家の庭では、数十匹のゆっくりが気ままに遊んでいる。
「ゆっゆっ!!」
「ゆっきゅちー!」
 今日は天気も良く、絶好の運動日和。

 我が家の庭には、ゆっくり専用のジャングルジムなど様々な遊具が揃っている。
「ゆゆー!おそらをとんでるみたいだよぉー!!」
 ブランコをしたり、
「ゆゆん!ゆっくりまってね!」
「まりさはゆっくりにげるよ!れいむこそゆっくりしていってね!」
 追いかけっこをしたり、ゆっくりしたり…
 そんなゆっくりに俺は声をかける。
「おーい、お前たち、散歩に行くぞ」



 幻”思”痛
       by ”ゆ虐の友”従業員



 緑茂る森を抜けて、見晴らしのいい丘、人通りの少ない町外れを抜ける散歩道を、
 俺はゆっくりを引き連れて回る。
「もりさん!たんぼさん!ゆっくりしていってね!」
「ゆっきゅりしていってにぇ!」
 日差しは暖かく、風はゆるやかに吹く。
「ほーらお前たちー、あんまりゆっくりしてると置いてくぞー」
 俺は足を速めた。
「ゆー!」
「ゆえーん!まってね!ゆっくりしていってね!」
 ゆっくり達は一生懸命に追いかけてくる。
 ああ……可愛いゆっくり達……
「おにーさん!!まってよぉぉぉぉぉ!!!」
「ゆーん!!ゆーん!!」
 そんな顔をされると……
「もっとスピード上げていくぞー!ほらほら!!」
「ゆっ!ゆゆうぅぅーっ!!」
「ゆびぃぃぃぃーー!!」
「ウフフフ!!ウフフフフフフ!!!」
 見ろよあの滑稽な顔を!必死こいて跳ねてやがる!
 可愛いなあこん畜生!!
「ウフ!ウフフフフフ!!ウフ!」
 オラオラ!トップスピードだ!!
「まっでぇぇぇぇ!!!!」
「ゆっきゅりじでぇぇぇぇ!!!」


 * * * *


「いつつ……」
 次の日、俺は太腿を襲う痛みに耐えていた。
「ゆゆ!どうしたの?」
「ゆっくりできてないの?」
 俺はゆっくりに説明してやる。
「これは筋肉痛といって、運動をしたあとにおこるものだ」
「ゆ?ゆゆ?」


「筋肉を動かすことによって、疲労物質である乳酸が体にたまる」
「ゆゆ!にゅうさんさんはゆっくりできないんだね!」
「乳酸は体の中に長く残って、酸素の供給を阻害する」
「きょわいよぉぉ!!!」
「さんそがないといきができにゃいよぉぉぉぉ!!??」
「おお、子れいむのくせに賢いな。そうなんだよ。
 手さんや足さんが呼吸ができなくて苦しいよー、苦しいよー、と泣くんだよ」
「ゆびぇぇぇぇぇぇぇ!!!??」
「とまあ、そのようなわけで手や足がじんじんと痛むわけなのだね」
「ゆっくりできないきんにくつうさんはゆっくりでていってね!!」
「ゆっきゅりできにゃいのやだよぉぉぉぉぉ!!!」
 俺は最後にこう付け加えて締めくくった。
「お前たちも昨日たっぷり走ったからな……覚悟しといたほうがいいぜ」
「!!」


 このゆっくり達は、もちろん今まで筋肉痛など感じたこともないし、そもそも筋肉などあろうはずもない。
 しかし…
「ゆぎぎぎぎ!!!!」
「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛!!」
「……」
 痛みにもだえるゆっくり。
 なんだかなあ、という気持ちになった。


 * * * *


「おちびちゃん!!じゃんぐるじむはやめてね!ゆっくりできないよ!」
 親ゆっくりは恐ろしい剣幕で子れいむを叱る。
「ゆゆー!!」
「おかーしゃん!れいむゆっきゅりしたいよ!!」
 大好きなじゃんぐるじむや、お気に入りの遊具やおもちゃ。
 それらはすべて禁止される。
「ゆえーん!ゆえーん!」
「ゆんゆんゆん!!」
 泣きじゃくる子れいむに俺は近づいた。
「ゆゆ!おにーさん!」
「おかーしゃんがいじわるゆーんだよ!!」
「おちびちゃんはわかってないよ!ゆっくりりかいしてね!」
「まあまあ、大丈夫さ。あんまり激しい運動をしなければ。
 さあ、散歩に行こうか」
「ゆゆぅーーん!!おにーさんはかしこいね!」
「ゆっきゅりぃぃーーー!!」


 ゆっくり達は昨日の反省からか、そろそろと這う。
「そろーり!そろーり!」
「ゆっくりしゅるよ!」
「おいおい、そんな速さじゃあ、おうちに帰るまでに日が暮れちゃうぞ」
「ゆゆ……でも……」
「夜になったられみりゃが来ちゃうぞー」
「ゆー!」
 結局、遅れを取り戻すために強行軍になったのは言うまでもない。

「ゆっぐ……ゆっぐ……!」
 ぴょんぴょんと跳ねながらも、ゆっくり達は来るべき苦痛におびえる。
「やめでね!にゅうさんきんさんはゆっぐりじないでね!!」
「もーちょっと駆け足にしようかー!」
「まっでえぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「きんにくつうごあいよぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「大丈夫だって!!筋肉痛なんて、結構痛くて動けなくなったり、ゆっくりできなくなるだけだって!!
 さあ、急いでおうちにかえろうね!!!いっちに!いっちに!」
「ゆっぐりじだいぃぃぃぃぃぃ!!!!」
「やみぇてぇぇぇぇぇ!!!!!」


 次の日、やはり苦痛にのたうつゆっくり達だった。
「いだいよ!!ゆっぐりでぎないよぉぉぉぉ!!!」
「だがらいっだどにぃぃぃぃぃ!!!!」
「ゆぴぃぃぃぃぃ!!!」
「ゆんゆんゆん!!!!」
 気にしなけりゃなんでもないと思うんだけどね、本当の話。







 おしまい。 

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最終更新:2022年04月16日 22:50