ゆっくりいじめ小ネタ254 蟻地獄とゆっくり

 蟻地獄とゆっくり





 ズシャッ。
 その柔らかい砂の感触は、なぜか、ぜんぜんゆっくりしていなかった。
「ゆ、ゆぅ?」
 れいむは餡子を引き締めて、さらさらとした砂に身をまかせたい欲求を我慢する。
「ゆっくr……ちがうよ!これはゆっくりしちゃいけないすなさんだよ!
 れいむはかたいじめんさんのほうがゆっくりできるよ!」

 このれいむの餡子は、幾百回もの世代交代を経て練りこまれた一級品だった。
 欲求よりも、その餡子が「危険」と打ち鳴らす警鐘にれいむは従う。
「ゆっくりもどるよ!ゆー……しょ!」
 土の上に戻るために跳躍しようと考える。
 体を地面に押し付け……
 ミシッ。
「ゆー!?」
 伸び上がるために体を砂に押し付けると、そのたびに体は余計に砂へと沈んでいく。
「ゆゆ!やめてね!れいむはすなさんとはゆっくりしないよ!」
 れいむは懸命に伸び上がろうとし、そのぶんだけ砂の中へと沈んでいく。
「どーじてやめてくれないのおおおお!?やだっていっでるでじょおおおお!!??」
 死の恐怖がれいむを捕らえる。
「やだ……やだよ……」
 れいむはつがいのまりさの事を考える。いつか育まれるであろう、二人の間のおちびちゃんの事を考える。
 今までゆっくりしてきた沢山の仲間のことを考える。
「やだよぉぉぉぉぉぉ!!!れいむしにたくないよ!
、もっともっとみんなとゆっぐりしたいよぉぉぉぉぉ!!!!」



「すなさん……ゆっぐりとまっでね……かわいいでいぶをじめんさんにもどじてね……」
 暴れるだけ余計に沈むと悟ったれいむは、少しずつ自分を土の底へと運ぶ砂に身を任せるほかはなかった。
 砂はただ無情に、れいむを生の終端へと追いやっていく。

「ゆゆ!れいむ!れいむーーー!!」
「ゆへへ……とうとうまりさのこえがきこえてきたよ……これはきっとげんちょうだね……
 さいごにまりさのこえをきかせてくれてかみさまありがとうね……ゆっくりしていってね……」
「れいむってばぁ!!」
 はっ、と我にかえる。
 その声は聞き間違えようもない、そして幻聴でもないほんものの愛しいまりさの声だ。
 狩りから帰って来ないれいむを心配して出てきたのだろう。れいむはまりさのために警告の叫びを上げた。
「まりさ!!きちゃだめだよ!ゆっくりできなくなるよ!!」
「でいむぅぅぅぅぅぅ!?」
 まりさは泣きながら、蟻地獄の底へと向かうれいむを見送ることしか出来ない。

「まりさ……れいむはまりさとであえてしあわせだったよ……
 れいむがしんだら、まりさはべつのゆっくりしたゆっくりとゆっくりしていってね…」
「でぎないよぉ!!ぜっだいぜっだい、ぞんなごとでぎないよぉ!!」
 砂が目に入り、れいむは目を閉じた。
「ゆ……」
 暗闇の中に、からからと回る走馬灯が浮かびあがり、それは餡子に残った記憶を呼び覚ます。
 おかあさんれいむの茎で目覚めた日のこと。
 はじめてむしさんを捕まえた日のこと。
 まりさと出会った日のこと。
 まりさと、さまざまな場所でゆっくりしたこと――
「!」

 走馬灯の中に、一つの可能性があった。れいむはおぼろげな記憶を懸命にたどり、
 その可能性を拾い上げる。
「ゆ!!れみりゃだ!れみりゃだよ!まりさ!あのれみりゃをつれてきてよ!」


 以前、にんげんさんの罠にかかったれみりゃを助けてやったことがあった。
「うー!うー!だずげでぇぇぇぇ!!!ざぐやぁぁぁぁ!!!!!」
「れみりゃだよ!いまならにげられるから、そろーりそろーりにげようね!」
「……」
「れいむ?どうしたの?」
 賢いれいむはもちろんれみりゃの脅威を熟知していた。
「いだいどぉぉぉぉぉーーーー!!おぜうざまのあんよがぁぁぁぁーーー!!!」
「れいむ?」
 しかし、それでもれいむはれみりゃの前に飛び出した。
 足を鉄の顎に噛み込まれたその姿がにあまりに可哀相で、助けずにはいられなかったのだ。

「でいぶぅぅぅぅぅ!!!まりざぁぁぁぁぁぁ!!
 とっでもとっでもかんしゃするどぉぉぉぉぉぉ!!!!
 このごおんはぜったいわすれないどーーー!!!」
 そのれみりゃはそう言うと、友情のしるしにかり☆すま☆だんすを披露して、
「れみぃはあかちゃんやさくやとくらさなきゃならないからいっしょにはいられないどぅ…
 だけど、こまったときにはいつでもよんでほしーどぅ!
 れいむとまりさをこまらせるやつはれみぃがぽーい☆しちゃうどー♪」
 そう請け合ってくれた。

「れいむはとってもばかだよ!でも……かっこよかったよ、れいむ……」
「ゆ、ゆゆぅー……」



 れみりゃほども力があれば、蟻地獄からゆっくり一匹引っ張り上げるのはたやすいことだ。
 しかも、その棲家も知っている。とても運のいいことにここからそう遠くはない。
 まりさが必死で跳ねてくれれば、必ず間に合うはずだ。
「あのれみりゃなられいむをひっぱりあげてくれるよ!ゆっくりよんできてね!!」

「でいぶぅぅぅぅ!!!だずげてあげられなぐてごべ……いまなんでいっだの?
 あのれみりゃってどのれみりゃのこと?れみりゃはゆっくりできないよ?」
「なにいっでるのまりざ!?あのれみりゃはあのれみりゃだよ!はやぐじでよぉぉぉぉ!!!」
「ゆ……れいむ……」
「おでがい!!おでがい!!おでがいだがらおもいだじでよぉぉぉ!!!!!
 れみりゃよんでぎでぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
 危機に瀕したれいむだからこそやっと思い出せたものを、そうでないまりさが思い出せるはずがない。
「れ、れいむ……?」
 れいむの言葉を理解できないまりさは、れいむが苦しさのあまり狂ってしまったと思った。
「ごべんねぇぇぇぇぇぇ!!!だずげられないばりざをゆるじでねぇぇぇぇぇ!!!」
 砂は少しずつ、少しずつ……泣き叫ぶれいむを蝕みながら流れる。
「おでがいだよぉぉぉぉ!!でいぶまっでるがら!!まっでるがられびりゃよんでぎでぇぇぇぇ!!!!」
 れいむは力の限り叫び続けた。 

「まりざ!!はやぐじでよ!!まにあわなぐなっぢゃうよ!!」 

「まりざ!!おでがい!!ゆびぃ!もうれみりゃじゃなぐてもなんでもいいから、ゆぷっ!でいぶを……」

「まりざ!ぐるじいよ……まりざ……どごにいるの……」

「まりざ……?」 


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最終更新:2008年12月07日 14:54
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