内容に沿った
タイトルに変更、一箇所訂正、生存状況の付け足しを行いました。
帰宅した時、玄関から、硝子と木でできた透け扉の隙間を縫って最初に見えたものは荒らされた部屋だった。
部屋の窓ガラスの一つが割れ、そのすぐ横に置いてある小さな棚の上にあった人形やら勉強道具は床に無残に広がり、転がっていた。
本棚も倒されており、小説や漫画がぶち撒かれている。
こんな事になる理由はほぼ二つに限られる。片方は最悪、もう片方は精神的に最悪。
そのどちらだろう、と一呼吸置いて意を決し、ガラス避けに靴を履いたまま廊下から部屋に入って───
見たものは、何とも形容しがたい光景だった。
時は2時間前に遡り。
「ゆっ、まりさかっこいいね!ここがまりさとれいむとおちびちゃんたちのゆっくりぷれいすになるんだね!」
「ゆっへん、まりさのてにかかれば
ゆっくりぷれいすなんてらくにてにはいるんだぜ!」
「おとーさん、かっこいいんだぜ!」
「おとーさんゆっくりかっこいいよ!」
「「「おとーしゃんゆっきゅりきゃっきょいい!」」」
ゆっくり家族の典型。れいむとまりさの番いに子まりさが2匹、子れいむが1匹。赤まりさ1匹に赤れいむ2匹といった大きめの家族が、
例によって人の居ない家のガラスを割って入りこむというこれまた典型的な手口で『ゆっくりぷれいす』を手に入れたのであった。
「さあ、あまあまさんをさがすよ!れいむにおちびちゃんたちもてつだうんだぜ!」
「「「ゆっくりりかいしたよ!」」」
「「「ゆっきゅりりかいちたよ!」」」
「はあ…それで、どうなればこんな事になるのかしら?」
部屋に漂う甘い香り。吐き気を催す程酷いのは嘔吐したものであろう餡子臭。…と、人間に『作られた』香り。
床に撒かれた、無数のゼリー状の粒とその傍に広がる情景はゆっくりならばどの個体が見てもエレエレエレと嘔吐するであろう惨状だった。
「ゆゆっ、あまあまさんみつけたんだぜ!」
子供の中で一番大きいまりさが声を上げる。父まりさが体当たりで倒した棚の周辺を漁っていた所、甘い香りのする『ソレ』を発見したらしい。
途端、部屋の中で『あまあまさん』を探していた者、くしゃくしゃにしたカーテン片やら様々な物で遊んでいた者の全てがまりさの方に跳ね寄る。
「おねーしゃんしゅごいね!」「さすがまりさの子なんだぜ!」「まりさはかしこいね!」
等々、口々に褒められて当の子まりさは胸?を張って嬉しそうにしている。
そのつぶつぶしていて透明な『あまあまさん』は、とてもゆっくりできるあまあまな匂いがして美味しそうに見えた。
「まずはまりさがどくみをするんだぜ!」
父まりさがすかさず他のゆっくりを押しのけてそれに口を付ける。
「むーしゃ、むーしゃ、しあわ………ふくざつー………?」
父まりさは満面の笑顔から微妙な表情に変わり、疑問の声を上げた。
周りのゆっくり達は意外そうな顔をしてどう複雑なの?といった瞳を父まりさの方を向ける。
「ゆ、このあまあまさんあんまりあまくないんだぜ…?」
「ゆゆっ、それはきっと『あまさひかえめ』なんだよ!ありすがとかいはだっていってたよ!」
父まりさは腑に落ちない表情をしている。そこに、母れいむがすかさず友人のありすの言葉を思い出して返答を入れた。
「おかーさんはものしりだぜ!まりさもいただくんだぜ!」
中まりさは母の言葉を聞くなり、そそくさと『あまあまさん』に近づいて口を付けた。
「むーしゃ、むーしゃ………しあわせー!」
中まりさは一瞬悩んだ。だが、ありすが『とかいは』と言ったのなら『とかいは』なのだろう。
…そう思いこむ事によって脳内で甘さが増幅された様子で、むしゃむしゃとそれを食べ始める。
「まりさも『あまさひかえめ』なんてしってたんだぜ!れいむにいわれるまでもないんだぜ?」
父まりさは再度それに口を付け、今度は悩む様子もなくむしゃむしゃと食べている。
「あかちゃんたちもたべようね!おかーさんがむしゃむしゃしてあげるからね!」
とうとう、母れいむが赤ゆに与える為にもそれを食べ始める。床に広がる『ソレ』の周りはその3匹によって埋まってしまった。
姉まりさは「まりさもたべるよ!まりさはゆっくりどいてね!」とぽよんぽよんと中まりさを後ろからつっついている。
子れいむは、後で食べようというつもりで誰かが退くのを待っていた。
「…ゆ"?!」
最初に体に異常をきたしたのは中まりさだった。
むしゃむしゃと『ソレ』を食べているのを止め、顔色が悪くなっていく。
「ゆ?」
あかちゃん達に口移しで分け与えている途中の母れいむが異常に気付いて振り返る。
れいむと代わった瞬間からがっつく様に食し始めた姉まりさは気づいていない様子だった。
子れいむはいざ食べよう…と、した所で妹の様子がおかしい事に気付いた。
「ゆ"…ゆ"ゆ"ゆ"ゆ"ゆ"…エレエレエレエレエレ」
中まりさは突然粒混じりの餡子と泡を吐きはじめた。
「どぼじだの"お"お"お"お"お"?!」
母れいむは突然の事に悲鳴をあげて中まりさに跳ね寄る。
途端、
「エレエレエレエレエレエレ」
父まりさが吐いた。
「ぴゃぴゃ?…エレエレエレエレ」
末の赤れいむが吐いた。
「にゃにぎゃおきちぇりゅにょおお…エレエレエレエレエレ」
そして、あかちゃんの中では一番大きいれいむが吐いた。
まさに嘔吐が嘔吐を呼ぶ大惨劇。
次から次へと嘔吐の輪が広がってゆく。
まだ何も食べていない子れいむも1回貰いゲロをした。
「ばりざああああ!あ"がぢゃん!!!あ"あ"あ"あ"あ"!!!」
母れいむさえも、半狂乱になりながら泡を吹いて嘔吐をし始める。
ここまできて、やっと『あまあまさん』がおかしい物であった事に気付いたのは子れいむ。
周りの吐瀉物には泡が含まれているのに、自分とまだ分け与えられていなかった赤まりさの吐瀉物には泡が含まれていない。
「ゆ、ゆ…その『あまあまさん』は…!」
気づいた頃には、父まりさと中まりさ、末れいむは既に痙攣さえもしておらず、赤長れいむも痙攣を始めており、姉まりさと母れいむは泡を吹いて気絶していた。
赤まりさは、前から少し体が小さくて餌はいつも最後に貰う役だった。故に今回も、最後に与えられる前に嘔吐劇が始まったので無事だった。
…とは言え、まだ幼い所の嘔吐で相当量の餡を失ってはいるが。
「ゆ………ぱちゅりーが…ぱちゅりーがいたら…」
子れいむの友人には物知りなぱちゅりーの子がいた。
今、あの子が居たらどうすればいいのか教えてくれるはず…そう考えた所で子れいむは思いだした。
『どくをたべてしまったときはみずをのませるとしーしーででていくのよ、むきゅ!』
「…!ゆ、ゆっくりてつだってね…!」
子れいむは、姉まりさと母れいむに水を運ぶ事が大切だと思って赤まりさを起こしはじめたのであった。
生存していて忙しそうに走り?回っていた子れいむを引きとめて話を聞くに、ざっとこんな所らしい。
そして、毒を緩和する為にそれを運んで生存している母れいむ・姉まりさと赤長れいむに飲ませているそうな。
赤まりさは既にへとへとになって足を止めている。
…毒?
とりあえず足元に広がっている惨劇、ゆっくりの死骸と泡と餡子とその中心にちらばる『ソレ』の一部を手に取った。
「…芳香剤って毒なんだ…」
そして、掃除の事を考えながら元気な子れいむと赤まりさを手に取った。
おわり。
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【あとがき】
初作品です、文章が拙いのは申し訳ない限り。
半月程前に雑貨店見回っていて芳香剤を見た際に思いついた内容です。
ゲル状の芳香剤とかって、少し甘いですよね?
家族構成(子ゆは上から長→末の順)
成ゆ
父まりさ:至って普通のまりさ。ゲス(多量摂取により死亡)
母まりさ:至って普通のれいむ。(半死)
子ゆ
長まりさ:子ゆっくりの長女。(半死)
子れいむ:子ゆの中で姉寄り。家族で一番賢いのでは?
中まりさ:中まりさ。子ゆでは一番小さい。(多量摂取により死亡)
赤ゆ
長れいむ:赤ゆ長女。(瀕死)
まりさ:赤ゆ唯一のまりさ。
末れいむ:末っこ。食欲旺盛。(許容量超えにより死亡)
半死のゆっくりは治療により回復するかもしれません。
アフターケアはなし。残ったゆっくりは脳内でお好きにどうぞ。
最終更新:2009年04月17日 18:36