ゆっくりいじめ小ネタ370 たこ焼きと赤ちゃんと人間と

※罪の無いゆっくりが(ry
※胸糞悪くなるかも





     たこ焼きと赤ちゃんと人間と

               作者:古緑




「ちょっと○○君、とっくに休憩時間終わりでしょ?
いつまでもゆっくりしてないで早く行きなよ」

あ…ハッハイ!行ってきます

「オイ遅えよ…お前が帰ってこないと○○ちゃんが休憩出来ないだろ?
面倒だからってズルすんな」

ハイ…ごめんなさい…○○ちゃんもごめん…

「いいですよ別に…でも次は忘れないようにお願いします」

うん…ゴミ出しもやっときますんで…

「○○君」

ハイ…あっマネージャー!今日は遅刻してすませんでした…

「今日はその事はいいんだけど…君は何回同じ間違いをするんだ?」

えっ?

「また発注の数間違えてるよ…?一体何度目なんだ君は?いい加減にしてくれよ」

えっ…あ…

「えっ?じゃないよホントに…こんな事いつまでも続くようなら」

僕じゃありません!

「…いやこの発注の時のシフト君でしょ?他に誰が発注するのって○○君!?
ちょっとちょっと!」

失礼します!



バン!

もうあのバイト先には行かない…行けない!
またやってしまった…こんな事じゃ駄目だと思ってるのに
高校を中退してからこのままじゃ駄目だと思って探したアルバイト
いろいろ勇気を出してやっと良さそうな近所のドラッグストアに雇ってもらえたのに…
でもしょうがないじゃないか?
僕は人付き合いが苦手だしマネージャーも嫌味な人だ
年下のくせに生意気なやつもいるし女の子とだって話せない
それに…パニックを起こすと自分で自分が分からなくなって
とんでもないことしちゃうんだ
だからしょうがないんだ

とぼとぼと家への道を歩く
母さんにはなんて言おうか…考えるだけで気が沈む
帰り道の途中には公園がある
割と広い公園でたこ焼き屋の屋台なんて洒落たモノもある、
座って休もう、変な人だと思われないようにたこ焼きも買ってそこのベンチで食べよう
それから考えよう…今日の事も、僕のことも

「ゆっ…ゆっくりしたたこやきさんのにおいがするよ…」

屋台でたこ焼きを買ってベンチに腰をかけて直ぐ、下から声がした
覗いてみるといた、声を聞いた時から何がいるかは分かっていた
ゆっくり」だ
数年前に突如現れた柔らかい球体の生物
人間と同じ言語を介したコミニュケーションが出来る生物で(一部では只の鳴き声なのでは?等という意見もある)
ゆっくりはいくらかの種類があり
今僕の下にいるゆっくりは「れいむ種」だ
中身は餡子、外は饅頭の皮というデタラメな生き物
特徴は黒い髪に赤いリボン、そして勝ち気につり上がった眉毛
お喋り出来るペットとして一時大ブームとなったが飼い主が次々と捨てる事で今度は社会問題となった
理由は…まぁ理由は今はどうでもいい事だ
とにかくたこ焼きを食べようとベンチに腰掛けたらゆっくりが下にいた、それだけだ

しかし僕はこのゆっくりれいむを見たとき悲鳴を上げそうになった
一般的にそこらにいるゆっくりれいむとは全然違うのだ
前髪はズタボロにちぎれ前歯は殆ど無い、口を開いた所も見たが左側の奥歯もないようだ
頬にはどす黒く拳のような痕がついている
もしかしたらたまにこの公園にたまる不良にやられたんじゃないかな、と僕は思った

「ねぇ…ゆっくりれいむ」

ほとんど無意識のうちに僕はこのゆっくりれいむに話しかけていた
普段の僕だったらこんな事は決してしない
寂しかったんだと思う、色々いやな事だらけで話し相手が欲しかった
出来れば初対面の、そして二度と合う事も無いであろう相手が

「ゆっ!?れいむはなにもわるいことしてないよ!ゆっくりしていってね!」

人付き合いが苦手な僕でもゆっくりれいむが怯えている事は一目で分かった
なんでも無いように振る舞ってはいるがその目は僕から放さず警戒を怠らない
多分人間には嫌な思い出ばかりなのだろう
そう思うと僕はこのゆっくりれいむと仲良くお喋りしたくなった

ゆっくりれいむ、僕は君に悪い事なんてしないよ
一緒にたこ焼きを食べてお喋りしないか?」

ゆっくりれいむの目は僕を見つめたままだ
僕が今に何か酷い事をするんじゃないだろうかと警戒している
ちょっと悲しくなったけどそれだけ人間が怖いのだろう
僕はたこ焼きを1つ楊枝にさしてゆっくりれいむに差し出した
ゆっくりれいむはもしかしたら断る事で僕が怒ると思ったのかも知れない
今まで人間を警戒してたとは思えないくらいあっさりとそれを口に含み、
少ない歯でぎこちなくたこ焼きを咀嚼した

「む~しゃ…む~…?しっ!しあわせぇえぇぇ!!」

パアァァと満面の笑顔を見せるゆっくりれいむ
人間をここまで怖がるゆっくり
離れた所にあるたこ焼き屋からどんなにいいにおいが漂って来ても近づく事などしなかっただろう
その笑顔を見てると僕の気分まで良くなっていって
僕は残ったたこ焼きを全てこの人間嫌いのゆっくりれいむに与える事にした




「れいむはね…このまえまでちがうまちでくらしてたんだよ…」

ゆっくりれいむはベンチで腰掛ける僕を見上げながら話をする
このゆっくりれいむは初めから野良として街で生きていたワケではなく
やはり街に溢れる多くのゆっくりと同様に突然飼い主に捨てられて今まで生きて来たらしい

「そしたらいきなりこわいおかおをしたにんげんさんが
れいむをおうちからひきずりだして…
れいむをぶったよ…あかちゃんはぶじだったけど…すっごくこわかったよ…」

話はお互いの(とは言ってもれいむしか話してないが)生い立ちと不幸話になっていた
似た者同士の僕らが話す事なんてこんな暗い事ぐらいしか無い
でも、嬉しかった
久しぶりにまともに会話してくれる相手と出会ったんだ
相手が人間じゃないなんて事はどうでも良かった

「れいむは赤ちゃんの事が凄く大事なんだね」

ゆっくりれいむはお腹の中に子供がいた
そろそろ大きくなって来たらしく、あまり動きたくないと言う
ベンチに乗りたがらないと思ったらそう言うわけか
番のまりさは車に轢かれて死んだらしい
空き地に目立たないようなお家を作って産まれるまで静かにしていたら
人間に暴力を振るわれたそうだ
奇跡的に赤ちゃんは無事だったがれいむはゆっくり出来ない人間が来る空き地が怖くなり
深夜の街を必死に跳ねてこの公園まで辿り着いたそうだ
やはりたこ焼き屋には怖くて近づけなかったと言う

「もちろんだよ!
…まちはこわいよ…ゆっくりできないことがおおいよ…
でもおちびちゃんがいればきっとゆっくりできるよ…」

二十分もお話を続けただろうか
ゆっくりれいむは僕に対しても警戒を解いたようで
とても自然体のままでお喋りしてるように見える
右手をゆっくりれいむの頭の上まで上げるとビクッとするのだが
殴られた時のトラウマだろうか
僕は一度それを見てから二度と右手は動かさなかった

「おにいさん!こんどはおにいさんのおはなしをしてよ!ゆっくりききたいよ!」

「えっ!?いや、僕のことは…」

ゆっくりおはなしをきかせてね!」

ゆっくりれいむにそう言われて僕は戸惑った
ゆっくりれいむの話を聞くだけなら良かった
僕よりも酷い境遇を生きながら希望を捨てないゆっくりれいむの話を聞くと
本当のところ安心出来たのだ
しかし僕は恥ずかしくなったのだ
ゆっくりれいむがこんなに健気に生きてるのを聞くと
ただただ怠惰に日々を消化していくつまらない毎日の事なんて話したくなくなった
それに思い出したくなかった
今日の事も
僕の事も


「おにいさんのおはなしもききたいよ!れいむにだけおはなしさせるなんてズルいよ!」


『ズルすんな!』





『面倒だからってズルすんな!』


「…………………………………!」


ゆっくりしないではなしてね! …おにいさん?」

「………………………………」


『いつまでもゆっくりしてないで早く行きなよ』


「どうしたのおにいさん!なんかいもおなじことれいむにいわせないでね!」


『君は何回同じ間違いをするんだ?』


「…おにいさん?だいじょうぶ?おなかいたいの?ゆっくりできないの?」



「違う…」

「ゆっ?」

「違う、僕は倉庫整理をしてたんだ…
○○ちゃんがネイルが何だのって言って…僕の発注の仕事は○○ちゃんがやったんだ…
代わったんだ、だから僕は発注なんてしてないんだ」

「どうしたのおにいさん…なんだかこわいよ…?ゆっくりしていってね…?」

「なのになんで僕が悪いんだ?悪いのは○○ちゃんだ
何が『忘れないようにお願いします』だ?忘れたのはお前じゃないか!?
ズルしたのはあいつだ!
マネージャーに怒られないようにズルしたのはアイツじゃないか!!くそぉ…!」

「おにいさん!?おなかにさわらないでね!あかちゃんがゆっくりできなくなっちゃうよ!」

「なんでいつも僕なんだよ!くそッ!くそッ!くそッ!くそッ!」

「おにいざんやべでええぇぇ!!けらないでぇ!!れいむのあがぢゃんがあ”あ”ぁ”ぁ”!!」

「どうしていつも僕だけ怒るんだよォ!!悪いのは○○だ!あのくそ!くそッ!
どうして僕なんだよ!くそォッ!」



「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!」












僕のパニックが収まった時はいっつも喉がカラカラだ
脚はガクガクしてるし襟は汗でびしょびしょ
スニーカーには黒いものがこびり付いてるけどもう乾いてる
水道で水を飲んで帰ろう
母さんには何も言わないでいいや
分かってくれるだろう
しばらくゆっくりしてよう
コレのことも放っておこう
僕だけのせいじゃ無い
だってしょうがないじゃないか



ベンチの横には白と黒と紅の混じったもう何だかよく分からないものが散らばっていた
そのよく分からないものの中には金色の髪も混じっていた
このなんだか分からないものは朝の10時、
ゆっくりとたこ焼き屋の屋台を開けるおじさんの手によって手厚く埋葬された


                                ー完ー

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最終更新:2022年01月31日 02:35
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