ティガれみりゃ

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≪はじめに≫

  • 他の作者様の設定や名称を一部使わせていただいております。
  • ややパロディネタが多めかもしれません。
  • 自分設定有りです。
  • 虐め……というのとは少し違うかもしれません。
  • 続きものです。

以上、何卒ご理解・ご容赦ください。

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1、絶対強者



「うーうー!」

小高い山を越え、うーぱっくの群れが空を飛ぶ。
その数は30を越え、それぞれ背中にゆっくり達を載せている。

自慢のダンボールは、パンパンに膨れあがっており、
うーぱっくは、汗らしきものを浮かべて、「うぅーうぅー」と肩(?)で息をしている。
ダンボールの中には、人間達から盗んだ大量の野菜や、お菓子がつめられていた。

「ゆゆっ! しかっりしてよね、うーぱっく!」
「そうだぜ! はやくしないと、まりさ達がドスに怒られちゃうんだぜ!」

自分達は何もせず、うーぱっくに注文を出す、ゆっくりれいむとゆっくりまりさ。
人間から盗みを働いた首謀者達だ。

「う~っ!」

力を振り絞り、岩山を越えていくうーぱっく。
すると、岩山の向こうには、直径500mほどの窪地が広がり、
無数のゆっくり達が、ゆっくりしていた。

「う~♪」

すごい! うーぱっく達は感心した。
これだけの数のゆっくりが、ゆっくりできる場所は、そうそう無い。

岩山の中の窪地は、緑こそ少ないものの、
適度に草花がはえ、岩の隙間からは清水が湧き出ている。
また、岩と岩の間には無数の洞窟があり、そこに入れば雨風も防げそうだ。
なにより、山間のこの窪地は、教えて貰わなければちょっと発見できそうにない。
他の捕食種とよばれるゆっくりや、野生の動物からも容易に身を隠せるだろう。

「うっうー♪」

れいむを背中に乗せ、先頭を飛ぶうーぱっくが、
後ろを飛ぶうーぱっく達にかけ声を飛ばす。
目的地が見え、「うーっ♪」と応えてテンションを上げる、うーぱっく達

これだけの群れに、これだけの量の食料を運ぶのは、
うーぱっく達にとっても初めてのことだった。

"頼まれ物を運んで、お礼をもらう"
この習性を、自分達にしかできない大事な仕事だと考えるうーぱっく達にとって、
今回の依頼は、大変きわまりなかいものだが、それでも充実感を覚えていた。

「ゆっ! ドスまりさだ!」

嬉しそうに叫ぶれいむ。

うーぱっくが下を見ると、巨大なゆっくりまりさと、
その傍らにベッタリよりそっている、これまた巨大なゆっくりアリスがいた。

まりさは全長3メートルほど、
アリスもまりさほどではないが、ゆっくりとしては破格の2メートル級の体を持っていた。

俗に言う、"ドス種"。
ドスまりさと、クィーンアリスだ。

「おいっ、うーぱっく! ぐずぐずしないで早く下りるんだぜ!」

ドスまりさの所へ下りるよう催促する、まりさ。
余談だが、このまりさはまりさ種の中でも、タチが悪いとされている"ダゼまりさ"だった。

しかし、心優しいうーぱっく達は、まりさの横柄を気にとめず、
ドスまりさの前に、ゆっくりと着陸する。

『ゆゆっ! おかえり~! 食べ物は集まったの?』

巨大なドスまりさが口を開く。

「もちろんだよ、ドスまりさ!」
「そうだぜ! まりさ達の華麗な仕事っぷりを見せてやりたかったぜ!」

うーぱっくの背中からピョンと飛び降り、ドスの前で胸(?)を張る、れいむとまりさ。
実際、いちばん苦労したのはうーぱっく達なのだが、
このれいむ達にとって、そんなことは関係無い。

「もう! なにしてるの、うーぱっく! はやくれいむ達のご飯を、ドスに見せてね」
「うー!」

うーぱっく達は、ガサゴソとダンボールの蓋を開き、
中に押し込められていた大量の食べ物を地面に下ろしていく。

『ゆぅ~っ! すごぉ~い!』
『それでこそ、とかいはのアリスとまりさの子供達よ!』

感嘆の声を上げるドスまりさと、クィーンアリス。
ちなみに、れいむもまりさもクィーンアリスの子供ではないのだが、
どうやらアリスの中では、愛しのドスまりさとの間にできた子供…という設定が完成しているらしい。
勝手な思いこみに違いなかったが、ドスまりさ自身、クィーンアリスには好意を持っていたし、
他のゆっくり達にとっても、強大なクィーンアリスに愛されることは、損ではなかった。

「さっそくみんなで食べようよ、ドスまりさ!」

れいむがピョンピョン跳ねて、ドスまりさを急かす。
そこに、体付きのゆっくりぱちゅりーが現れ、ワガママなれいむを戒めた。

「むきゅ! だめよれいむ。これは冬を越えるための大事な食料なんだから」

このぱちゅりーと、ドスまりさ、クィーンアリスは、子供の頃からの付き合いで、
3人で協力してこの場所をみつけ、この一大ゆっくりコロニーを築きあげたのだった。
ぱちゅりーは体が弱く、ドスまりさやクィーンアリスのように力は無かったが、
そのぶん知恵がまわり、この群れの参謀役を務めていた。

「ったく、ぱちゅりーはいつもケチケチだぜ!」

悪態をつく、まりさ。

『まぁまぁ、れいむやまりさも疲れているだろうし、一口だけ食べようよ?
 それで残りは冬支度に回す……ぱちゅりーもそれでいいよね?』

「……むきゅー。ドスまりさがそう言うなら」

「わーい! だからドスまりさ大好きぃー!」

喜ぶ、れいむとまりさ。

「なになに~ごちそう?」
「わかるよー。みんなで食べるよぉー」
「ちぃーんぽ!」

すると、いつの間にかこの窪地に住む他のゆっくり達も集まりだしていた。
皆、この御馳走のご相伴にあずかろうという腹づもりだ。

「むきゅ!そんなに食べたら……」
『も~しょうがないなぁ。みんな一口だけだよ?』

止めようとするぱちゅりーを遮り、
群れのリーダーであるドスまりさが、許可を出してしまう。

「「「「いっただきまぁ~す!」」」」

言うや否や、何十匹ものゆっくりが、いっせいに食べ物にむしゃぶりつく。

「むーしゃむーしゃ♪」
「なにこれ、めっちゃうめぇ!」
「しあわせぇ~♪」

ゆっくり達は、人間達から盗んできた御馳走を貪り食っていく。
既に"一口だけ"の約束が忘れ去られてしまっていることに、気を揉むぱちゅりー。

そして、気を揉む存在がこちらにも。

「「「うーうー!」」」

うーぱっく達だ。
食事に夢中なゆっくり達を囲み、催促するように鳴き声をあげる。

うーぱっく達は、頼まれた物を頼まれた場所に届け、
その御礼として食べ物を分けて貰うことで生態を成り立たせている。
これだけの量の食べ物を運んだのだから、相応の御礼を貰わなければつりあわない。

「ゆっ?」
「なんだぜ、うーぱっく! せっかくまりさ達が御馳走を食べてるのに!」

面倒くさそうに食べるを止め、小うるさそうにうーぱっく達を見る、れいむとまりさ。

「うーっ!うーっ!」

うーぱっくは、羽をパタパタと動かし、ゆっくり達が食べる御馳走を指差す。
うーぱっく達にもわけて~というアピールだ。

だが、そんなうーぱっく達に対し、れいむとまりさはバカにしたように目を細める

「見ろよれいむ、たかだか運び屋のぶんざいで、まりさ達の御馳走をねだってやがるぜ」
「おお、あさましいあさましい」

そう言うと、れいむとまりさは人間の家から盗みだしたお菓子をくわえ、
うーぱっく達の目の前で「むーしゃむーしゃ」と食べ始めた。

「「「うー!?」」」

驚くうーぱっく達。
目こそいつものニコニコ目だが、互いの顔を見合わせ少なからず動揺を露わにする。

そして、ゆっくりの中では、かなり頭の良い部類に入るうーぱっく達は、一つの結論を導き出す。
すなわち、このゆっくり達は、最初から自分達をいいように利用して騙すつもりだったのだと。

「「「うーっ!」」」

一同、抗議の声を上げるうーぱっく達。
温厚なうーぱっく達だが、契約不履行の不届き者には、相応の態度を見せる。
羽を動かし、ペチペチとれいむとまりさの頬を叩き、驚いた隙に食べ物を奪い去る。

「ゆゆっ! なにするの!」
「やめるんだぜ! それはまりさ達のものだぜ!」

「「「うーうー!」」」

構わず、同じようにペチペチとゆっくり達の頬を叩いては、食べ物を奪っていくうーぱっく。
ニコニコと笑ったままのその顔が、逆に恐ろしい。

「ゆっくりやめてね!」
「それはとかいはのアリスのものよ! いなかもの!」
「わからないよー!」
「ゆっくりできないうーぱっくは、ゆっくりいなくなってね!」

うーぱっく達の正当な抗議に、不満を叫び出すゆっくり達。
だが、空を飛び、しかも団体行動になれているうーぱっく達の連携に、
食べ物は次々奪われていく。

「「「ゆぅぅ~~! ドスまりさぁ~~!!」」」

たまらずドスまりさを呼ぶ、ゆっくり達。
そのドスまりさといえば、クィーンアリスとともに自分の食事をするのに夢中であった。

『……ゆぅ~~~? どうしたのみんなぁ?』

言われるまで気づかないというのが、いかにもゆっくりらしい。
ドスまりさは、しばらく間を置いてから、ようやくゆっくり達に呼ばれていることに気が付いた。

『ゆゆぅぅぅっ! なにしてるのうーぱっく!!』

その光景を見て、驚くドスまりさ。

自分の群れのゆっくり達が、うーぱっくに虐められ、
苦労して集めた御馳走を横取りされているではないか!
……と、ドスまりさのゆっくり脳は瞬時に都合良く解釈した。

しかし、いかなゆっくり脳の持ち主とはいえ、
くさっても巨体と長寿を誇るドスまりさ。

こうなると群れを率いるリーダーとして、都合良く燃え出すのであった。

『ゆぅぅぅっっ!』
「う~?……うぎゃ!」

ドスまりさは、ぐにょんと体を下に押し込めたかと思うと、反動をつけて前方にとび跳ねる。
そして、目の前にいたうーぱっくに体当たりをしかけ、窪地の周囲の岩壁に叩きつけた。

「「うーっ!?」」

驚いたのは、うーぱっく達。
通常、ドスまりさは巨体に見合った経験と知識も併せ持っており、
今回の件の非がどちらにあるかは、自ずとわかってもらえると期待していたのだ。

『うーぱっく! まりさの仲間を一方的にいじめるなんて、絶対にゆるさないよ!』
「「ううーーー!??」」

全然、期待通りにはいかなかった。
戸惑い、慌てるうーぱっく達。

「むきゅ! まりさ、うーぱっく達は……」
『ぱちゅりーは黙っていてね! まりさはみんなを守るよ!』

うーぱっく達の抗議の理由を知るぱちゅりーが、ドスまりさを止めようとするが、
変な使命感のスイッチが入ってしまったドスまりさは止まらない。

このドスまりさは、確かに長い時間を生き、ドスの名にふさわしい巨体と力を得ていた。
だが、本来一人で生きて得るはずの知識や思慮を幼なじみのぱちゅりーの頼りっぱなしにしてきたため、
どうにも考えの足りないドスまりさになってしまっていた。

「「うーっ!」」

だが、うーぱっく達は、そんなことは知らない。
羽を動かし、自分達が運んできた食料を指す、うーぱっく。
なんとか自分達の誤解をといて、わかってもらおうとする。

『……わかったよ、うーぱっく』
「「うー♪」」
『うーぱっく達は、まりさ達を騙して食べ物を横取りするつもりだったんだね!』
「「うううーっ!???」」

全然わかってなぁーい!
うーぱっく達は、全員が同時に心の中でツッコミの声をあげる。

『まりさ達をゆっくりさせないうーぱっくは、ゆっぐりじねぇぇぇぇぇっっ!』

ドスまりは天高く舞い上がり、その巨体を地面に叩きつける。
何匹かのうーぱっくが、その巨体の犠牲となる。

「「ううーっ!」」

これ以上ここにいてはいけない!
うーぱっく達は身の危険を感じ、一目散に空高くへ舞い上がる。

「「うわぁぁーん! ドスまりさなんてきらいぃぃー!」」

自分達の誇り高い仕事が失敗に終わったこと、
つらい時も楽しい時も一緒だった、大事な仲間を失ったこと、
うーぱっく達は、目から涙を流して飛び去っていく。

だが。

『逃がさないよ!うーぱっく!……ひぃぃ~~~~っさつ!』

ドスまりさは、大きな口を思い切り開く。
すると口の中から淡い光がもれはじめ、瞬く間にまぶしい程の輝きを放ち始める。

「ゆゆっ!出るよ、ドスまりさの必殺技!」
「やっちゃうんだぜドスまりさ! バカなうーぱっくどもに身の程わからせてやるんだぜ!」
『すてきよぉぉまりさぁぁぁ!』
「む、むきゅう~!だ、だめよぉ、まりさぁ!」
事情を理解しているぱちゅりーを除いて、俄然もりあがるゆっくり達。
クィーンアリスに至っては、ドスまりさの勇姿に目をトロ~ンとさせている。

『ひっさつ!ドスパァァァーク!!』

「う、ううぅぅぅぅぅーーーっ!」

叫ぶと同時にドスまりさの口からレーザーが発射される。
そのレーザーは空を切り裂き、泣きながら逃げ去るうーぱっく達を直撃した。
超高温のレーザーは、ダンボールでできたうーぱっくの体を一瞬で焼き尽くし、
そらからは燃えかすとなったうーぱっく達がボトボトと地面に落ちていく。

「「「ゆぅぅぅ! すごぉぉぉーい!」」」

その圧倒的な威力に、群れ全体から感嘆の声があがる。
ドスまりさは群れのゆっくり達にむき直り、誇らしげに胸(?)をはった。

『みんなのことはまりさが守るよ! だから安心してゆっくりしてね!』
「「「ゆっくりぃぃ~~~♪」」」

喜びの声をあげるゆっくり達。
ただ一人、ぱちゅりーだけが浮かない顔して、岩の隙間の洞窟へと入っていく。

「むきゅう……」

今回の件の非は、あきらかにこちらにある。
なにか悪いことが起きなければよいけれど……。
その不安からか、ぱちゅりーは体に疲れを覚え、洞窟の奥で眠りについた。




けれど、このぱちゅりーの予感は、すぐに当たることになってしまう。




数時間後。
空には満月が登り、本来ならばゆっくり達も眠りにつく頃。
だが、山間の窪地では、いまなお多くのゆっくり達が食べや歌えやで大騒ぎをしている。

「ゆっゆっゆっ~~♪」
「だぜだぜだぜぇ~~♪」
『すごぉーい! みんなお歌が上手だねぇ!』
『さすがとかいはのアリスの子! 良いセンスをしてるわぁ!』

昼間の一件で、すっかりテンションの上がってしまったドスまりさの群れは、
あれからずぅ~と宴会を開いていた。

もはや、ぱちゅりーとの"冬の支度のために食べ物をとっておく"という約束は、頭の中になかった。
ゆっくり食べてはゆっくり踊り、ゆっくり食べてはゆっくり歌う。

「ゆゆゆ~~ゆゆゆ~~♪」
「だぜだぜ~~だぜだぜ~~♪」
「……ティ~ガティガティガ♪」

『ゆっ?』

ドスまりさは疑問に思った。
今、群れのれいむ達の歌に混じって、何か聞こえたような?

「ゆゆゆゆ~ゆゆゆゆ~ゆっゆっゆっ~~~♪」
「だぜぜ~だぜぜ~だっぜっぜぇ~~~♪」
「……ティ~ガティガティガ♪」

『ゆゆっ!?』
「「「ゆゆゆっ!?」」」

やはりだ。
気のせいじゃない。
今度はドスまりさだけじゃなく、他のゆっくり達にも聞こえたようだ。

ゆっくり達は、ひとまずバカさわぎを止め、あたりを見回す。
だが、本来夜の間は寝るのが"殆どの"ゆっくり達の生態のため、
ゆっくりの中で夜目が効く者はほとんどいない。

が、それにも関わらず。
ソレの存在はゆっくり達にもハッキリ視認できた。

『あれは、ゆっくりゃザウルス!!』

一番最初にみつけたクィーンアリスが叫び、それに呼応して他のゆっくり達もそちらを見る。

ゆっくり達の視線の先。数百メートルは離れた位置。
そこには、よたよたドタドタ踊るようにステップを踏み、ゆっくり達に近づいてくる不思議な生物がいた。

長生きをしていたクィーンアリスと、ドスまりさは、己の経験に基づきその生物をこう認定した。
あれは、ゆっくりゃザウルスだと。

ゆっくりゃザウルス。
それは、代表的な捕食種・ゆっくりれみりゃの亜種である。
亜種という意味では、昼間ドスパークの餌食になったうーぱっく達もそうだが、
近年比較的多く見かけるようになったうーぱっく達と異なり、
ゆっくりゃザウルスは、非常に見かけるのが希な亜種……即ち希少種であった。

その姿は、人間からみれば愛らしくも映る。
体つきのゆっくりれみりゃが、ダボダボくたくたの恐竜の着ぐるみを纏ったような姿。
それが、ゆっくりゃザウルスの特徴だった。

ずいぶんとディフォルメされた緑色の恐竜の、大きく開かれた口から、
れみりゃ種特有の「うーうー♪」という下ぶくれ気味の笑顔が覗いている。

体は筋肉質とは程遠く、まるでクッションかヌイグルミのような柔らかさで、
お腹のあたりに、有袋類…といえば聞こえが良いが、どう見ても縫いつけたような大きなポケットがある。

「ゆゆゆゆ~!大変だよ!れみりゃだよ!」

あれが、自分達を食べる捕食種の一種だと知り、慌てるれいむ。

「ま、まりさはおいしくないぜ! たべるなられいむの方がおいしいんだぜ!」
「どぉじでぞんなごどいうのぉぉぉーーっ!?」

にわかに群れに広がるパニック。
だが、ドスまりさがそれを鎮める。

『大丈夫! 安心してよみんな!』

「ゆゆっ?」
「わかるよ~! こっちにはドスまりさがいるんだよ~!」

『まりさとアリスにとって、ゆっくりゃザウルスなんて敵じゃないよ!』

そう言って笑顔を向けるドスまりさ。
「なんて頼もしいんだ!」群れのゆっくり達は、ドスの笑顔に安心して落ち着きを取り戻す。

『まりさとアリスは、もっと小さき時に……それこそみんなと同じくらいの時に、
 ゆっくりゃザウルスを倒したことがあるんだよ♪』

「「「すっごぉ~~~い!」」」

再びあがる感嘆の声。
それを誇らしげに受け止めるドスまりさ。

ドスまりさの言ったことは確かに事実であった。
……もっとも、ゆっくりゃザウルスのことを良く知るものが聞けば、
それが大した自慢にならないこともわかるのだが。

ゆっくりゃザウルスは、確かに希少種だ。
だが、希少なのには理由がある。

すなわち、ゆっくりゃザウルスは、れみりゃ種の中でも"最も弱い"種類だからだ。

亜種の多い、ゆっくりれみりゃだが、一応それぞれに進化と思われる特徴を持っている。

体が無く、耳のあたりに羽をつけているタイプは、れみりゃ種の中でも最もバランスが良い。
飛行能力も高く、蝙蝠やイルカにも似たエコーロケーション能力を持っており、
暗い場所でも自由自在に動くことができる。

うーぱっくは、敏捷性や攻撃能力では上記のれみりゃに劣るものの、
そのぶん他の物(者)を上に載せて飛ぶ能力にすぐれている。
また、協調性に優れ、ゆっくり達の運送屋さんとしての地位を確立することで、
自然界の中で主立った敵を作らず、共生関係を築き上げていた。

胴体と四肢のついたれみりゃは、紅魔館のすぐそばでよく見かけられる。
重たい体がついたのが逆効果となり、飛行能力・運動能力は明らかに低くなっているが、
それでも(極めて不器用ではあるが)手足が使えるメリットは大きいし、
なにより紅魔館の主の姿と似ているために、館のメイド達から寵愛を受けられるという面もある。

……では、ゆっくりゃザウルスはどうか?
悲しいかな、これといって優れた点が無いのだ。
背中から羽は失われ、空を飛ぶことはできない。
手足や指先は恐竜のヌイグルミ状になっているため、細かい作業も全くできない。
ずんぐりむっくりした体は重たく、生きる上で極めて燃費効率が悪く、すぐ疲れてしまう。
おまけに、なまじ体が重くなったぶん、本人は強くなったと勘違いし、無駄に気が大きくなる傾向がある。

では、なぜそんなにも不都合だらけのゆっくりゃザウルスへと姿を変える必要があるのか。
それは、ゆっくりの研究者達の間でもまだ解明されていない。

いずれにせよ、そんなゆっくりゃザウルスであるが故に、
本来獲物であるはずのゆっくり達に、逆に返り討ちにあってしまうこともままあるのだ。

まして、ドスまりさとクィーンアリスからみれば、
逆に向こうから美味しい肉まんがやって来たようなものだ。

「ティ~ガティガティガ♪」

歌いながら、えっちらおっちら満面の笑顔で歩いていくるゆっくりゃザウルス。
その声が、徐々にはっきり聞こえてくる。

『ゆぅ~♪ みんな、今日はおいしい肉まんがたべられるよ♪』
「「「わぁ~~い♪」」」

余裕のゆっくり達。
しかし、その余裕がゆっくり達に、本来気付くべき疑念を忘れさせてしまっていた。

なぜ、数100メートルも先のゆっくりゃザウルスを、夜目の効かないゆっくり達が見えているか。
なぜ、まだまだ遠くにいるはずのゆっくりゃザウルスの歌が、こんなにもハッキリ聞こえるのか。

そして、なぜゆっくりゃザウルスが近づいてくるたびに、地面がドシンドシンと揺れるのか。

数秒後、ゆっくり達は嫌がおうにも、その理由をわからされることになる。

『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~♪』

「「「『ゆげぇっ! お、おおきぃぃぃぃっっっ!!??』」」」

目の前まで来て足を止めたソレを見上げ、一同に驚愕の叫びをあげるゆっくり達。
ドスまりさとクィーンアリスさえ、呆気にとられてソレを見上げている。
身長はゆうに10メートルを越え、尻尾の部分をあわせた全長は20メートルにも届かんほどだ。

『ティガ☆れみ☆りゃ☆う~~~♪』

ソレは、自らがれみりゃ種であることを示すように、自らの存在を知らしめるように、
両手を顔の横に上げ、れみりゃ種特有の"れみりゃダンス"を行った。

「「「ゆゆゆゆっ!」」」

ソレがダンスのステップを踏む度、地響きが起こり、小さなゆっくり達を震えさせる。

『や、やめてよね!ゆっくりゃザウルスのくせに、まりさ達をおどかさないでね!』

ぷく~と頬を膨らませ、見上げるソイツに告げるまりさ。
一方、そのれみりゃは不思議そうに、首をひねった。

『う~? ゆっくりゃザウルス?』

『そうだよ! おまえのことだよ! 自分のこともわからないなんて、ゆっくりゃザウルスは本当にバカなんだね!』

『うーうー! れみりゃはぁー、ゆっくりゃザウルスじゃないどぉー♪』

『え?』

『れみりゃはぁ~♪』

にぱぁ~☆と満面の笑顔を浮かぶ。

『ティガれみりゃだどぉー♪』

そう、この巨大なれみりゃは、ゆっくりゃザウルスではなかった。
圧倒的な巨体と力を持つ、ドス種を越える超巨大・突然変異ゆっくり、ティガれみりゃだったのだ!

『……ティ、ティガれみりゃだなんて知らないよ! バカなれみりゃはおとなしくまりさ達に食べられてね!』

巨体にプレッシャーを感じつつ、あくまで虚勢を張るドスまりさ。
他のゆっくり達も、ドスまりさなら負けるハズないと、徐々に落ち着きを取り戻していく。

「そうだよ! ばかなれみりゃはゆっくり死んでね!」
「ドスが、おまえなんかに負けるわけないんだぜ!」

ゆっくり達が、わーわーと騒ぎ立てる。
それ見回してニコニコするティガれみりゃ。

『うー♪ おいしそうなおまんじゅうがいっぱいだどぉー♪』

そう言うと、ティガれみりゃはクィーンアリスを片手で掴み上げ、口の前へと運ぶ。

『ゆぅ!?』
「クィーンアリスが!」
「おとなしくアリスを離すんだぜ!」

あっさりつかまってしまった群れのナンバー2に、ざわめくドスまりさとゆっくり達。
当のクィーンアリスは、頬を膨らませて、ティガれみりゃを罵っている。

『これだからマナーを知らないいなかものは! 
 とかいはのアリスにこんなことしてただですむと思わないでね!』

そんなアリスをじぃ~っと見つめて観察するティガれみりゃ。

『うぅ~♪ よくみるとぶさいくなおまんじゅうだどぉ』

『ゆぎぎぎぃぃぃぃぃっ! とかいはのアリスに向かってよくもぉぉぉっ!』

逆上するクィーンアリス。
対するティガれみりゃは……

『うー♪ うるさいおまんじゅうだどぉ♪』

と言ってから、そのまま「あ~~ん」と大口を開け、クィーンアリスにかぶりついた。

『ゆげぇぇぇぇぇえ!』
『あ、アリスゥゥゥッッッ!!』

たまらず断末魔を上げるクィーンアリスと、ドスまりさ。
クィーンアリスの体はたった一口で半分がえぐりとられ、その生命活動を停止させた。

『う~♪ がじがじ~♪』

そのまま美味しそうにクィーンアリスの残骸を食べ続けるティガれみりゃ。
2メートルあった、クィーンアリスの体も、数秒で消滅してしまった。

『うっうー♪ おいしかったどぉー♪』

舌をペロリと回し、口の周りについたクリームを舐めとるティガれみりゃ。
その光景を見ていたドスまりさの怒りは、既に限界を遙かに超えていた。

『ゆぎぎぎぎぎぎぎ……ゆ、ゆるさないっ、ぜぇったいにゆるさないぃぃぃぃっ!!!!!』

『う~?』

『ゆっぐりじないでじねぇぇぇぇぇぇ!!!!!』

「で、でるぜ! ドスの必殺技!」

『ドスパァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーク!!!!!!!』

ドスまりさは口を開け、高温のレーザーを放つ。
怒りにまかせて全ての力を結集したそれは、昼間うーぱっくを仕留めたのとは比較にならない程の出力となる。

夜の闇を、貫くドスパークの光。

これを受けて無事なゆっくりなどいるはずがない。
いや、人間はおろか妖精や妖怪とてただでは済むまい。

『……うぅぅぅぅぅ! アリスぅぅぅぅ、かたきはとったよぉぉぉぉぉ!』

嗚咽混じりで天に吠えるドスまりさ。

誰よりキレイだったクィーンアリス、彼女はお空のお星様になってしまったんだ。
ドスまりさとゆっくり達はそう思い、ドスパークの衝撃で巻き起こった土煙の先、
クィーンアリスのお星様を見ようと、夜空を見上げようとする。が。

『う~? なんかあったかいどぉ~…なんだか汗かいちゃったどぉ~♪』

「「「『ゆ、ゆげぇぇ!?』」」」

見えるハズのお星様が見えず、
見上げた先には、変わらずティガれみりゃが立っていた。
その体には傷一つなく、下ぶくれの笑顔に少し汗をかいているだけだった。

『どぉじでぇぇ! なんでドスパークがぎがないのぉぉぉぉぉっ!!??』

『う~、汗かいたら、またおなかすいちゃったどぉ~♪』

ティガれみりゃは、おなかのあたりをおさえ、少し頬を紅潮させた。
"こーまかんのれでぃーである"という自負からなのか、
食べてすぐ、またおなかをすかせることが恥ずかしいようだ。

とはいえ、そこはゆっくり。
恥じらいよりも、まずは欲求に従う。
そこはティガれみりゃといえど、変わらなかった。

『ぎゃぉー♪ いっただきまぁーす♪』

『ゆべぇ!!?? 、は、はなじてぇぇぇぇ!!!』
「「「どどどど、ドス!?」」」

足下ではねまわるドスまりさを難なく掴み上げると、口の前に運ぶティガれみりゃ。

『がじ、がじ、がじぃ~♪』
『ゆべっ!うげぇ!ゆぶぁ!!』

みるみるドスまりさの体は小さくなっていき、
10秒もたたずに、全てティガれみりゃの口の中に消えていった。

『う~、おいしぃ~♪』

「「「…………」」」

あまりにも信じられないことが起きた時、人は一切の思考が働かなくなる。
それは、ゆっくり達にもあてはまるらしい。
なすすべ無く食べられるドスまりさを目の当たりにした無数のゆっくり達は、
ただ無言のまま固まってしまっていた。

一方、ティガれみりゃはというと、お腹についたポケットの中に手をつっこみ、
何かをゴソゴソと取り出した。

『うっう~! すぴあ☆ざ☆ぐんぐにる~♪』

まるで、22世紀の猫型ロボットが便利道具を取り出すように、
ティガれみりゃはポケットから、引き抜かれた立ち枯れの木を取り出し、天に掲げた。

「「「ゆゆゆゆ!?」」」

誇らしげなティガれみりゃの様子に、本能的に身の危険を感じるゆっくり達。
金縛りをといて、それぞれ四方八方に逃げだそうとする。

『ぎゃおー♪ たーべちゃうぞぉー♪』

「「「ゆ、ゆぎゃぁぁぁぁっっっ!」」」

ゆっくりプレイスだったハズの山間の窪地は、あっという間に阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。

『れみりゃのおだんごぉー♪ とぉーってもおいしぃーどぉー♪』

ティガれみりゃは口ずさみながら、比較的大きめのゆっくりを摘むと、それを次々枯れ木に刺していく。

「「「ゆげぇ」」」

鳴りやまないゆっくり達の悲鳴。

あるゆっくりは岩陰や洞窟に逃げ込もうとするが、
ティガれみりゃは「うー、岩いらなーい!ぽいぽいぽぉーーい♪」と、
岩そのものを持ち上げどけて、隠れていたゆっくり達をつまみだした。

『うー、すごいどぉー! れみりゃは狩りの天才だどぉー♪』

やがて、そこそこ育って美味しそうなゆっくりを全て枯れ木に刺して、
ゆっくりだんごを完成させたれみりゃは、満足そうに自分を讃えた。

自分達は助かったのか?
そう思った残りのゆっくり達は、おそるおそる隠れていた場所から外へでる。

『う~~~う~~~♪』

しかし、ティガれみりゃがリズムを刻みだしたのを見て、ゆっくり達は己の軽率さを憎み、
そして、短いゆっくり人生の終わりを実感するのだった。

『うっうーうぁうぁー♪ うっうーうぁうぁー♪』

どっすんどっすんと、喜びのダンスを踊るティガれみりゃ。
なんとかゆっくりだんごを逃れたゆっくり達も、あるものは踊るティガれみりゃの足や尻尾に潰され、
あるものは、ティガれみりゃのステップの影響で岩や土が崩落し、その餌食となった。

ゆっくり達の理想郷は、こうして壊滅した。
……そう、一人の目撃者を除いて。





翌日。
ティガれみりゃの襲来をやりすごした目撃者。
その生き残りは、ティガれみりゃへの恐怖と、震えたまま動けなかった自分を呪い、
洞窟の奥から出ることが出来ずにいた。

「む、むきゅぅぅぅ……」

その生き残りの正体は、洞窟の最奥、もっとも地盤の安定した箇所に隠れていたぱちゅりーだった。
群れの全滅を嘆き、幼なじみのドスまりさとクィーンアリスの死を悲しみ、泣き続けるぱちゅりー。

昨夜、先に寝ていたぱちゅりーは、外が騒がしいのに気付き、一度は目を覚ました。
だが、外へ出ようとしたその刹那、ドスまりさがティガれみりゃに食べられるのを目撃してしまったのだ。
どうするべきか全くわからなくなってしまったぱちゅりーは、唯一残された生物としての本能、
すなわち"生き残る"という目的にのみ従って、こうして群れが全滅してティガれみりゃが去るまでの間、
隠れ続けていたのだ。

「むきゅぅぅぅぅ! むきゅうううううう!」

思い出しては、こみ上げる感情に逆らえず泣き崩れるぱちゅりー。

それから、また一日がすぎた。

朝日が山間の窪地を照らす中、ぱちゅりーは外へ出た。
その目に決意の炎を宿して。

二日近く考え抜いたぱちゅりー。
彼女は、ドスまりさ達の死を無駄にしてはいけないと考えた。
そして、生き残った自分だからこそ出来ることがあるはずだと結論づけた。

そう、他の群れにティガれみりゃという脅威を報せ、
ともに戦わなければならないと。





一方その頃、どこかの森で。
今日もティガれみりゃの歌が聞こえていた。

『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~♪』





次回予告
『ティガれみりゃ2・異常震域』



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(あとがき)

休日出社中、上司の机に『モンハン』のティガレックスのフィギュアが置いてありまして、
気付いたらこんなものを書き始めていました。……二次設定のSS書くの何年ぶりだろう(汗

「ゆっくり好き」+「れみりゃ好き」+「怪獣好き」+「モンハン好き」

そんな作者の妄執が具現化したようなSSですが、もし楽しんでいただけましたら幸いです。
ちなみに、言う必要も無いかもですが、ティガれみりゃの歌はアノ映画の歌が原型ですw


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最終更新:2022年04月11日 00:42