「ここで待ってろよ、そしたら迎えに来てやるから・・・」

うん、わかった!ここでまってるね。きをつけて、いってらっしゃい。

「じゃあな。」そう言って遠ざかる姿。

はやくかえってきてね。ひとりはね、さみしいよ。
『大事な用事』ってなんなんだろう。
それがおわったら むかえにきてくれるんだって。
はやく、おわらないかな。そしたら、たびにでたいな。
ごしゅじんと、いろんなものをみて、いろんなところにはやくいきたいな。
だからね、ちゃんとごしゅじんのこと、まってるよ。


…あの小さなポケモンは、かれこれ何日位あの場所にいるのだろうか?
おそらく、捨てられたんだと思う。この近くには頻繁にポケモンが捨てられる。
それもレベルが低く、簡単に命の危険にさらされてしまう様なポケモンが。
自分が見かけた時から、あの子はその場所を動かない。
時々遠くを見たかと思うと、小さくうずくまって寝ているようだった。
話しかけてみようか、と思った。あの子の暇つぶし位にはなるだろう。


「やぁ。」そう声をかけると、その子はパッと顔を上げた。
「・・・こんにちは!」
「こんにちは。・・・君はどうして此処にいるの?」
「まってるの、」
「・・・だれを?」
「ごしゅじんだよ。『大事な用事』があるから、ここでまってて、っていわれたの。」
「・・・そうなんだ、偉いね。・・・けれど、この辺は度々雨が降るからね。
風邪を引かないように気をつけて。」
「うん!ありがとう。」
あぁ、この子は捨てられたんだ・・・
けれど、帰ってこない主人を信じて待っているのか・・・
君は捨てられたんだよ、なんて言う事は自分にはできない。
「お腹が空いたら、これを食べるといいよ。」
そう言って私は先ほど、近くで採った木の実を数個、渡した。
「・・・!ありがとう!」
素直に質問に答え、きちんと礼を言い、
とても嬉しそうな笑顔を見せたその子は、素直な性格なんだと簡単に分かった。
素直に主人の言いつけを守り、ずっとここにいるんだろう。
素直な性格が原因で、捨てられたとも知らないで・・・
「・・・早く帰ってくるといいね、ご主人・・・」
そう言って、私はその場所を去った。


…あのポケモンさんとおわかれしてから、どれくらいたったかな。
あれからあめが、まいにちたくさんふって、あたまがいたいのがつづいた。
ごしゅじんは、まだかな、まだかな。ひとりはさみしくて、さむいし、こわいよ・・・

まだこないのかな・・・『大事な用事』だもんね、しかたないんだ。
でもね、からだがつめたいよ、おもうように、うごかない、よ・・・

…こんなときにどうしてかな、
ぼくがうまれたときに、ごしゅじんが、いったことをおもいだした・・・
『チッ・・・素直な性格かよ・・・』
あのとき、そういったごしゅじんが、おこったかおをしてたのは、きのせいだよ、ね・・・

たくさんまっていたけど、ごしゅじんは、こな、い。
だんだんと、めが、あかなくなってきた、よ・・・
あぁ、もう、だめ、だ・・・

ちゃんと・・・まってるって、やくそくしたのに・・・
ごしゅじんとのやくそく、まもれなくてごめんなさい・・・。


作 2代目スレ>>385-387

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最終更新:2008年03月27日 21:57