ゆっくりいじめ小ネタ334 蓮ありす

男は見慣れた蓮の群生地に、珍しい客がいるのを見つけた。

「おわ!」

蓮の上にありすが乗っている。

どこかの図鑑に載っていたカエルならともかく、なんでありすが?

性欲や行動、何をとっても一番情動に突き動かされるはずのありすが。

平静な顔で目を閉じ、静かな空気さえ纏いながら蓮の上に鎮座していた。

水面はゆるやかに光を返し、近づきがたいオーラさえ出してるのではないかと思うほどだ。

比較的陸に近い場所でそのありすは目を閉じていたため、彼は楽に近寄れる。

成体手前程のありすだ。

そして蓮の方は、このありすの体重を楽に支えられる類の蓮ではない。

とにかく微動だにしないのだ。

動かなければ大丈夫という物でもない。

最初これにどうやって乗ったのかが気になってしまった。

「なんじゃこりゃ」

「なにかよう?」

ありすが喋るが、水面には波紋一つできない。

「おわ、何で近づいたのがわかったんだ?」

「いましゃべったでしょ?」

「あ、ああ、まぁ……」

「おどろいてるの?」

「あ、ああ、まぁ……」

「そうよね。とかいはのありすでもこんなことはしらないわ」

「勝手に喋り出したなこの子」

「うんうん。びっくりするのもやぶさかではないわ。わたしたちはとかいはのうえをいくとかいは、はすありすなのよ!」

なのよ!と大きな声を出した時、蓮は盛大に揺れ、ありすは水に落ちた。

とても緩やかで優美な落ち方だった。落ちるのがわかっているのに止められない、正にゆっくりとした落ち方だった。彼はその美しさとばかばかしさに目を奪われた。

水の中では先ほどとは打って変わってありすがじたばたともがく。

「どぼぢで!?どぼぢでな゛の゛ぉお゛お゛お!!!!!」

「喋ったからじゃないの?」

「わっ、わがら゛な゛いわぁぁあ゛あ!だづげでね゛!ゆっぐりだづけでね゛!!!」

「ああ、暴れるなって、どんどん遠くに行っちゃうよ!もう蓮には乗れないの!?」

「のれないわ!はすにはゆっくりのらないといけないのよ!だづげでぇえ゛え゛!」

「助けたらどうやって乗るか教えてくれる?」

「おっ、おじっ!!!」

ありすはぶくぶくと沈んでしまった。
彼はざぶんと湖に入ってありすを探したが、とうとう見つからなかった。

そこで少しひっかかったありすの言葉を思い出す。

「あっ!ああぁあ!あのありす、たちって言った!わたし達って!他にもいるんか、蓮ありす!さーがそっと!」

彼は予定を変更して、蓮ありすを探す旅に出た。

そしてそのまま行方不明になったという。

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最終更新:2009年02月14日 04:25
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