※独自の組織やトンデモ設定で話が進みます
【今其処に在る危機】
“ANSOKU”は、謎に満ちた
ゆっくりの生態を研究する為、
有志が集って設立された研究機関である。
今回はその実験の一つを紹介しよう。
この森は“ゆっくりぷれいす”である。
生きた饅頭である“ゆっくり”達がそう呼んでいる。
豊富な餌、温暖な気候、天敵がいない等のゆっくりにとっての好条件が揃っている。
この森に住むゆっくり達は、お互い争う事も無く日々平和に“ゆっくり”と暮らしている。
さて、当然ながらこの様な環境は自然界には滅多に存在しない。
この森は、周囲を自然物に偽装した障壁で覆った、完全な人工物である。
その為、内外の動植物の出入りは著しく制限され、影響は最小限に抑えられている。
この森はANSOKUによって作られた実験場である。
ANSOKUでは、この森をその機能的特徴から“世界”と呼んでいる。
「今回の実験は、“世界”の環境を変化させる」
プロジェクトリーダー(PL)の説明が始まった。
「森林を伐採し、世界の環境変化、それによるゆっくりへの影響を調べるのだ」
話を聞いただけでは途方も無い時間のかかる計画だと思えるが、
特殊な装置によって環境変化までの時間を自由に操作する事が出来るのだ。
それによって、植林した翌日に伐採という様な非現実的な事を可能にしている。
例えるならば、時間の流れを操作できるという事である。
「では、各自伐採用具を装備し、森林の伐採を行ってくれ」
装置で環境変化をさせる事も出来るが、
それではゆっくり達に何故環境が変化したのかを理解させる事が出来ない。
その為、手間は掛かるが実際に伐採を行う事で理由付けを行うのである。
「ゆ? みたことのない いきものだよ?」
今回の実験に際して、この森内の事しか知らない様に育てたゆっくりを使用している。
外部からの影響の無い環境で育っている為、当然人間も知らない。
世界では動植物の自然発生は無く、全てが実験計画に沿って調整されるのだ。
「ゆっくりできる いきものなの? ゆっくりしていってね!」
人間という種族名を知らない為、何と呼んで良いのかは分からないが、
ゆっくりの本能に従ってお決まりの挨拶をしてくる。
だが、研究員達は返事をする事無く、伐採用具を取り出して作業を始めた。
「ゆっくりしていってねって いってるでしょう!? きこえないの!?」
ゆっくり達は返事が無い事に腹を立てるが、伐採が始まると直ぐに静かになった。
「ゆっくりやめてね! そのきさんは れいむの おうちなんだよ!」
研究員が切り倒した木はこのゆっくりの住処だった様だ。
木の洞を利用して作られていたが、もはや使い物にはならない。
切り倒した木は外に運び出され、材木として使用される。
「やめるんだぜ! まりさの ゆっくりぷれいすを こわさないでほしいんだぜ!」
「ゆぎゃあああ! ありすの とかいはな おうちがぁあああ!!」
「ぢ、ぢんぼっぼ まらべにずぅうううう!!」
「わがらないよー! どうじで ごんなごどずるのーっ!!?」
あちこちで多数のゆっくりの悲鳴が聞こえる。
研究員達はその全てを無視して黙々と伐採し運び出していく。
木を切り倒した後には切り株が残る。
その切り株の根元に穴を掘って住処にしているゆっくりもいる。
だが、更に研究員達は機械を使い切り株を引き抜いていく。
切り株を引き抜いた後は地面を平らに均していく。
その過程で下草も取り除かれている。
斧を使う物、鋸を使う者、機械を使う物と様々だが、
皆一様に世界を森であったとは思えない姿に変えていく。
そして、空が茜色に染まる頃、その作業は漸く終わりを迎えた。
ゆっくり達の住処があった森は、いまでは何も無い開けた土地になっていた。
「ゆっゆっゆ…っ。 ひどい、ひどすぎるぅ…」
しかし、森のゆっくり達は一匹たりとも掠り傷一つ負ってはいない。
全ては実験の為であり、実験対象を傷つけない様に細心の注意を払っていたからである。
残されたゆっくり達は、あまりの事態に愕然としながらも、
もはや何も無い場所に別れを告げて、残された森の中へと去っていった。
そんな作業が何日も続き、どんどん世界の森林は面積を減らしている。
森林の破壊と言う環境の変化は、それまでゆっくりぷれいすで
平和に暮らしていたゆっくり達にも変化をもたらしていった。
下草まで徹底的に排除し、荒野となった場所には何も食べる物が無い。
仕方なく森林の残されている場所に移動するが、それが更に問題を引き起こす。
住む所を失ったゆっくり達が新たな住居を求めた結果、
生息密度が増加し、食料が分散されて手に入る量が減る。
食料が減り、空腹で苛立ち始め、諍いが起こる。
先住のゆっくり達と後からやってきたゆっくり達との衝突が激化してゆく。
やがて、今まで平和に暮らしていたゆっくり達はお互いを追い出そうと争いだす。
そこへ更に続く森林の解体。
先住も後続もまとめて追い出され、次々に増えていくゆっくり達の難民。
そして森林が消えるにつれて減っていく食料。
ゆっくり達は追い詰められていき、遂には生存を求めて争いだした。
更に月日は流れ、もはや世界には殆ど森が残されていない。
もう研究員達が森林を伐採する事は無いが、装置によって急速に環境を変化させている。
木を失った土地は干からび、やがて砂漠へと変化していった。
砂漠となった地には、草一本生えず、かつての面影は無い。
もはや水の一滴すら無い川は、小さな窪みだけが残っている。
あれだけ多くいたゆっくり達は、少ない水と食料を求めて残された森を奪い合い、
唯でさえ少なくなった数を更に減らしている。
その残された森ですら、後どの位持つのかは分からない。
最後の森が消えた時、ゆっくり達はどんな運命を辿るのだろうか?
「実験終了。 装置を作動させ、森林を復活させる。
実験結果をまとめた報告書を完成させ提出せよ」
PLの指示により砂漠と化した世界は緑を取り戻す。
全てが以前の姿に戻った様に見えるが、その森にはゆっくり達はいなかった。
また新たな実験が始まれば、この世界にゆっくり達が現れるだろう。
[今回の実験内容]
世界の森林伐採、それによる環境変化がゆっくりに及ぼす影響を調べる。
[実験結果]
生息密度の増加による食料の減少・衝突の増加、生存を求めての争いが始まった。
実験開始段階では平和的であったが、最終的に争いで全滅。
植林及び保護が見られなかった為、森林を自然発生物と認識していると思われる。
【なんとなく思いついたので書いてみた。
特に深い意味は無いので勘繰らないで下さい。
何か一つの事をやっていると時々他の事がしたくなるんです】
書きかけ…Biohazard Yukkuri 4
最終更新:2009年05月14日 23:53