一匹のゆっくりまりさが林の中で、一本の木に八つ当たりをしていた
口で枯れ木を咥えて、木をぺしぺし叩いている
そのゆっくりまりさは、変わったゆっくりだった
トレードマークの帽子は、薄汚く汚れて、所々カビが生えている
そのうえ全体が茶色に変色していおり、悪臭を放っている
おまけに、帽子の周りを蝿が旋回している、このゆっくりの悪臭が彼らを呼び寄せたのだろう
ちなみに、このゆっくりまりさは、もう自分から出る臭いには慣れていた
単純な饅頭だ
「ゆっ!ゆっ!じじいのばか!!」
「まりさにどげざしてね!!!」
木をある人間に見立てて、叩いているようだ
「ゆっ!!ゆっ!!まりさをいやらしいめでみるすけべじじいめ!!!!」
「ばかでまぬけなんだからゆっくりくるしんでしね!」
しばらくは、怒りの声をあげながら木を叩いていた、しかし疲れたのだろう
肩?頭を揺らしながらへたり込んだ
ゆっくりまりさは、ついさっき受けた屈辱を思い出していた
数日前、自分の帽子を無くして困っていると人間がやってきて、さんざ自分を脅して家に連れ込んだ
帽子はすぐ見つけてこれない、食事を出すのは遅い、一緒に遊んでくれない、本当に役に立たない人間だった
人間は、可愛いゆっくりを大事にしなければいけない
ゆっくりはゆっくりどうし、助けあわねばならない
と、お母さんもよく言っていたのに最低限のルールも守れない人間だった
そのうえ、帽子をめちゃくちゃに汚して、それを頭に縫い付けられた
「まりさみたいなすてきなゆっくりにひどいよ!」
ぷくーっと膨れて、ぴょんぴょん飛び跳ねる
汚い帽子の、臭いゆっくりまりさなど、だれも素敵だとは思わないだろう
しばらくとび跳ねながら、ぐちぐち文句を垂れていたがこのゆっくり、朝から食事をとっていない
飛び跳ねるのをやめて、食欲を満たすことにしたようだ
「ゆっくりおなかがへったよ!」
と、独り言を喋りながら、お気に入りの餌場へと跳ねていく
そこには、水遊びが出来る流れの遅い小川があり、食べやすい柔らかい草も沢山生えていた、そこはまりさのお気に入りのゆっくりポイントの一つだった
友達のれいむやぱちゅりにちぇんも、この時間ならあそこで食事をとっている、お腹いっぱいになるまで草を食べたら、みんなと一緒にゆっくりしよう
そんなことを考えていると、自然に顔がにやけていた
しばらく飛び跳ねて移動すると、お気に入りの餌場についた
木の影に隠れて、そっと覗いてみる
そこでは、三匹のゆっくりが、思い思いにゆっくりしていた
「むーしゃむしゃ♪しあわせ~♪」
「むきゅ♪むきゅ♪おいしいね!」
「ふふ……わかるよ~…」
ゆっくりれいむと、ゆっくりぱちゅりが美味しそうに、草を食べている
その隣には、ゆっくりちぇんが昼寝をしていた、いつも通りみんなゆっくりしている
「みんな!ゆっくりかえったよ!たくさんよろこんでね!」
と言いながら、ゆっくり達に近づいていく
ここ数日会えなかったからきっとみんなまりさを心配していただろう
みんな、まりさの無事を喜んでくれるはずだ、そう考えた
しかし、そうはいかなかった
「むきゅ!まりさとってもくさいよ!」
「くさいまりさがかえってきてもうれしくないよ!」
「まりさがくさくてねむれないよー!」
顔をしかめながら自分から離れていくゆっくり達
3日間、腐った食べ物が詰まって臭いがしみこんだ帽子は、ゆっくりにとって耐えられるものではなかった
もちろん、帽子が変色して所々カビが生えているところも、ゆっくり達は気色悪く思った
そして自分たちのゆっくりポイントを汚される事が気に入らなかった
「ゆっう!みんなひどいよ!」
まりさは涙声で抗議の声を上げる、しかし自分たちのゆっくりポイントを汚すものに、ゆっくりは容赦しない
「まりさがくさいのがいけないんだよ!」
「そうだよ!ちぇんわかるよー」
「くさいまりさをおいはらうよ!」
ゆっくり達は、小石を口にくわえると、次々にまりさに小石を投げつけた
小石自体はそれほど痛くはなかった、それよりも、ゆっくり達の突き刺さるような視線がとても痛かった
自分を見る目は、昔のように友達としてではなく、まるで飾りを無くしたゆっくりを見るときのように冷たく、馬鹿にした目だった
そのことがまりさを一層、悲しませた
しかし自分が臭いというなら、匂いを消せばいいと思った
「ゆ゛っ!わかったよにおいをけすからまっててね!」
臭いを消すために小川に入ろうとする、しかし、ゆっくり達はそれを許さない
ゆっくり達は、まりさに向かって小石を何度も投げつける
特にちぇんは、二本の尻尾を使って素早く、二つの小石を同時に投げ付けた
そのうちの一つが、まりさの歯に当たるゆっくりの歯は衝撃に弱い、一撃でへし折れてしまった
周りの歯も巻き込んで、合計三本の歯を失ってしまう。
「ぎゅぅ!びゅい!ひゃぁいよ゛!」
口から少量の餡子と、ひび割れた小さな白い歯を吐きながら咽び泣くまりさをほかのゆっくりたちは、薄笑いを浮かべながら罵る
「くさくてきたないからだでかわにはちかよらないで!」
「むきゅ!ぱちゅりたちのかわなんだからよごさないで!」
「くさいまりさはよそであらってねー!」
ゆっくりにとって、髪飾りは体の一部も同じ、帽子が汚いということは体も汚いということなのだ
そんな、体の汚いまりさに、自分たちの楽しい水場を汚させるはずがなかった
「とっとときえないとまたいしをあてるよ!」
「ゆっくりせずにすぐきえてねー!」
「むきゅ!にどとかおをみせないでね!」
三者三様、それぞれまりさのことを罵りながら、忌々しそうに、あの冷たい眼で見つめている
まりさは、背中に三匹の罵声を聞きながら、もと来た道を戻って行った、眼からは止めどなく涙を流していた
「ゆ゛ぅ~ひっ…っぐひっ…ゆっゆ~ん゛」
必死に声を押し殺しながら、まりさは泣いた
今まで通り、みんなと仲良くゆっくりできるとおもっていたし、そうしようとも考えていた
しかし、今の臭いまりさとゆっくりしてくれるゆっくりなんていないんだ、そう思うと、涙はいくらでも溢れてきた
「ゆっ~んゆぅえ~ん…ぐぇぇぐひ…ぐっ…ぐぐ……うぉうう」
泣きすぎて口からさらに餡子を吐き出すと、餡子と一緒に折れかかっていた歯が、また一本抜けてしまった
痛みと悲しさで、しばらくまりさは一匹で泣いていたが、帽子が臭いから嫌われるのならやはり、帽子を洗うしかないと決断した
きっと帽子を洗えればあの友達も、昔みたいに自分に笑いかけてくれる
「まりさ!ごめんね!」などといって、ほほをこすり合わせてくれる
また、みんなと一緒に遊べる
しかし肝心の、帽子を洗える安全な場所が思いつかなかった
近くに川のあるゆっくりポイントには、他のゆっくり達もいるだろう
ついさっき受けた仕打ちを思い出すと、そういったところには行けない
結果、まりさに残された選択はゆっくりできない場所、天敵などが多くいる危険な場所
流れが非常に速く、普通のゆっくりは決して近寄らない川
この二種類しか残されていなかった
まりさは、今までほとんど使うことのなかったゆっくりブレインをフル回転させてどちらに行けばいいか考えた
とりあえず、まりさは天敵のいる可能性のある、この森を抜けた先にある沼を目指すことにした
蛇や毒トカゲがいるが、いざとなったら逃げればいいと気楽にそこに向かうことにした
川の場合、流れに巻き込まれたら、確実に死んでしまう
数刻程、時に飛び跳ねるて、時に這いずりながら沼に向かって移動をした
ここらへんには生体のゆっくりを食べられるような生物は存在しない、その点は心配しなくともよかった
まりさが警戒したのは、皮肉にも同族のゆっくり達だった
ついさっき、仲間から受けた痛みと恐怖を思い出すと、体が震えた
自分のすぐ近くをゆっくりが通る時は、息を殺して隠れていた
いつもなら、「ゆっくりしていってね!」と駆け寄って行って、一緒に狩りをしたり、大きな木の木陰でゆっくりシエスタしたりして友達になるのだが
今のまりさにはそんなことは無理だった
「ぼうしをきれいにすればむかしみたいにみんなとゆっくりできるよ…」
周りのゆっくりに聞かれないよう、小さな声でまりさは、自分を鼓舞した
その後も、他のゆっくりからうまく隠れながら、沼地へと一歩一歩近づいて行った
沼地まであと少しというとき、不幸なことにまりさはゆっくりと出会ってしまった
ありすとれいむ、そしてまりさの三匹に見つかってしまった
「ゆっ!みてありす!くさくてきもちわるいのがいるよ!」
「あんないろにぼうしをそめるなんてとんでもないなかものね!」
「ゆっくりまりさのはじさらしなんだぜ!みんなでいしをぶつけるんだぜ!」
三匹は楽しそうに石を投げつけてきた、必死に逃げるまりさを面白がって、三匹は執拗に追いかけてくる
「ゆ゛っ゛ふ!ゆ゛っ゛ふ…おってっこなぎゅる゛!!」
アリスの投げた小石で、まりさの背中の皮が少し避ける、そこから餡子が少しづつ出てくる
激しい運動と緊張、恐怖や悲しみで、まりさの餡子はほっかほっかだった
ゆっくり美食家も、この餡子なら、満足してもらえるだろう
「とかいはのないすしょっとよ!」
「つぎはいっせいの!でいっしょになげるんだぜ!」
「ゆっ!いいねいいね!れいむはあしをねらうよ!」
「「「いっせいのーで!!!」」」
それぞれ、好き勝手なことを喋りながら、また石を投げてきた
ありすの石は当たらなかったが、まりさの石は丁度、頭と帽子を縫い付けていた糸を切り裂いた接合部から、じわじわとあんこが漏れ出した
足を狙っていたれいむは、投げ損ねて、ありすのあけた穴がに再び当たった
新たに与えられた衝撃で、傷口が大きくなりさらに多くの餡子が飛び出た
「ゆぅえ゛!」
まりさは背中の激痛に耐えながら、沼地に向かって必死に這って行った
このゆっくりたちもきっと、帽子を綺麗にすれば、仲良く遊べる友達なんだと自分に言い聞かせながら
「ゆぅえ゛!だってさ!」
「おおきもい!きもい!」
「おもしろかったけどさすがにころししゃうとれいむたちがきけんだよ!そろそろばんごはんをとりにいこうよ!」
「「「それじゃあ!ゆっくりせずにはやくしんでね!」」」
三匹のゆっくりは、楽しそうに跳ねながら消えていった
ゆっくりまりさは、それからしばらく這うようにして移動を続けた、口からはボトボトと餡子が流れている
背中や、頭部からも、液状の餡子がゆっくりと流れていく、しかしぴょんぴょん飛び跳ねなければ、それほど大きなダメージにはならない
疲労と、体の苦痛から、無意識に跳ねずに、這って移動したことは、まりさにとって幸運だった
しばらくすると、目的の沼が見えてきた、ここで帽子を綺麗にすれば普通のゆっくりに戻れる
そう思うと心の底から嬉しかった
「ゆふぅ…ふぅゆっくりついたよ…」
軽く飛び跳ねると、帽子が落ちたあの時の石で、紐が切れたんだろう
これで、帽子が洗いやすくなった
臭く、汚い帽子を咥えて移動するのはつらかったが、この苦労ももうすぐ終わり、と思うと辛さも吹き飛んだ
若干、跳ね気味に沼に近付いていく、餡子がぼとぼと落ちていくが、気にしていられない
「ゆっくりきれい~♪ゆっくりあらうよ!」
帽子を水につけると甘噛みして脱水する、ゆっくりにとって、髪飾りの洗濯はこれだ
泥が少し付いた位なら、これで汚れを洗い落とせる、しかし今回の汚れはそんな生半可なものではなかった
いくらやっても汚れが落ちない
これには、さすがのまりさも焦り始める
「ゆっくりせずにはやくきれいになってね!」
涙目になりながら、虚しい洗濯を続けるまりさ
それこそ、洗剤がなくては、この汚れは落とせないだろう
「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅ゛!ごれ゛じゃ゛ゆっぐり゛でぎな゛いよ゛ぉ!」
まりさは大声で叫んだ、この臭い帽子が自分のものである以上、どのゆっくりからも嫌われ、つまはじきに会うのだ
自分には本当に、仲間がいないし、これからも作れない生涯まりさは一匹で生きなければならない
行く先々で石を投げ付けられ、冷たい、氷のような視線を浴びせられ続ける
二度とみんなと一緒にゆっくりできないのだ
その事実が、まりさを壊した
「ゆっふ…ゆふふ……ゆふふふふふふふふふ」
虚ろな目で、乾いた笑い声を発するゆっくりまりさ、いや、ついさっきまでそうだったもの
すでに、まりさはゆっくりとして、大事な部分が壊れてしまっていた
その後、帽子が汚れる前にまりさが暮らしていた森で、ゆっくりの変死体が見つかるようになった
いずれも、後ろから噛みつかれ、中の餡子を吸い出されたあと、髪飾りにその餡子を塗られていた
仲間がどんどん狩られていくことに恐怖したゆっくり達は、みんな別のゆっくりポイントを探して、その森から逃げて行った
ゆっくりが消えた後も、その森からは時々「ゆふふ…ゆふふふふ」という、乾いた笑い声が聞こえてくることがあるという
作:ゆっくりな人
以前書いた虐待
最終更新:2022年05月04日 22:07