「一匹のゆっくりを捕まえてきた。外伝1」

※タイトルは前と同じですが、前作を読まなくても大丈夫です。
※ゆっくりの生態に独自設定があります
※執筆中の第二話用なので あんまり活用はされていません

一匹捕まえたテンプレ******************************************

  • ゆっくりは饅頭の形をした無尽蔵で簡易な構造の「妖精/妖怪」ではなくて
 餡子として食用できる「生物」として扱っています。
 それゆえサイズx比重x跳躍力に由来する相応の攻撃力があります。
 また普通の生物と同様に、怪我・病気に対して脆弱です。
 森に住む草食タイプは30cm 平原で狩りをする虫食タイプは50cmです
  • 基本的な交配は、ぺにまむによる餡子交換、茎・胎生型です。すりすりは前戯にしか使いません。
  • ぺにぺに、まむまむ、産道、排泄口は別々の器官で一部のものは通常形成されません。
  • しゃべり方と漢字の使用によって成長が把握できます。
 成体「ゆっくりしていってね!ゆっくりしないで ご飯を用意してね!」
 子供「ゆっくりしていってね!はやくれいむに ごはんをもってきてね!」
 赤子「ゆっくちしちぇいっちぇね!おにゃきゃ ちゅいちゃよ!ごひゃんちょーらいね!」
************************************************************

※後半に痛々しいシーンがあります、苦手な方は回れ右してください




~小さな命の誕生から お話は始まります~





【1.誕生】


 「「「ゆっくちしちぇいっちぇね!」」」

文字通り珠(たま)のような子供が細い茎からコロンコロンと誕生した
2.3cmほどしかない10個の玉ころは、れいむとまりさをミニチュアにしたような姿をしている
巣にあらかじめ敷き詰めて置いた藁の上で陽気にはしゃいでいる

 「ゆ~ れいむに似て とてもゆっくりしている赤ちゃんだぜ~」

母れいむに笑顔で語りかけるのは父親役である まりさだ

 「ゆぅ~ そうだね~ この子なんて まりさにそっくりで ゆっくりしてるよ~」

 「れいむは よくがんばったんだぜ! まりさはうれしいんだぜ!」

正直全部同じに見えるが、彼女達は天からの贈り物に涙している
この二匹は ごく普通に出会い ごく普通に結婚して それなりに子宝に恵まれた
とりとめもないゆっくりの番(つがい)だ
下膨れもなくころころした まん丸の赤ちゃん達に
巣の奥から15cmくらいの これまた れいむやまりさにそっくりな生き物が近寄ってきた

 「あかちゃんたち すごいゆっくりしているね! れいむが おねーちゃんだよ!」

 「まりさが いちばんうえの おねーさんだよ! かわいいあかちゃんたち まりさと ほっぺた すーりすーりしようね!」

 「ゆゆ!れいみゅが おねーしゃんと しゅりしゅり するりょ!」

 「すーりすーり しあわせー☆」

 「しゅーりしゅーり しあわせー☆」

どうやら この子沢山夫婦には既に子供がいたようで
新しくできた妹達に子れいむと子まりさが
すべすべなほっぺを 赤ちゃん達にくっつけて すーりすーりと親愛の挨拶をしていた

 「おちびちゃん達! お母さんにも 赤ちゃん見せてね! ほーらお母さんも すりすりしちゃうよ~」

芋の子を洗うような10匹の赤ちゃんと
二匹の子ゆっくりが ほっぺたをすりすりしあう場所に
大きいお母さんれいむが割り込んできた

 「まりしゃは おかーしゃんとも しゅーりしゅーりするりょ~!!」

 「ずりゅい!れいみゅが おきゃーしゃんと しゅりしゅりするんだよ!」

 「おちびちゃんたち すーりすーりすーりすーり~」

 「ゆひゃあ!おかーさん くすぐったいよ!」

 「ゆー おきゃーしゃんの しゅりしゅり ちょってもゆっくちできるりょ!」

父まりさは、最愛のれいむと子供達が
とてもゆっくりして楽しく戯れる姿に胸がいっぱいになっていた

幼い頃に両親をれみりゃに踊り食いされ
餓死した妹を涙ながら食して命を繋ぎ
森でふらんに襲われた時は、姉のれいむが身代わりになってくれた
時には狩りで大怪我をしたり
先に逝った親から教えてもらえることもできずに
口にしてまった毒草で生死をさまよった事もあった
たくさんいた姉妹も もう自分しか生き残っていない

姉妹のかけがえのない命が自分を助けてくれた
おうちを 両親を 姉妹を失った
まさか その自分が家族を持てるとは思わなかった

ゆっくりしよう
皆の分までゆっくりしよう

きっとお母さんも お姉ちゃんも そう願っているはず
ずっーーーーとゆっくりして ゆっくりしきったら
お母さん達に会おう

その後は 大きくなった子供達を ゆっくり眺めて過ごそう





 『さて感動の赤ちゃん誕生を 邪魔して悪いんだが…』




【2.介入】


 「ゆゆ!?おにーさんは誰?ここはまりさ達のゆっくりプレイスだよ!!!!!!」

子供達の笑顔に気を取られて、この生き物が近づいてくるのに気が付かなかった
幸い赤ちゃんは既に生まれている
もし巣から避難する事態になっても、茎を実らせたままなら れいむは跳ねる事ができなかった
しかし今なら生まれた赤ちゃんを五匹ずつ分担して
お口の中に隠していけば逃げ切ることができる

 「ゆ~?おにーしゃんは ゆっくち できるひちょ?」

 「ゆひゃあ!とってもおっきい いきものだよ!れいむ はじめてみたよ」

確かに大きい、れみりゃのように体に手足が生えており
その大きさは2ふらん 3ふらんはあるだろうか
子供達が興味を示して近寄ろうとしているのを 父まりさは体で制止した

 「おにいさんは ニンゲンだね?勝手に誰かのおうちに入っちゃいけないんだよ?そんな事もわからないの?馬鹿なの?」

 「まりさの言う通りだよ!ゆっくり見逃してあげるから 自分のおうちへ帰ってね!れいむは子育てで忙しいんだよ!」

威嚇としてぷくーと膨れる親を見て、何かの遊びだと思って子供達もぷくーっと し始めた
赤ちゃん達は 特に会話を気にせず姉妹同士ですりすりして遊んでいる
中には寝てしまっている赤ちゃんもいた

 『んー 赤ちゃんが生まれたばかりなのか…そいつは邪魔して悪かったな、すまん』

 「わかればいいんだよ!ゆっくり許してあげるから まりさ達に ご飯をくれるんだぜ!」

 「れいむのまりさは寛大だから 見逃してあげるってさ! ご飯を持ってきてくれたら 可愛い赤ちゃんを見せてあげても良いよ」

このニンゲンのお兄さんは"弱い"と父まりさは感じた
本物のニンゲンに直接話した事はないが群れの友達に聞いた話より
よっぽど物分りがよさそうな生き物だ
それに比べてれみりゃは大きくなっても子供みたいな知能しかなくて
始終「あまあまほしいんだどぅ」とか、「ぷでぃん♪ぷでぃん♪」とか言ってて ちゃんとしゃべる事もできない
子供達があんな風なゆっくりにならないように気をつけようと誓った

 『ああ、子供達は見てみたいなぁ。俺は成体ゆっくりしか触ったことないんだよ』

 「おにいさんは可哀相なニンゲンだね!たくさんご飯を用意してくれたら、赤ちゃんに すりすりさせてあげても良いんだぜ!」

 「ま、まりさ?さすがに すりすりは…」

とんでもない条件に母れいむは父まりさに詰め寄ったが

 「ゆ!…ごにょごにょ(大丈夫だよ れいむ このニンゲンは弱そうだから まりさ達のいいなりなんだぜ)」

 「ゆゆ!?…ごにょごにょ(さすがれいむのまりさだね!ご飯だけもらって 帰ってもらおうね)」

 『よし、じゃあお前ら ちょっと待ってな。なんか見つけてくるから』

そういうとお兄さんは家族から離れて引っ込んでしまった
お兄さんが見えなくなるとニコニコしながら夫婦は

 「まりさ 今日のご飯は取りに行かなくても大丈夫そうだね!」

 「赤ちゃん達も生まれたし、たくさんご飯頂いてやるんだぜ!」

 「れいむのまりさは とーーーってもすてきだよ!そこにしびれる あこがれる!」

 「ゆっへっへっ///」

 「おとーしゃん かっこいーーー!」

 「「「かっくいーーーー」」」

家族総出で褒められて照れている父まりさの元に 袋を抱えたお兄さんが戻ってきた

 「ゆゆ!?おにーさん随分早かったね!もっとゆっくりご飯を探しに行ってもいいんだよ!」

 「そうだよ!なにしろ れいむは 子沢山の 幸せものだからね!!」

 『はっはっはっ わかったわかった。これだけあればいいか?』








ドザァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!










 「「「ゆゆ!?」」」

父まりさ達が驚くのも無理はない
お兄さんが、巣から離れて1分くらいしか離れていない
こんな短期間で用意されたものは、山のようにある野菜や食べられる花などだ

 「す、すごいね おにーさん!さすがのまりさも びっくりしたよ…」

 「ゆひゃあ!おにーしゃんは すごうでの かりゅうど なんだね! れいむ しってるよ!」

 「おにーしゃんは かりゅうーど にゃんだね!れいみゅ しってるりょ!」

 「あかちゃん! あかちゃんがしっているわけないでしょ! おねーちゃんのまねしたら めーだよ!」

親がびっくりするその量だ
子供達が度肝を抜かされるのもしょうがない
今まで見たことのない 山のようなご飯
きっとお腹いっぱい食べても尽きないだろう
これだけあれば相当ゆっくりできる
しかし幾多の危険を乗り越えてきた父まりさは違和感を感じ取っていた

 「これは…おにーさんが 採ってきたご飯なの?」

 『おいおい失礼だな これは全部お兄さんが用意したもので 誰かのものなんかじゃないよ』

 「そ、そうなんだ…ゆっくり理解したよ…」

まりさはゆっくり達の中でも「凄腕の狩人」と呼ばれるくらい
狩りや採集の名人であり、その賞賛を子供達が覚えていたのだ
しかしその通り名がひっくり返るぐらいお兄さんがもってきたご飯の量はすごかったのだ

 「ありがとうなんだぜ…」

 「ま、まりさ おにーさんはニンゲンだから すごいんだよ! れみりゃよりも おおきいんだから!」

 「そうだね ニンゲンはすごいね…」

 「まりさは一番だよ!ゆっくりの中では一番なんだよ!ゆっくりはゆっくりのモノサシで考えればいいんだよ!」

落ち込んでいる父まりさに気づいた母れいむは必死にフォローをし始めた

 「れいむ達が飛べないからって 蝶々さんに負けたことにはならないでしょう?」

 「ゆへへ、そうだよね。まりさは空を飛べないよ。蝶々さん以下だね。馬鹿だね。死ねばいいのに」

だぜ口調の抜けた父まりさの瞳は地面だけを映している



 「馬鹿!!!!」


 ばしーん


 「ゆぎ!?」

母れいむが 父まりさを モミアゲでぶったのだ!

 「まりさの馬鹿ぁ! れいむはね! れいむはね! いつも自信満々で どんな事にも向かっていくまりさが好きなんだよ!」

 「いつも成功したわけじゃないけど いろんなゆっくりできないことがあっても 絶対あきらめない まりさが大好きなんだよ!」

 「だから! だから! れいむが大好きなまりさに戻ってよ! れいむが!子供達が!大好きなまりさに戻ってよ!!!!」


そうか

自分は間違い犯していた
幼い頃から孤独と飢えに苦しんでいた自分は
他のゆっくりの存在を認められなくなっていた

なによりも自分が生き残らなくてはならない

両親と自分のために命を捧げてくれた姉妹達にも
自分は誰かを裏切っても生き続ける
そんな昔の自分に戻ってしまっていた

しかし、ソレは あの時捨てたんだ
傷だらけのまりさを愛してくれた れいむ

これからは このれいむと一緒に歩んでいこう
今までは急な崖を駆け上がるような人生だった
しかしこれからは れいむといっしょに ゆっくり歩いていく

もしもれいむが転んだら助けてあげる
もしも自分が転んだられいむに助けてもらう

もう自分は自分だけのものではない
自分の一挙一動が
れいむのため
子供のため
赤ちゃん達のためなのだ


わかったよ
れいむ ありがとう
こんな まりさを愛してくれてありがとう





 「だぜぇえええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!」







 「ままままままま、まりさ!?」

 「おとーさん どどどうしたの!?」

 「「「おとーしゃん ゆっくちしちぇえええ!」」」

家族全員が目が点になった
そう、父まりさの折れた心が復活したのだ
瞳には燃えるゆっくり魂が輝いている
その背中には父の貫禄があった

 「ゆへへへー!ニンゲンのおにーさん!おいしそうなごはんを ありがとうね!」

くいっと帽子を揺らすと お兄さんを睨み付けた

 「さっさとまりさ達のおうちから 出て行ってね! もう用済みなんだよ! 痛い目に会いたくなかったらゆっくりしないで―――――」






 『いやココ 俺の部屋だし』





 「ゆ!?」





【3.事実】


 「今なんて言ったのお兄さん?まりさにわかるようにゆっくり説明してね?」

 「まりさ!馬鹿なニンゲンの言うことなんて信じちゃいけないよ!」

 『俺の家です、ココ』

真顔のおにーさん、いつのまにか赤ちゃんを拾って菜っ葉を食べさせている

 「おにーさん!嘘をついたらいけないよ!ここはまりさが見つけたゆっくりベストプレイスなんだよ!」

 『ふーん、どうやって見つけたの?君が前に住んでいた所から だいぶ離れているけどさ』

 「まりさが原っぱでお昼寝していたら、いつのまにかここの前に……ゆ? なんでお兄さん、前のおうちの場所知ってるの?」

まりさが父親として燃えたのも5秒だけだった
だぜ口調は影をひそめ、三角帽子は斜めに傾いている

 『教えてやるよ』

お兄さんは、赤ちゃんを撫でながら語り始めた

 『一匹のゆっくりを捕まえてきた。』

 『これが滑稽な事に、野原で仰向けになって寝てやんの』

 『野犬なり鷲でも襲い掛かったら、あっという間に連れ去られるだろうがってやつ』

 『それはそれで爆笑するけどさ、もっと面白いこと思いついたわけ』

 『眠ったお前を拾ってきて、家の前に置いてみたんだ。近くにあった小石を投げるつけて起こすと どうだい』

 『ここをまりさのゆっくりプレイスにしようって言うやいなや、すたこらさっさと帰っていったさ』

 『案の定、家族を連れてお引越しだ』

 『びっくりしたのは身重の伴侶まで連れてきたことだ、その弱そうな茎が折れるとか考えてなかったの?』

 『これから生まれる家族より、自分の方が大事だったのかな?』

 『いっぱいご飯持ってきてびっくりした?自分の無能さに落ち込んだ?こんな量の食料なんてすぐ用意できるはずないじゃん』

 『これは元々家にあったやつだよ?わからなかったの?馬鹿なの?死ねば?』















「 黙 れ ぇ え え ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ え ぇ え ぇぇ え え え え !!!!!!!!」

















ゆっくりにあるまじき怒声に
赤ちゃん達は固いボールになって床を転がり
子ゆっくり達は租借していた美味しいご飯を口からボトボトと垂れ流し
母れいむは無言だった

 「ここは! まりさの!! ゆっくり!!! ぷれいす!!!! だ!!!!!」

 『…』

お兄さんは気絶している赤ちゃんを手の平で転がして遊んでいる

 「まりさ…本当なの? れいむに嘘ついたの? 何度も聞いたよね? こんな大きいおうちが ニンゲンのものじゃないのかって」

 『…』

 「れいむは 黙ってて!その答えは…今、出すから!」

 『…お前、だぜ口調どうしたの?』

まりさは怒りに震えていた
同時にかけがえのない家族を危険に晒したことを後悔した
騙された
騙されてしまった
だが、失敗は やり直せばいい
そう、間違えは 正せばいい

そうだお兄さんがいなくなればいい

 「おにーさん…ここは…まりさの…ゆっくりぷれいすなんだ…………ぜ」

先ほどまで目が泳いでいた父まりさは 何処かへいなくなった
ずり落ちいてた帽子を目深にかぶり、口元はきつく結ばれた

 『ほう…そうか…』

 『ならば、真のゆっくりぷれいす所持権を賭けて……ヤってるやるよ』

 『道具は使わない…』

ひざの上で気絶したままの赤ちゃんをそっと床に下ろすと
お兄さんは立ち上がった

 「…」

 「ま、まりさ…」

心配する母れいむをよそに、父まりさは分析していた

大きい
ニンゲンは大きい
れみりゃやフランより大きい背丈に長い四肢
また れみりゃの様に幼稚でもなければ
フランのように単純な虐殺者でもない

あの腕に掴まれたら最後だろう
跳ねる事も噛む事もできず拾い上げられて
頭から食べられてしまうだろう

しかしニンゲンは羽根がないので飛ぶことはできない
ということは徒歩で接近してくるはずだ



父まりさは一人で生きていくうちに
れみりゃを撃退する業を身につけていた
もちろん掴み投げられたり 引っかかれたりしたらオシマイだ
しかし一撃必殺のカウンターを開発していた

その瞬間は難しい
まず跳ね続けて相手を誘う
れみりゃが自分をキャッチして抱え…爪が入る前に
腕と手のひらを利用して顔面に体当たりをする

タイミングは刹那だ
また瞬間跳躍のために 事前に空中で縮んでおかなければならない

しかし成功すれば

 「ゆぎぁああ!!いだいんだどぉ!!!!じゃぐゃああ!!!!おがおが いだいんだぉおおおお!!!!」




父まりさは 食いしばった奥歯が欠けるのを感じた





【4.決闘】


 『来いよ…』

 「ゆぅぅぅぅぅぅぅぅ」

おにーさんと父まりさの距離は2メートル
この距離では何も始まらない
おにーさんは道具を使わないといっているが
既に一度騙されている
近くにある物でも投げつけられれば
家族に被害が出てしまう

おにーさんが距離をつめてこないを確認しつつ
50cmの距離までにじり寄った

父まりさは虫食タイプの40cm
饅頭とはいえ直径40cmの全身餡筋肉の塊である
裂く攻撃には弱いが、森や平家を駆け巡った底面は硬く分厚い
茂みで傷だらけになり、何度も崖から落下した頭も強度を増している

 「おにーさんは馬鹿だね?手足があるからって有利だと思ってるんでしょ?その大きな頭でよく考えてね?」

 ぽゆーん ぽゆーん ぽゆーん ぽゆーん ぽゆーん ぽゆーん ぽゆーん

 『…』

必殺の距離までつめた父まりさは、おにーさんの腰くらいまで軽いジャンプを繰り返す
もちろん往復する度に力をこめるのを忘れない

 「こんな素敵なゆっくりプレイスを 教えてくれてありがとうね!まりさ達が ゆっくり使ってあげるよ!」

 ぽゆーん ぽゆーん ぽゆーん ぽゆーん ぽゆーん ぽゆーん ぽゆーん ぽゆーん ぽゆーん ぽゆーん ぽゆーん

 『…』

挑発を繰り返すまりさの目だけは 笑っていない
おにーさんが れみりゃのように掴みかかってくる一瞬を逃すつもりはない

 「まりさは!ゆ!群れで!ゆ!いちばん!ゆ!つよ!ゆぅ!いんだ!ゆぎぃぃぃ!」

 ぽゆーん・・・ぽゆーん・・・・ぽゆーん・・ぽゆーん・・・・・・ぽゆーん・・・・

 『…』

これはマズイ
おにーいさんが手を出してこないとは思わなかった
もうこれ以上空中で力をこめることはできない
一旦引いて 出方を見るか?
いやおにーさんは まりさの跳躍力に驚いているだけかもしれない

 「おにーさん!まりさの!ぴょんぴょんに!びっくりし!…い!?」

 ビュ!!!!!

おにーさんの上半身が後ろに倒れる
まりさはまだ攻撃していない
それともまりさの気迫におにーさんは気絶してしまったのだろうか
なんてことだ
数々の れみりゃに逆襲していたまりさは
ついにもっと大きいお兄さんすら 凌駕する力を身に付けていたのだろうか

なんて事を考えていたので
まりさは底面から迫り来る物体に気が付くことができなかった

風圧を感じたときには遅かった
父まりさは すでに落下を始めており
反対方向から上ってくるつま先に対して防御する手立てがない
中枢餡子からあんよへ向かって、「固くしろ」という命令はたどり着くこともなく
まりさの底面のど真ん中に突き刺さった

そのまま振りかぶられたトーキックは まりさを天井に打ち上げ
部屋の真ん中にぶら下がっていた空っぽのランタンを鳴らすと
くるくる回る座布団のようなものは
母れいむの目の前に着地した

 ボジュッ

空気の代わりにぬかるんだ泥水でも詰めた様な風船が落ちる音
その変な異音に母れいむは怯え、子ゆっくり達を下がらせて赤ちゃん達に呼びかけた

 「あ、、あか、、、ぁか、、、ち、、、」

父まりさの耳には、震えるれいむの声が鳴り響いていた
れいむが応援してくれている
不覚を取ってしまったが
今 間違いを理解した
おにーさんはニンゲンなんだ

掴みかかってくることはない

蹴って来るんだ

もう理解した ゆっくり理解した

同じ間違いはしない

まずは態勢を整えよう
このまま追撃されたら駄目だ
ここで自分が負けてしまったら
たくさんの子供達が住めるおうちがなくなる
れいむや子供達にご飯をたべさせてあげれない
子供達に教える事がたくさんある
どんなにれみりゃがおそろしいものか
おとーさんがどれだけ大変な生き方をしてきたのか

きっと大人になったら 理解してくれるだろう
その時には自分は もうずっとゆっくりしている状態かもしれない
だけど わかってくれたらいい
それだけで自分が今まで歩んできた価値があるんだ
おとーさんの背中を 父親の生き方を

見せなくてはいけない


 『ちょ、お前 ふざけるなよ。人の家の中でそんなもの垂れ流すなよ…』

 「…ゆ!?…」

まだ目が利かない、聴力は回復したのだが
視点がおぼつかない
これはまずい 早く起き上がろう

 「ゆぅ?…くさい! おとーさん くさいよ! なにごりぇ! くさいぃ!」

子まりさが騒ぎ出した
くさい?何の事だろうか
今までの場面でくさいものなんてなかったはずだ
おにーさんが用意したご飯には変なものはなかったはずだ

もしかして、赤ちゃん達が粗相を?
きっと恐怖から漏らしてしまったんだろう
しかしそれは後回しだ

 「くちゃーい!おとーちゃん くちゃいりょ! なんじぇ うんうん おもりゃしすりゅのぉ!?」

なん・・・だと・・・・?

 「ま、まりさ、ど、どうしたの!? なんで今うんうんしてるの?!そんな事してる場合じゃないでしょう!?馬鹿なの!?」

父まりさは、片目で自分の底面を見た

あごの辺りに 大きな穴が開いており
そこから明らかに自分の餡血流や内臓餡子とはちがう
やや明るい茶色をしているデロデロの餡子と
汗とは違う薄茶の液体にまびれていた

おにーさんの放った蹴りは
父まりさの底面から内部を圧迫し
ランタンに激突した事により まりさの顎は切り裂かれ
本来その時まで蓄えられているはずの腐敗した古い餡子のうんうんや
毒素や余剰水分であるちーちーが体外へ、ひり出されてしまっていた

それも量が半端なものではない
元来貯め切れなかった量を排出するはずなのに
体内に蓄積されていた全てが露出してしまったのだ
うんうんとちーちーが溶け合った濁った水溜りに
父親は愕然としていた

痛みより先に襲ったのは 深い恥辱
これから子供達に父の雄姿を見せなければならない
今日の戦いは 子供達に勇気に繋がるだろう

だから

だから、くさいうんうんとちーちーに浸っている場合じゃない

 「まりさぁぁぁあ!なにやってるのぉ!!!おもらししてないで!はやくおにーさんをやっつけてよぉぉお!!!」

 「・・ゅ・・・ぃ・・・・」

内臓が弾けるという深刻なダメージは、まりさから声を失わさせていた

 「くちゃいぃ!はなが もげるよ!ゆっくりできないよ! くさいおとーさんは どっかいってね!もうおうぢがえる!!!」

騒ぎ続ける子まりさに父まりさは 口をパクパクさせる

まりさは おとーさん だいすき だよね
いつも いっしょ だよ どこにも いかない からね
おうちは ここだよ もうすぐ みんなのおうちに なるよ

 「もうまりさぁ!早く起きてよ!帽子もへんな形になってるよぉ!?かっこわるいぃぃい!こんなの まりさじゃないよ!」

あれ あたまが そういえば すーすー するよ
おかしいな ぼうしの つばは みえるのに
おうちの てんじょうに ぼうしの さんかくが つりさがって いるよ

 『なにこれ 超レアだな シャンプーハットまりさ どこいったんだよ帽子部分wwww』

 『うわ、ちぎれてぶら下がってるよ これだけだと帽子だか なんだかわかんねーよ つか大丈夫か?w』

おにーさん が くる
ぼうし まりさのぼうし 
ぼうし がないと ゆっくりできない 
あれ でも ぼうし は いましてるよ ?
あれは だれの ぼうし 
ぼうし? ぼうしって なんだっけ
あ おにーさん
そのまま こっちにこないで
ふんじゃう
ふんじゃうよ
あかちゃん ぷち ぷち するよ
ぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷち
いっぱい ぷちぷち したね
たのしそう まりさも ぷちぷちして ゆっくりしたいよ

 『おーい、白目剥くなよ 意識ありますかー? 見えますかー? 見えたら避けてくださいねー』

 バチン!

お兄さんは父まりさのおめめにデコピンをした
潰れるかなって思ったら
なんと眼球はその穴の中でスピンして一周した

 『ああ、なら目を回してもしょうがないね』








 『次は何をしようか?』

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最終更新:2022年05月18日 21:24