「ゆっくりしていってね!!」
・・・ん?
「おにいさん、あさだよ!!
ゆっくりおきてね!!」
うるさい目覚ましだ・・・
あれ?俺目覚ましなんてかけてたっけかな?
「おにいさん!!ゆっくりおきてれいむとあそんでね!!」
あぁ、思い出した。こいつは昨日から家へやってきたゆっくりれいむとかいう不思議生物の声か。
俺はこの前まで病院で入院していた。いま何かと騒がれてる鬱病ってやつだ。症状が改善されたということで、俺は昨日めでたく退院となったわけだ。退院と同時にアニマルセラピーとかいう療法を医者に勧められた。家で落ち着いた気分でいられるように、とのことらしいが、我が家では何を勘違いしたのか、ゆっくりを買ってきてしまった。そしてそのゆっくりこそがさっきからわめいているそれだ。
「ゆゆっ!!さっきからいうことをきかないおにいさんだね!!れいむがゆっくりさせてあげてるのにそれもわからないなんてね!!おお、おろかおろか」
果たしてこれで落ち着いた気分になれるのだろうか・・・
明らかにペットをつかってこそのアニマルセラピーのはずだが・・・
まぁ、そこは割り切って生活するしかないんだろう。
とりあえず、これ以上騒がれると気分が悪いので適当に返事をしておこうか。
「やぁ、おはようれいむ。今日もゆっくりしてるね。」
「ゆゆっ!!おにいさん、ゆっくりおはよう!!きょうもれいむとゆっくりあそんでね!!そういえばれいむはおなかすいたよ!!れいむのためにゆっくりごはんをもってきてね!!」
確かに朝食の時間だ。俺も小腹がすいてるので食事にするか。
「ゆゆっ!!とてもゆっくりしたごはんだったよ!!またこんどもってきてね!!」
やはり久しぶりの我が家での食事は感慨深いものがある。病院食はやはり味気ない。食事を済ませたので・・・
「おにいさん、そのしろくてゆっくりしたものなに?」
「これはれいむには関係ないものだよ。さぁ、部屋に戻った戻った。」
「ゆゆっ、わかったよ。れいむはゆっくりもどるよ。」
なんか変に聞き分けがいいな。ゆっくりは押し並べて傲慢で自己的だと聞いていたが・・・
まぁ、そんなことはどうでもいい。久しぶりに満足した食事だったので気分が晴れやかだ。二度寝でもしてみようか。
「おにいさん、ゆっくりおかえりなさい。れいむとゆっくりあそんでね!!」
あぁ、そういえばこいつがいたんだったな。
「俺は眠い。お外でゆっくりあそんでおいで。」
「ゆゆっ!!わかったよ!!ゆっくりあそんでくるね!!」
妙に素直だな・・・?まぁいい。眠るとしよう。
台所には先ほど部屋を追い出されたれいむがいた。
「おにいさんがさいごにたべてたしろいたまはゆっくりできそうだよ。」
「おにいさんにみつからないうちにれいむがゆっくりぜんぶもらうよ。」
そう言ってれいむはしろいたまが入っている瓶のほうへ近づいて行く。瓶はれいむにも簡単に取れる位置にあるようだった。
「そろーり、そろーり。ゆっくりつかまえたよ!!」
瓶を器用に口を使いあけていく。それほどきつく締められていなかったのか、簡単に開いてしまった。
「これはゆっくりできそうなたまだね!!ゆっくりいただきまーす!!」
「ぺーろ、ぺーろ、しあわせー!!こんなにゆっくりしたあまあま、れいむはじめてだよ!!」
しろいたまは甘いものだったようで、れいむはとても満足そうになめまわしている。
「もっとたくさんあまあまもらうよ!!ぺーろ、ぺーろ、しあわせー!!」
まさにヘブン状態!な様子でしろいたまをたくさんなめ始めたれいむ。本当に気に入ったようで、瓶からたまをずっと口へと運んでいた。
「ぺーろ、ぺーろ、しあわせー!!おにいさんはこんなゆっくりできるものをひとりじめしてたなんて、ひどいひとだね。ばつとしてれいむがぜんぶたべてあげるよ。」
そうこうしているうちに瓶の中にあったしろいたまをすべて飲みつくしてしまったようだ。
「ほかにもたくさんのたまがあるはずだからゆっくりさがすよ!!・・・ゆゆっ、なんだかれいむ、ゆっくりねむくなってきたよ・・・ゆっくりおやすみ。」
ふぅ、よく寝た。やっぱり家の蒲団はよく眠れる。そういえばれいむはどこに遊びに行ったんだろうな?相手してやらないと可哀そうだし、遊んでやるか。
「おーい、れいむー。いたら返事しろー。」
「いないのかー?」
仕方ない少し探してみるか。とりあえずリビングに行ってみようか。
「あぁっ!なんてことだ・・・」
リビングには蓋の空いた薬瓶とそのそばに顔が真っ青になって倒れているれいむの姿があった。
「睡眠薬、全部飲んだのか・・・」
れいむが飲んでいたものはおにいさんがもらっていた睡眠薬だった。幸か不幸か、れいむはいつもどおりの小憎たらしい顔で死んでいた。
「苦しまず死んでしまったのが、唯一の救いかもな・・・」
「ゆっくりあの世ですごしていってね」
初投稿
批判覚悟で書いてみました。
ネタがかぶっていたらごめんなさい
最終更新:2008年12月09日 19:59