年の瀬とゆっくり

ようやく仕事が終わった…少しふらつく足取りで一週間ぶりの我が家に向かう。
もう年末も近いってのに、突如発覚した致命的なミス。それのおかげで12月の半ばから今日、大晦日の昼まで仕事詰めだった。
終盤は一週間客先に泊まり込み、うち三日は徹夜である。
昨夜、ようやくミスの修正が終わり、やっと自宅に帰り着いたのだ。とんだ災難である。あー、つっかれた。

懐かしき我が家の戸を開こうとしたそのとき、ふと違和感を感じた。
戸には鍵がしっかり掛かっていたのだが問題は俺の足下。小石がいくつか散らばっている。
戸の下部には、まるで引っかいたような跡まで残っているではないか。
野良猫や野良犬の仕業なのだろうか。このまま家に入っても良かったが、念のため庭に回ってみた。



………なんだこれ?玄関以上の有様だ。雨戸の下には小石がいくつも散乱し、壁に沿った地面にはいくつか掘り返された跡。雨戸の隙間には木の枝が挟まっている。
庭の片隅には掘り返されて盛り上がった土。その穴を覆うように、枯れ枝や枯れ葉、石ころが被さっている。
ここまでくれば犯人は決まっている。試しに穴の近くで耳を澄ますと、中からは脳天気な会話が聞こえてきた。
「ゆゆ…おかあしゃん、さみゅいよ…」
「ゆっくりがまんしてね!おかあさんにもっとくっついてね!」
「おとーさん、あたらしいおうちはいつになったらはいれるの?」
「ゆゆ…いじわるなとびらさんがじゃましてるんだよ。あしたこそはあけてみせるからね!」
「ゆっ!おとーしゃんがんばっちぇにぇ!まりちゃたちをゆっきゅりさせちぇにぇ!」
「れーみゅもゆっくいしちゃい!」
「だいじょうぶだよ!おとーさんがぜったいにみんなをゆっくりさせるからね!きょうはこっちのおうちでゆっくりしようね!」
「ゆっ!おちびちゃんたち、もっとおかあさんにくっついてね!からだをひやさないようにするんだよ!」
「「「ゆっくりりかいしたよ!」」」

はいはいゆっくりゆっくり。人様の敷地で勝手なことをぬかしやがる。戸締まりを再三確認した甲斐があった、もし鍵を閉め忘れていたら今頃俺は荒らされた室内で虐殺鬼と化していただろう。
井戸から水を汲んでくる。桶二杯もあれば十分か。そーっと穴を覆う枝や枯れ葉を取り除き、冷え切った水を一気に流し込んだ。

「ゆーゆー…ゆ゛っ!!?い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!おみ゛ずがはい゛っでぐる゛よ゛!!?」
「ゆ゛ゆ゛!?どぼじでえ゛え゛え゛!!!」
「や゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛い゛い゛!!」
「み゛んなに゛げでえ゛え゛え゛え゛!!!」
一杯分投入したところで、穴からゆっくりの一家が飛び出してくる。
親れいむと親まりさは白菜より一回り小さいくらい。そこに小振りなトマトほどの子れいむ、子まりさ。さらに子供より一回り小さい赤れいむ、赤まりさが見える。
計六匹、ゆっくりにしては少ない家族数だ。
「ゆー、あんよがぬれちゃったよ!」
「さむいよ!ゆっくりできない!」
口々に文句を言う家族たち。…と、ようやく親れいむが俺に気付いた。
「ゆゆ!?なんでに゛んげんか゛がい゛る゛の゛お゛お゛お゛お゛!!?」
「ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛お゛お゛お゛!!!」
「いや゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!おがーざん!!」
一瞬にしてパニックに陥るゆっくり達。一様にガタガタ震えている。
…いや、まりさ達はれいむ達に比べて落ち着きがあるようだ。俺に気付いた瞬間、親まりさは親れいむの、子まりさは子れいむ、赤まりさは赤れいむの背後に忍び寄り、
「「「ゆっくりしね!!」」」
「「「ゆ゛ゆ゛っ!!?」」」
一斉に体当たりを喰らわせた。れいむ達がゴロゴロと俺の足下に転がってくる。当たりどころが悪かったのか、子れいむと赤れいむは気絶している。白目を剥いてるから間違いない。…しかし、背後からぶつかられただけで気絶って。どれだけ打たれ弱いんだ。
「ばりざ!!な゛に゛ずる゛の゛!!?」
親れいむは涙を垂れ流して抗議する。が、まりさ達はれいむのことなど見ていない。
「ゆっ!ちびちゃんたち、れいむたちをおとりにしてゆっくりにげるよ!」
「ゆっくりりかいしたよ!」
「おかあしゃんとおねえしゃんはまりちゃのためにぎせーになっちぇにぇ!」
「ゆぐあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
背中を向け、ぴょんぴょん跳ねて逃げていくまりさ達。しかし、あんな子供…つーか赤ん坊のうちからあのような姑息な裏切りが出来るなんて。しかも家族だというのに。
野生に生きるゆっくりの知恵(?)に感動しつつ、もう一つの桶を持って後を追う。まあ、大股で二十歩も歩けば簡単に追いつけたが。
「ゆっ、ここまでくればあんぜんだね!」
「しんだおかあさんたちのぶんまでゆっくりしようね!」
「ゆっきゅりー!」
真後ろに立つ俺に気付かず、一安心している。やっぱ、さっきの野生の知恵に感動っての、無し。…お前等家の角を曲がっただけじゃん。しかもれいむ達は死んだことになってるし。『ここまで来れば安全』なわきゃねーだろ。
片手で子まりさ、赤まりさを掴みあげる。
「ゆっ!おそらをとんでるみたい!」
「しゅごい!まりちゃ、とんでりゅ!」
脳天気にはしゃぐガキ共の声を聞いた親まりさが振り返る。
「ゆゆ!!どお゛じでお゛い゛がげでぐるの!!?ちびちゃん゛たぢを゛はなじでね゛え゛え゛え゛!!」
さっきはいとも簡単に家族を売った親まりさだが、こんどは必死な形相で体当たりをしてくる。どうやら自分と同じ種には情があるようだ。
まあ、庭を散らかした報いは受けて貰うが。
子まりさと赤まりさを離してやる。水を張った桶の上で。ボチャ、ボチャと音を立てて二匹は桶の底に沈んでいく。数秒、口内の空気が浮いてきたが、それもすぐに尽き、脱出しようともがいている。残念、空気を吐きさえしなけりゃ数秒は浮いてられたのに。
「ゆ゛う゛う゛う゛う゛!!おちびちゃん゛、まっででね゛!!すぐに゛たずげる゛がら゛ね゛え゛え゛え゛!!」
桶に体当たりしようとするまりさ。そいつの両頬を掴み、桶の中を覗かせてやる。水底では子まりさ、赤まりさが親の元に近づこうと必死に跳ねる…が、せいぜい数センチ浮くのがやっとだ。
それをみた親まりさは一層激しく暴れ出す。底部の皮がボコボコ盛り上がったり凹んだりしてキモい。
「おね゛がい!!!こども゛だぢを゛だじでね゛!!!とげぢゃう!!ま゛りざのあがぢゃん゛とげちゃう゛よ゛!!!」
そうこうしているうちに、桶の中の二匹の動きは鈍くなっていく。赤まりさの口元からは、黒い霧のようなものがでている。体内の餡子が溶けだしているのだ。

それを目にした瞬間。神が降りてきた。かと思った。最初はこいつ等全員溺れ死にさせてやろうと思っていたのだが、この思いつきに比べれば温すぎる。
そうと決まれば即実行。親まりさを道路に放り投げ、中にいる子まりさ、赤まりさごと、桶の中身をぶっかける。
「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!つべだい゛い゛い゛い゛い゛!!!!」
ゴロゴロと転げ回る親まりさ。そいつに執拗に水を掛けてやる。師走の寒空の中の水浴びはさぞゆっくり出来ないに違いない。
水が無くなったところで、家に引き返す。親まりさがガタブル震えながら、痙攣している子まりさと赤まりさの水滴を舐めとってやっている。が、どうせ長くは持つまい。すぐに揃って凍死するだろう、それよりれいむだ。

れいむの方は、すぐに見つかった…気絶している子れいむと赤れいむの上に枝や枯れ葉を乗っけている。俺に気付くと、それを覆い隠すように体を膨らませた。
「ゆ、ゆゆっ!れいむのちびちゃんたちはあしがはやいから、とっくにとおくににげたよ!!のろまなにんげんはゆっくりあきらめてね!!」
なんともバレバレな嘘である。相手をする気もないので、親れいむの髪を鷲掴みにして持ち上げる。ギャーギャー喚くのを無視、枝の中に手を突っ込み子れいむと赤れいむゲット。そのまま家にお持ち帰りである。



すっかり冷え切った、数日ぶりの我が家。やっぱ自分の家が一番落ち着くもんだ。居間に入りゆっくり共、特に親れいむを強めに床に叩きつける。暴れるだけの体力を削ぎ落としておくのだ。
親れいむは何度か痙攣した後、子供達を口に入れて部屋の隅に這っていった。あれで逃げているつもりなのだろうか。
飛び跳ねるだけの体力がないのを確認し、台所から切り餅を取ってくる。居間の机においてあるコンロに網と一緒にセット、着火。
次は洗面所。給湯器で沸かした湯で、タオルを温める。一分もすると、熱々の蒸らしタオルができあがった。
居間に戻ると、いつの間にか復活していた子れいむ達と親れいむが窓に体当たりを繰り返している。
「ゆっ!おかあさん、にんげんがきたよ!!」
「ゆーっ!こっちこないでね!!!みえないかべさんはゆっくりしないでこわれてね!!!」
「やだー!れいみゅこわいー!」
全力で警戒してやがるな。俺はお前等になど興味はないが、窓ガラスにぶつかるのだけはやめてくれ。饅頭の体当たりごときで割れるとも思えないが、我が家を傷つけられているようでムカつく。
とりあえず子れいむ、赤れいむを掴み取った。
「ゆゆゆゆ!!やめてあげてね!!れいむのちびちゃんにひどいことしないで!!」
親れいむが泣き叫びながら顔面を床に擦り付ける。土下座のつもりか?床が汚れるからやめてくれ。
まずは赤れいむから始めるか。子れいむはテーブルの上に置いておく。親れいむならともかく、子れいむや赤れいむが飛び降りたら死ぬほどの高さだ。逃がす心配はない。
「やめてね!やめてね!?」
「れいむのいもうとにひどいことしないでね!!」
「ゆあああああああーん!おかーしゃん!!おねーちゃん!!」
ゆっくりの懇願など無視、蒸しタオルで赤れいむの体を拭き始める。
体全体の汚れ、特に底部は念入りに拭き取る。髪に着いた汚れも出来るだけ落とす。
あらかた汚れを落としたところで、赤れいむをテーブルの上に。心配そうに駆け寄る子れいむ、テーブルを見上げる親れいむの前で…
「しゅっきりー!!!れいみゅ、きれいきれいになっちゃよ!!しゅごいあったきゃいよ!!」
赤れいむはご満悦のようだった。
続けて子れいむを掴み取る。親れいむはさっきほど騒がないし、子れいむ自身もあまり暴れない。俺が汚れを落とす度に、「すっきりー!」だの「へぶんじょうたい!」だの喜んでいる。
子れいむの次は残った親れいむだ。最初こそ抵抗したが、俺が危害を加えないと思ったらしく、子れいむ同様「すっきりー!」と喜んでいた。挙げ句の果てに、
「おにいさんはゆっくりできるひとだね!とくべつにれいむのおうちで(ry」
とか言い出す始末だ。



しばらく親子三匹でじゃれ合っていたれいむ達だが、やがて餅の焼ける匂いに気付き、しきりにコンロの方を気にしている。
「ゆゆっ、おにいさん!なんだかおいしそうなにおいがするよ!」
「れいむたちがたべるぶんだよね!はやくたべさせてね!」
「おにゃかしゅいた!ちょーらい、ちょーらい!」
確かに餅も食べ頃に焼けてきた。いい感じに焦げ目もついている。ここらで料理といこうか。
熱々に焼けた餅を菜箸て掴み、ゆっくり達の目の前に持ってくる。とたんに子れいむと赤れいむが飛びついてくる、が、直前で餅を動かし、二匹をかわす。
「ゆっ!ゆっくりしてれいむにたべられてね!!」
「うごかにゃいでにぇ!」
「おにいさん、いじわるしないでちびちゃんたちにたべさせてね!」
無視。徹底的に無視。
「なんでたべさせてあげないの!?ばかなの!?しぬの!!?」
いつの間にかちび二匹は泣きだし、親れいむはブチ切れている。なら、親れいむの取る行動は一つ。
「ゆっ!ゆっくりたべさせろおおお!!!」
親自らが餅を奪い取り、それを家族で分ける。たがそれは俺の巧妙な罠だった。
大口を開けて突っ込んでくるれいむの喉深くに餅を突っ込む。菜箸が後頭部まで貫通してしまったが気にしない、箸を引っこ抜き親れいむの口を塞ぎ、頭を殴りつける。
「ー゛ー゛ー゛っ゛!!!」
声にならない悲鳴を上げる親れいむ。が、口をこじ開けると餅は無くなっていた。うまく飲み込んだようだな。
次に台所から鍋を取りだし、半分ほど水を張る。大きさは親れいむがちょうどハマるくらいだ。ぴったりー。
今に戻ると親れいむはテーブルの上で必死に餅を吐き出そうとしている。心配そうにそばで跳ね回るちび二匹には構わず、親れいむを持ち上げる。
「ゆ゛ー゛!ゆ゛う゛ー゛!」
餅が喉につまり、うまく発声できないようだ。聞こえねえよ。はっきり喋れ。そのまま親れいむを仰向けに鍋に入れる。
「ゆ゛っ!ゆ゛ぐーっ!!!ゆ゛む゛ーーっ!!!」
水による溶解の恐怖からか、一層親れいむが叫び出す。が、俺にはどうでも良いことだ。そのまま蓋をして、鍋をコンロに掛ける。
鍋がぐらぐら揺れて危ないから、親れいむが死ぬまで手で押さえなきゃならないのが面倒だ。次やるときは底部を焼いておこう。
「ゆーっ!おかあさんはやくでてきてね!!」
「おかーしゃんにいじわりゅしないでにぇ!!」
ちび共が喚いている間に鍋はグツグツ煮立ち始め、次第に取っ手に伝わる振動も弱くなる。もうそろそろか。
鍋の蓋を開けると、湯気の中からぐちゃぐちゃにふやけた親れいむの顔が現れた。かろうじて生きているのか、目や口端が痙攣している。が、至る箇所の皮が破れ、餡子が溶けだしている。
ここで子れいむと赤れいむを手に乗せ、その光景を見せつけてやる。
「ゆぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!おがあ゛ざん゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
絶叫する子れいむ。赤れいむの方は白目を剥いて気絶してしまったようだ。親れいむの方も娘の声が届いたのか、必死に姿を目で追い、言葉をかけようとする。餡子が口からこぼれただけだったが。
仕上げにちび二匹を鍋に放り込む。
「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!だじでね゛!ここがら゛だじでね゛!!」
死に体の母の上で飛び跳ねる子れいむ。着地のたびにふやけた母の皮が破れ、餡子が湯に溶けだしていく。赤れいむの方は、鍋の端まで転がり隙間に沈んでいった。
子れいむの命乞いには興味がないし、蓋を閉じる。最期は家族でゆっくりしていってね!!!






火を止めて数分後、鍋の蓋を開ける。グズグズだった親れいむの皮は、子れいむが飛び跳ねたせいですっかり破れ、原形をとどめていない。
その子れいむは母れいむ餡子の中に埋まっていた。母の餡子が子を水分から守ったのか、まだ原形をとどめている。菜箸でつつくとぴくりと震えた。まだ息があるようだ、びっくり。
鍋の隅には赤ゆっくりサイズのリボンの切れ端が浮いている。完全に溶けたのだろう。
箸で特に大きな餡子の固まりを切り開くと、中からは餅が出てきた。これで、ゆっくりお汁粉の完成である。
試しに食ってみる。うん、美味い。生きながら茹で上げた母れいむの餡子は、相当苦しんだためか、結構な甘さになっていた。
次に子れいむだ。熱湯に浮かぶ母の死骸の上でダンスし続けたのだ、その苦痛と絶望が餡子の味を飛躍的に高めている。次作るときも同じやり方でやるとしよう。
そんなことを考えていると、外から微かに除夜の鐘の音が聞こえてきた。あー、もうじき新年か…。

お汁粉美味しいよね。

by 町長

今までに書いたもの
fuku2120 電車.txt
fuku2152 大岡裁き.txt
fuku2447 ゆっくりセラピー.txt
fuku2539 頭.txt
fuku3074 ゆっくりの巣.txt

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最終更新:2022年05月18日 22:17