まりさつむりの記憶 (後編)

☆ゆっくり同士の戦闘シーンがあります。
 罪のないゆっくりが酷い仕打ちに遭います。
 東方のキャラがちょっとだけ出演します。
 SSの数だけ設定が存在します。
お気に召さない方は回れ右!


霧の湖のほとり。鍾乳洞の奥深く。
美しい黄金色の長い髪がゆーゆーと寝息を立てている。帽子は無いが紛れもないゆっくりまりさである。
肉体的にも、精神的にも疲れ果てていたため一週間以上眠り続けていたのだ。
その傍には蜂蜜色の、ゆっくりありすの姿があった。
動く気配も呼吸している様子も無い。死んでしまっているようだ。
しかしその顔は幸せに満ちた寝顔、そのものであった。


「ゆっ・・!ゆっくりおはよう!!!」
まりさが漸く目を覚ました。しかし辺りには誰もおらず、まりさの声だけがゆっくりと木霊する。
「ゆっ・・ゆう・・・。」
すぐに最愛のありすを失ったことを思い出し、がっくりと肩を落としていた。
ゆっくりに肩があるかどうかは気にしてはいけません。
悪い夢なら覚めて欲しい。そう思うことも否定はできないのだが、
まりさが座る葉の下には3個の真っ白い卵。ありすからの贈り物である。
この子達のためにも頑張らなくては・・!何よりもありすのために・・・!


「ゆっしょ!ゆっしょ!ゆっしょ!」
ざっくざっくざっく・・・
まりさは全身傷だらけになりながらも、硬い鍾乳洞の床に穴を掘っていた。
ありすの両親の形見だった三日月の紋章、かちゅーしゃを穴に放り込むと、
ありすをゆっくりと埋葬して葉っぱで覆い、墓標となる石を置いた。
「ゆ・・・ゆぅ・・・」
森の中に埋葬するのも手であるが、腐葉土に覆われた土壌のため
すぐにありすの亡骸は朽ち果ててしまうだろう。
まりさには心が痛むためできなかった。
「ゆー・・・」
まりさは目をとじて墓標の前でゆっくりとうなだれていた。
しかしあまりゆっくりしている時間はない。冬ごもりの準備をしなくてはならない。
以前の集落では充分な食糧を確保してきたものの、全て置いて逃げ出さなくてはならなかった。
まりさはゆっしょと体を起こし、残ったこれくしょんの貝殻を吐き出すと、
卵をほおばり勢いよく鍾乳洞を飛び出した。


10月。幻想郷では秋が深まりつつあった。
魔法の森も美しい紅葉に包まれていた。しかしまりさには楽しむ余裕はない。
朝早く起きてから昼過ぎまで、休むことなく食糧や資材集めに奔走した。
魔法の森の奥深くまでは人間も妖怪も滅多に姿を現さない。
しかし帽子を失っていたゆっくりまりさに、他のゆっくり達の攻撃は容赦がない。
食糧をほおばり枝や葉などの資材をかついで巣に戻ろうとしていると、
「ゆゆっ!あそこにゆっくりできないまりさがいるよ!!!」
れいむが大きな声を上げる。
「ゆー、ゆっくりできないまりさはゆっくりしね!!!」
「「「「「「ゆっきゅりしね!!!ゆっきゅりしね!!!」」」」」」
成れいむが2匹、子れいむ6匹の群れである。
以前の狩りの得意なまりさであれば、荷物をかついでいても逃げ遂せたであろう。
今は連日の過酷な労働と、ゆっくり達との戦闘に疲労困憊であった。
ましてやありすとの愛の結晶である大事な卵を抱えている。
まりさは泣く泣く集めてきた資材を捨て、黙って一目散に逃げるしかなかった。
「ゆーっ、まりさがゆっくりにげるよ!!!はやくおいかけようね!!!」
「ゆゆっ、まりさがたべものをいっぱいおいてったよ!!!
きっとれいむたちにゆるしてほしくておいてったんだね!!!」
「こんな、むーしゃ、もので、むーしゃ、れいむたちをゆるしてくれなんて、しあわせー!!!
なんてげすなまりさなの!!!ばかなの?」
「「「「「「むーちゃ、むーちゃ、ちあわちぇー!!!」」」」」」
まりさが残していった虫、草や茸を思い思いに食い荒らすれいむ一家。
「ゆゆっ!!!こんなまずそうなはっぱなんていらないね!!!」
れいむが葉っぱをすりつぶすと、ゆっくりとぼろぼろになってしまった。
果たしてこのれいむ一家は無事に冬を過ごせたのだろうか?


一方のまりさは、より疲労の色を強めていた。
自分はろくに食事もとらずに生まれてくる子供たちと冬を越すために一生懸命である。
しかし何度も他のゆっくり達に襲われてしまい、思うように食糧を集められずにいた。
そんなある日のこと。
「ゆ・・・。ゆっくりおはよう。」
もはや大きな声を出す元気も無かった。その時かすかに背後から物音が聞こえてきた。
まりさは振り向くと、卵を覆っていた葉っぱを取り去った。すると卵がかすかに動いているではないか。
「ゆゆっ、うまれるよー!!!ゆっくりがんばってね!!!」
がさがさがさっ
卵の振動は強まっていく。
ぴしぴしぴしっ
3個の卵にゆっくりと、一斉に亀裂が入る。そして卵が割れる。
「ゆゆーっ!!!」
割れた卵から黄金色の塊が2個、蜂蜜色の塊が1個、飛び出した。
「ゆっ・・・。ゆっくりしていってね!!!」
まりさ種2匹とありす種1匹である。しかし卵の中を覗き込むも、帽子もかちゅーしゃも見当たらない。
まりさはとっさに笑顔を作って渾身の思いで声を張り上げるが、落ち込みを隠せない。
「「「ゆっきゅりしていっちぇね!!!」」」
「ゆっ・・・。どおしてぇ・・・」


どうやらみょんに突き刺されたありすは、生命だけではなく生殖器にも影響を及ぼしていたようだ。
この子達には自分と同じ運命が待っているのかと思うと、断腸の思いであった。
ゆっくりに腸があるか無いかについては議論してはいけません。
「おきゃーしゃんどおしたの?ありすなにかわるいことしたならごめんね・・。」
振り向くと、母の落ち込んでいる様子を見て、透き通った瞳の子ありすが首をかしげていた。
見た目も、生まれたばかりなのに母を気遣う優しさも、まさにありすの生き写しであった。
感動のあまりまりさから大粒の涙がこぼれ落ちる。
「ううんちがうの・・。ありすはいい子だから、いい子だから・・・」
「おきゃーしゃんをいじめるわるいやつはゆるさないよ!!!」
子まりさが威勢よく声を上げて飛び跳ねる。その瞳もまた、ありすの生き写しであった。
「うっ・・・。こんなおかあさんでごめんね・・・。う、うわぁああああん!」
まりさは3匹にすり寄ると、大声で泣き出してしまった。
ありすから授かった、如何なるこれくしょんよりも素晴らしい宝物に、感動が止まらなかった。
一人で暮らしていた頃と比べると、随分涙もろくなってしまったものだ。
「「「お、おきゃあしゃん・・・?」」」
「ご、ごめんね・・。もうだいじょうぶ、だいじょうぶだから・・。」
きゅるるるる・・・。1匹の子まりさのおなかが勢いよく鳴る。
「おきゃーしゃん、まりしゃもうはらぺこだよ・・・」
「ごはんのよういをするからまっててね。」
「「「ゆっ、ゆっくりまってるよ!!!」」」
食糧の備蓄量は決して多くは無かった。
自分が食事をがまんすれば、子供たちが二週間は耐えられる程度であった。
その後は・・。自分が食糧となるしかないが、とても冬を越せる量ではない。
徐々に寒くなってきているものの、まだまだ食糧を集めなくてはならないようだ。
「「「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!!!」」」
幸せそうな子供たちを背に、まりさはありすの墓標へ向け、ゆっくりと語りかけていた。
「ありす・・。きょうね、まりさとありすのこどもがうまれたんだよ。
ありすににててね、とってもとかいはで、かわいくて、やさしくて・・。
ありすにも、ありすにも・・。うっ・・うっ・・・・。」
後ろでは子供たちがゆーゆーと寝息を立てていた。
まりさは子供が生まれた嬉しさと、ありすに見せられなかった悔しさの境界に立たされながらも、
子供たちに寄り添ってゆっくりと眠りを深めていった・・・。


一方、魔法の森のとあるゆっくり集落に、帽子の無いまりさの噂が広まっていた。
ある者は、襲いかかると常人・・じゃなかった常ゆっくりならぬ力で跳ね飛ばされ、
またある者の前では、威嚇しただけで食糧を山のように置いて逃げていったという。
冬ごもりが近く、少しでも多くの食糧を集めなくてはならない。
帽子もないくせに、山のように食糧を集めるゆっくりはさっさとしんでもらうべきである。
集落のゆっくり達は、策を練り始めていた。


「ゆ・・・ゆっくりおはよう!」
「ゆ・・・ゆっきゅりしていってね!!!」
まりさは更に狩り、採集に精を出していた。
子供たちの声を聞くと、溜まっていた疲れも一気に吹き飛ぶというものだ。
ありすとの大切な大切な3人の子供・・。絶対に無事に冬を乗り切らなくてはならない。
他ゆっくりの威嚇にもひるまずにかつゆっくりと逃げ回り、こつこつと食糧を集めていった。
子供が生まれてから半月ほど過ぎたある日の夕暮れ、
まりさには追手もおらず食糧を抱えてゆっくりと巣に向かっていた。
しかしそれが仇となった・・。


「ゆゆっ、ゆっくりみつけたよ!!!」
「ゆっくりおかあさんにしらせてくるね!!!」
まりさの足取りがゆっくりであったため、れいむの5姉妹に後をつけられていたのだ。
「ぼうしもないげすなまりさなんて、かわいいれいむのあしもとにもおよばないのよ!!!」
れいむ姉妹が下っぱらを膨らまし、ゆっくりと踏ん反り返る。
虐待お兄さんに見られたら、即クリアボックス行きである。
程なくしてまりさの巣の位置が集落に知れ渡る。
ゆっくり達は夜が明ける頃、まりさの巣に張り込んで出てきたところを袋叩きにする算段だ。


「ゆっくりおはよう!」
「ゆっくりしていってね!!!」
まりさ親子の間で、朝の挨拶が交わされる。
しかしなぜか、辺りは不穏な空気に包まれていた。
まりさは音を立てないようにゆっくりと入口に近づくと、
外でゆっくり達がゆーゆーと息の音を立てている。数はかなり多いようだ。
「ついに・・・。見つかったみたいだね・・・。」
このまま黙ってやられるわけには行かない。子供を守るべく、まりさは最大限の抵抗を試みることにした。
まずは巣の中の持ち運べる石をありったけ集めて、入口を封鎖することにした。
1匹で作れるバリケードはたかが知れているが、それでもすぐにゆっくり達には石の壁を崩せないだろう。
壁がつみあがったらまりさは、隙間を抜けて再び外の様子を見に行った。
もう昼近いというのに、食い物のためか、帽子無しゆっくりへの復讐か、ゆっくりらしからぬ執念である。
「ゆゆっ!!!れーむおなかがちゅいてきたよ!!!」
子れいむが耐えきれなくなって叫ぶ。
「そうだな、そろそろゆっくりとつげきしようぜ!!!」
群れのまりさが叫んだ。
「「「「ゆ゛ゅーーーーーーーーーーー!!!」」」」」
他のゆっくりも一斉に叫ぶ。
まりさは元来た隙間をすり抜け、急いで内側から封鎖した。
「かわいいれいむのために、ゆっくりごはんをちょうだいね!!!」
「このとかいはなおうちはありすにこそふさわしいのよ!!!」
「ぢーんぼっ!!!」
「むきゅむきゅむっきゅーーーーん!!!」
各々が思い思いに怒号を上げる。


どしんっ!どしんっ!・・・
程なくして、石壁に体当たりが行われた。
予想以上に数が多い。崩されるのも時間の問題か。
隙間から外の様子を覗ってみる。
「ゆーえす!!!ゆーえす!!!」
ゆっくり達は息を揃えて石壁に体当たりを繰り返していた。その数は50以上であろうか。
しかしよく見てみると・・・
どしんっ
「ゆ゛あ゛っ!!!」
どしんっ
「ゆ゛べじっ!!!」
先頭のゆっくり達は、後続のゆっくり達の勢いに逆らえず、顔を強く石壁に叩きつけられていた。
どしんっ
「で、でいぶのがぁい゛い゛がお゛に゛ぎずがぁあああああ!!!」
どしんっ
「ゆ゛っ、ゆ゛がっ!!!」
どしんっ
「ゆっ、でいぶの゛お゛め゛め゛がみ゛え゛な゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛」
どしんっ
「ゆ゛っ、ゆ゛ぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
最初の犠牲者が出た。
敵のれいむの1匹は衝撃に耐えきれず、ぱぁあああん!と弾け飛んだ。
しかし後続のゆっくり達は、気にも留めず体当たりを繰り返す。
どしんっ
「あ゛、あ゛り゛ずの゛どがい゛はな゛お゛がお゛があああああ!!!」
ありすの頬が石でえぐり取られる。カスタードクリームが漏れ出していた。
どしんっ
「ぢべっどっ!!!ろ゛じあ゛っ、お゛る゛れ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん!!!」
続いてありすが犠牲となった。石の角に皮を貫かれ、辺りにカスタードクリームをぶちまける。
「み゛ょんっ!!!ぺにい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛ず!!!」
「わがら゛だい゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!ら゛ん゛じゃま゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「じ、じあ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛」
みょんが、ちぇんが、めーりんが、次々と石壁と仲間達の境界に飲み込まれていく。
まさに地獄絵図である。いくら自分を殺そうとしている相手だとはいえ、まりさもいい気分ではない。
まりさは一度巣の奥に引き返した。
子供たちは洞窟の中に響くゆっくり達の体当たり音に怯えていた。
「みんな貝がらにかくれて!!!だれもいなくなるまでぜったいにでてきたらだめだからね!!!」
そこにはまりさのこれくしょんの、子ゆっくり達より二回り大きい巻き貝の殻が3個あった。
「ゆゆっ!!!ゆっくりわかったよ!!!」
まりさ達がそれぞれ貝殻の中に身を隠す。
「お、おきゃーしゃんは・・?」
ありすが尋ねる。
「ゆっくり生き残ってみせるよ!!!だから・・・。おかあさんとのやくそくぜったいまもってね!!!」
ありすも続いて貝殻に潜り込む。
しかしまりさには生き残れる自信などあまり無かった。
自分は犠牲になってでも子供たちはなんとしても助けなきゃ・・。そう思っていたのだった。


ずががががぁあああん!!!
洞窟の中に轟音が響きわたる。遂に石壁が崩されたようだ。
「むぎゅむぎゅーーん!!!」
「ゆ゛っぐじ゛じだげっががゆ゛あ゛っ!!!」
「で、でいぶの゛ごどもがああああああ!!!」
「ま゛、ま゛り゛ざの゛お゛がお゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
また数匹、犠牲になったようだ。洞窟の入り口が開かれたことで外から甘い匂いが立ち込める。
「おきゃーしゃん、あまあまだよぅ・・・」
1匹の子まりさが呟く。
「しゃべっちゃだめよ!」
子ありすにたしなめられる。


まりさは鍾乳石の影でゆっくりと様子を窺う。
一連の出来事で幾分かは数は減ったが、30は下らない。
「ゆゆっ、げすなまりさははやくれいむにあやまってね!!!」
子供が石の下敷きとなったれいむである。ぷんぷんと下っぱらを膨らませている。
もし虐待お兄さんが見ていたら、ゆっくりとスライスされるところである。
ゆっくり達が続々と奥に進入してくる。
まともに戦っては勝ち目がない。しかし先に子供たちを見つけられるわけにはいかない。
意を決して、まりさは姿を現す。
「ゆゆっ!!!げすなまりさがいたよ!!!はやくごはんだしてゆっくりしね!!!」
れいむが飛びかかってきた。
まりさは素早く飛びあがると、上かられいむを踏み付けた。
「ゆ゛べしっ!!!」
すぐに上から大きな石を投げ下ろす。
「ゆ゛ゆ゛っ!! でいぶのあだま゛がぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
れいむは後頭部をきれいに潰されて、ゆーゆーと弱々しく息を立てていた。
切り口からは餡子が漏れ出すが、幾分かは石にせき止められている。
命を失うのは時間の問題であろう。
「よ゛、よ゛ぐも゛でい゛ぶお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」
続いて一回り大きな敵まりさが突っ込んできた。
まりさは少し前に出ると、下から思い切り飛び上り、敵まりさを上に跳ね飛ばした。
「ゆ゛ゆ゛っ!!!ゆ゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
鍾乳石に頭から貫かれる形となった。
「は、はやくまりさをおろすんだぜ!!!」
幸いと言うべきか、急所は外れており、餡子の流出も少なくぴんぴんしている。
敵に助けを求めるとは、同族ながら非常に愚かである。
これではどちらがげすかわからないと、まりさは呆れた表情であった。
が、残ったゆっくり達に四方八方取り囲まれてしまった。
「ゆっへっへっへ!!!やっぱりおまえはげすなまりさだぜ!!!
どーぞくとしておろかだぜ!!!」
一際大きなまりさが踏ん反り返り、下っぱらを誇張して下品な笑いを浮かべている。
もしAQNが見ていたら、火薬で木端微塵にされるところであろう。
さすがに栄養不足の中ひたすら暴れまわったため、まりさの体力も限界が近い。
まりさは奥の手に出ることにした。
「ふふっ、おまえは人からたべものをうばわなければいきていけない、
ただのとーぞくにすぎないんだよ。」
「だっ・・、だれうま!!!」
ゆっくりの餡子脳はそんなものだということでご容赦下さい。
大まりさがまりさに突撃を仕掛ける。
まりさは口の中に隠していた茸をかみ砕くと、正面の敵に向かってゆっくりすぱあくを放った。
すぱあくとは名だけで、ただ当たるとしばらくの間ゆっくりしてしまう光線のようなものである。
「ゆゆっ、ゆっくりしていってね!!!」
「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」
正面の敵まりさだけではなく、同じ方向にいるゆっくり達にも当たったようだ。
まりさは近くの鍾乳石をゆっくり持ち上げると、敵まりさの脳天から串刺しにした。
「ゆ゛ゆ゛っ・・!ゆ゛あ゛じっ!!!はやくまりささまをはなさないとゆるさないんだぜ!!!」
急所を貫いたはずだが、まだ息の根があるようだ。
「おまえはもう・・・しんでいる。」
「ゆゆっ?ゆ゛っ、ゆ゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
言われてみないと死んでいることにすら気付かない。
もしもえーりんが見ていたら、こっぴどく実験のネタにされることであろう。


「「「「ゆっ!!ゆゆーーーーーー!!!」」」」
掛声とともにまりさの後頭部に鈍い痛みが走る。
生き残った子れいむ達が後ろから投石を仕掛けてきたのだ。
「れいみゅのいしがあたったよー!!!すぎょいでしょ、ゆっへん!!!」
「「「ゆーー!!!れいみゅすぎょーい!!!」」」
姉妹から称賛を浴びた子れいむは、ますます天狗になる。
子供とは言え、下っ腹を憎らしく膨らませる姿を虐待お兄さんが見ていたら、
長きに渡って針攻めにされることだろう。
「「「「「ゆっくりげすなまりさをやっつけるよ!!!ゆっくりしね!!!」」」」」
続いて残りのゆっくり達が総攻撃を仕掛けて来た。
突撃してくるもの、投石するものなど様々で、味方が投げた石にゆ゛ゆ゛っと潰されるゆっくりもいたが
疲れ果てたまりさに成す術はもう残されていなかった。
ゆっくり達に体当たりされ、噛みつかれ、石をぶつけられ・・。
遠のく意識の中まりさの涙は止まらなかった。
叩きのめされる痛みからではない。
ありすとの約束を果たせなかったため。自分が死ねば次は子供たちの番であろう。




ありす・・・こどもたち・・・、ごめんね・・・・・・。ご・・・めん・・・ね・・・・・・・・・





1分とかからず、まりさはただの餡子の塊となってしまった。
多くのゆっくりの遺体が圧し掛かっているため、ぱっと見ではまりさの存在がわからない。
その様子を見ていたまりさの子供たち。
「お・・おきゃあさんっ!どぼじで、どぼしでえええええ!」
悲しい悲しい悲しい。ただこの子達には母まりさの狙いがわかっていた。
大声を出してやすやすと見つかるようなマネをしては、母を裏切ることになる。
敵の群れに対する被害も甚大であり、1匹の母れいむと数匹の子れいむを残すのみとなっていた。
一匹のまりさ相手に壊滅寸前・・・である。
それから程なくして、
「みてー!!!むこうにきれいなかいがらがあるよー!!!」
「ゆゆっ!!!れいむのかいがらさん、ゆっくりまっちぇちぇね!!!」
数多くの仲間が犠牲になったというのに、その記憶はもう吹っ飛んでいる。さすがゆっくりブレイン。
生まれたばかりの子供たちにとって体格差は歴然。もう勝ち目はないものと思われた。
一匹が貝殻を拾い上げると、
「ゆゆっ!!!なかにゆっくりできないまりさがはいっているよ!!!ゆっくりしね!!!」
帽子、髪飾りを持たないので当然襲い掛かってくる。
あるれいむは貝殻の中に舌を伸ばしてきた。
「ゆ゛あ゛っ!!!ぎもぢわるいよ!!!」
子まりさが勢いよく舌を噛み切った。
「ゆっ・・・ゆっぎゃぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!でいぶのぺろぺろがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
れいむの舌から餡子がどくどくと流れだす。舌の根は中心に近いため、
早く手当てしないと命に関わる。
あるれいむは貝殻を跳ね飛ばして割ってしまう算段だった。
「きれいなかいがらさんはかわいそうだけど・・・ゆっくりしね!!!」
跳ね飛ばした貝殻は割れることなく鍾乳石に当たって跳ね返り、れいむの右目に直撃した。
「ゆっ・・・でいぶのお゛め゛め゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
更に中の子まりさは容赦無く噛みついた。
「ゆっぎゃぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
目のあった部分から餡子がどくどくと流れ出す。失餡死には至らないが、
野生で目を失うことは命に関わる。
あるれいむは勢いよく踏みつぶそうという算段だった。
「ゆふっ!ゆっくりしね!!!」
れいむは大きく膨らんで貝殻に圧し掛かった。当然ゆっくりの硬さ、力では割れるはずがない。
「ゆっくりしね!ゆっくりしね!ゆっふ!ゆっふ!」
何度も貝殻を踏み付ける。もちろんびくともしない。
「こんどこそ・・、ゆっくりしね!!!」
れいむが高く飛び上った瞬間、中の子ありすは地面に対して垂直に貝殻を立てた。
「ゆっ・・、ゆっぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!でいぶのあ゛んよがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
れいむの足となる部分から餡子がどくどくと流れだす。今度は一番タチが悪かった。
貝殻はれいむの皮を貫き、口の中まで達していた。
膨らませていた口からひゅーひゅーと空気が漏れたことで
大量の出餡につながった。当然足を痛めて野生で動けないことは命に関わる。


「ゆゆっ、こんなゆっくりできないかいがらはさっさとしね!!!」
母れいむは自分たちの力では潰せないとわかると、
頭から湯気をぷんぷんと上げながら霧の湖のほとりまでやってきた。
「ゆっくりおみずでしんでね!!!」
母れいむは持ってきた貝殻を湖へ向けてゆっくりらしからぬ勢いで投げ込んだ。
ばっしゃん!!!
3個の貝殻は霧深き湖の底へと消えていった、かに思われた。
「やっぱりかわいいれいむはてんさいだね!!!ゆっふっふっふん!!!」
踏ん反り返って勝利の笑い声をあげる。しかしこれがいけなかった。
「ゆ゛っ、ゆるんっ!!!」
ぼっちゃん!!!
れいむは水中へ真っ逆さまであった。普通のゆっくりは泳げるわけもなく、
「ゆっくりした結果がこれだよー!!!」
とのたまいながら、体がふやけて沈んでいくのを待つしかなかった。


「「「ゆっしょ!!!」」」
ばしゃん!!!
子まりさ達が声をあげる。貝殻が浮き袋となり、3匹とも無事であった。
それだけではない。長いサバイバル生活を生き抜いたありすに起きた体の変化、
耐水性を引き継いでいたため、水に触れ続けていてもふやけて沈むことはない。
「まりさおなかがすいたよー!あれでもたべよう・・・?」
そこには、間抜けにも足を滑らせた母れいむが情けない顔で湖底に沈んでいる姿であった。
「ゆゆっ、でもおかあさんがほかのゆっくりを食べたらゆっくりできなくなるって・・。」
「ありすたちどうせぼうしがなくてねらわれるのよ!このままうえじぬぐらいだったら
あれをたべてでもいきのびるしかないわよ!!!」
3匹は意を決して再び水中に潜った。
れいむを近くの岸までゆっしょゆっしょと力を合わせて引き上げると、3匹は貪り食った。
「「「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!!!」」」
餓えた子供たちにかかれば、母れいむだった物体は
あっという間にりぼんを残して食べられてしまった。
ちなみに保護者を失った子れいむ達は、2匹は失餡死、
残りは飢餓と生き残るものは皆無であった。


11月。幻想郷にもちらほらと雪が舞い始める。
子ゆっくり達はどうにか森の中で食いつないできたが、さすがに寒くなるとそうもいかない。
夏ほど食糧は見つからないし、今更溜めてもひと冬過ごす分には到底間に合わない。
「ゆっしょ!ゆっしょ!」
子ゆっくり達は掛声とともに、ゆっくりと木の根元に細くて深い穴を掘り始めた。
そして草を詰めていく。
雪が降ってきたら貝殻ごと草の中に潜る。
天気が良い日は雪の中から食糧を探し出す。森の中なら何かしら収穫があるはずだ。
冬になってしまえば他のゆっくりが出歩く危険も少ない。
食べきれない分は巣に持ち帰って吹雪の日に備える。
防寒と食糧集めを両立することができる、画期的な巣だ。
この先、彼らの成り行きについては不明である。穏やかな日々が続いた事を意味している。
つまりは、まりさとありすの命を懸けた努力は決して無駄とはならなかったのだ。
安らかに、ゆっくりと眠れることを祈るばかりである・・・!






「こ・・・、こんな事情があったとは・・・」
月の頭脳、八意永琳は驚いた表情で鈴仙のレポートを読み進めていった。
「再現性も問題ありません。2サンプルとも調べてみましたが、全く同じ観察結果でした。」
ここは永遠亭の一角、永琳と鈴仙の真新しい研究室である。
廊下を挟んで向いの部屋、及び上のフロアーには多くの実験室が連なっている。
永琳達は元々、住居のある本館の地下に実験室を構えていたが、
ゆっくりが現れてからというものの実験の量が膨大になっていった。
そんな時、ゆっくり加工場から多額の研究費が舞い込み、本館の裏側に実験棟を建ててしまったのだ。
外向きは日本建築でなんら違和感がないが、中には最新の実験設備が整っている。
鈴仙は、竹林越しとはいえ日や月の光が入ってくる今の実験室をとても気に入っている。


永琳は元々ゆっくりを死滅させたり、特殊な生理作用を及ぼす薬剤の開発に主眼を置いていた。
最近ではゆっくりの産業的応用に力を入れ、糖分や水分が多いにも関わらず
簡単に細菌、黴や茸に侵食されない秘訣について研究を進めていた。
その結果、ゆっくりの表皮から抗菌性のタンパク質を単離することに成功した。
ゆっくり産な故非常に安価であり、医薬品、食品添加剤のみならず
抗菌ブームに乗って様々な需要があり、加工場から莫大な資金援助を受けることができたのだ。


「鈴仙、この結果をまとめてJounal of Yukkuriscience に投稿するのよ。」
「はっ・・・ はいっ!私が・・・ですか?」
Jounal of Yukkuriscience はゆっくりの研究結果についてまとめた論文専門の雑誌である。
東方求聞史紀を編纂した稗田阿求が、より苦痛の強いゆっくり虐待方法の追求のため、
永琳に話を持ちかけたのが企画の始まりであった。
今では阿求編集長以下永琳や加工場のエリート研究者を編集員兼論文審査員として招き、
幻想郷中で競うようにゆっくりに関する研究結果が投稿され、まとめられている。


「鈴仙は今回よく働いてくれたわ。にとりさんやアリスさんの協力があったから、この
ゆっくり記憶探査装置の完成が実現したのよ。だから彼らの分もしっかり頼むわよ。」
ゆっくりのコアは魔力が込められており、子供たちに受け継がれてゆっくりの原動力ともなる。
コアに封じられた記憶を探査することで数代前のゆっくりの記憶を引き出すことができる。
この機器は科学と魔法に関する知見を融合することで生まれた、夢の共演なのである。
今回の論文ではこの装置の信頼性に関する実験と、
まりさつむりに関する分析結果を同時に投稿する予定である。
「しっかし師匠、面白いものですね。新種のゆっくりの誕生にはこのようなドラマがあるとは・・・」
「ゆっくり達に限らず、生物が進化するには何かしら刺激があるから。
ゆっくりはコアの部分に代々記憶の一部が引き継がれていて、肉体的や精神的に
強い衝撃を受けると、その時期の記憶を強く残して子供に伝えていくのよ。
いわば年輪のように積み重なっていくもの。
ある程度記憶が積み重なると、それに対処すべく体が変化していく。
彼らから冬を迎えた以降の記憶を引き出せなかったのは、
それ以降進化を動機付けるに匹敵する強い刺激が無かったから。
但し化学物質の変化ではないから、魔力による解析が必要よ。」


そして永琳は続ける。
「あくまで論文は論理的に、じゃないとね。情を捨てて書かないとならないわ。
いつかは彼らのドラマも人目に出る日が来るでしょうけど・・。」
「はいっ!精一杯やらせていただきます!」
鈴仙は自分のデスクに置かれた、これまた真新しいパソコンに向かうと一心不乱にキーを叩き始めた。
装置の中では帽子の代わりに貝殻をかぶったゆっくりまりさ、まりさつむりがゆゆっと首を傾げていた。
永琳はまりさを装置から取り出すと、ゆっくりと自分のデスクの上に降ろして羊羹の一切れを与える。
「ゆー♪」
まりさは透き通った瞳をぱちぱちさせながら、永琳を見つめていた。
「たまには、こんなお遊びの研究も面白いわね。何時かは何かの役に立つかもしれないし・・・。」
まりさの髪を撫でながら、永琳は緑茶を片手につぶやいた。












あとがき
思いつきで書きだしたのはいいですが、べらぼうに長くなってしまいました。申し訳ない。
もしここまで読んでくれた方がいらっしゃったら、ものすごく感謝します。
ゆっくりの種類によって、台詞の漢字の比率を変えてみたつもりです。
全体として統制がとれていることを祈りつつも・・。
突発的つぼ焼き案を読みながらスライムつむりを連想し、
スライムがまりさになっている姿を連想し・・・
勢いで書いたはいいがまとまらなくなり、最後は雑になっています。
設定としてはありすやぱちゅりーの血も混じっているはずですが、
ややこしくなるのでまりさつむりだけでお茶を濁しました。ストーリー中の描写も少なめです。
ただぱちゅつむりという名を出したかっただけだったり。
何よりも貝殻かぶっているありすの姿が想像できませんでした。
まりさつむりの設定は序盤の描写と続く説明文として固めて書いておきました。
ありすつむりを出せなかった分、ありすの瞳を受け継いでいる点を強調しました。
この瞳が真珠のように狙われて乱獲される話も作れるかもしれません。
終盤は、何かに使おうとしていた永遠亭の研究施設とゆっくり学界の設定です。
加工場ネタや実験ネタにつながっていくと嬉しく思います。
それにしても、好色家じゃないゆっくりありすはかわいらしいものです。


Q&A
Q-1 最初に主人公ありすの両親を襲った群れは・・・どうなったの?
A-1 この時期のありすは幼く、逃げるしか無かったため戦闘や復讐の描写は避けました。
  まりさに助けられてからも、わざわざ復讐に帰る血の気なんてありません。
  彼らが愚か者なのは間違いありません。再び人間の畑を襲撃して根絶やしにされる、
  人里方面に向かったちぇんと戦闘になり滅ぼされるなど、ご想像にお任せします。

Q-2 主人公まりさ、やたらと賢いけどなんでなの?ありすはまだわかるけど。
A-2 家族が滅ぼされてしまい、生存に対する強い意志、仲間を大切に思う気持ちが芽生えたためです。
  違いはごくシンプルですが、一般的なゆっくりは自分がゆっくりできる事しか考えていません。
  特に終盤では、自分のゆっくりらいふを犠牲にしてありすや子供たちの為に尽くします。
  ゆっくりにも向上心があればきっと成長できると信じています。

Q-3 主人公まりさがれみりゃに襲われた時の描写が無い。
A-3 全体として筋は通したつもりなものの、小話の積み重ねであるため複雑化を避けて割愛しました。

Q-4 主人公ありすのとかいは発言が無いんだぜ!!!
A-4 ありす特有の高飛車さを持たず、純粋無垢な性格であるためです。
  両親に大切に育てられ、見ず知らずだったまりさに命を救われてやさしい子に育ったのでしょう。
  空気を読まないつんでれもありません。結果的に好評だったので良かったです。
  それでもまりさのために体を張ったりと、その辺のゆっくりと比べたらずっと勇敢です。

Q-5 まりさつむりの話だけで終始している。ゆっくりつむり一括で話を組み立てたら?
A-5 まりさつむりの設定はすぐに固まりましたが、他の種では差別化を図ることができませんでした。
  いくらなんでもゆっくりが人形を作ったり、ごほんを読むだけで魔法が使えたらヘンでしょ?

Q-6 最後の戦闘、一度沈んだ貝殻が浮き上がったのはどういう原理?
A-6 ちょうどゆっくりにかかる浮力と重力がほぼ同じだったと考えてください。
  れいむに放り投げられて少しは沈みましたが、幼ゆっくり達でも浮かび上がることができました。

Q-7 どぼじででいぶばっがり゛い゛じめ゛る゛の゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛
A-7 個人的に純粋なまりさやありすがかわいらしくて、
  踏ん反り返るれいむがあまりにもにくたらしかったからです。

Q-8 ありすかわいいよありす
A-8 そう言っていただけると嬉しく思います。




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最終更新:2022年05月03日 15:38