「お…さん……きて!!…っく…し…との……んだよ!!」
「うぅ…頭いてぇ…」
失敗した、昨日は次の日仕事だって言うのに飲みすぎたみたいだ
「くっそ、あの天狗め…どういう肝臓してるんだ…」
愚痴を言うのはやめよう、そもそも天狗と飲み比べなんかしたこっちが悪いんだ
「まあ、人間にしてはよく頑張った方ですよ」
とかいって肩を叩いてくれたがその結果が新聞の強制購読と二日酔いじゃ割に合わない
「おにーさん、だいじょうぶ?きょうはいえでゆっくりしていく?」
「冗談じゃない、二日酔いで欠勤なんざできるか!お前は今日はどうする?」
「今日は用事はないけどゆっくり遊びに行くよ!!」
「そうか、じゃあ…」
「おにーさんがいなかったら小屋の中でゆっくり待ってるよ!!」
「…わかった、行ってくる…頭いてぇ…」
「ゆゆっ!今日もゆっくりさとをみまわるよ!!」
れいむの日課は集会の参加か里の見回りである
里を見回って人間のルールに違反しているゆっくりがいたら注意するのだ
何度か野生のゆっくりに殺されそうになったこともあるがそのたびに知恵を使って切り抜けてきた
それに畑を荒らしたゆっくりを追い返すと里の人やお兄さんがほめてくれる、集会でもみんなに褒めてもらえるそれが大好きだった
れいむは見回りをしながら里の外周部にある原っぱにやってきた
ここは見回りに疲れた時のゆっくりポイントの一つだ、日当たりもいいし餌もある
「ゆ?」
その時目の前に一匹の野生ゆっくりまりさが現れた
「ゆゆっ、れーむ!このちょうさんを一緒に食べようね!!」
「ゆゆ…」
れいむの餡子脳裏に数日前見た夢の内容がよぎった、このれいむはまりさ種の親の裏切りで家族が全滅したのだ
「ゆっ!!いいよ!れいむもむしさんつかまえるからいっしょにゆっくりたべようね!」
このれいむはあの親とは違う、それに野生だけど畑を荒らしたわけでもない
飼いゆっくりまりさとも仲良くしているれいむは一瞬警戒したが問題はないと判断した
「むーしゃむーしゃ、しあわせー!」
「しあわせー!!」
気がつくと夕方になっていた、そろそろ帰らないといけない。そうれいむが思っていたころまりさが突然口を開いた
「れ、れいむ!!」
「ゆ?どうしたのまりさ?」
「も、もしよかったらまりさとゆっくりしてほしいんだぜ!!」
「ゆ、ゆっくり!?」
その「ゆっくり」はご飯を食べて「しあわせー」とかではない
人間でいえば「結婚しよう」に近いものだった
「ゆっ、それはいくらなんでもはやすぎるよ!!」
さすがにれいむは拒んだ、ありすでもないのに出会った当日に夫婦になるなんてできるわけがない
「ゆ?れいむはまりさのこときらい?」
「ゆぅ、きらいじゃないけど…」
「まりさはれいむのことゆっくりすきだよ!!りぼんもかみもきれいでとてもゆっくりしてるよ!!」
「ゆ、ゆぅ…わかったよ、でも、これはじゅうだいなことだからおにいさんにもきかなきゃいけないよ?」
れいむははじめて自分の容姿がほめられたことに少し浮かれ、警戒心を無くしていたのかもしれない
それに少し下手だったがお兄さんの手入れしてくれたリボンと髪の毛がほめられたことをうれしく思っていた
「おにいさん?」
「ゆっ、れいむのかいぬしのにんげんさんだよ!みためはすこしこわいけど!とてもゆっくりしていてやさいいよ!」
「人間」その言葉を聞いた瞬間まりさの口調は急に荒々しくなった
「だめだよ!!にんげんといるとゆっくりできないよ!!れいむはすぐれいむのいえからにんげんをおいだしてね!!」
「ちがうよ!!おにーさんはゆっくりできるにんげんだよ!!まりさはやせーだからしらないだけだよ!!あとあそこはれいむのじゃなくておにーさんのおうちだよ!!」
「ちがうよ!にんげんはゆっくりをころすわるいいきものなんだよ!」
「それはごかいだよ!!」
「まえだってまりさのともだちのありすがおうちですっきりしていたらにんげんにころされちゃったんだよ!!」
「それはきっとまりさがにんげんのうちですっきりしてたからだよ!!」
「ちがうよ!!あそこはありすがみつけたからありすのおうちだよ!!」
「ゆゆゆ…だめだよ!!おにーさんのわるくちをいうまりさとはゆっくりできないよ!!」
「ゆゆゆゆ…わかったよ!!まりさがれいむといっしょににんげんのいえにいってにんげんがわるいってことをしょうめいしてあげるよ!!そしたらにんげんをおいだしてくれるよね!!」
「おにーさんがわるくなかったらまりさにはかえってもらうよ!!それといえをでるのはれいむだよ!!」
ハッキリ言ってまりさがれいむに惚れて結婚を申し出る理由は十分にあった
れいむは自分の餌は自分でとろうとしていたがお兄さんのご飯を分けてもらうこともある
そのため栄養状態がよく、肌や髪もきれいだ
だがれいむにはまりさを好きになる理由はない
はっきり言ってこのまりさは平凡なまりさなのだ
たぶんれいむはお兄さんに飼われてから初めて自分に優しくしてくれた野生のゆっくりに必要以上の親近感を覚えたのかもしれない
もしくはこの優しいゆっくりが人間のルールを破り、殺される未来を想像してしまったのかもしれない
俺が家に帰ると何だかややこしいことになっていた
れいむが野生のまりさを連れて帰ってきたのだ
とりあえず二匹とも家に入れた
「ゆっ!おじさん!はやくごはんをもってきてね!!」
「だめだよまりさ!!ここはおにーさんのおうちだからおにーさんのいうことをきかなきゃだめだよ!!」
「それで?お前はこのれいむと結婚したいっていうのか?」
「そうだよ!!まりさとれいむはここでゆっくりするからおじさんはでていってね!!」
「ごめんねおにいさん!まりさはやせいのゆっくりだからにんげんのるーるをしらないの!!」
だったらなんでこんなまりさと結婚したいというのかと思った
だがれいむにとって俺に飼われてから初めてあった野生の友達を失いたくないという感情があったのかもしれない
それとまだ人間に危害を加えていないがこのままでは人に危害を加えてしまう
それだけは避けたいという保護意識みたいなものもあるのかもしれない
じっさい彼の考えは概ね当たっていた
それに彼はれいむをパートナーとして信用している、彼女が結婚したいというのならそれを応援するつもりだ
だが誤算があった
れいむはてっきり里の飼いゆっくりのだれかとすっきりしたがると思った
だがれいむの連れてきたまりさはバリバリの野生だ
「れいむが結婚したいというのならおれはそれを認めるよ」
「ありがとう!おにいさん!!」
「じゃあじゃまなおにいs「だがまりさ、何個か条件がある」」
「なぁに!!まりさとれいむにごはんもってきてくれるならすこしくらいきいてあげなくもないよ!!」
「まず一つ、れいむは俺の大事な相棒だ、だから結婚したからと言って手放すつもりはない」
「なにいってるの!れいむはまりさのおよめさんになるんだからおじさんがいえをでるのはあたりまえでしょ!」
俺はまだ十代だ、それに俺が家を出るんじゃなくてれいむが家を出るんじゃないか?
「そうかもしれんが家から出した結果お前の身勝手で人間に喧嘩売って殺されたりしたら困るからな」
「おじさんはばかだからまりさのつよさをしらないんだね!!そんなおじさんは…ゆっ!?」
まりさの頭を軽く押さえつける、こういう調子の乗ったやつは一度力の差を思い知らせた方がいい
ちなみに幻想郷に来る前従弟にそれをやって親戚一同に怒られたのは内緒だ
「ゆっくり死ねってか?とりあえずこの手を払いのけてから言うんだな」
「まりさ!おねがいだからおにいさんにさからうのはやめてね!!」
「そうだ、お前も俺が飼ってやる、ゆっくりさせてやるからせめて人間の常識だけは覚えてくれ」
「ゆっ、ゆっくりできないぃぃぃ…」
ゆっくりが一匹増えるくらいなら自分にとって大した負担にはならない
むしろ会合がない日のれいむの話し相手が一匹増えるので喜ばしいぐらいだ
だが何個か懸念材料がある
たとえば子供が生まれた場合
まだれいむもまりさも交尾した後生きていられる保証はないため交尾は禁止させた
そのためすぐ生まれてくることはないがいつか交尾して子供を生むだろう
その時は赤ゆっくりから子ゆっくりになる直前に二匹を除きゆっくりショップかブリーダーに引き取ってもらう
まりさにはまだ話していない、いつかれいむが機を見て話すことになる
そしてそのまりさ、こいつを躾けるのは苦労しそうだと思った
ゆっくりの飼い方という本にはゆっくりは元気なほどいいと書いてあるがそれはショップで買う場合である
野生のゆっくりは元気であれば元気なほど傲慢なのでしつけるのは難しいのだ
自分もこのれいむと違う出会いをしていたらきっとここまで仲良くなれなかったと思う
とりあえずれいむにまりさを教育させ、2カ月以内にゆっくりシルバーバッチを手に入れることを条件にまりさが家に入るのを許した
まりさは理解できなかったなぜれいむはこうも人間を信用するのか
最初れいむがまりさに「ゆっくりおそとでごはんをとろうね!!」といったときは耳を疑った
ご飯はあの人間が用意してくれる、なのになぜ自らご飯を取りに行かねばならないのか?
れいむは
「おにいさんにすこしでもらくさせてあげるためだよ!」
「れいむはいつもおにいさんのおせわになってるからこれぐらいはしないと!!」
といった
おかしい、なぜこのれいむはここまであの人間の心配をするのか?
れいむと人間の関係はこうだ
人間が仕事をする
仕事という意味は分らないがこれをするかられいむはゆっくりできるのだという、そして大変疲れるらしい
人間がれいむのご飯を作る
それなりにうまい
れいむがゆっくりする
この関係を見て人間はどう思うだろうか?
まりさは一瞬でこんな答えを導き出した
れいむは人間を奴隷として従えている
なぜなら人間がれいむにゆっくりプレイスを提供し、ご飯を提供する
この家はれいむの家でれいむ>にんげんなのだ
今はれいむ≧まりさ>人間だ
なのになぜれいむは人間をあそこまで心配するのか?
なぜ人間が気に入らないことをした時自分が人間を叱ろうとしたとき自分を止めるのか?
まりさはれいむが好きだった、それは今も変わらない
だがまりさは飼いゆっくりとしてのルールを学ぶことを拒否してしまった
理解の範疇を超えた事を理解させられるのは苦痛だったのだ
そして夜、人間もまりさも寝静まった頃、まりさはれいむの枕もとに立つとにやりと笑った
いまれいむとすっきりすれば間違いなく母体となった方は死ぬ
だがれいむが死ねばこの家はまりさ>人間となり自分の自由にできる
まりさの考えに考え抜いた作戦が開始されようとしていた
人間を支配しながら人間を支配するそふりを見せないれいむ
そんな野生ゆっくりの常識を超えたこのれいむへの愛情はもうほとんど無くなっていた
8月18日 2253 セイン
最終更新:2022年04月16日 00:02