※ちょっとぬるいかも。ハコマニア再来



【球体】



「いい天気じゃないか」
ここは川のほとりの一軒家。俺こと虐待お兄さんの家である。
「どっせぇい!」
最近、運動不足対策に鉛ゆっくり投げを始めた。《ハコ》虐待だけだと体が鈍る。
投げたところで何も反応がないのがつまらないが、そこは我慢である。
「う”ぁー、づがでだー!」
「おら頑張れー。走れー。」
もちろん回収は飼いれみりゃだ。豚にはいい運動だろう。


「おーい、お兄さん。今大丈夫かい?」
記録級の飛距離をたたき出してすぐ、村の人からの依頼が入った。
彼の手には、髪の毛をつかまれてぶらさがっているゆっくり。
うちへの依頼というのは、無論ゆっくりの処分なわけで。
「それでは、今日も趣味の仕事を始めましょうか。」
れみりゃを放置して、家の中へ戻った。


「おにいさんはゆっくりできるひと?ゆっくりしていってね!!」
今回も、れいむ1匹だった。前回と違うのはそれが子供であること。
家を荒らしていたところを、なんとか1匹だけ捕まえられたらしい。
たった1匹なら自ら手を下せばいいのに、と思うが口には出さない。仕事だし。
なにより自分も自分の手でゆっくりを捕まえて虐待するのは面倒だ。


「よう」
「れいむはここでゆっくりするよ!おにいさんはでていってね!!」
今回はなぜか捕獲用《ハコ》に入ってない。逃げる気配もないのでいいとする。
子供といえど口の悪さは変わらない、お兄さんと呼ばれるだけいいとする。
「そうだな、この部屋でゆっくりさせてやろう」
「きょうからここはれいむのゆっくりぷれいすだよ!おかしをおいてでていってね!」
そろそろストレスがマッハなので、《ハコ》虐待を始めることにする。
ゆっくりをおもむろに掴み、《ハコ》に投げ入れる。
「ゆ”あ”っ!?」


さて今回の《ハコ》だが、珍しく単体用である。
形は球体。透明。ゆっくりを入れ、閉じ込めるための蓋。
処理量と見栄えを重視した《ハコ》が多い中、妙な存在感を示している。
成体用にこしらえてあるので少し大きさに難が残るが、虐待できないわけではない。

そして、内部には無数の短い棘。

おろし金も考えたのだが、またうまく動かれてはたまらない。
ということで、動かずとも確実にダメージを与える、棘に変更した。
ぶっちゃけ視界があんまりよろしくないがそこは我慢である。


「さぁ、そこがお前の部屋だ。好きなだけゆっくりしろよ」
「い”だい”い”い”い”ぃぃぃぃ!!」
棘の長さはそれほど長くない。それこそ皮をギリギリ貫かない程度である。
だがそれも成体の話。なんかすでに《ハコ》が餡子で汚れている。
多分、ってか確実に貫通してるだろう。やっぱり子供じゃダメか。
しかも投げ方的に、背面が刺さっている。
「ゆぐっ、ゆぐうぅ…」
ちょうど上を向いた状態で、《ハコ》の中で静止している。


「おい、動いてみせろ」
「ゆ”っ!ぞんなのでぎないよ!」
そんなん見て分かるがな。
「動け、っつってんだ。聞こえてないのか」
「い”だい”の”い”や”あ”あ”ぁぁ!!」
押し問答。れいむの入った《ハコ》を、顔の高さまで持ち上げる。
棘のせいで少し見えづらいが、同じ目線で対峙する。
「もう一度言う、動け」
「む”り”だよ”!う”ごげな”い”よ”!」
俺は《ハコ》から手を離した。
当然、れいむ共々《ハコ》は落下する。

ガンッ!

「ゆ”っぎい”い”い”い”ぃぃぃぃ!!!」
床に《ハコ》が叩きつけられる音、苦痛に漏れる声。
背面の棘から開放され、今度は底面からぶっすりと刺さっている。
落ちたときの衝撃も相成り、けっこう広範囲だ。
《ハコ》を持ち上げて、棘の刺さった底面を見る。
「うぅ、饅頭ながら猟奇的」
透明の棘の先に見える、れいむの皮と餡子。つぶあんだ。当たり前だ。
本当はこれを自分からやってもらわなきゃつまらんのだがな。
まぁ次は成体を入れるとしよう。


れいむは動かない。ただただ痛みに苦しんでいる。
「それでも動かねぇか」
「あ”じがあ”っ!でい”ぶの”あ”じがあ”あ”ぁぁっ!!」
集団はうるさいが単体でも充分うるさい。
軽く足で小突いてみる。
「ゆ”っ、ゆ”がっ!」
ゆれるたびに棘がれいむの底面を傷つける。
刺さった棘を動かされるのはさぞかしの苦痛だろう。
ふと、蹴ってるうちに面白いことに気づいた。


「…そうか。動かないってことはつまり、重しなのか」
そう、現在この《ハコ》は、おきあがりこぼしになっていた。
軽く足蹴にして、何度か転がるが、最後はれいむを下にして止まる。
なるほど、成体じゃこうもいかなかっただろう。面白い。
「おーい、れみりゃー」
「う”ぁー…」
鉛ゆっくり拾いで疲れ果てたれみりゃを呼ぶ。いい肉汁。
「でみ”り”ゃい”あ”あ”あ”あ”ぁぁぁぁ!!!」
突然、れいむ発狂。必死に逃げようとするが棘が刺さって動けない。
勢いをつけて転がろうともするけど、自分の重さで元の位置に戻ってしまう。
「うー?」
「新しい《ハコ》だ。遊んでやれ」
「うっあー☆」
「い”や”あ”あ”あ”あ”ぁぁぁぁ!!」
その間にお茶でも入れることにする。


「れみりゃー、紅茶だぞー、って」
お盆にほうじ茶と紅茶を入れて戻ってきたら、なんか凄いことになっていた。
「うぅー☆」
れみりゃが《ハコ》を両手でがっしり掴み、シェイクしている。
《ハコ》の中身は餡子だらけで見えない。くそぅ、ここは失敗だ。
「ゆ”っ、ぐっ、ゆ”ぎっ、っ!」
れみりゃが振るたびに声が漏れる。死んではいないか。
「しかし、狂気的だな」
「うー!うー!」
れみりゃはむちゃくちゃ調子よさげに、縦に横にと振り回している。
あれじゃ成体でももたねぇだろうな…
「れみりゃー、終わりだ終わり!お茶にすっぞ」
「てぃーたいむだどぉー!」最近この言葉を覚えたようだ。どっから覚えるんだ。


れみりゃが紅茶に歩いていくのとすれ違いに、《ハコ》を見に行く。
れみりゃが放置した透明だった《ハコ》は、すっかり餡子まみれになっている。
どの位置から見ても中が見えない。試しに蓋をあけて、中を覗いてみる。
「…」
穴だらけになりながらも、原型を残している。
原型といっても、顔も髪も見る姿はなく、ただ丸い饅頭としての原型だが。
取り出そうとするが手から餡子がこぼれる。棘の間の餡子が非常に取りづらい。
…この点も失敗だな。


「あづい!」
まだ熱い紅茶は飲めないようだ。
「おいれみりゃ、これ洗っとけ。餡子は食っていい」
「うー☆」
ちゃぶ台に向かってきちんと座っているれみりゃに《ハコ》を渡す。
器用に棘の隙間の餡子を食べながら、紅茶を飲んでいる。
…餡子に紅茶ってどうなんだ、実際。





【あとがき】
タカアキです。
ハムスターのお散歩ボール的なアレを思い浮かべてくれれば幸いです。
一面針地獄の威圧感は異常だと思うんだ。


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最終更新:2022年05月04日 22:57