生きるって
灰色の空を見上げる。やけに暗く映る。
この年になっても人の死というものには慣れない。
さほど飲んだわけではないのだが酷くふらつく。おぼつかない足取りで歩くと、何時の間にか川岸に立っていた。
水面を走る風が心地よい。無性に粘つくほてりも、胸のムカつきも、洗いざらい吹流していくようだ。
「こいつ、生意気だぞー!!」
「くらえくらえー!!」
「
ゆっくりやめてね!? ゆっくりさせてねええええ!!」
ふと騒がしい声が耳に飛び込む。目を向けた先では数人の子供達が川を覗き込んでいた。
川の中にはゆっくりまりさ。岸に必死にしがみつき、どうにか地上へ上がろうとしている。
しかしそれは許されない。伸びる木の枝、やまないツブテ。右から左へ、上から下へ。ただただ理不尽に弄ばれている。
そういえば小さい頃は皆でこんなことをしていた。
特にあいつは石当てが上手く、よく黒い水柱を立てては大きな口で笑っていた。
何時から水遊びなんてしなくなったのだろう。
「ゆぎゃばぼぼぼぼ!!!??」
ふと我に帰ると、子供達の遊びは山場を迎えていた。
まりさはブクブクと餡子混じりの泡を立てながら、ズブリズブリと徐々に沈んでいく。
そうして水の中へ沈んでいったまりさを見届け、子供達は笑いながらその場を後にした。
はあの子達のように、また屈託なく笑えるのだろうか。石を拾い上げ手の中で遊ばせる。
「おちびちゃんたち、おかあさんが ささえてあげるから ゆっくりぼうしさんにのってね!!」
「「「ゆっきゅりわかっちゃよ!!」」」
ふと顔を上げると、ゆっくりの一家が水乗りの練習をしていた。
母親に支えて貰いながら、そろーそろーりと小さなゆっくり達が帽子に乗り込んでいる。
少し脅かしてやろう。何の気なしに私は石を投げた。
「ゆーっくり! ゆーっくびいいいいいい!!!??」
「「「おぎゃーしゃー!!!??」」」
期せずして放物線を描いた石は母ゆっくりに直激、やたらと派手な水柱を立てた。まりさは水底へと沈んでいった。
殺す気は無かった。ほんの戯れのつもりであった。
伸ばした右手が異様に重く感じられ、力なく握り締めた。そして風に押されるよう、私は歩き始めた。
しばらく小さなゆっくり達の悲鳴が聞こえていたが、それもいずれ聞こえなくなり、やがて水音と風音だけが残された。
空は暗く曇っていた。
終わり
作者・ムクドリ(・ω・`)の人
最終更新:2008年12月09日 20:10