• 現代にゆっくりどころか原作キャラまでいます。
  • ワンフェスのシステムを知っていないと話がわからないかもしれません。

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俺はフィギュアモデラー。虐待お兄さんではない。
今はワンフェスに出品するフィギュアをキバって作っている所だ。
その日、庭で缶スプレーのサーフェイサーを吹き、戻ってきたら…そいつらがいた。

「まりさはやっぱりつよいね!」
「にんげんさんなんかまりさにかかればこうだぜ!」
「おとうしゃんすごーい!」

棚に飾っておいたフィギュアは床に叩き落とされ、未開封の箱は上で跳ねたのかボコボコの状態。
作業しながらつまんでいた菓子はきれいさっぱり食い荒らされ、カスが飛び散っているのみ。
あっちではペットボトルが倒され、床に広がったコーラだまりに子ゆっくりがたかっている。
おかげで積んであった模型誌がベロベロだ。

愕然。ちょっとの間ならと、窓を開けっ放しにしていたのがまずかった。
そして何より許せないのが…作りかけのフィギュアに、まりさが体当たりをして壊していることだ。
さっきの台詞から察するに、このフィギュアを人間に見立てて、バラバラにしたことで倒したつもりになって
いるのだろう。
怒髪天。そいつは今度のワンフェスに出品するため、何箇月もかけて作ってきた原型だ!

「テメェら…何してんだオルアアアアアアァァァァァァ!!!!」
「ゆっ!ここは「ウルセエエエエエエェェェェェェ!!!!」」「ゆぎゃっ!」「ゆぶぇ!」
俺はゆっくりどもを片っ端からひっつかむとamazonの段ボールに投げ込んだ。

たった今俺は虐待お兄さんにクラスチェンジした!しかしモデラー魂(スピリット)も失っていない。
こうなったらモデラー流の虐待をたっぷり味わってもらうとしようか。

捕まえたのは親のまりさとれいむ、子まりさ×2、子れいむ×2。
俺の苦労を台無しにした親まりさをいたぶるのは最後だ。それまで子供やつがいが無残な姿になるのをじっくり
見せつけてやる。



「ということで…まずはお前からだ!」
トップバッターとして箱の中から子れいむを取りだした。
「おちびちゃんをはなせええええ!」「なにするんだぜくそじじい!まりさはつよいんだぜ!」
親たちがギャアギャア騒いで段ボールをガタガタ揺らす。
対してつかみ上げた子れいむは、何が起きているのかまだ理解しきれていない様子だ。
これは好都合。

「おそらをとんでるみたい!」とか言っている子れいむの髪にハリガネを巻きつけ、紙コップの中に吊るす。
「シリコーンゴーム、スターンバーイ!」
俺はサイバー○ップのブラック○ェンバーよろしく、型取り用のゴムが入った缶をつかみ上げ、紙コップの横に
降ろした。
これは液状のゴムが硬化剤を混ぜることで固まるもので、ガレージキットを作る際に使われる。
これを原型の周りに流し込み、複製用の型を取るのだ。
そう、記念すべき初虐待は“ゆっくり型取りの刑”である。

ちなみにこのゴム、固まるのがまさにゆっくりとしており、その間は何もできないため最初に持って来たのだ。
このように、時間配分を効率的に行うこともモデラーに取って必須なスキルなのだ!すべてのモデラーがこうだ
と思っていただきたい!

液状のゴムに硬化剤を垂らし、手早くかき混ぜ、子れいむの入った紙コップに注ぎ込む。
「だしてえぇぇ」とか言っていた子れいむは、液面が口より上にくると「ゆぷっ!」とだけ言ってそれ以後
何も言えなくなった。しばらく泡がプクプク浮いてきていたが、じきにそれもなくなった。
口の中の空気を全部出してしまったのだろう。

「そして禁断の秘技!濡れタオル巻き付けアーンド風呂場に放置!」
このゴムは湿度が高いほど早く固まる性質がある。このようにすることで作業時間を短縮できる。
しかし型が脆くなる諸刃の剣でもある。



「次はお前だ!」俺は子まりさを取りだした。
「まりさちゃ~ん、いい子だね~。オレンジジュースあげるよ~」
「ゆっ!おれんじじゅーすのみたいよ!」
子まりさは喜んで、手の中でぴょこぴょこ跳ねた。それを聞いて箱の中の子ゆっくりは「まりさだけずるいー」
と不満の声をあげ、親は「ゆうぅ?」と当惑している。

「それじゃお口開けてね~」
俺は銀色の塗料皿にオレンジ色の液体を注ぎ、それを子まりさの口の中に流し込んだ。
「ご~くご~く…ゆぶ!ゆびぶぇ!」
もちろんオレンジジュースなんかくれてやるわけがない。
もうお気づきの人もいるだろう。それは“Mr.カラー49番、クリアーオレンジ”だ!

「ゆぶぶぶぶぶ!くぷう!ゆぷ!ゆぷ!ゆぷ!ゆぷ!うぶううううぅぅぅぅぅぅ!!!!」
子まりさは今まで味わったことのない未知の感覚に目を回してのたうち始めた。
おっと餡子を吐かれてはたまらない。口は手でしっかり押さえておく。
しばらく待って、痙攣がおさまったところで放してやった。
すると目が左右でバラバラな方向を向き、だらしなく口を開けてよだれを垂らしながら、
「ゆぴゃぴゃ!ゆ~ゆゆゆ~ゆるるるるる!ぴゅっくり!ぴゅっくりし!」
などと叫びながらデタラメに跳ねたり転がったりし始めた。なんだか楽しそうである。

どうやら塗料が餡庫の隅々まで染みわたったようだ。これがラリっている状態だろうか。
人間だとプラモ用のシンナーぐらいではトリップできないはずなんだがな…(毒には変わりないが)

「ゆあああああ!おちびちゃぁぁぁん!しっかりしてねええぇぇぇぇ!」
「おちびちゃんになんてことするんだぜぇ!ここからだせえええぇぇぇ!」
もちろん親たちにはゆっくりギャラリーしてもらうため、あらかじめ段ボールにはカッターでのぞき窓を
開けてある。



「さ~てお次は…」
段ボールを覗き込むと子ゆっくりの姿がなかった。しかし親れいむが口を真一文字に結んでいる。
バレバレじゃん。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆべっ!…ゆっくりしていってね!」
俺がお決まりの声をかけると、親れいむは子ゆっくりを吐き出してまで挨拶を返してきた。
すかさず子れいむをさらう。

「ゆんやあああああぁぁぁぁ!」
子れいむももう捕まったらどうなるかわかっているようだ。手の中でぐねぐねのたうって逃げようとする。
「かわいそうにね~。お母さんはお前を守ってくれなかったよ~」
「ゆえええええぇぇぇん!おかあしゃんのばきゃあああああ!」
「どぼじでぞんなごどいうのおおおぉぉぉぉ!」親れいむが泣き叫ぶ。
「そうわめくなって。このれいむちゃんには痛いことしないよ~」
俺はそう言って子れいむを隣の部屋へ連れて行った。

そこで小さい黒い袋からチューブを取り出し、中の黄色い半透明なペーストを塗りたくっていった。
「ゆびいいいいいぃぃぃぃぃ!くしゃいよおおおおおぉぉぉぉ!べちょべちょするよおおおおぉぉぉぉぉ!」
「はい終わり。さぁお父さんお母さんのところへ帰ろうね~」
さっきの部屋に戻り、子れいむを放してやった。
「おちびちゃあああああん!はやくおいでえええええええ!」
「そのじじいからはやくはなれるんだぜえええぇぇぇぇぇ!」
「ゆあああああぁぁぁぁぁん!おとうしゃああああぁぁぁぁん!おきゃあしゃああああああぁぁぁぁん!」
子れいむは親の呼ぶ方向へ跳ねていった…が、半分ほど行ったところで止まった。

「ゆうっ!ゆぐううっ!うごけないよおおおおぉぉぉ!たしゅけてええええぇぇぇぇ!」
この子れいむに塗ったのは“光硬化パテ”。
その名のとおり、光が当たらなければいつまでもドロドロだが、光が当たった途端に硬化するという、
時間がない時に大変重宝するマテリアルなのだ!その代わり量の割にお値段はちょいと高めである。

「なにしてるんだぜ!はやくくるんだぜえええええ!」「おちびちゃんどうしたのおおおおおお!」
「ゆ、ゆぐ!ゆっ、ゆぐ…う…」
そうしているうちに口や目の周りまで硬化し、ついにはぴくりとも動けなくなってしまった。
さっきの部屋はカーテンを閉め切ってあり、こっちの部屋は日の光がさんさんとさしこんでいた。



残った子ゆっくりはまりさだった。
親は口の中に入れても無駄だと悟ったのか、取り出そうとするとぼすぼす体当たりしてきたり、噛みついたりし
て必死に取らせまいとしてきた。まぁそんなことしても無駄なことに変わりはないのだが。

「まりさちゃ~ん、君には『魔改造』をしてあげよっか~」
魔改造とは主に、市販されているフィギュアやガレージキットの服を削るなどして、裸体へと改造することを指
す。もっとも、大昔はちがう意味があったらしいがここでは割愛する。

「いやじゃいやじゃいやじゃああああああぁぁぁぁぁぁ!」
子まりさはしーしーを垂れ流し、ぶるん、ぶるん、と体を震わせながら泣きわめく。子ゆっくりにしてはかなり
の力だ。

「おちびちゃんがいなくなっちゃったよおおおおお!」
「おちびちゃんにてをだすなあああああ!しね!しねえええええ!」
魔改造の意味は知らないだろうが親たちも叫び続けていた。

「それでは魔改造実演スタート!」
服を剥ぐといっとても、ゆっくりは服なんか着ていない。必然的に剥ぐといったらこれしかない。
「ゆあああああぁぁぁぁぁ!まりさのおぼうしがあああぁぁぁ!かみのけがああああぁぁぁぁぁ!」
帽子を取っ払い、髪をブチブチブチ!とひっぺがした。まずはハゲ饅頭の完成。

次に竹串を取り出し、子まりさのあにゃるに突っ込んだ。ブスッ!「ゆぐぴぃ!」
これは塗装の際、パーツを直接手で持たないための持ち手となる。

「まずは下地っ!」プシュ~~~~~~
冒頭で使っていた缶スプレーのサーフェイサーの出番。竹串を回し、全方向からまんべんなく吹き付ける。

「ゆあああああゆぷっ!ゆああああああああぷうっ!しみるよおおおおおぉぉぉぉぉぷぱっ!」
染みるということは、ゆっくりの肌は塗料の食い付きがいいらしい。
ちなみに時々「ぷっ!」と言っているのは、顔面にスプレーがかかった時の声だ。

「表面をならし、細かな傷や凹凸を消すっ!」
ザリザリザリザリ…ショリショリショリ…
目の粗い紙ヤスリからだんだん細かいものに変えていきつつ、表面をやすっていく。
「ゆぎゃああああああぁぁぁぁぁいちゃいいちゃいいちゃいぃぃぃぃぃぃぃ!」
紙ヤスリでも子ゆっくりにとってはおろし金みたいなものだろう。それで全身を削られているとしたら…

「そして塗装っ!」
エアブラシを使ってまずは肌色を全身に塗り、ちょっと濃い色を底面に吹いて影を表現したりしてみる。
「ちみるうううぅぅぅ!ちみるちみるちみるのやじゃああああぁぁぁぁぁ!」

最後に全体にクリアーを吹いて塗膜保護をすれば完成!なのだが…
「汚ねえええええっ!失敗!」
そりゃそうだろう。塗装をしている最中ずっと涙やヨダレ、しーしーを垂れ流していたのだ。
塗料が綺麗に乗るわけがない。
結果、ツルツルすべすべ肌色ハゲ饅頭になるはずが、なんだかよくわからないマダラ模様の物体になって
しまった。

さて、塗装を失敗した場合モデラーはどうするか。
たいていのガレージキットの素材は、プラモ用のシンナーではほとんど溶けることはない。
これを利用し、失敗したパーツをシンナーに漬け、いさぎよくすべての塗装を剥いでしまうのだ。
これをモデラーは「ドボン」などと呼ぶ。
モデラーというものはあらゆる素材とその特徴に精通していなければならないのだ!くどいようだがすべての
モデラーが(ry

俺はインスタントコーヒーの空き瓶にシンナーを満たすと、ハゲ子まりさをドボンした。
「ゆっぷあっぷ!ぷ…」
「たしゅけてええぇぇ」などと言う間もなく、子まりさはシンナーに沈んだ。
当然だがゆっくりを構成しているのはガレージキットのそれとは違う。
おお、シンナーの浸透力はただの水とはダンチだ。子まりさはあっというまに溶け、塗料やら餡子やらが混じっ
て濁ったシンナーに消えた。

「ゆああああおぢびぢゃああああん!」「だせええええええ!ごろずううう!ごろじでやるううううううう!」
ぼすんぼすんと段ボールが揺れる。
子供をすべて失った親たちは、しーしーまで流しながらもう半狂乱で暴れまわっていた。



「さーて、型はできたかな~」
だいぶ時間がたっているし頃合いだろう。
俺は風呂場から子れいむが埋まっている紙コップを持ってくると、中のゴム型をスッポン!と抜き出した。

次はこの型を2分割し、中から原型を取り出さないといけない。
「ショウタ~イム」
俺はカッターの刃を最大まで伸ばすと、ゴム型をまっぷたつに押し切った!
途中、刃が子れいむのあたりを通る時、「ゆぴぃ!」と小さい叫びを聞いたような気がする。
あれから数時間、ゴムの中で生きながらえていたのか。ゆっくりの生命力もバカにはできない。

型を分けると、子れいむも綺麗に前後に分かれていた。
よかった、もし分割線が顔にかかっていたら後々面倒なことになる。
俺は型の中から子れいむを取り出した。髪にゴムが多少からみついていたが、やや強引に引っ張りだす。
子れいむは苦悶の表情で絶命していた。

「は~い、原型お返ししま~す」
親たちのいる段ボールに子れいむを投げ込んでやった。前後別々に。
「ゆああああああ!おちびゃああああああん!」
「おかあさんがぺ~ろぺ~ろしてあげるからねえ!
 ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってねえええええ!」
親たちは、生き返りはしないかとぺ~ろぺ~ろしたりす~りす~りし始めた。
舌を使って子れいむの前後を必死でくっつけようともしていたが、中枢餡がまっぷたつになっているのに
それをやっても無駄だろう。

「まぁ落ち着け。子供はここにいるから」
「ゆゆっ?」
俺は親たちが騒いでいる間に、できたばかりのゴム型を使って子れいむを複製していた。
ちゃんと塗装もし、眼も描いてある。

「ほらよっと」
複製子れいむを置いてやった。
親たちは一瞬期待の表情を見せたが、目の前の子れいむがただのプラスチックの塊だとわかると、
「こんなのおちびちゃんじゃないいいいいい!」
すぐに泣き喚き始めた。
「サービスでもう1匹増やしてやるぞ~。ほ~ら、子供が多いとゆっくりできるね!」
ついでにもう1個複製して並べてやった。

子ゆっくりへの虐待はこれにて終了。
「ゆがああああああ!よくもおちびちゃんたちををををを!
 しね!しね!ころす!おまえなんかころしてやるううううう!」
親まりさはもう泣いていなかった。憤怒の形相で段ボールの内壁にぼすん、ぼすんと体当たりしている。
親れいむはというと、すすり泣きながらまだ分割子れいむをいじっていた。何と複製子れいむもちゃんと
並べてある。偽物とはいえ我が子と同じ姿をした物、邪険に扱うのは気が引けるらしい。



「人間なんかまりさにかかればバラバラじゃなかったのかよ?んじゃ、大物に手をつけるとしますか~」
今度のターゲットは親れいむ。
俺は子れいむの複製にも使った“レジンキャスト”を準備していた。
これは2種類の液体樹脂を等量混ぜると固まるもので、さっきのゴム型などに流し込んで複製に使う。
ただし固まるスピードはシリコーンゴムとは比べ物にならないほど速く、数分でカチカチになる。

さらにこいつには、「硬化の際に熱を出す」「温度が高いと硬化が促進される」という特徴がある。つまり、
混ぜる→熱を出す→自分の熱で硬化促進→さらに熱を出す、というちょっとした無限ループ状態になるのだ。
そして当然、混ぜる量が多いほど発熱量もアップする。
子れいむの複製には数グラムしか使わなかったが、今俺が混ぜているのは100グラムずつの計200グラム。
これはもう危険なレベルと言っていい。既にかなりの熱を帯びている。

「れいむ、こっちを向きな」
ゆっぐ、ゆっぐ、と嗚咽を漏らしていた親れいむが振り返った。
すかさず口をこじ開け、熱々のレジンキャストを流し込む。

「ゆっ!あづいい!んぐぐぐぐくくく!」
少しは飲み込んだようだが、すぐに口に溜まり始めた。跳ねたレジンが手にかかってこっちも少々熱い。
(んーーーーー!んーーーーーーーー!)
ちょうど口いっぱいになったところでレジンが無くなった。
親れいむは必死に吐き出そうとするが、既にゲル状になり硬化が始まっているので吐き出すのは無理。
口がふさがっているので餡子ごと吐くこともできない。

やがて親れいむは大口を開けた状態で固まった。
最初に飲み込んだレジンが固まり、体内の餡子の移動を阻害しているのか、動くこともできなくなったようだ。
食べた物は何でも餡子に変えてしまうゆっくりといえど、食べ物以外はどうにもならないらしい。
静かに涙を流しながら、俺や親まりさに目を向けるのみとなった。



残るは親まりさ。
「ゆぎゃああああああ~~~~!ごべんなざいごべんなざい!まりざがわるがっだでずううううううう!
 あやばりばずうううううう!」
親まりさはさっきまでの威勢はどこへやら、掴みあげると涙やしーしーを垂れ流しながら謝り始めた。
「お前がいくら謝ったって、壊れた物が勝手に直る訳ないんだが?
 それでも何とかなると思ってるんなら、いくらでも謝って無駄な体力を使えばいいさ」

「ゆびいいいいいいい!だずげでええええええええ!でいぶうううううう!」
まりさはもう半狂乱。
必死で伸び縮みする。膨れてはしぼむ。丸い体の中で重心を偏らせ、ぶるんぶるん震える。
大口開けて固まったままのつがいに助けを求めるが、親れいむは涙目をこっちに向けることぐらいしか
できない。

しかしこう暴れられては作業に支障が出る。俺は板の上にまりさを置くとハリガネで縛りつけた。
「まりさには『とかいは』を超えた『未来派こーでぃねいと』をしてやるよ。
 きっとありすだけじゃなくて人間さんからもうらやましがられるぞお~~~~」
「いやじゃああああああああ!おうぢがえるううううううううう!ばりざじにだぐないいいいいいいいい!」
「殺しゃしないから安心しろ。『こーでぃねいと』が無駄になっちまうだろ?それでは作業スタート!」

俺は壊れて床に散らばっているフィギュアから適当に脚を選びだした。

『悪路走破性向上のためそれまでの跳躍型に替わり多脚型ゆっくりが開発された』

なんとなく兵器開発みたいなナレーションを口にしながら、フィギュアの脚に真鍮線を差し込み、
反対側を親まりさに突き刺した。
「ゆぎい!いじゃいいいいいい!」
「ウヒョオオ!ノってきたぜええええ!レッドアウトゴールデンマキシマムバーニングゥゥゥゥゥ!」
脚と親まりさの接合面には小麦粉をまぶし瞬間接着剤をたらす。
粉状のものに瞬間接着剤をたらすと恐ろしい勢いで固まるのを利用した技だ。ついでに刺さっている真鍮線も
途中で曲げてあるので、くっつけた脚はまず外れることはない。

『武器はまりさタイプの機動性を活かすため格闘戦用のビームスピアが標準装備とされた!』

片方3本ずつ、計6本の脚をくっつけ終わると、今度は魔法少女のフィギュアが持っていた槍状の武器を
親まりさの右側に取り付けた。

『弱点である装甲の薄さはシールドによって補完することとし同時に射撃武器も装備!』

左側に付けるのは女騎士のフィギュアに付いていた盾と、ロボットの持っていたガトリング砲を組み合わせた
もの。

『予想されるアウトレンジ攻撃には長距離ミサイルの追加で対処』

頭の上に適当なミサイルポッドを付け、帽子の正面に穴を開けてかぶせた。この穴が発射口という設定である。
「ゆああああああん!ばりざのおぼうじがあああああああ!」
前から見ると帽子にぽっかり開いた穴からミサイルポッドがのぞいていた。

『重量の増加によって低下した機動性はバーニアの増設で補助することとした!』

ジャンクパーツを固めてバックパックっぽい物を作り、背中に取り付けた。
もういちいち真鍮線の穴を開けるのが面倒になったので、タッピングビスで強引にネジ止めした。
「ゆぎゃ!ゆぎゃ!いじゃ!いじゃい!」
ドライバーを回すのに合わせて親まりさが悲鳴を上げる。

『こうして近接格闘から長距離砲撃まであらゆる戦闘に対応した通称『パーフェクトまりさ』初号機が
 ロールアウトした』

オヤジモデラーなら思い出すだろう。「改造」とか言ってガンプラの体中に部品をゴテゴテ接着し「強化型○○」
とか「パーフェクト○○」とかほざいていたクソガキ時代を。

『…しかし高コストのため量産は見送られた』

仕上げにマーキングと称し油性ペンで「CAUTION」やら「HIGH VOLTAGE」やら書き込んだ。
しまいには「←バカ」だの「↓アホ↓」だの今時小学生でも書かないようなラクガキをしてしまったが。

「完成!…したけどやっぱスケールが合わないなあ…」
親まりさはバレーボールくらいのサイズだった。そこへ市販フィギュアのパーツではどうにも小さい。

「まあいいか。できたぞ『未来派こーでぃねいと』」
親まりさを縛り付けていたハリガネを解いた。
しかし解放されたのに動こうとはしない。時々ピクピク震えるだけだ。
「ゆぎい…いじゃいよお…どっでぐだざいい…おねがいでずううう…」
動こうとすると体中に刺さった真鍮線が餡子をひっかき激痛が走るようだ。
かなり深くまで刺さっているから、下手に跳ねたら中枢餡まで届くだろう。

「んじゃお山へ帰してやるか。喜べ、子供たちも全滅しちゃいないぞ」
確かにラリってる子まりさは死んでないし、光硬化パテの子れいむも固まっているだけだ。
俺は残った一家を再び段ボールに放り込み、近くの山へと向かった。



「せっかくだからジオラマ風に並べてみるか」
森の入口、岩が点在しているところに着くと、一家を取り出し並べていった。

『…宇宙歴798年に始まった帝国軍の侵攻に対し、同盟軍は満を持して量産型れいむで迎え撃ったが、
 帝国軍ゆっくりの予想を上回る性能により、各戦線で大きな被害を出していた』

また適当なナレーションをつぶやきながら、固まってる親れいむを手前に、子れいむをちょっと奥に置く。
遠近法というわけだ。

『帝国軍が首都に迫るなか、とある少年は偶然研究所の格納庫に放置されていた試作型パーフェクトまりさと
 邂逅する。これが同盟軍反撃の小さなきっかけとなったのだった…』

ちょっと離れた岩陰に親まりさを置く。
これで、大破して各坐した量産型れいむ2機と、遮蔽物の陰から反撃のチャンスをうかがうパーフェクトまり
さというジオラマができあがった。
ちなみにラリってた子まりさは、うっかり落とした途端「ゆぴぴぴ~」とか言ってどこかへ転がって行ってし
まった。

動くことも餌を取ることもできなくなったこの一家は、もう餓死して朽ち果てるしかないだろう。
シンナーがしみこみ、プラスチックが混ざった餡子など、野生動物でも手をつけまい。

「ゆぐぐうううう…だずげでぐだざいいいいいい…ぼんどにいじゃいのおおおお…」

『…しかし、帝国軍の首都占領による早期終戦と、同盟軍の反撃による戦争の長期化。
 どちらが良かったのかは誰にも、そして永遠に答えることはできないであろう…』
か細い親まりさの声を無視して、俺はその場から立ち去った。


~後日(ワンフェス当日)~

「…で、これが完成品ですか?」
「…はい」
ここはワンフェス会場、俺の出展ブース。
目の前には博麗の巫女である博麗霊夢その人が、冷やかな笑みをたたえた表情で俺を見下ろしている。

「なかなか綺麗にできていますね。でも…」
俺は真っ青になり冷や汗を垂らしながら聞いていた。
何を隠そう、あの時俺が作っていたのはまさに彼女のフィギュアであった。
彼女のみならず、魔理沙やパチュリー、咲夜やレミリアなどは、フィギュアのモデルとして人気が高い。
そして、ここワンフェスで彼女たちのフィギュアを売るには、事前に完成予想写真を本人に送り、出来などに
ついて了解を得なければならないのだ。いわば本人のお墨付きである。

「どうして写真とこんなに違うのかしら?」
「いやその、作ってる最中にいろいろありまして…」
実を言うと、あの親まりさが壊したフィギュアの原型には、さほどひどい破損はなかった。
もともと手足や頭は別パーツのうえ、両面テープで仮にくっつけた状態だったので、バラバラになったといっ
ても単にパーツが外れただけだったのである。そのおかげでなんとか出展までこぎつけることができた。
それがなぜ、ここにきて本人に責められているかというと…

「ここまでポーズを変えてしまうのはねぇ…第一ゆっくりなんて付いていませんでしたよね?」

あの時、完全にモデラー型虐待お兄さんになってしまった俺。
そのテンションは虐待が終わっても下がらず、そのまま制作を続けてしまった。
気が付くと、可愛らしいポーズをとっていたはずの霊夢フィギュアは、笑いながらゆっくりをブン殴っている
フィギュアに変貌していたのだ。

時すでに遅し。
今から元のポーズに戻している余裕はない…結果、そのまま複製して売ることにしてしまった。
それを本人に見られた結果がこれである。

「…まぁ、私だってゆっくりを殴ることもあるし、今さら隠すことでもないので今回は大目に見ましょう。
 でも、二度としないでくださいね。」
そう言って霊夢は去って行った。
「あ、ありがとうございます!申し訳ありませんでした!」
どうやら首の皮一枚でつながったようだ。何しろ了解を得ていないものを勝手に売っているわけで、
販売停止どころか出入り禁止になっても文句は言えない。

俺は安堵のため息を吐き、机に突っ伏した。全身の水分が冷や汗で出てしまったかのようだ。
目の前にはれいむを殴っている霊夢フィギュア。
霊夢本体はもちろんもともと作っていたものだが、キモのパーツは殴られているれいむ。
鋭い方ならお気づきだろう、これは虐待第1号となった子れいむの複製であった。
実際のサイズだと子ゆっくりだが、フィギュアのサイズで見ると成体ゆっくりとしてぴったりなのである。
型取られた時の苦悶の表情も、そのまま殴られた状態としてベストマッチ。我ながら見事な有効利用。

結局、このれいむ殴り霊夢フィギュアはそこそこのスピードで完売した。
買った人は口々に「よくこんなの許可降りましたね…」と言っていた。
俺はそのたびにひきつった笑いで応対するしかなかった。
向うの方では泣き叫んでいるゆっくりれいむや、潰されて餡子を吐いているゆっくりまりさのフィギュアを
売っているブースがあり、そこにはかなりの行列ができていた…

~終~

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最終更新:2022年05月19日 13:47