「あ”ー、暑い」
買い物行くなら夕方に行けばよかった。
真夏の昼間は日差しが強く、しかもまとわりつくような暑さだ。
(家に帰ってアイスでも食べよう)


そんなことを考えながら家路に就く。
我が家はアパートの二階の一室なのだが、アパートの階段を上ろうとしたときに
ゆっくり霊夢が階段の脇、影になっている所にいるのを見つけた。

ゆっくりは俺と目が合うと
「ゆっくりしていってね!」と小さく叫んだ。
この暑さのせいだろう。あまり元気がない。

「やあ、そんなところで何をしてるの?」
声をかける。
ゆっくりは話しかけられたことが嬉しかったのか、目を輝かせて答える。
「お日さまがあつくてゆっくりできないからここにいるんだよ!!」

さらにゆっくりは言葉を続ける。
「ここはれいむひとりでいっぱいだよ!!」

      • や、別に取ろうとしてないし。
まぁそんなことはどうでもいい。このゆっくりは家に持ち帰ろう。

自分でも変な感性かも思うが、ゆっくりって可愛いよな。
ぜひともペットに欲しかった。そして・・・いや語るまい。

ともかくだ。
ゆっくりを持ち帰るのは簡単だ。甘い言葉で釣ればいい。
「そんなところより涼しくてゆっくり出来る場所があるよ。俺の家だ。来る?」

ゆっくりはその言葉にすぐ食いつく。
「ゆっくりしたいよ! おにいさんのおうちに連れて行って!!」
嬉しいこと言ってくれるじゃないの。

こうしてゆっくり霊夢は我が家へ来ることとなった。




「さぁ、ここがゆっくり霊夢の部屋だよ」
「わーい、おにいさんありがとう! ゆっくりするね!!」
俺は物置と化していた一室を掃除して、ゆっくり専用の部屋を作った。
余っていた段ボールを床に敷き詰め、壁も段ボールを張り付けた。
ゆっくりが壁を傷つけないためと、食事が汚いこと・・・早い話掃除がしやすいからな。


ゆっくりの部屋も出来たことだし一緒にアイスを食べることにした。
「ちべたい!! でもとってもおいしいよ!!」
「それはよかった」
しかし汚いな。口のまわりも床もアイスでべったべただ。ダンボールを敷いて正解だった。

アイスを食べた後はお風呂でゆっくりを洗ってあげた。
「すっきりー!」
見てるこっちもすっきりするいい笑顔だ。

夕飯も一緒に食べる。といっても段ボールの柵越しだけど。
「うっめ! これめっちゃうっめ!!」
はふはふと肉野菜炒めと食パンを食べるゆっくりの顔は完全に緩んでいる。

野生ではこんな料理は食べられなかったのだろう。
ずっとうっめうっめと言いながら食べていた。

食事が終ってしばらくゆっくりしてると、ゆっくり霊夢は眠そうにしていたので寝させてあげた。
「明日もゆっくりしようね・・zzZ」
「ああ、おやすみ」
ゆっくりが寝たことを確認すると、俺はゆっくりと準備を始めた。






~翌朝~
「ゆっくりしていってね!!」
ゆっくりの声で目が覚める。
まだ6時だってのに早起きだなこいつは。

ゆっくりの部屋の襖を開けるとこっちをゆっくり霊夢が
「おにいさんゆっくりしていってね!! お腹がゆっくりすいたよ!!」
と、挨拶をくれる。

「おはようゆっくり。今朝食を用意するな」
「ゆっくりまってるね!!」
この完全にこっちを信頼している感じがたまらない。
本当はもっとゆっくり懐かせてからにしたかったが、ゆっくり出来ない俺はゆっくりを可愛がることにした。
可愛がるといっても抱っこしてなでなでしたり、高い高いする方じゃないぞ。


俺は昨日用意したたくさんの氷を風呂場の桶に移す。
そしてそれをゆっくりの元へと持っていく。

「おにいさん! そのとうめいなのはなに? ゆっくりできる??」
「ああ、ゆっくり出来るとも」
「ゆっ! ゆっくりしたい!! はやくゆっくりさせてね!!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねるゆっくり。その顔は期待に満ちていた。

ああ・・・なんてかわいさだ。そんな顔されたらもう我慢で き な い。
「ゆ”っ!?」
俺はゆっくりを掴むと、用意しておいた空のバケツにゆっくりを突っ込む。

「こわかったよ!! ゆっくりしてね!!」
「ああ、ごめんごめん。これからたっぷりとゆっくりさせてやるよ」
「じゃあゆるしてあげるね!!」
俺はゆっくりの言葉を最後まで聞かずに桶の氷をゆっくりの入っているバケツへ流し込む。

「ゆっゆっゆっ」
コツコツと氷がぶつかるたびに小さく声を上げる。
そしてすぐにゆっくりは氷に埋もれた。
「つめたくて気持ちいいよ!!」
まあ最初はそうだろうな。

しかし一分もしないうちに
「つっつめたいよ!! さむいよおにいさん!! ゆっくりだしてね!!」
ゆっくりは氷の海から抜け出そうとぴょんぴょん跳ねようとするが、それはできなかった。
バケツの入口は透明なビニールシートで閉じていたのだから。

「そこならゆっくり涼めるだろ?」
「ゆ”っくりでぎないよ!! づめだいよ”!!」
知ってるとも。


しばらくは「早く出して」だとか「なんでこんなことするの」だとか訴えかけてきたが
どんどんその声は小さくなっていく。
そろそろ限界かなと思いつつ、俺は何か物足りなかった。
正直氷にゆっくりを埋めていても楽しくはなかった。
やはり表情が見れないのは間違いだな。

なのでバケツを逆さにしてゆっくりを解放する。
顔は蒼白で、声も「ゆっ」とか「ぅ」とか言葉は出せないほど弱っていた。

俺は風呂場からお湯を持ってくる。しかしすぐにはかけてあげない。
ただただゆっくりをゆっくりと観察していた。
数分経つと徐々に元気を取り戻していくゆっくり。

動けるようになったゆっくりはおびえた表情で俺を見ながら俺とは逆方向の壁へと後ずさりした。
「どうした? ゆっくりできなかったか?」
「できるわけないよ!! おにいさんとはゆっくりできないよ!!」
おお、こわいこわい。

「そうか、ごめん俺が悪かったよ。ほら、暖めてあげるからこっちにゆっくりおいで」
手でおいでおいでする。
ゆっくりは最初はどうするか迷っていたが、俺のことをまだ信じているのかゆっくりと近づいてきた。
「ゆっ、ゆっくりしようね!」
控え目にお決まりの挨拶をするゆっくり。
「ああ、ゆっくり暖めてやるよ」

ゆっくりをお湯に浸からせてあげる。ゆっくりにはちょうどいいぬるま湯だ。
「ゆっくり気持ちいいよ!!」
「だろう? さっきのはこのための準備だったんだよ」
適当なことを言ったが、単純なゆっくりはそれで納得したらしい。
「うたがってごめんねおにいさん!! れいむはしんじてたよ!!」
嘘つけ。

まあ機嫌がすぐ戻ってよかった。
この先もゆっくりと色んな遊びをするつもりだからな。
嫌なことはすぐに忘れるゆっくりの特性はありがたかった。





さて、今回の氷で凍えさせるのはいまいちだったな。次はどうしようか。

次は生かさず殺さずの状態でのゆっくりを観察するためにご飯抜くかな。
しかしそれはやりすぎかな。
それとも釣り竿でゆっくりフィッシングでもやろうかな。
「おそらをとんでるみたい」って言葉を生で聞いてみたいし。

      • まあ、焦ることはない。
まだまだ俺とゆっくりのワンダフルライフは始まったばかりなのだ。





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最終更新:2025年07月21日 12:05