ゆっくりぱちゅりぃというゆっくりが居る。
ご存知ゆっくりパチュリーに四肢が付いたゆっくりだ。
しかし、このゆっくりは四肢がないゆっくりと違い、少し頭が悪い。
そんなゆっくりぱちゅりぃの生態を、少し覗いてみよう。
「むっきゅ~~♪ むきゅむきゅ♪」
煙が移動するように、道を歩いているのがゆっくりぱちゅりぃだ。
「むっきゅ~~♪ むっきゅきゅ~~~♪」
その、濁った目を大きく見開き、目の前の人間を凝視する。
その右手。
そこに持っているのは、この男が買ってきた本だ。
「むっきゅ~~~♪ それはぱちゅりぃのごほんのなのーーー!!!!」
「うわ!! なんだおまえ?」
突然、誰かに話しかけられたと思った男は、目の前でワンワン泣いているゆっくりを見て声をあげる。
「むっぎーーー!! それはぱちゅりぃのごほんなのーーー!!!!」
「この本がお前の?」
「むっきゅ~~~♪ そうなの!! だからかってにもってかないでね♪」
四肢有りは総じて切り替えが早いのだろうか?
このぱちゅりぃも、先ほどとは打って変わって満面の笑みで両手を差し出してくる。
「フザケンナ!! これは俺の本だ!!」
「むっぎゅーーー!!! ごほんかえじでーーーー!!!」
男がブツクサ言いながら去っていくと、懸命にその後を追いかける。
「まっでぇーーー!! もっじぇがないでーーー!!!!」
「…………」
男は大事そうに本を胸に抱えて無言で歩く。
「まぁ……じぇーーーー!!!」
その後ろを、ぱちゅりぃがヒィヒィ言いながら歩く。
「……。ほら、待ったぞ!!」
「!! もっじぇがないでぃーーーー!!!!」
男が止まったのを見て、一気に間合いを詰めようと、残っていた体力で懸命に駆け寄る。
しかし。
「ほ~ら♪ もっていっちゃうぞ~~~~♪」
「むぎゅ!!!」
後一歩。
後一歩のところで、勢い良くスタートを切った男に逃げられてしまう。
「むーーーーーー!!!!」
そのまま、スカートに足を取られて前のめりに地面とキッス。
「むっぎゅーーーー!!! ぱちゅりぃーーのごほんがーーーー!!!」
全身泥だらけになったぱちゅりぃの目は、涙をいっぱいに浮かべ、すでに姿が見えない男を追いかけていた。
「むっきゅ~~~♪ むきゅきゅ~~♪」
それから暫くして、漸く機嫌が直ったぱちゅりぃは、勇み足で人里の中へ。
「むっきゅ~~~♪」
目的は人間の家に侵入すること。
しかし、食料をとることが目的では無い。
「むっきゅ~~♪ おじゃまします~♪」
目的は本を見つけることだ。
丁寧に、挨拶をして家の中に入っていくその顔は、既に血眼になって本を探していた。
「……むきゅ~~~? むきゅ~~~?」
押入れ、冷蔵庫、風呂桶、食器棚。
何処を開けてもなかなかお目当てのものがでて来ない。
「むっきゅ~~~!! ごほんをよまないばかのお~ちなの?」
フツフツを怒りが湧き起こってきたその時、偶然あけた隣の部屋で、大きな本棚を見つけることができた。
「むっきゅ~~~♪ ごほんがいっぱ~~い♪」
吸い寄せられるように近づいていったぱちゅりぃは、手当たり次第に本を引き出すと、乱雑に並べてから、一冊の本を開いた。
「むっきゅ~~♪ ごほんをたくさんだしたぱちゅりぃはどくしょかなの~~♪」
ペラペラッと本を捲っていく。
その行為は、この家の主が帰ってくるまで続いた。
「おい!! そこでなにしてるんだ!!!」
「!!!! むきゅ? ここはぱちゅりぃのとしょかんよ? しずかにごほんをよめないおに~さんはでていってね!!」
さも当然のように言い放って視線を戻す。
「むきゅ! かしだしはしてないの」
視線を合わせず、思い出したかのように呟く。
勿論、貸し出しが何の事だかはサッパリ分かっていない。
「ここは俺の家の俺の本棚だ。人の家に勝手に入りやがって!! 出て行け!!」
「むきゅ~~♪ どくしょちゅうはおしずかに!!」
「……」
ここで、男の限界が来たようだ。
「むきゅ?」
何も言わず、首根っこを掴んで顔を近づける。
「それは、おれの、ほんだ!!」
「むきゅーー!! ぱちゅりーのごほんなの!!!」
「うるさいよ!!」
「むぎゅ!!」
そのまま外に投げ捨てる。
「むきゅーーー!! いれでーーー!! としょかんにいれてーーー!!!」
「嫌だ!! お前の図書館だったら、自分で入ってこられるだろ?」
「むぎゅーーー!!!!」
ガラス戸をペチペチ叩くが、ぱちゅりぃの力では割る事はできない。
中に入ろうとしても、昼間は開いていた玄関もしっかりと鍵がかかっている。
「むっきゅーーー!! ぱちゅりーーのごほんもっでがないでーーー!!! ぜんぶもっでかないでーーーー!!!!」
なけなしの力で最いっぱい叩くが、既にカーテン越しに明かりは消え、物音一つしなくなった。
「むっきゅーーー……」
仕方が無い。
この図書館を手放す事にしたぱちゅりぃは、とぼとぼと自分の巣の中に戻っていった。
――
巣の中は大きな空間が一つあるだけ。
その奥に、ぱちゅりィが拾ってきた本が山積みにされている。
「むっきゅ~~~♪ ねるまえにごほんをよまなくちゃ!!」
ここに帰る途中に拾ったくず野菜の夕食をとり、横になったぱちゅりぃは、その本の山から無造作に一冊取り出す。
三ページ程のA4の紙には、カラフルな文字で○○店オープン!! と書かれている。
「むっきゅ~~♪ ハラハラするだいぼうけんね!!!」
一冊捲り終える頃には、ぱちゅりぃはスヤスヤと寝息を立てていた。
――
翌日
「むっきゅ~~♪」
今日も朝から町へ出かける。
勿論本を探すためだ。
「むっきゅ~~♪ むきゅ!! むきゅ!!」
昨日の失敗は忘れてしまったようで、意気揚々と町の中へ乗り込んでいく。
「むきゅ? むきゅーーーー!!!!」
そこには、大きな図書館が存在していた。
一面に沢山の本が並んでいる。
まさにぱちゅりぃにとっての桃源郷だった。
「むっきゅ~~~♪ ぱちゅりぃのとしょかん~~~~♪」
「あら? ゆっくりぱちゅりぃね?」
「むきゅ? おねーさんだれ?」
「私はここの司書をしているの。貴方は?」
「むっきゅ~~~♪ ぱちゅりぃはここのとしょかんのあるじよ!! かってにわすれないでね!!!」
「そうだったわね」
ぱちゅりぃの自分の図書館と言う発言に食って掛からなかった司書は、更に言葉を続ける。
「だったら。そっちじゃないでしょ?」
「むきゅ?」
「この図書館の主人専用の部屋は、こっちじゃない」
指差す先には、確かに扉が有った。
「むきゅ!! そうよ!! あなたをためしただけよ!!!」
真っ赤になった顔を見られるように、勢い良く世の扉へと消えて行ったぱちゅりぃ。
「さようなら」
その言葉は、読経の様に静かな図書館内に良く響いた。
「むっきゅ~~♪」
中に入ったぱちゅりぃが見たのは、目の前にある本棚だった。
「むっきゅ~~~♪ むきゅ? むきゅ?」
取り出そうとしても取れない事に怒り出すぱちゅりぃ。
それもその筈、この本棚は精巧に印刷された本棚なのだから。
「むぎゅーー!! かえるーー!! さっきのほんだなのところーーー!!!」
泣きべそをかき、入ってきた扉をがさごそ弄る。
「むきゅ? むっきゅ~~~!!!!」
が、扉は開かない。
「むっきゅーーーー!!! なんであがないのーーーー!!!!」
何故なら、鍵がかかっている為だ。
「むっぎゅーーー!! ……むきゅ?」
漸く、この部屋の中に存在する唯一の立体物を発見したぱちゅりぃ。
「むきゅ? むきゅ?」
丁寧に描かれた絵に従って、自分の体にベルトを付けていく。
「むきゅ? これをおすのね!!」
最後に、大きなボタンが描かれた絵がある、その隣には本の絵が。
「むっきゅ~~~♪ はやくごほんがよみたーーい!!」
ポチ
「むっきゅ~~!! ……!!! むっぎゅ!! むぎゅ!!!」
スイッチを入れた途端、四肢に繋がれたベルトが勢い良く動き出した。
「むぎゅ!! むぎゅ!!」
それは一定のリズムを刻んでいる。
しゃがみ込み、地面に両腕を付ける。
そのまま足を後ろに伸ばす。
足を戻し勢い良くジャンプ。
この時、両腕を叩くのを忘れない。
「むっじゅ!! どめでーーー!!! ゆっぐりざぜでーーー!!!」
一回この動作をしただけで、既に息が上がってしまったパチュリー。
「む……はぁはぁ!! むぎゅ!! どめでーーー!!!」
息も絶え絶えに、懇願するが生憎と全自動のこの装置に監視員は居ない。
「むぎゅーー!!!! むぎゅーーーー!!!! おえ!! おぇーーーー!!」
口の中から勢い良く餡子が漏れ出す。
綺麗な緑色をした鶯餡。
「おぇ!! お゛お゛お゛お゛お゛ね゛がい゛じま゛ずーーー!!! ゆ゛っ゛ぐり゛ざぜでーーー!!!」
既に大量の餡子を吐き出して居るが、体は余り細くなっていない。
顔が若干やつれているだけだ。
「ゆーーーー!! もううごげないいいいい!!! だずけでーーー!!!」
延々と、無理矢理体を動かされ続けるぱちゅりぃ。
幸いな事に、後一時間もすれば、致死量の餡子を吐きだしゆっくりできるだろう。
「ゆ!! おぇ!! おぇええーーーー!!!!」
体が弱い分、少なくなった餡子を高速で生成できるゆっくりぱちゅりぃ。
その能力が苦しみ以外を与えてくれた事は、後にも先にも無いだろう。
「むっぎゅーーーーーー!!!!」
最終更新:2022年05月19日 15:12