「ゆっくりサドンデス」




 家に帰り、鍵を開けようとすると…何故か、鍵は開いたままだった。おかしい。朝、家を出ると
きは確かに鍵をかけたのに。何より、蝶番に挟んでおいたシャープペンの芯が折れて、落ちている
のだ。嫌な予感がする…

「なんだこれは?」

 中に入ってみると、そこには無数の足跡のようなものがあった。しかし、普通の足跡とは違う。
少なくとも、人間の足跡ではない。形は…綺麗な円形だ。僕はこの足跡の主がどんな生き物か知っ
ている。この数からすると…30匹ぐらいか。かなり多いな。

 足跡はリビングまで続いている。ああ、おそらく僕の嫌な予感は的中するだろう。リビングに至
る廊下を歩き、ドアを恐る恐る開くと…

「これっ…はっ…!?」

 言葉が喉に詰まった。大型液晶テレビ、高級ソファー、イタリア直輸入のガラス細工…他、部屋
中全体が荒らされていた。テーブルの上に用意しておいた夕食も、食べかすだけしか残っていない。
そして…

「「「ゆっくりしていってね!!」」」

 総勢30匹のゆっくりたちが、神経を逆撫でする台詞で僕を出迎えた。僕はこぶしを強く握り締め
る。いったい何がどうなってるって言うんだ!?こいつらはどうやって家の中に!?

 そんな中、一匹のゆっくりれいむがゆっくり3匹分だけ前に出た。

「おかえりなさい!!ゆっくりしていってね!!」
「……!!」

 全国模試一位の応用力がある僕は、すぐに理解した。

 このゆっくりれいむは、僕が愛玩動物…兼虐待動物として3日前から飼っているやつだ。多少虐待
しても30分もすればケロリと忘れてしまうから、ストレス発散の対象として重宝している。

 家を出るときは、あらかじめ用意した夕食にガラスケースを被せて辞書を2冊ほど載せておいた。
だから、ゆっくり1匹ごときの力では夕食に口をつけることなどできる訳がないのだ。毎日そうする
ことで、食べ物が見えるところにあるのに食べられないという苦しみを味わわせ続けてきた。

 そして今日。ゆっくりれいむは部屋を跳ね回って遊んでいるうちに、玄関の扉を開けたのだろう。
外に出たゆっくりは仲間を呼び寄せ帰って来た。30匹もいれば辞書2冊の重さなど問題にならない。
僕の夕食を食べつくした後は、30匹が思い思いに跳ね回ってゆっくりしたのだろう…

「くそっ、やられた!!」

 床を思いっきり殴りつける。その大きな音に、30匹のゆっくり達はびっくりして跳ね上がる。

「おにいさん、どうしたの!?」
「びっくりしたよ!!ゆっくりできなかったよ!!」
「びっくりさせないでね!!ゆっくりさせてね!!」

 ゆっくりめ…こんな屈辱は生まれて初めてだ!!

「おにいさん!!れいむのなかまだよ!!かわいいでしょ!!」
「かわいいでしょ!!かわいくてごめんね!!」
「それよりおなかがすいたよ!!ゆっくりごはんをもってきてね!!」

 一匹でもウザったい害獣を30倍に増やしておいて、「かわいいでしょ」などとほざくゆっくりたち。
暴れまわったゆっくりたちは、空腹を訴え始めた。そして、この流れだと…

「れいむはここでずっとゆっくりするよ!!」
「ここはまりさたちのおうちだよ!!れいむもゆっくりしていってね!!」
「おにいさんはゆっくりできるひと?できないならでていってね!!」

 ゆっくりたちの生態は知っている。都合のよい住処を見つけたら、まず食事を要求し…最終的に
は“自分の家”宣言をするのだ。今すぐにでもバラバラにブチまけてやりたいが、それでは僕の
溜飲が下がらない。もっと……もっと苦しめて……!!

「おにいさん!!れいむの連れてきたともだちかわいいでしょ!!ゆっくり感謝してね!!」
「………」

 3日間飼っていたゆっくりれいむが、僕の目の前で胸を張る。平手でぶっ飛ばしそうになったが、
歯を食いしばって何とか耐えた。

「れいむのともだちいっぱいいるから、おにいさんもさみしくないよ!!ゆっくりうれしいでしょ!!」
「…あぁ、うれしいさ」

 僕のストレス発散の道具を、30倍に増やしてくれたんだからな…

「さて、ゆっくりしているところ悪いけど、別の場所に移動しようか」
「そこはゆっくりできるところ?」
「あぁ、こんなところよりずっと綺麗で、たくさんゆっくり出来るところだよ」
「やったあ!!みんなでゆっくりしていこうね!!」
「ゆっくりー!!たくさんゆっくりするよ!!」

「計画通り…」

 僕の声が聞こえなかったのか、聞こえても気にならなかったのか、ゆっくりたちは反応しない。
そんなゆっくりたちは、列を成して空室に入っていく。

 部屋の真ん中にゆっくりたちを集めて、周りを柵で囲む。見たところ、このゆっくりたちはまだ小さい
らしいから、この程度の高さでも飛び越えることはできないだろう。

「どうしてとじこめるの!!ゆっくりできないよ!!」
「これから食べ物を持ってくるよ。それまではその中でゆっくり待っててくれ」
「わかった!!ゆっくりまってるよ!!」

 多少窮屈でも、食べ物のためなら我慢する。そんなゆっくりの生態も、僕はよく知っている。だが、
僕が用意するのは食べ物ではない。食べ物の代わりに僕は五寸釘と金槌を持ってきた。
食べ物を持ってくるものと思っていたゆっくりたちは、僕が手にしているものを見て不平不満を口にする。

「おにいさん!!たべものはどうしたの?」
「おなかすいたよ!!ゆっくりできないよ!!」

「あー、もう少し待っててくれ」

「もうまてないよ!!はやくゆっくりもってきてね!!」
「おなかすいた!!おなかすいてゆっくりできないよ!!」

 言っても分からぬ馬鹿ばかり…
まあ、そんな馬鹿とももうすぐさよならだ。そして、僕はゆっくりを“かわいがりはじめた”。

「あーお腹すいたなー。お、ちょうどいいところにゆっくりがいるじゃないか」
「ゆっ!?ゆゆっ!!?」
「ゆっくりは甘くておいしいんだよなー。じゃあ今日の夕飯はゆっくりだ!」

 僕の言葉を聞いて、うろたえ始める30匹のゆっくり。もう空腹などどこかへ飛んでいってしまったようだ。

「れいむはおいしくないよ!!ゆっくりたべないでね!!」
「まりさもおいしくないよ!!たべるなられいむをたべていってね!!」
「ゆーっ!!もうやだ!!おうちかえる!!おにいさんとはゆっくりできないよ!!」
「おにいさんあっちいって!!れいむをたべようとするおにいさんはでてって!!」

 柵を越えて逃げようとするが、そんなことは無理だ。こいつらの体格でこの柵を乗り越えることはできない。

「お前達、食べられたくないか?」
「うん!!ゆっくりたべないでね!!」
「お兄さんはお腹が空いてるんだ…でもお前達が食べられたくないなら、しょうがないな」
「ゆっ!?」

 期待に目を輝かせるゆっくりたち。このまま開放されるとでも思っているのだろうか。だが、そんなことは
しない。全員食べるよりも酷い…地獄絵図をお前達に見せてやる。

「お前達、食べられたくなかったら他のゆっくりを食べろ。最後に残った一匹は食べないでやる」
「ゆっ………?」

 足りない頭で何を言われたのか必死に考えている、という顔だ。中身が餡子じゃ無理もないか。

「へちゃむくれの饅頭にも分かるように言ってやる。生き残りたかったら、他のゆっくりを食い尽くせ!!」
「ゆ゛ーーーーーーっ!!!」

 それがスタートの合図となった。一匹のゆっくりまりさが他のゆっくりに襲い掛かる。他のゆっくりに比べて
ゆっくりまりさは生きるためなら手段を選ばない、一言で言うと悪い性格のゆっくりだ。

「いだいーーー!!!だべないでええええ!!!」
「うっ…うまっ…これうまっ!」

 隣のゆっくりれいむをむしゃむしゃと食べるまりさ。それを見て他のゆっくり達も共食いを始めた。

「びゃああえがあああ!!どおじでえ゛え゛え゛え゛!!」
「ゆっぐりできな゛い゛よ゛お゛お゛お!!」

 ここまでは普通の虐待。ゆっくり虐待においてセオリーとされている方法だ。
そして…今、最初のゆっくりまりさが一匹目を食い終えたところだ。

「ふむ、あいつが今のところ優勢だな」

 僕は次の計画に移ることにする。

「すうっ……ゆっくりしていってね!!!!!」
「ゆっ!!??」

 可能な限りの大声で、お決まりのフレーズで呼びかける。それに反応したゆっくりたちは皆、びっくりして
食い合いを止めてしまう。何が起こったのか数秒遅れで把握すると、僕の方を向き…

「「「ゆっくりしていってね!!」」」

 今まで醜い争いを繰り広げていたことも忘れ、僕に笑顔で応じる。こればかりは本能だから逆らいようが
ないのだろう。つくづく馬鹿なやつらだ。馬鹿すぎてかわいそうになってくる。だが、これでゆっくりたちの
動きは止まった。やるなら今だ。

 僕は柵に入って、先ほどのゆっくりまりさを見つけると、そこから動かないように手で固定する。

「ゆ!?ゆっくりだしてくれるの!?」

 おそらく、一番がんばった自分は特別だから、特別に出してもらえると思ったのだろう。
餡子でものを考えるから、すべてを前向きにしか捉えられないらしい。確かに、特別であることにかわりはない。
…お前の考えてる“特別”とは、まったく逆だけどな。

「そおおぉいっ!!」
「うゆぎゅう゛う゛う゛う゛う゛!!」

 ゆっくりまりさの頭上から、真っ直ぐ五寸釘を打ち下ろしてやった。ガンガンと打ち込んでいくたびに、
まりさはビクビクと痙攣したように震える。今、30匹のゆっくりたちの中で一番優勢だったゆっくりが、床に
しっかりと固定されてしまったのだ。

「どおじでえええ!!ゆっぐりざぜでぐれ゛な゛い゛の゛お゛お゛お゛!!!」

 痛みに暴れ狂うが、床に打ち込まれた五寸釘にど真ん中を貫かれているのだ…逃げられるわけがない。
そして、僕は他のゆっくりたちに呼びかける。

「おい、お前達、どうしたんだ?」
「ゆ゛ゆ゛っ!!?」
「早く食っちまわないと、お前達を食べるよ?」
「ゆ゛ゆ゛ーーーーーっ!!!」

 捕食対象となるのは…当然、五寸釘に貫かれて動けないゆっくりまりさ。低脳なゆっくりたちも、
最小の労力で生き延びるにはどうしたいいか…それくらいはわかっているらしい。すべてのゆっくりが
一匹のゆっくりまりさに群がり、食い漁る。

「ぎゅあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!はずしでえ゛え゛え゛え゛!!」
「まりさはゆっくりしんでね!!うまっ…これうまっ!!」
「まりざがああ!!まりざがだべるのお゛お゛bっぼばあ゛お゛!!!」

 五寸釘に打ち抜かれさえしなければ、お前の勝ちだったのにな。あぁかわいそうかわいそう。
そのうちゆっくりまりさが食べつくされると、先ほどと同じように争いが始まった。一匹が他のゆっくりを
圧倒しているのを見ると、また先ほどのゆっくりまりさと同じように五寸釘で打ちつけ、
他のゆっくりたちをけしかける。

「うめ…これめっちゃうっm!みぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「その下品な言葉遣いは止めろ。食べるときは『サイン、コサイン、タンジェント』だ」

 ぐりぐりと五寸釘をねじ込みながら、他のゆっくりたちをにらみつけて“教育”する。
僕だったら恥ずかしくてこんなこと言えないけどな。それ以降、他のゆっくりたちは口汚い言葉を吐かなくなり、
『サイン、コサイン、タンジェント』と優雅な言葉遣いをするようになった。恐怖を与えれば、ゆっくりたちは
一発でモノを覚える。

 でも、食事のスピードで抜きん出るゆっくり…そいつらに五寸釘を叩き込む僕の手は緩まない。

「どおじでごんなごとずるの゛お゛お゛お゛お゛!!!」

 と抗議の声が、まわりのゆっくりたちからも上がる。

「お前達が食われないように、強いゆっくりを懲らしめてやったんだ。やさしいだろう?」

 同じことをしばらく繰り返す。そのうち、馬鹿なゆっくりたちも理解し始めた。
 他のやつらを食べなければ、自分が食べられる。しかし、あまりに相手を圧倒してしまうと自分が五寸釘で
貫かれる。僕の“弱きを助け、強きを挫く”作戦に、ゆっくりたちはどうしたらいいのか分からなくなっていた。

「ゆっ…えぐっ……ゆっぐりざぜでよ゛お゛お゛!!」

 食わなければ食われる。食いすぎても痛い目にあう。混乱のあまり泣き出すゆっくりもいた。そんなゆっくりも
僕は五寸釘でゴスンと打ち付ける。

「ゆぎゅう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛ばあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「あんまりゆっくりしてるとおしおきだ。言っただろう?僕は“お腹が空いてる”って」
「どおじでえええ!!どおじだらい゛い゛の゛お゛お゛お゛お゛!!??」

 ゆっくりしすぎても、食べ過ぎても…五寸釘の餌食になる。でも、食べなければ生き残れない。
そんな挟みうちの状況は、ゆっくりたちの精神を確実に蝕んでいた。そうだ、これが見たかったんだ!!
皆が僕の作ったルールに従い、そして苦しむ。ただ潰すだけじゃない。精神的に苦しめなければ意味がない!

 数十分後、生き残りは2匹のゆっくり―――まりさとれいむだけになっていた。そのうちれいむの方は
偶然にも僕が今まで飼っていた、あのゆっくりれいむだ。

 2匹だけになると、本当にどうしたらいいのかわからなくなるのだろう。
ゆっくりした方が打ち抜かれるのか、食べたほうが打ち抜かれるのか。そんなことを空っぽの頭で考えるから、
2匹は混乱してしまってその場をうろうろし始めた。

「よし、もういいだろう」
「ゆっ!?ゆっくりだしてくれる?」
「ゆっくりたすけてくれるの!?」

 僕は2匹のゆっくりを持ち上げて、柵から出る。もうあのまま放っておいても面白くなさそうなので、
別の方法をとることにする。

 一本の紐を用意し、両端を2匹のゆっくりにくくりつけて、ぴんと真っ直ぐ伸ばして床に置く。
ちょうど、綱引きと同じ状態だ。そして紐の真ん中に僕は顔を近づける。

「僕は目の前に来たほうのゆっくりを食べることにしよう。
 食べられたくなかったら、その紐を思い切り引っ張るんだ」

 僕が大きく口を開けると、その意味を理解した2匹は正反対の方向に逃げ出す。しかし、紐に引っ張られて
離れることができない。2匹の力が拮抗しているから、ぴくりとも動かないのだ。

「ゆっ…ゆっ…まりさはゆっぐりしてね!!」
「ゆっ…ゆっ…れいむがゆっくりじてね!!」

 自分が逃げ延びるために、ぴょんぴょん跳ねながら相手にゆっくりすることを要求する2匹。
横に逃げることも思いつかない馬鹿だから、きっと力尽きるまで紐を引っ張り続けるのだろうな。
僕はちょっと手を加えることにした。

「そーれ、お前のほうが美味しそうだな」

 僅かに優勢だったまりさの方をひっぱる。それに伴って、れいむは同じ距離だけ離れていった。

「いやあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!まりざばおいじぐな゛い゛よ゛お゛お゛お゛!!」
「ゆっ…ゆっ…おにいさんありがとう!!ゆっくりしていってね!!」

 ダメだこいつ…早く何とかしないと…
 僕に助けられたと思ったれいむは、僕に感謝の言葉を告げる。3日間やさしくしてくれたおにいさんが
今回も自分の味方をしてくれたと思っているのだろう。本当に自分に都合のいい考えしか浮かばないやつだ。
そんなことをしているうちに、今度はれいむが優勢になり、まりさが僕の口に近づいてくる。すると…

「うーん、やっぱりれいむの方が美味しそうだな」
「ゆゆっーーー!!い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

 れいむを自分のほうに引っ張り、まりさを遠ざけてやる。自分の努力が一瞬で水の泡になったれいむは、
絶望した表情を見せるがそれでも諦めずに跳ね続ける。

「おにいさん!!れいむをたべてゆっくりしていってね!!」
「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!だべないでよ゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」

 数分の戦いの末、れいむが僕の口まであと数センチというところまで迫ってきた。

「おー、美味しそうな饅頭だな。いただきまーす」
「なんでええええええ!!!れいむおいじぐないよばお゛お゛あ゛お゛お゛!!!」
「おにいさん!!まりさといっしょにゆっくりしようね!!」

 もう勝ちを確信したゆっくりまりさ。息も絶え絶えになり、愕然とした表情のゆっくりれいむ。そして…

 僕は振り上げた拳を…

「ゆぎゅうううううあああああああお゛あ゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!!」

 優勢だったゆっくりまりさに振り下ろした。ふてぶてしい表情が一瞬で歪む。
一気に押しつぶされたまりさは、体中至る所から饅頭をぶちまけながら…絶命した。

「おにいさん!!たすけてくれてありがとう!!ゆっくりしていってね!!」

 残った最後の一匹。ゆっくりれいむが飛び跳ねながら僕に近づいてくる。僕の計画も、残り僅かだ。
生意気にも寄り添ってきたれいむを、僕はデコピンで弾き飛ばす。

「ゆゆっ!?なにするの!!ゆっくりあやまってね!!」
「…おい」
「ゆっ…!」

 ドスの聞いた僕の声に、れいむは震え上がる。

「これ、食べろ」

 指差したのは、ゆっくりまりさの残骸だ。それをみたれいむは、ガクガク震えながら…

「むりだよ!!そんなのたべられないよ!!」
「どうしてだ?お腹すいてるんだろう?」
「たべられないよ!!それはまりさだもん!!たべないよ!!」

 こいつ…ついさっきまで30匹の共食い競争をしてたのを忘れたのか?
その口についてる餡子は、いったい何だって言うんだ?

「いいから食べろ。10秒以内に食べないと……お前も食べちゃうよ♪」
「ゆゆーーーっ!!!??」
「数えるぞー。10…9…」
「ゆっ!!たべる!!たべるよ!!だかられいむをたべないでね!!」

 10秒以内と言っても、ゆっくりの頭じゃ分かるまい。しかし、早く食べないと自分が食べられることは
わかったらしい。

「むしゃ…むしゃ…さいんっ…こさ…いんっ」

 餡子の脳みそで、さっきのルールを覚えてたのか。思わず笑いそうになった。
あー、腹筋に来る笑いだね、これは。でも残念、そんなれいむとももうお別れだ。

「7…6…5…」
「たんっ…じぇんとぅ…さいっ…ん…こさいんっ…たん…」
「……4321ゼロー!!はい時間切れー♪」
「ゆゆゆっーーーー!!?ぎゃああらお゛い゛お゛い゛あ゛え゛お゛り゛な゛お゛ろ゛い゛がじょれ!!!!」

 3日間一緒にいた仲だからな、最後は一思いにぶちまけてやった。僕って優しいな。

 こうして悪いゆっくりを虐待し続ければ、いつしか馬鹿なゆっくりたちも気づくだろう。
“悪いゆっくりだけが酷い目にあっている”と。ゆっくりたちに僕の存在を知らしめるんだ。そして…

「僕は新世界の神となる!」

 …なーんちゃって。

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最終更新:2016年11月07日 16:54