「ゆっくり記憶していってね!」
「んんにゅふううううううううぅぅぅぅ!!!」
「んほおおおおおおおおおすっきりしちゃうよおおおおお゛お゛お゛お゛!!!」
この日、二匹のゆっくりは同時に達した。
口からは涎、目からは涙、全身からなんとも形容しがたい体液を漏らしながら、びくびくと痙攣している。
「ゆふぅん……ゆふぅ…」
「す、すっきりしたよぉ…まりさぁ…」
余韻に浸る二匹。
思い出すのは、自分達が今までゆっくりしてきた記憶だ。
ゆっくりまりさとゆっくりれいむは、生まれたときから仲良しだった。
自分のお母さんであるまりさとれいむの仲がよかったために、この二匹も幼い頃から共に遊んでいたのだ。
片方が池に落ちると、もう片方が助ける。
片方が蜂に追われると、もう片方が隠れる場所を教えてあげる。
片方が人間の畑でゆっくりしてると、もう片方がその危険性を教えてあげる。
そんな風に互いが互いを支えあい、今までゆっくりしてきた。
この二匹が俗に言う『夫婦』の関係になったのは、今から二ヶ月前である。
昔から仲がよかったので、夫婦になってからも二匹は仲良くゆっくりしてきた。
一ヶ月前に見つけた今のおうちも、二匹にとってはぴったりだが…
今から生まれるであろう赤ちゃんも含めると、もしかしたら狭くてゆっくりできないかもしれない。
そしたら新しいおうちを探さなきゃね、と微笑む二匹。
そうこうしているうちに、れいむの頭から蔓が生えてきた。
そして数時間後。
「ゆ!!ゆっくりそだってね!!」
「ゆっくりいいこになってね!!」
赤ちゃん達が生まれるのを、今か今かと待ち望んでいるゆっくり夫婦。
何かが起こると感じ取ったれいむが、ぶるぶると震え始めた。
「ゆ!?…ゆゆゆゆゆゆゅゅゅ…」
ぷちっ!
ぽとん!!
「ゆ!ゆっきゅりちていってね!!」
「う、うまれたよ!!まりさたちのあかちゃんがうまれたよ!!」
喜びを隠せないまりさ。
一匹目の誕生に続いて、次々と赤ちゃんが蔓から落ちていく。
「ゆぷ!ゆっきゅいちていってね!!」「ゆっくりちていってえ!!」
生れ落ちたのは、合計5匹のゆっくりれいむだった。
自分と同じ種がいないことにまりさは少し寂しく感じたが、自分の子供が無事生まれたことを思えば些細な
ことだった。
「みんな!!いっしょにゆっくりしようね!!」
涙を流しながら呼びかける母れいむ。
それに答えるようにして、子れいむたちは一斉に声を上げた。
「「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」」
その姿こそ、親ゆっくりにとって最高の幸せ。
二匹のゆっくりは涙を流しながら、頬をすり合わせていた…
数ヵ月後。
すくすくと成長した子れいむたちは、母れいむの半分ぐらいの大きさになった。
もう親に頼らず、自分で餌を取るようになる時期である。
「ゆっくりいってくるね!!」「ごはんたくさんたべるよ!!」
「みんな!!ゆっくりきをつけてね!!」
5匹の子供たちを見送る、母れいむとまりさ。
野性の世界で、親が二匹とも無事でいられるのは珍しいことだ。
大抵は交尾の段階で片方が朽ちるか、子供の成長を待たずして捕食種や他の野生生物の犠牲となってしまう。
そういった意味で、この一家は他のゆっくりに比べれば格段に幸せだった。
「ゆゆゆぅ…れいむぅ…いっしょにすっきりしようねぇ!」
「ゆふん、いいよぉ…でももっとおくにはいろうね!」
子供たちが視界から居なくなったのを確認して、互いに誘い合って巣の中へと入っていく二匹。
今いる子供たちももうじき独立するだろう。ならば、親のするべきことは新たな子供を作ることだ。
二匹は完全にその気だったのだが…第三の声が、二匹を邪魔した。
「やあ!!ゆっくりしてるかい?」
「ゆゆ!?」
巣の外からの突然の声に、二匹は驚いた。
これからすっきりしようというのに、どうして邪魔をするのか。
知らない人が居たら、気になってすっきりできないではないか!
すっきりモードに入っていた二匹は、来客に対して大いに不満を漏らした。
「ゆ!!おにーさん!!じゃましないでね!!」
「これからまりさとれいむはすっきりするんだよ!!ゆっくりどっかいってね!!」
「あぁ、ごめんごめん…そうか、君達には子供がいるんだね。じゃあ子供が戻ってくる頃にまた来るよ!」
そう言って立ち去ろうとする、見知らぬお兄さん。
「もうにどとこないでね!!」「すっきりをじゃましたおにーさんとはゆっくりできないよ!!」
巣の出口までやってきて、お兄さんを罵倒する二匹。
お兄さんはそんなの気にせずに去っていき…二匹の視界から完全に消えた。
「ゆふん…これでやっとすっきりできるよぉ…♪」
「まりさぁ、ゆっくりおくにいってすっきりしようねぇ…♪」
夜。ご飯を食べ終えて、一家で眠ろうという時間帯だ。
昼間の交尾では赤ちゃんは出来なかったが、チャンスはいくらでもある。
二匹は何とかして、新たな赤ちゃんを授かろうと考えていた。
「ゆ!!れいむいもうとがほしいよ!!」
「おかーさん!!ゆっくりいもうとをうんでね!!」
「ゆゆ…おかーさんたちがんばるからね!!ゆっくりまっててね!!」
と、家族計画を話題に談笑する一家。そこへやってきたのは…
「お!今度は子供たちも揃ってるね。ゆっくりしていってね!!」
昼間すっきりを邪魔したお兄さんだった。
「ゆゆ!?ゆっくりしていってね!!」
とりあえず本能に従って挨拶を返す子れいむたち。
それに対して、親二匹はお兄さんに対して明らかに警戒心を示していた。
「ゆ!?おにいさんはだれ!?ゆっくりできるひと!?」
「ゆっくりできないならでていってね!!ここはまりさたちのおうちだよ!!」
ゆっくりたちにとっては、ゆっくりすることが全てである。
ならば、ゆっくり出来ない者は人間であろうと何であろうと、自分の家に入れるわけにはいかない。
親二匹は、ゆっくりの本能に従って…そして、親としての責任をもって、外敵を排除しようとしていた。
「いや、お兄さんはゆっくりできるよ。皆をもっとゆっくり出来る場所に案内しようと思ってね」
「ゆゆ!?ほんとう?おにーさん、はやくれいむたちをゆっくりできるばしょにつれてってね!!」
あっさりとお兄さんに懐柔されてしまう子れいむたち。
『ゆっくり出来る』という言葉を聞いて、親二匹も興味を持ち始めた。
「れいむもいくよ!!はやくゆっくりしたいよ!!」
「よしよしわかった。今から案内するからついて来てね」
一家は笑顔でお兄さんのあとについていく。
だが、この行動が一家の命取りになることを…一家はまったく予想できなかった。
お兄さんに招かれて、お兄さんのおうちに入っていく一家。
案内された部屋は冷房が効いていて、しかもとても広かった。
「ゆゆ!!すずしいね!!」「ここならゆっくりできるよ!!」
「おかーさん!!おうたうたって!!」
「ゆっゆっゆ~♪ゆゆゆっゆ~♪ゆーゆゆーっ♪」
母れいむの歌を聞いて、楽しそうに踊る子供たち。
遠くから眺めているまりさも嬉しそうだ。
「ここをれいむたちのおうちにするね!!」
「きょうからここがまりさたちのおうちだよ!!」
「「みんなでゆっくりしようね!!」」
あまりにも快適なので、すぐにここを自分達の家にすることに決めた。
お兄さんも笑って賛成してくれたから、れいむたちはとても安心していた。
それから一週間。
気がつくと、母れいむが居なくなっていた。
「おにーさん!!おかーさんがいなくなっちゃった!!」
「れいむがいないよ!!どこにいったの!!」
優しいお兄さんは、優しく説明してくれた。
「皆のお母さんは病気を治すために、僕が狭い箱に入れてあげたんだ。今は別の部屋でゆっくりしてるよ」
「ゆ!!おにーさんがびょうきをなおしてくれるの!?」
「おにーさんやさしいね!!」
感謝の声を上げる一家に対し、お兄さんは説明を続ける。
「病気が治ったらすぐに箱から出してあげなきゃいけない。
みんなだって、狭い箱に閉じ込められたままなんて、いやだよね!」
「ゆゆ!!いやだよ!!」「せまいところじゃゆっくりできないよ!!」
「でもね、箱の中から出るには鍵を開けなきゃいけない。皆にはその番号を覚えて欲しいんだ!」
お兄さんはニヤッと笑う。
一家は最初困惑して、お互いの顔を見合わせたが…
「れいむおぼえるよ!!ゆっくりおしえてね!!」「ゆっくりおしえてね!!」
お母さんのためなら、多少の困難は乗り越えられる。
根拠の無い自信を持っている子れいむたちとまりさは、お兄さんの願いを受け入れることにした。
「よし、今から言うからゆっくり覚えてね」
「ゆっくりおぼえるよ!!」「れいむもおぼえるよ!!」
「その番号は…115だよ!」
『いち・いち・ご』
その番号が、一家のゆっくりメモリーに刻まれる。
「いちいちご、だね!!」「いちいちご!!ゆっくりおぼえたよ!!」
「みんな覚えたかな?それじゃあお兄さんはもう番号を忘れちゃうからね。
みんなが番号を忘れちゃったら、お母さんは箱から出られなくなっちゃうよ!!」
「だいじょうぶだよ!!れいむぜったいわすれないよ!!」
「れいむもわすれないよ!!こんなかんたんなばんごう、わすれるわけないよね!!」
えへんと胸を張って、子れいむは自信を見せた。
「そうだよね!!お母さんを助けるための、たった3桁の番号を忘れるわけが無いよね!!」
お兄さんはケラケラと笑っていた。
さらに一週間。
母れいむはまだ戻ってこないが、残された子供たちとまりさは仲良くゆっくりしていた。
今までは自力で食料を調達する必要があったが、今となってはそれは不要な努力だ。
なぜなら、好き勝手にゆっくりしていればお兄さんが食べ物を持ってきてくれるからだ。
以前は母れいむが歌を歌っていたが、今は代わりにまりさが歌を歌ってあげる。
「ゆゆ~ん♪ゆっゆっゆ~ん♪」
「おうたじょうずだね!!」「もっとうたってー!!」
母れいむほど上手ではないが、まりさの歌も子れいむたちにとってはお気に入りだった。
お兄さんは、部屋の中で退屈している子れいむたちの遊び相手にもなってくれた。
特に子れいむたちが気に入っているのは、一匹ずつ手のひらに乗ってお兄さんと部屋中をお散歩することだ。
「わぁい!!おそらをとんでるみたい!!」
この時だけは、普段なら経験できないほど高い場所から周りを見渡すことが出来る。
子れいむたちは、まるで自分が鳥になったような気分だった。
「はやくおりてきてね!!つぎはれいむのばんだよ!!」
「ちがうよ!!こんどはれいむがのるんだよ!!」
順番をめぐって言い争う子れいむたち。
そんな子供たちを、お兄さんは優しくなだめる。
「喧嘩はしないでね。ちゃんと全員乗せてあげるからさ」
「わーい!!おにーさんはやさしいね!!」「おにーさんだいすきー!!」
そういうと、お兄さんは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
そしてある日、お兄さんが透明な箱を一家の目の前に置いた。
その中には…
「みんな!!ゆっくりあいたかったよ!!」
一週間前から別の部屋でゆっくりしていた、母れいむの姿があった。
「ゆゆ!おかーさんだ!!」「おかーさん!!さみしかったよぉ!!」
あっという間に箱のまわりに群がる子れいむたち。
後からやってくるまりさも、嬉しさが顔全体に染み渡っている。
「まりさ…」「れいむ、ゆっくりまってたよ!!」
そして全員でお兄さんを見上げる。
「おにーさん!!おかーさんをここからだしてあげて!!」
「れいむをだしてあげてね!!これからぜんいんでゆっくりするよ!!」
すると、お兄さんは満面の笑みでこう言った。
「そうだね。それじゃ皆でお母さんを出してあげてね!」
「ゆ…?」
最初、皆はどういう意味か分からなかった。
お兄さんは、分かるようにゆっくり説明してくれる。
「この前教えてあげた番号、覚えてるよね。その番号をお兄さんに教えてくれれば、開けてあげられるよ」
「……………ゆ?」
不思議そうな顔をする一家。
…しばらく考え込んで、ある子れいむが飛び上がった。
「ゆゆ!!ずっとまえにおにーさんにばんごうをおしえてもらったよ!!
そのばんごうがわかれば、おかーさんはそとにでられるんだね!!」
「そうだよ、よく分かったね」
褒めるお兄さん。しかし、問題はその後だった。
「みんなゆっくりばんごうをいってね!!おにーさんにばんごうをおしえてあげてね!!」
箱の中の母れいむは早く出たいのだろう、まわりのゆっくりたちを急かす。
しかし、母れいむを除く一家は考え込んだまま何も言おうとしない。
「ゆゆ!!ばんごうおぼえてるでしょ!?ゆっくりおしえてね!!」
「ゆぅん…ゆっくりわすれちゃったよ!!まりさおかーさんは!?」
「ゆゆゆゆゆ………あ、おもいだしたよ!!いちごだよ!!」
「は?イチゴ?」
まりさの答えを聞いて、お兄さんは困惑顔だ。
「番号は3桁なんだよ。まりさは『15』の2桁しか思い出せなかった。
きっと十五とイチゴの語呂合わせで覚えたんだね。でも、あと1桁分からないと開けられないよ!」
「ゆぎゅうううううう!!!どおしてわすれちゃったのおおおおおおお!!??」
母まりさが、悲痛な叫びを上げる。
番号がわからない状態で一番困るのは自分だから、当然といえば当然だ。
「ゆゆ!ごめんね!!でもおもいだせないよ!!わすれちゃったよぉ!!」
「ばかばか!!みんなのばか!!そんなばかなこたちとはゆっくりできないよ!!」
顔を真っ赤にして激怒する母れいむ。
でも、箱から出てこられないのでまったく怖がらない子れいむとまりさ。
「でもおかーさんがはこのなかにいても、れいむたちはゆっくりできるよ!!」
「そうだね!!そばにいるならだいじょうぶだよね!!」
「おかーさんはずっとそのなかにいてね!!れいむたちはそのまわりでゆっくりしてあげるよ!!」
必死な母れいむとは正反対に、あっさりと諦める子れいむとまりさ。
母れいむの呼びかけもむなしく、まわりのゆっくりたちは勝手にゆっくりし始めた。
「どおじでええええええええ!!!がんばっでおぼいだじでよおおおおおお!!!」
「おかーさんはそこでがまんしてね!!れいむたちがおうたうたってあげるからね!!!」
「うたはいらないのおお!!こんなせまいところでゆっぐりでぎないいいいいいい!!!」
「ゆ~ゆゆ~ん♪ゆゆ~yぶぎゃあ!!??」
歌が途中で途切れた。
歌っていた子れいむのほうを見ると、お兄さんの拳が子れいむだったものを押しつぶしている。
ニコッと微笑むお兄さんがその拳を上げると、その手から餡子がボトリと落ちた。
「ゆぎゃあああああああああ!!!まりざのごどもがああああああああああ!!!」
「おにーさんひどいいいいいいいいい!!!どおじでぞんなごどずるのおおおおおお!!??」
「まったく…大切なお母さんを見捨ててゆっくりするなんて、酷いなぁ!」
怒っているようだが、顔は相変わらず笑っている。
お兄さんは立ち上がると、逃げ惑う子れいむたちを片っ端から潰し始めた。
「ゆぎゃッばびぃいいいいいいいいい!?」
「まったく!!」
「ぐべえああああおあおあおあおあおあ!!!」
「お母さんを何だと思ってるんだ!」
「ふぎゅおうおおあおあおあおあおおお!!??」
「しかも番号を忘れちゃうなんて…!」
「るばっやああああああああああああ!!??」
「どうして!!たった3桁の番号を…君達は忘れちゃうんだ!?」
子供を全て潰し終えると、お兄さんは立ち上がる。
お兄さんは、泣いていた。顔は笑っているが、泣いていた。
箱の中の母れいむの横で、まりさはお兄さんの顔を見上げる。
「ゆ?おにーさん……ないてるの?」
子供を潰された怒りよりも、目の前のお兄さんが泣いていることに対する興味が勝った。
今まで自分をずっとゆっくりさせてくれたお兄さん。
子供を全員殺されたが、お兄さんが泣いている原因を解決すれば、またゆっくりさせてくれるかもしれない。
そんな期待がまりさにはあったのだ。
「ゆっくりなかないでね!!まりさがなぐさめてあげるよ!!」
「……」
お兄さんは無言でまりさのほうへと歩み寄る…
が、まりさの横を素通りして、箱に収まったれいむの目の前に座り込んだ。
「ゆ!?おにーさん!!ばかなこどもをころしてくれてありがとう!!
こんどはゆっくりここからだしてね!!」
もはや母れいむの関心は、ここからどうやって脱出するか…そのひとつしかない。
自分を見捨てた子供も…かつて愛を誓い合ったまりさも、もうどうでもよかった。
「ふふふ…あっはははははははははははは!!!」
お兄さんは優しい笑顔のまま、狂ったような笑い声を上げる。
母れいむとまりさは、完全に怯えきってしまった。
まりさに至っては、恐怖のあまり硬直してしまってその場から逃げることも出来ない。
「どうして!!どうして君達はそんなに馬鹿なんだ!!
3桁の!!たった3桁の!!簡単な番号を!!どうして忘れるんだアアアアアァァァァァァ!!!!!」
バァンッ!!!
箱を思い切り叩くお兄さん。母れいむがびくっと震える。
お兄さんは何かを発散しようとしているようだった。
内に秘めた黒い感情を、すべて消化しきってしまおうとしているようにも見える。
「あぁゾクゾクするよ!!君達の馬鹿っぷりにゾクゾクするよ!!
どうして君達は到底敵わない人間に喧嘩を売るんだ!!どうして人間の作物を荒らすんだ!?
もうどうしようもない馬鹿だ!!可哀相で可哀相で、笑いが止まらないよおお!!!
君達はどうして!!どうして!!どうしてどうしてどうしてどうして!!!
どうしてそんなに!!!馬鹿なんだアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!???」
大声とともに腕を振り下ろすお兄さん。
居場所が悪かったためか、その腕がまりさに直撃し…
「ゆぶぎゃあああああ!!??」
まりさは破裂した。あっけない最期だった。
「ゆゆ!!ゆっくりやめてね!!ゆっくりここからだしてね!!」
「ふふふ…出せるわけないだろう。あの子達が、番号を覚えてなかったんだから…」
くくくと笑うお兄さん。顔は優しい笑みだが…その笑い声に、唯一生き残った母れいむは恐怖する。
「でも安心してね。れいむはこの中にいればずっと安全だよ。お兄さんも守ってあげるからね」
「ゆゆ!!やめて…ここじゃゆっくりできない……ゆっくりだしてよ!」
お兄さんは笑みを崩さず、首を横に振る。
そしてれいむが収まっている箱を抱きしめて、その場に寝転がった。
「馬鹿な子供たちは殺してあげたよ。馬鹿な恋人も殺してあげたよ。だかられいむ…お兄さんとずっとゆっくりしようね」
一体何をどこで間違えたのか。
母れいむは必死に記憶をさかのぼるが、どうしてもわからない。
どこをどうすれば、こんな目にあわずに済んだのか…
餡子脳の記憶容量では、さかのぼれるのはせいぜい数週間前まで。
唯一わかるのは、いまさら考えても遅いということだけだ。
れいむの入った箱を優しくなでる優しいお兄さん。
その笑みは、狂気に蝕まれてる。
「ふふふ…れいむ…君は一生その中でゆっくりしていってね!」
「イやだよおおおおおおオオオオオおおおおおおお゛お゛お゛お゛!!!!」
その日から。
れいむはずーっと、お兄さんとゆっくりし続けた。
晴れの日も、雨の日も、風の日も、雪の日も。
れいむは箱の中で、狭い箱の中でゆっくりし続けた。
出して、と言ってもお兄さんは出してくれない。
定期的に食べ物を与えられて、ゆっくりし続けるだけ。
お兄さんが、おじさんになって。
おじさんが、おじいさんになって。
その間も、れいむは窮屈な箱の中でゆっくりし続けた。
ある日、おじいさんが二度と目覚めなくなった。
おじいさんが布団の中からいなくなって…れいむだけが取り残された。
れいむはとてもお腹がすいてきた。そのうち意識も朦朧としてきた。
迫りくる死の影を目の前にして…れいむはやっと安堵の表情を浮かべて、こうつぶやいた。
「ゆっくりしていってね…!」
あとがき
優しいお兄さんを書いてたら、いつの間にか変なお兄さんになってたよ!!
ゆっくりしていってね!!
作:避妊ありすの人
最終更新:2022年05月03日 16:06