雪の積もった山の中にぽこぽこと、握りこぶし大に丸く盛り上がってる場所がある。
それは寒さで力尽き、雪に埋もれて死んだ赤
ゆっくり達のなれの果てだ。
ゆっくりは巣に籠って冬を越すのだが、何らかの理由で巣から出てくることがある。
運よく虐待師たちに捕まらなくても、寒さに弱いゆっくり達はすぐに力尽きてしまうのだ。
私は手頃な一つに目をつけ、盛り上がった雪を払ってみた。
案の定小さな赤ゆっくりが顔を出す。赤いリボン状の部位が目につくことから、れいむ種と呼ばれるものだろう。
「…ゆ~…ゆっくい…ちてって…ね…」
この赤ゆっくりはまだ雪の中に出てきてから間もなかったらしく、息があったようだ。弱々しく呻いている。
凍死寸前でも「ゆっくりしていってね!」は忘れないのだろうか。野生の本能というものは侮れない。
「…ゆきしゃんが…つめたくて…しんじゃう…たしゅけてぇ…」
手のひらに乗せて残った雪を払うと、プルプルと震えながら何か訴えてきた。
だが私は構わずに赤ゆっくりの頭に齧りついた。
「ゆぎゃぁぁぁ…ぁ…ぁ…!」
噛みちぎった饅頭を咀嚼すると、雪で凍ったゆっくりの水分がシャーベットのようなシャリシャリとした触感を生み、爽やかな甘味が口中に拡がった。
雪山の中で何日も猟をするマタギたちは、不猟の時はこの冷凍ゆっくりで何日も糊口をしのぐこともあるそうだ。
雪国の厳しい冬と共に暮らす者たちの貴重な食料なのである。
「…いちゃいぃぃ…たべにゃいでぇ…」
一口、また一口と食べ進む度に、赤ゆっくりは蚊の鳴くような声で悲鳴を上げた。
少々胸の痛む声だったが、空腹には敵わない。
私は大自然の贈り物に感謝しつつ、ゆっくりを平らげたのだった。
最終更新:2009年02月05日 22:19