蛇足1 姉視点
捨てられた時は想像もしていなかったこと。まさかもう一度トレーナーの手持ちになるなんて。
兄弟たちと
平和な国を探している途中、私はマメパトを求めていたトレーナーさんと出会った。
出会ったと言っても最初の関係は最悪で、兄弟と実を食べている最中に、
いきなりトレーナーさんの手持ちポケモンにじゃれつかれ、驚いた兄弟たちは逃げてしまったのだ。
また虐められたり、捨てられたり、母みたいに卵をいっぱい産まされたりだなんて嫌だったから
ものすごく抵抗したけど、このトレーナーさんは決して私を大けがや殺そうとはしなかった。
兄弟たちのことがとても気になったけど、こうしているうちに彼らの気配はだんだん遠ざかり、
もう追いつけない場所まで行ってしまったことがだんだん分かってきた。
これが最後。これで無理なら諦めるけど、でも、マメパトと仲良くしたいんだ。
そう言って投げられたピンク色の優しい感じのするボールに私は収まった。
このトレーナーさんは主に観光目的で冒険の旅をしていた。
トレーナーさんの手持ちになったとは言っても兄弟たちのことは忘れられなかったので、
マメパト達がいっぱいいるところを見ると、つい兄弟の誰かがいないか探してしまう。
旅の途中。小さな、地図にも載らない村に立ち寄った時。トレーナーさんと大人が話しているのが聞こえた。
「…で、その森は昔の戦争が原因か、はたまた環境破壊かで汚染されているって話だ」
「つまり、近寄らない方がいいってこと?」
「ちゃんと立ち入り禁止はしているから人間は大丈夫だし、普通のポケモンはまず近寄らない。
…だが、お前さんも連れてるマメパト。なぜかこいつらの種族だけ何かに惹かれるかのように
ふらふらーと入りこんでしまうとこを見かけることがある。そして
二度と出てこない。
おおかた途中で倒れちまってるんだろうな。何に惹かれたか知らんが、可哀想に。
もしかしたら自分らの敵がいなさそうなんで安心して入っていっただけかもしれんが、
その結果が毒にやられてばたっ…というのは哀れなものだよ」
「ああ、あの森か。この前調査で入ったけど、森の中心付近ですごいもの見たぜ…。
沢山のマメパトの骨が、少し大きめの骨…あれは骨格からしたらハトーボーかな?
そいつを囲むようにずらっと集まっていやがったんだ。
最近迷い込んだのか比較的綺麗な状態の骨がハトーボーの骨によりかかってるのが
なんともいじらしくて哀れでならなかったよ…多分親だと思ってすがりついたんだろうな、可哀想に」
それから数日後、私たちはその怖い森を大きく回避して次の町へと旅立った。
私は一度だけ、遠くからその森を見つめた。
確かに、何か惹かれるような雰囲気は感じたけども、それが何だったのかは分からなかった。
その後、私は何匹かのハトーボーにも出会い、私自身もケンホロウへと進化したけど、
結局『平和な国』がどこにあるのかは、今もよく分からない。
トレーナーさんとの生活は平和で幸せだけど、『国』ではないし…。
けれども、あの日別れた兄弟たちは『平和な国』に辿りついていて欲しい。そう願ってしまう。
最終更新:2011年08月01日 17:46