAは情緒不安定になってしまったようだ。
「ゆー!」
赤れいむBは殆ど鳴かなくなった。
少なくとも「ゆっくり」という言葉をあの音声が再生されたとき以外に口にすることはなくなっていた。
点火の際の痛みが「ゆっくりしていってね!」の直後に来ることを学習した結果だろう。
「ゆぅ!ゆぅ!」
しかし、それ以外の点では到って元気であった。
ボールにタックルして跳ね飛ばされたり、勢い良く滑り台から滑り降りてそのまま転がって行ったりと非常に楽しそうに遊んでいる。
表情も満面の笑みといった感じで、本当に楽しそうだ。
しかし、例の音声を再生すると・・・
『ゆっくりしていってね!』
「ゆっきゅりちていってね!・・・ゆぎいいいいいいいい!!?」
点火される前から気が狂ったんじゃないかと思ってしまうほど怯え始めてしまった。
きっと、赤れいむBは群れの中に放り込んだら“ゆっくりできないこ”として爪弾きに遭うだろう。
「ゆっくりしていってね!」
赤れいむCはその鳴き声をきっちりと習得していた。
この子の中では例の音声は美味しい餌やお菓子と結びついているのだから当然だろう。
「ゆっくり~!ゆっくり~!」
が、その元気さのわりには動きは非常に慎重で、あまり跳ねることをしない。
恐らく赤れいむAと同じように、いつやってくるか分からない痛みに警戒しているのだろう。
「ゆっくりしていってね!」
元気良く鳴きながら自分より一回りだけ大きいボールに頬ずりして遊んでいる。
もちろんどんなに元気な声を出していても跳ね回ったりする様子は一切見せない。
「ゆっくり!ゆっくち!」
それでもこんな風に元気でいられるのは「ゆっくりしていってね!」という言葉を心の支えにしているからだろうか?
もっともそれはある種の信仰に近いものであり、そんな高度な精神活動をゆっくりがするのかは少々疑わしいところだが。
そんなことを考えながら音声を再生した。
『ゆっくりしていってね!』
「ゆっくりしていってね!・・・ゆう~♪」
赤れいむCはその言葉が聞こえた瞬間、本当に嬉しそうに飛び跳ねた。
赤れいむDには少し変わった変化が見られた。
「ゆっくりしていってね!」という鳴き声をきちんと習得したという点は赤れいむCと変わらない。
しかし、その言葉を聞かされた時の反応が全く違っていた。
『ゆっくりしていってね!』という音声を聞かされた赤れいむDはその場でじっと固まって動かなくなる。
そして点火された場合、その直前にしていた行為をあまりしないようになる。
逆に餌を与えられた場合にはその直前にしていた行動を積極的に行うようになった。
つまり、音声を自分自身に注意を促すものとして認識したが、餌とも痛みとも結びつかなかったということだ。
そして点火された場合は自分が悪いことをしたから痛い目にあっていると考え、餌を与えられたときには良いことをしたと考えているらしい。
だから、あまり美味しくない餌を吐き捨てたときにあの音声を再生してみた。
『ゆっくりしていってね!』
「ゆっくりしていってね!・・・ゆ!」
その表情にはゆっくりらしからぬに緊張感があった。
3秒ほど様子を伺ってから、お仕置きの意味合いも兼ねて点火する。
「ゆぎゅううううううううううううう!ゆううううううううう!」
しばし苦しそうに転げまわるが散々味わって来た痛みであり、実験開始時よりは大分大きくなっていることもあってすぐに立ち直ると、むしゃむしゃとさっき吐き捨てた餌を食べ始めた。
【追加実験】
実験で使用した4匹を母親のいるケージに放り込んでみました。
「ゆ!れいむのあかちゃん!ゆっっくりしていってね!」
母れいむは1週間経ってなお赤れいむたちのことを気にかけていたらしく、非常に嬉しそうに挨拶をした。
「ゆっくちちちぇっちぇね!」
一度たりともその挨拶を聞いたことのない赤れいむAは舌足らずながらも本能に従って元気良く返事した。
「ゆっくちしていってね!・・・ゆぎいいいいいいいいいいいいいい!」
赤れいむBは母れいむから遠ざかり、ケージの隅で震えていた。
「ゆっくりしていってね!・・・ゆううう~!むしゃ!」
赤れいむCは満面の笑みを浮かべて母れいむに噛み付いた。
「ゆっくりしていってね!・・・ゆ!」
赤れいむDはキリッとした表情で固まっていた。
とりあえず、全員の内蔵ライターを点火しておいた。
【報告】
赤れいむDを見る限り、最も人間に従順なペットとしてゆっくりを調教するためにはとにかく痛めつけることが重要だと言えるでしょう。
---あとがき---
この実験は点火なしで餌だけを与えて条件付けを試みないとあんまり意味がありません。
あと、特定の行動をしたときにだけ点火する形での悪戯に対する条件付けも行わないと意味がありません。
まあ、ノリだけで考えたアホ実験なので細かいところは気にしないでください。
byゆっくりボールマン
最終更新:2008年09月14日 08:18