覚えているよ


おや、君は昔近所に住んでいた・・・
あっ、あの家の。いや、まさかこんな所で会うとは。お久しぶりです。
元気そうで何よりだ。それで、最近はどうだい?
うーん、そうだなぁ。特に変わったことといえば・・・捨てられたポケモンの保護団体の活動を最近始めたんです。
逃がされたポケモンの?
ええ、そうです。この辺りは特に多いですから・・・
それはそれは。とても良いことだね。あぁそうだ、このポケモンを見てくれ。
…ウインディ。
あぁ、このウインディは昔捨てられていたガーディを拾ったんだよ。
…前足に傷があるんですね。治ってはいますが。
そうなんだよ。手当てはしてあったが捨てられていてね。
…そうなんですか。
どうしたんだい?
いえ、何でも無いです。それにしてもあなたに良く懐いますね。
ここまで懐いてくれるのには時間が掛かったけれどね。
大変だったんですね・・・あ、それでは、失礼します。


まさか、此処であいつに会うとは。あの前足に傷があるウインディ・・・間違いない。
俺が昔拾った、捨て犬だったガーディだ。
怪我をしているのを見つけて拾ったは良いものの、家に帰ったら親に猛反対されて、
泣く泣く元の場所においてくる破目になったガーディ。
傷が治っていて本当に良かった。下手ながらも手当てした甲斐があった。
本当は元気になって良かったな、位は言いたかったが、俺は一度あいつを捨てたんだ。
反対されて仕方なくとはいえ。・・・ごめんな。


その時だった、不意に「ワン!」という声。
振り向けば、ウインディが俺に向かって駆け寄ってきた。尻尾を嬉しそうに振って。

あまり嬉しそうに尻尾を振るのでウインディの頭を撫でてみると、
ふわふわとしていて心地が良かった。
「ウインディ、あの時はごめんな。」
小さく呟くとワン、とウインディがもう一度鳴いた。
ウインディが返事をしたことに驚いていると、
「ウインディ、そろそろ行くぞー、」とトレーナーの声が聞こえた。
そして走り去るウインディ。


お前は覚えていてくれたんだな。ありがとう
あの時の別れも、今の別れの時も、お前には泣かされっ放しだよ、ちくしょう。
昔と違うのは、あの時は悔し涙、今は嬉し涙だということだ。
なぁ、俺が捨てられたポケモンの保護団体の活動を始めたのは、
もう二度とあんな悔しい思いをしたくないのと、お前のように悲しい思いをするポケモンを減らす為なんだ。
あの時の自分自身に抱いた悔しい気持ちと、お前とのあの時の別れを俺はまだ覚えているよ。


覚えているよ、あなたが私を助けてくれたこと。
あなたの親が何と言おうと必死に私を守ろうとしてくれたこと。
あなたが私と別れる時に、悔しくて謝りながら泣いていたこと。
私の傷を、一生懸命手当てしてくれたこと。
だってね、全部全部、とっても嬉しかったんだ。

いつまでも忘れないで覚えているよ、私のことを撫でてくれた手は、
あの時と変わらずとても優しい温もりだったから。


作 2代目スレ>>737-738

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最終更新:2008年10月27日 18:47