人里(市場)
1匹の
ゆっくりれみりゃが、子供を連れて歩いている。
「うっう~うあうあ♪」
「う~うあ~♪」
2匹とも上機嫌だが、2匹を見る周囲の目は冷たい。
「また
ゆっくりゃだよ・・・」
「どうする? 叩き出すか?」
「商品に手を触れたら肉まんにして食ってやる!」
「それより"ゆ民"に持ってって料理してもらおうぜ」
そんな周囲の反応をものともせず、よく分からない踊りを踊りながらふらふら歩いていく。
そして、
「う~♪ ここ~♪」
魚屋の前で立ち止まった。
「おじしゃ~ん、おしゃかなくだしゃ~い♪」
「はぁ? てめぇ頭おかしいのか? 魚はくさいからぽーいなんじゃなかったのか?」
「う~。 たべるじょ~♪ だからおしゃかな~♪」
「うっぜぇなぁ! 何が欲しいって!? 鯨丸ごとでもやろうか!? 早くどっか行けよ!」
「いえ、え~と、アジを3びきとカレイを2ひきです」
「は・・・へ?」
「おかねはあります。 ええと・・・これです」
「は・・・はぁ・・・」
人が変わったようにはっきり話し始めた
ゆっくりれみりゃに驚きすぎた主人は、呆けたように商品を渡す。
「ありがとう」
れみりゃは来たときとは裏腹に、子供と手をつないですたすたと歩いていった。
「お・・・おおおおおおおおいおいおい!!い今
ゆっくりゃが・・・!!」
「はいここでネタばらし~」
「あ・・・あえ?」
「どうも。 いかがでしたか?あれは」
「あ・・・ああ。 あんたんとこの
ゆっくりゃかよ。 ったく脅かすな・・・待てよ、まさかあれが例の?」
「ええ。 完成が近いので、試験運用をしているところです。 しかしこの試験は失敗でした。」
「え?」
「いまのれみりゃにこれは簡単すぎました」
「あ~・・・確かにありゃ完璧だわ。」
「もうあれでいいんじゃない?」
「作戦決行か?」
「いえ、もう少し様子を見てから・・・まだまだ危なっかしいところもたくさんある。さっきも魚に"匹"をつけてましたしね」
「そんな細かいところまで必要でもないだろ」
「そうですか? まぁ、とりあえず身体能力も測ってみないといけないので。 もう少し時間をいただくことになります」
「ああ、そういえばねぇ、あんたにも力を貸して欲しいことがあるんだよ・・・」
・・・
・・
・
急いで研究所に戻った俺は、
「まりさ! ゆかりん! フラン!」
「んあ~?」
「はい」
「・・・ん?」
「明日、れみりゃの身体能力試験を行う。」
「いきなりですね・・・何かあったんですか?」
「市場の北側の森に巨大
ゆっくりが複数現れて暴れまわってるそうだ」
「巨大?」
「3~4mあるそうだ。 取り巻きをうまく使って逃げるため、なかなか狩れないらしい。」
「うちのゆゆこもそろそろ3mの大台ですが」
「自然界での3mは訳が違う。 知能もかなり発達していると見て間違いないだろう。 それに体当たりでもされたら人間でも無事では済まない」
「そんなものを相手にしたられみりゃだけでは不可能なのでは?」
「いや、里の人たちが明日本格的に一斉狩りをするらしくてな。それに参加させてもらう」
「そのデカ
ゆっくりの1匹をれみりゃに狩らせるの? どちらにしても無理だと思うけどね~」
「お前らも行くんだよ。 当たり前だろう?」
「え゛~・・・」
・・・
・・
・
「う~♪ ただいま」
「ただいま~♪」
「おお、早かったな」
助手の1回目のお使い試験と並ぶタイムだ。
さて・・・
「ご苦労様。 約束通り、子供にはプリンをやろう。」
「う~♪ ぷり~ん♪」
「だが、お前にはやれない」
「う~!?」
「明日、今日の分もいっぱい食べられるから、今日は我慢しろ」
「う、う~・・・わかりました・・・」
明日の試験で最高の結果を出すために、れみりゃをある程度空腹にさせておく。
別にそこまでこだわる必要は無いのだが、研究者としてはやはりなるべくいい結果を出したいものだ。
れみりゃは子供がプリンを食べている姿を、特にうらやましそうにでもなくただニコニコと見つめている。
精神状態もすこぶる良好だ。
どこまで結果を伸ばせるか、とても楽しみだ。
そして翌日
俺達は森の入り口の広場に集まっていた。
さすがに一斉駆逐だけあって、50人ほどの男達が集まっている。
「お、これが例の?。」
「ええ。 様子はどうですか?」
「デカいのの1匹はいつもこの時間帯にお供を連れて畑やらを荒らしにくるんだ」
「ああ、だからここで待ち伏せを」
「んで、もう1匹のデカいのは全然アジトから出てこないんだよなぁ・・・」
「そうですか・・・」
おそらく、森から出てこない方は妊娠中だろう。
出産のために大量のエサが要る→人里への被害が激増した、といったところか。
「では、その閉じこもっている方はこちらで処分させていただいても?」
「あ? ああ、そりゃこっちとしてもありがたいが・・・何か方法があんのか?」
「いえ、実は今
ゆっくりれみりゃの試験運用中でして」
「そいつにやらせんのか? 大丈夫かよ?」
「ご心配なく。 こいつも一緒に行かせますので」
そう言って助手の頭を撫でる。
「ああ、そりゃ確実だな。 んじゃぁ頼んだぜ」
「お任せ下さい」
「・・・と言う訳だ。 フランとれみりゃには森に入り巨大
ゆっくり及び周囲の
ゆっくりを駆除してもらう」
「ん。」
「うー!」
俺は荷物の中からこぶし大のガラス容器を2つ取り出す。
「念のため1つずつこれを持って行け」
「・・・これは?」
「硫酸弾だ。」
加工場が
ゆっくりの処分に使っている硫酸を分けてもらったので、使ってみようと思って作ったのがこれ。
硫酸をガラス容器に入れ、底部に少量の火薬をセットする。
スイッチを押せばガラスが割れ、硫酸が撒き散らされる。
「言うまでもないがこれを被ったらお前達も崩れるからな。 気をつけて使え」
「ん。」
「うー!」
その時、偵察に出ていた男が帰ってきた。
「来たぞ! もう"胡桃の小道"のところまで来てる!」
「よし、罠を張れ! 油断するなよ!」
「お前達は回り込め! 気付かれたら終わりだぞ!」
いきなり緊迫し始めた男達。
そろそろか・・・
「フラン。 れみりゃ。」
「ん?」
「う?」
「命令だ。 お前達だけで森の奥にいる巨大
ゆっくり、及び周辺の
ゆっくりどもを殲滅しろ」
「はい」
「う・・・はい!」
元気な返事をして飛び立つ。
わさっ、わさっ、わさっ・・・
ばさっ、ばさっ、ばさっ・・・
さて、どんな結果が出るだろうか・・・・
博士の元を飛び立った2匹は、一直線に巨大
ゆっくりの方に向かって進んでいた。
「う~、おっきい
ゆっくりがいるところ、わかるの?」
「うん。 こっち」
程なくしてこちらに向かって行進している巨大な
ゆっくりアリスと周りの無数の
ゆっくりたちを見つけた。
「う~、あれ?」
「違う。 もっと遠くにいるやつ。」
「なんでわかるの?」
「勘。」
わさっ、わさっ、わさっ・・・
ばさっ、ばさっ、ばさっ・・・
かなり飛んだところで、木の間に降下する2匹。
前方には、
ゆっくりの集落があった。
中央にいる巨大
ゆっくりまりさ。
博士の言った通り妊娠中らしく、顔の下に深いくぼみができている。
その周りにも多数の
ゆっくりが思い思いの行動を取っている。
「ゆー! もうすぐありすたちがたべものをとってきてくれるよ!」
「ばかなにんげんのわななんかすぐみやぶれるもんね!」
「いっぱいたべものもってきてくれるもんね!」
「ほんとうににんげんはばかだね!」
「「「
ゆっくりちちぇっちぇね!!」」」
れみりゃとフランは簡単な打ち合わせを済ませた後、二手に分かれた。
「がぁお~、た~べちゃうぞ~♪」
森の中から突然現れた
ゆっくりれみりゃ。
しかし、
ゆっくり達は少しも動じることはない。
「あかちゃんはこっちにきてね!」
「みんなこっちによってね!」
てきぱきと統率の取れた動きで固まる
ゆっくり達。
ゆっくり達が巨大
ゆっくりまりさの周りに集まって威嚇しているためか、
ゆっくりれみりゃはその巨大
ゆっくりに狙いを定めたようだ。
「う~♪ ぎゃお~、た~べちゃうぞ~♪」
「おお、こわいこわい」
「おお、おろかおろか」
巨大
ゆっくりまりさまでたどり着き、皮に手をかける
ゆっくりれみりゃ。
しかし、超重量の中身を支えるため分厚くなった皮はびくともしない。。
「う・・・うー!」
巨大
ゆっくりまりさは余裕の表情で、少し身体を後ろに引き、勢いをつけて
ゆっくりれみりゃに体当たりをする。
「ぶぎゅっ!」
人間でも吹っ飛ばされる体当たりをまともにくらい、吹き飛んで後ろの木に激突する
ゆっくりれみりゃ。
「う・・・うああああああぁぁ!!」
「れみりゃはばかだね!」
「じぶんのじつりょくもわかんないんだね!」
「ばーかばーか!」
「
ゆっくりしね!
ゆっくりしね!」
ゆっくりれみりゃの周りを取り囲み、次々に体当たりを仕掛ける
ゆっくり達。
「うあー、ざぐやー、ざぐやー!」
「さくやだって。 おお、こないこない」
「
ゆっくりもっていくよ!」
絶対の自信と経験から、もうこの
ゆっくりれみりゃが反撃することは無いと判断した
ゆっくり達。
妊娠中の巨大
ゆっくりまりさに、転がり込んできた獲物をあげようと
ゆっくりれみりゃを引きずっていく。
「うあー! うあー!」
「おいしそうだね! みんなにもわけてあげるよ!」
「うぁ・・・うう・・・」
泣き喚くのにも疲れたのか何か言い始めるれみりゃ。
「なに!? きこえないよ! はっきりいってね!」
「うー・・・ところで」
「なに!? いのちごいくらいはきいてあげるよ!」
「はやぶさってしってる?」
ずどぼぉっ!!!!
「ゆぐりゅぎゃっ!?」
空から降ってきた何かが
ゆっくりまりさに激突した。
「はやぶさってね、たかいところからすごいはやさでおりてきてえものをつかまえるんだって」
ゆっくりフランはれみりゃと別れた直後、自分が余裕を持って上昇できるところまで上昇し、下を見下ろした。
下ではれみりゃが
ゆっくりに囲まれて騒いでいる。
うん、打ち合わせ通り。
「・・・ふぅ」
一呼吸して降下体勢に入る。
いやでも目に付く巨大
ゆっくりに照準を合わせ、降下開始。
最高速に達する前に微調整し、完全に巨大
ゆっくりの真上に来た時点で加速。
ゆっくり達が全くこちらに気付いていないことを確認し、さらに加速。 最高速へ。
そしてそのまま右腕を引き、衝突と同時に思い切り下に突き出し、
ずどぼぉっ!!!!
「ゆぐりゅぎゃっ!?」
直撃した。
帽子を紙のように突き破り、皮をぼろ雑巾のように引き裂いて体内に侵入したフラン。
「っぐう・・・」
右腕が衝撃で若干裂けた。 なに、すぐに再生する。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! あがぢゃん゛ん゛ん゛!!」
内側に叫び声が響き渡ってとてもうるさい。
そのまま羽を思い切り広げ、体を回転させる。
「ゆぐうううぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!」
暴れさせる暇を与えず運動能力を排除したフランは、身体についた餡子を気にしながら大きく開いた口から外へ出た。
「うー!おいしー!」
れみりゃはフランが巨大まりさと激突したときに衝撃で飛び出た子
ゆっくりを齧っていた。
やわらかく、決して自己主張し過ぎない皮。
べったりと甘すぎずしかし薄すぎず、程よい甘味。
まろやかでコクがあり、それでいて余計なねちっこさが無く後味すっきり。
舌を這わせると、人工的な味の全く無い天然の餡子の風味が嗅覚を楽しませてくれる。
これはこれまで食べてきたものの中でも1、2を争う1級品だ!
意外なところで究極の美味に出会ったれみりゃは、その感動をフランにも分けてあげようと、
「うー! ふらん! これ、これたべてみて!」
しかし、
「ん・・・いい。 それよりあの穴の中にそれと同じのいっぱいあるよ。」
「ほんと!?」
「食べてきていいよ」
「うー♪」
巨大
ゆっくりの産道に潜り込むれみりゃ。
「ゆぐぎゃあああああああ!! やめでえええええぇぇぇ!! あがぢゃんがああああああぁ!!」
泣き叫ぶ巨大まりさだが、フランの正確な破壊により全く動くことができず、ただ涙を流して身をよじるしかない。
と、
「ゆっ!まりさになにをした!」
「
ゆっくりできないやつは
ゆっくりでてけ!」
「まりさにひどいことするやつは
ゆっくりしね!」
ゆっくり達が体当たりを仕掛けてきた。
自己を過信しすぎて本能が薄れたか・・・
「・・くっ・・・ふ・・・」
「ゆ!なにいってるの!?」
「ふ・・・ウフフ・・・」
「なんでわらってるの!? とっととしね!」
「ふ・・・ふ・・・」
「みんなでやっつけるよ! みんなこっちにきてね!」
「キャハハハハハハハハハハハハハッ!!」
羽を思い切り広げて横に羽ばたく。
「ゆぐぇ・・・」
「ゆぎゃ・・・」
「ぶぎゅ・・・」
巻き込まれて近くにいた
ゆっくりが全て刻まれて餡子を撒き散らす。
ゆっくりがまとまっているところに飛んで腕を大きく振る。
「ゆ・・・」
「ゆゅ?」
潰さず掬い上げるように全ての
ゆっくりを腕に乗せ、その勢いのまま木に叩きつける。
バチン! バシャン! バチュン!
声をあげる暇も無く木にへばりつきデスマスクとなる
ゆっくり達。
ゾッ!
ゆっくりの上部の皮を手刀でまとめて削る。
「ゆうううぅ! れ゛い゛む゛のあだまあ゛あ゛あ゛ぁ」
「いだいよー! わがらないよー!」
「うあああああぁ!!」
中身が露出したところで上から木の枝で地面に固定する。
「いやああああぁ!! いだいいいいいぃ!!」
「うごげないよおおおおおぉ!」
「あんごがああああぁぁ!!」
ちび
ゆっくりを小枝に刺して串団子を作り、その
ゆっくり達の上に乗せる。
「ゆぎゅー!」
「だぢゅげでー!」
「いじゃいいい!!」
うん、いい感じ
「キャハハッ♪」
「ゆ、ゆゆっ!」
「
ゆっくりにげるよ!」
「・・・逃がさない♪」
つがいらしい
ゆっくりの片方を思い切り蹴り上げる。
「ぼぎゅ!」
「ま・・・まりざあああああああぁ!!」
「ふぅ・・・フフッ♪」
帽子を残して四散する
ゆっくりまりさ。
「よくも・・・よぐもまりざをおおおおおおおお!!」
ふと思いつき、落ちてきた帽子を被ってみる。
「ほら、まりさ♪」
「お・・・お・・・おまえがああああああぁ!そのぼうしをかぶるなあああああぁ!!」
体当たりしてきた
ゆっくりれいむを鷲掴む。
「ゆぐっ!」
帽子を、今度は
ゆっくりれいむの頭に乗せる。
「はい、まりさと一緒♪」
辺りを見回し、近くにあった小さな洞窟の中で
ゆっくりれいむを床に枝を刺して突き立てる。
「ゆぐうあ゛あ゛あ゛ぁぁぁあ゛!!」
「これで死ぬまでまりさと一緒。 よかったね♪」
「ぐ・・・ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁ!!」
ものすごい表情で慟哭する
ゆっくりれいむに満足しながら洞窟を大きめの石で塞いだ。
いけない、ちょっとうかれちゃった。
ちゃんと博士の言ったとおり"殲滅"しないと・・・
「クス・・クスクス・・・フフフッ♪」
ゆっくりフランは散り散りに逃げ出している
ゆっくり達に向き直った。
「ふ~♪ おいしかった~♪」
ゆっくりれみりゃは、産道の中にいた子
ゆっくりを1匹を残して食べつくし、巨大まりさの本体も4分の1ほど食べ終えていた。
お腹が膨れたところで、他の
ゆっくり達はどうしただろうと思い口から外へ出てみる。
そこには、いつか読んだ怖い絵本のような情景が広がっていた。
そこらじゅうの木という木には人の顔のような
ゆっくりのデスマスクがへばり付いている。
地面には頭頂部が無くなって、地面に枝で固定されうめき続けている
ゆっくり達。
何故かその
ゆっくりの上に飾りのように添えられているチビ
ゆっくりの串団子。
圧倒的に多いのは地面に散乱している大量の餡子とクリーム。
ほとんど地面が見えないくらいに撒き散らされた餡子の中央でくるくると踊りながら鼻歌を歌っている
ゆっくりフラン。
「ふらん・・・もうぜんぶつぶしたの?」
「うん。 食べるの遅かったね。」
「そう? ふらんがはやすぎるんだよ」
「そうかな・・・ じゃあそれ運ぼっか」
「どれ?」
「この大きい
ゆっくりの皮」
「まだなかみのこってるよ?」
「あれで溶かしちゃえばいいよ」
「あれ?」
「れみりゃの硫酸弾貸して」
「りゅう・・・? あ、これ。」
ゆっくりフランは硫酸弾を2つ持って巨大
ゆっくりまりさの頭に開いた大穴に登る。
「う・・・うふ・・・うふふ・・・ごめんねありす・・・あかちゃん・・・みんないなくなっちゃったぁ・・・」
硫酸弾の蓋を開いて硫酸を中の餡子に上手く振りかけていく。
「ゆぎゅううううあああああああぁぁぁあぁぁ!!」
まだ生きていた巨大まりさの悲鳴もすぐに小さくなっていく。
ここで、瀕死の巨大まりさの耳元にそっとささやいてやるフラン。
「愛しの
ゆっくりアリスは人間に八つ裂きにされて苦しみながら死んじゃったよ♪」
「ゆ・・・ゆぅあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あがぎゅぅっ!!!!」
「それってばくはつさせるんじゃないの?」
「破裂させたら飛び散って皮も溶けちゃうもん」
中に残った餡子の残骸を外に掃き出し、ぶよぶよの皮になったそれを満足げに見るフラン。
と、
「あ、そこの
ゆっくり食べていいよ」
「このあたまひらいてるの?」
「うん。 おいしそうかな・・・?」
「う・・・うん・・・ありがと・・・ゲプ」
一休みしてから巨大なぶよぶよの皮を協力して持ち上げる。
「ゅー・・・ゅー・・・」
「その子
ゆっくり、持ってくの?」
「うん。 あのこにあげるの♪」
「そう・・・」
そこでふと気が付くれみりゃ。
「あれ?」
「どうしたの?」
「これってれみりゃのてすとじゃなかったっけ?」
「あ゛・・・」
人里、北側広場
こちらの
ゆっくり狩りはとてもスムーズに終わった。
まず、うちのゆかりんが
「美しく
ゆっくりとこの地から往ね!」
「ふん。とかいはのありすにちかづくなんてむぼうね!」
べろんと異常に長い舌を伸ばし、ゆかりんを一飲みにする巨大
ゆっくりアリス。
「お・・・おい、あんたんとこの
ゆっくり食われちまったぞ!」
「ご心配なく。 それと、突撃をもう少し待っていただいてもかまいませんかね?」
「ああ?」
「あの巨体ではいかにあいつといえど多少の時間はかかりますので。」
「???」
「くちほどにもなかったわね! さあみんな、たべものをさがしにいきましょう!」
「
ゆっくりみつけるよ!」
「おじさんたちはさっさとどいてね!」
「はやくみちをあけてね!」
「さあみんな! とかいはのありすは・・・うぐっ!?」
「ゆ!どうしたのありす!」
「きぶんがわるいの?」
「う・・・うげええええ゛え゛え゛え゛え゛え゛ぇぇえっ!!」
ものすごい勢いでクリームを吐き出し始める巨大アリス。
「ゆぐううう!」
「ゆぶぶぶぶ・・・」
「うわっ!?」
「うおっと!」
勢いがよすぎるため、周りの
ゆっくりだけでなく人間まで足を取られている。
と、クリームに乗って
「うえ~・・・体中ベッタベタ・・・早く洗いたいわ~」
ゆかりんが出てきた。
「相手が巨体の割には早かったな?」
「構造は同じだもの。 "芯"にたどり着くまでの時間がちょっとかかっただけよ」
「いつも聞くが、何をやったんだ?」
「いつも言ってるでしょ?
ゆっくりの行動を司ってる部分をちょっといじって自ら中身を吐き出させてんのよ」
「具体的には?」
「研究者でしょう? 自分でお調べなさいな」
「みなさん! 脅威となる巨大
ゆっくりは行動不能です! 存分に
ゆっくり狩りをお楽しみ下さい!」
「よ・・・よし! 行くぜええあああ!」
「1匹たりとも逃すなあああぁ!」
「今日こそは全部ぶっ潰してやるぜええぇ!」
あたり一面にクリームが撒き散らされたため、クリームまみれになりながら突撃していく男達。
そしてクリームが飛んでも平気なようにふんどし一丁になっている漢達。
対する俺達は、たまにこちらに向かってくる
ゆっくりを鞭で弾きながら休んでいた。
と、
「お・・・おい! デカ
ゆっくりが空を飛んでくる!」
「な・・・デカ
ゆっくりは空も飛べるのか!?」
「うん? ああ、来たか。 随分早いな・・・」
うちの戦闘要員の御帰還である。
「おかえり。 早かったな」
「「ただいま~・・・」」
「随分疲れてるようだな。・・・こんなもん担いでくるからだ」
「証拠を持ってきたの」
「そうか・・・それでどうだった? れみりゃの活躍は」
「う・・・うん?」
「・・・ちゃんと殲滅したんだろうな?」
「うん!」
「じゃあれみりゃの活躍は?」
「う~ん・・・」
まぁ、フランが半分くらいは潰してしまったのだろう。
それに夢中でれみりゃが潰しているところを見ていなかった。 そんな所か。
れみりゃは、子れみりゃに成体よりやや小さめの
ゆっくりを渡している。
何か熱弁しているようだが、こちらはこちらのやることをやらなければならない。
「みなさん!」
「お、おう! なんだい?」
「そろそろ終わりも近いことですし、我々はこいつの点検をするために引き上げます」
「おう! 今日は手伝ってくれてありがとよ! ところで、そのデカ
ゆっくりの皮、もらってもいいかい?」
「ええ。ただ、研究用に少し切り取らせていただけますか?」
「ああ、かまわんぜ。 これだけ丈夫なら何かに使えそうだよな」
「広げて飾っとくと気分いいんじゃねえか?」
「こんなん飾って気分いいか? 俺はこれで服を作ってみてぇなぁ」
「息子の蹴球用の玉が壊れちまったんだ。 これで作れそうな気がするんだけどよ」
「新しいの買ってやれよ・・・」
俺達はにぎやかに話し込んでいる男達に別れの挨拶をし、帰路についた。
データは全て集まった。
そろそろ作戦を決行するか・・・
1週間後、市場
市場の人々には作戦決行を教えてあるので、皆一様にそわそわしている。
俺達も気付かれないように一般客のふりをしている。
と、ターゲットがやってきた。
紅魔館のメイドの十六夜咲夜さんと、咲夜さんの連れている
ゆっくりれみりゃだ。
「ではお嬢様、私は買い物をして参りますので、ここで少しお待ち下さいませ。」
「う~♪ わかったど~♪ ぷっでぃ~んもかってくるんだど~♪」
「分かっていますよ、お嬢様」
そう言って連れていた
ゆっくりれみりゃを置いて人ごみへと消えていく咲夜さん。
少し時間を置いて、行動に移る。
「う~♪ くちゃいくちゃい♪ これはくっちゃいからぽ~・・・」
どぶしゅっ!!
「う゛? う・・・う゛あ゛ー・・・むぐーっ!!」
「・・・腹ぶち抜くの、気に入ったのか?」
「ん~・・・別に」
「・・・まぁいい。お前は見つからんようにそれを研究所まで持って帰れ。 そして・・・同じ第三実験室にでも放り込んでおけ」
「ん。」
暴れる
ゆっくりれみりゃの両腕を引っこ抜き、口を押さえる・・・と言うより、口を鷲掴みにする助手。
「むぐー!! むー!! うー!!」
その体勢のまま、わっさわっさと山へ飛んでいった。
「分かっているな? 無事に調査を終えて戻ってきたらまた子供と会える。 とりあえず死ななければ大丈夫だ」
「はい。」
「子供とまた会いたければ、絶対にしくじってはならない。 一回でも失敗したら死ぬと思っておけ」
「・・はい」
しばらくして、咲夜さんが帰ってきた。
さすがにここは緊張するな・・・
「うっう~♪ おそかったぞ~♪ もっとはやくかえってこないとだめなんだぞ~♪」
「申し訳ありませんお嬢様。 お野菜を買うのに手間取ってしまいまして・・・あら?」
「う~?」
「お嬢様、少し大きくなられましたか?」
「! う・・・う~♪ れみりゃおおきくなったんだぞ~♪」
「あら、おめでとうございます! お祝いに特大ケーキと特大プリンをお作りしますね」
「う・・・うー♪」
"完璧なようでいてどこか抜けたところがある"と言う噂は本当だったようだ。
おかげで助かった・・・
今回依頼されたのは紅魔館付近に大量発生している
ゆっくりれみりゃの駆除と、咲夜さんが人里に連れてくる
ゆっくりれみりゃによる被害の減少。
後者だけならちょちょいとマナーを教えた
ゆっくりれみりゃとの交換だけで済むので、むしろ
ゆっくりブリーダー向けの依頼だ。
しかし、紅魔館付近に発生している
ゆっくりれみりゃによる被害も無視できないので、同時に片をつける必要があった。
そこで、ここまで調教したものを送り込み、市場では行儀よくさせ、紅魔館ではどうやって大量発生しているかの調査をさせるのだ。
と、れみりゃがこちらに目配せをしてきた。
こちらも、子れみりゃの腕を振らせ、大丈夫だと言うことをアピールする。
れみりゃはそのまま咲夜さんに連れられて紅魔館へと歩いていった。
私はあの子を愛している。
あの子のためなら今回の命令にも従おう。
命令をやり遂げ、無事帰れればあの子にも会えるのだから。
ちらりと我が子と博士のいるほうを見る。
と、博士が子供の手を振らせてくれている。
すぐに終わらせて帰ってくる。
だから少しだけ待っててね。 私の赤ちゃん。
「ふぅ・・・とりあえずは成功だな。 後はあいつが無事帰ってこられるかだが・・・」
「うー? かえってくるよ?」
「ん?」
「ままはちゃんとかえってくるよ?」
「何でそんなことが断言できるんだ?」
「うー? それが"きまってること"だからだよ。 はかせにはわかんないの?」
「・・・? 全く分からん」
終わり
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- これだけ他の1.5倍くらいになってしまいました。 すんませんorz
- wikiに私の作品が作者別で編集されていて感動しました。
- また私の脳みそが自重できなくなったら何か書き始めると思うので、気が向いたら読んでやって下さい
最終更新:2024年07月18日 15:27