散歩しているとゆっくりれいむの母子がお昼寝しているのを見かけた。
親は標準的な成体ゆっくり程度の大きさで、子どもは典型的な赤ちゃんサイズが2匹。
その姿がとても微笑ましかったのでちょっと悪戯をしてみた。
とりあえず親れいむの眼球を穿り出し、出来た空洞に赤れいむをねじ込んでみる。
その間なんと2.8秒。びっくりするほどの早業だ。
そして、痛みで目を覚ました母親に気づかれないよう、素早く、しかし慎重に近くの木の陰に身を隠した。
「ゆぎゃああああ! いだいいいいいいいい!」
眠っていたこともあってか(それにしても遅すぎるが)目玉をくり抜かれてから5秒後に親れいむは悲鳴を上げた。
一体何が痛いのか全く分からない。しかし、とにかくとてつもなく痛い。
「いだいいいいいいいいい!ぢんぢゃううううううう!ぞれにな゛にもみ゛えな゛い゛よおお゛お゛お゛お!?」
言葉にならずとも壮絶な痛みを言葉異常に雄弁に語る、そんな悲鳴を上げながら親れいむはようやく自分の異変を察知した。
そう、当然のことながら目玉をくり抜かれているのだから何も見えないのだ。
しかし、眠っている間に施された処置のことなど知る由もない彼女は痛みと理解不能の暗闇にただ怯えるばかり。
ぴーぴーぎゃーぎゃーと騒音を撒き散らしながら、右往左往している。
「ゆぅ・・・おかーしゃん、どうちたの?」
「しょんなにおおごえをだちたらゆっくちできにゃいよ?」
そんな彼女の悲鳴がよほど耳障りだったのだろう。彼女のまぶたの内側で眠っていた赤れいむが目を覚ました。
口々に何か言いながらやけに騒がしい母親の姿を探すが・・・どうやっても体を思うように動かせない。
まるで金縛りのようだ、人間ならそう思ってしまうであろう事態に直面してなお赤れいむはのん気に首をかしげている。
「ありぇ・・・うごきゃないよ?」
「ねおきでうみゃくうごけにゃいね!」
どうやら事態の深刻さがまだ理解できていないらしい。
きっと寝起きだからだろう・・・そう結論付けた2匹は平和そうな笑みを浮かべて・・・
「「おかーしゃん、もっちょゆっくちちてねぇ~・・・」」
と、のん気なことを口走っていた。
しかし、幸か不幸かその言葉が親れいむに我が子の事を思い出させるきっかけになった。
ハッとした親れいむは痛みを堪えながら「でいぶのあがぢゃんどごなのー!?」と声を絞り出す。
「ここだよー」
「れーみゅはじゅっとゆっくちちてるよ?」
「ここじゃわからないよ!おかーさんにゆっくりす~りす~りしてね!?」
親れいむはそう言うが、困ったことに両者の間には事態の深刻さの認識に齟齬がある。
更に眠気もあってか子ども達は親れいむの言うことを聞こうとしない。
「「やだよぉ~・・・れーみゅねみゅいもん・・・」」
「ゆうううううううううううう! わがままいわな・・・!?」
が、親れいむにとってはそれだけで十分だった。
赤れいむはただ喋ったに過ぎず、普通なら目で居場所を確認しなければならない。
人間と同様に目が最も重要な知覚であるゆっくりにとってそれは当然のこと。
あくまで普通の状況ならば、の話である。
「どほ゛ぢででい゛ぶの゛あ゛がぢゃんがおめ゛め゛のながにい゛るの゛おお゛お゛お゛おお!?」
体内から、それもゆっくりにとっては数少ない固有名詞を持つ器官である目から声が聞こえて来る状況は普通ではない。
おかげで親れいむは我が子の居場所を確認することが出来た。
そして、その言葉のおかげで2匹の赤れいむも自分達が異常な状態にあることを認識した。
「ゆゆっ! しょーいえばおしょらをとんでりゅみちゃい!?」
「ゆゆっ! おきゃーしゃんおこえがへんにゃところからきこえりゅよ?!」
「ゆぎぃ! あがぢゃん、あばれないでね! おめめがいだいよ!?」
流石のゆっくりもこの事態には困惑せざる得ないらしい。
親れいむはさっきよりも一層激しく叫びながら右往左往し、子ども達も泣き叫んでいる。
しかし、しばらくすると狼狽していた親れいむが落ち着きを取り戻した。
そして・・・
「ゆゆっ!? おめめがみえるようになったよ!」
そんなことを言ってのけた。
彼女の言葉を聞いた僕はその真偽を確かめるべく母子の前に姿を現す。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっ? ゆっくりしていってね!」
「「ゆっきゅりちていっちぇね!」」
彼女達の後ろから立った状態で声をかけ、彼女らが振り返る前にしゃがんで目の高さを近づける。
振り返った彼女達は母れいむも含めて返事するときにはしゃがんだ後の僕の目を見て挨拶を返した。
なるほど、確かにちゃんと見えているようだ。
「おねーさんはゆっくりできるひと?」
「そうだよ。ゆっくり出来る人だよ」
適当に応答しながら赤れいむの視界を両手の人差し指と中指で遮ってみる。
一瞬、僕のとっぴな行動に怯んでみせたが、それ以上何をするつもりもないことを察知した彼女達は首をかしげる。
「ゆぅ? おねーさん、やめてね! ゆっくりなにもみえないよ!」
「「ゆっきゅりみえにゃいよ!」」
「ふぅん・・・じゃあ、これならどう?」
右目の赤れいむの視界を遮る人差し指だけをずらしてみる。
すると、予想通り・・・
「ちょっとだけみえるよ!」
「ちょっとだけみえりゅよ!」
「じぇんじぇんみえにゃいよ!」
左目の赤れいむ以外は少しだけ見えると答えた。
癒着させると感覚を共有するとか、その応用でキメラが作れるとか・・・そんな話を聞いたことはある。
が、まさかただ目の中に放り込んだだけでこんなことになろうとは・・・。
「ねえ、れいむ?」
「なぁに、おねーさん?」
「多分だけど、赤ちゃんがれいむの目になっちゃってるよ?」
「ゆゆっ! どーいうことなの!?」
「「ゆっきゅりおちえてね!?」」
「だから、れいむの目の中にいる赤ちゃんの目で見ているものをれいむも見てるみたいだよ」
「な、ななな・・・なにぞれえええええええ!?」
僕の説明を聞いて驚愕するれいむ。そして、困惑する赤れいむ2匹。
僕だって驚いているんだからまあ、自然の反応だといえるかも知れない。
「おね゛ーざん! だずげでよおおおお!?」
「ごめん、ムリ・・・でも、あれだよ。赤ちゃんがどこかに行くことがなくて安全だよ!」
「「ゆゆっ! ゆっきゅりできりゅの?」」
「もしかしたら出来るかも?」
「なーんだ! ゆっくりできるんだね!」
流石ゆっくり。ゆっくりできるならそれでいいらしい。
いちいち水を差すのも野暮なので突っ込まないが、きっと彼女達が失念しているであろうことを尋ねてみた。
「でも、その状態でどうやって赤ちゃんにご飯あげるの?」
「ゆゆっ! う~ん・・・寝転がれば大丈夫だよ!」
「あと、赤ちゃんが大きくなったられいむが潰れちゃうんじゃない?主に中身とか」
僕の言葉を聞いた親れいむは再び驚愕し、ワナワナと身を震わせる。
「ゆ゛っ!? ・・・あがぢゃん、ごはんはゆっぎりがまんぢでね!」
「「ゆゆっ! れーみゅほはんたべちゃいよ!?」」
「だっで、でいぶぢんぢゃうんだよ! ゆっぐぢでぎなぐなるんだよ!?」
すると、今度は赤れいむが母の言葉に驚愕して泣きじゃくりながら身を震わせた。
「でも、食べさせてあげないと赤ちゃん死んじゃうし、目も見えなくなるよ?」
「ゆがーん!? どうずればいいのおおおおおおお!?」
答え。死なないが成長しない程度に餌を与え続ける。
もっとも、それだと喋る程度の体力は残るから、凄く喧しそうだけど。
赤れいむ達にとっても死ぬ寸前のところで生かされる格好になるのでとても辛いだろう。
「・・・まあ、そんなわけだから・・・ゆっくりがんばってね!」
原因は完全に僕にあるわけで・・・何となく気まずくなった僕はそそくさとその場を後にした。
後ろかられいむ達の「たすけてよー!」という叫び声や母子で喧嘩する声が聞こえてきたが振り返ることはしなかった。
‐‐‐あとがき‐‐‐
文字通り一心同体なのに家庭崩壊とはこれ如何に
3匹で1匹のれいむだから、トリニティれいむ。巫女ベースだけどトリニティ
今回のネタは応用すれば「常時自分の中身を見せ付ける虐待」なんてのも出来るかも
byゆっくりボールマン
最終更新:2022年05月21日 22:05