その日、文芸部に一番乗りでやってきたのはこの私、涼宮ハルヒだった。
最初は有希よりも早く来たことが新鮮だったけれど、それだけだった。
「あーあ、早く誰か来ないかしら」
足をバタバタと動かしながら、暇を持て余す。
パソコンを起動してはみたけど、ネットサーフィンなんて気分でも無い。
結局、すぐに電源を落とすとマウスを置き、一人で愚痴を口にする。
「だいだい、この団長であるこの私を待たせるなんて、みんな弛んでるわ。
全く、これはお仕置きが必要ね!」
言い終えて、はあ、ため息を漏れた。
無理矢理にテンションを上げようとしたけど、どうやら無理のようだ。
待たされる腹立たしさよりも、一人の寂しさが勝ってしまっている。
自分で思っていたよりも、ずっと自分が寂しがりやなんだと気付いてしまった。
「本当に、誰か来てよ」
そんな呟きが、自然に口から出てしまう。
その時、それまでの静寂を打ち破るかのように、ドアが勢いよく開いた。
「やっほー、鶴屋さんが遊びに来たっさ!」
宣誓でもするかのよに右手をあげ、元気よく入ってきたのは鶴屋さんだった。
「あっれー、ハルにゃん一人かい? めがっさ珍しいねっ」
予想外の人物だったけど、嬉しい来訪であることには間違いない。
いつの間にか笑顔になっていた私は、鶴屋さんを歓迎する。
「そうなのよ! 全くみんな弛んでるわね。そう言えば鶴屋さん、みくるちゃん知らない?」
確か、鶴屋さんはみくるちゃんと同じクラスだったはずだ。
鶴屋さんだけ来たということは何かあったのかもしれない。
「みくるなら先生に用事を頼まれて連れて行かれたよっ! だから鶴屋さんが代わりに遊びに来たわけさっ」
私よりも教師を優先するなんて、やっぱり弛んでる。
しかし、理由はどうあれ鶴屋さんが遊びに来てくれたことは嬉しかった。
「まあ、立ったままじゃなんだから座ってよ」
「それよりも聞きたいことがあるんだけど、いいかなっ?」
鶴屋さんは私が勧めたパイプ椅子を拒否する。
「聞きたいこと?」
「みくるに聞いたんだけど、女の子が好きって本当かい?」
「な、な、なんでそれを!」
あの子、なんてこと言ってるのよ!
そりゃあ、秘密にしようなんて言ったことなかったけれど。
みくるちゃんの性格からして人に話すとは思わなかったけど、どうやら私の予想は外れていたらしい。
「ふふん、その反応を見ると本当みたいだね!」
鶴屋さんを八重歯を見せて、にやり、と口に出して笑って見せた。
「そ、それは、その」
なんと言って誤魔化すべきか、それとも素直に認めるべきか。
動揺から言葉が上手く出てこない。
「いやあ、お姉さんにも早く言ってほしかったね! そしたらもっと早くハルにゃんとこんなことできたのに」
鶴屋さんは慣れた手つきで私の首に手を回すと、抵抗する間も無いほどの早業で私の唇を奪う。
「ぷはあ、奇遇だねハルにゃん。実は私も女の子めがっさ大好きなのさ!」
鶴屋さんはあっけらかんと自分の宣言すると「さて」と私の制服に手をかけた。
「ちょっと、鶴屋さん!」
「大丈夫っさ。さあ、観念するにょろ」
胸のリボンが片手で器用に外された、その時だった。
「観念するのはあなた」
いつの間にか開かれていたドアの向こうには有希の姿がそこにあった。
心なしかわずかに怒っているように見える。
「あっちゃー、有希っ子が来ちゃったか。ハルにゃん、お楽しみは次回に持ち越しだねっ!」
「次回は無い。彼女は私のもの、あなたのものにはならない」
「んー、言うねえ。でも残念だけど、ハルにゃんは私が盗っちゃったのさ」
有希は無言で私に向かって歩いてくる。
「有希、これは、その」
弁明しようとする私を無視して、私の首にかけられた状態になっているリボンを引っ張る有希。
当然、私も首も一緒に有希の方へと引っ張られる。
そして、私と目線が同じ高さになると、そのまま唇を合わせてきた。
「取り返した」
ちょっと、待ちなさい!
なんでキスしたら自分のもの、みたいな流れになってるのよ!
「じゃあ、間をとってみんなのものってことにするにょろ」
「認めない。私のもの」
「うーん、有希っ子は以外に独占欲が強いねえ」
「違う。涼宮ハルヒは独占されたいと願っている。私は彼女の意志を尊重しただけ」
どう考えても私の意志が尊重されていないそのやり取りに口を挟もうとしたその時、
こんこん、と控えめに扉を叩く音が聞こえてきた。
「あのう、お取り込み中でしょうか?」
わずかに開いた扉の隙間から、みくるちゃんがこちらを覗いていた。
「お、ちょうどいいところに来たねえ。今、ハルにゃんの取り合いをしてたところさっ!
みくるも参加するにょろ」
鶴屋さんは今の事態を完全に楽しんでいるらしく、愉快そうに私を背後から抱きしめた。
「え、涼宮さんの取り合いですか?」
「みくるちゃん、そんなの本気にしちゃだめよ。って、鶴屋さんどこ触ってるのよ!」
「ハルにゃんのおっぱい! いい形だねっ!」
悪びれもせず、背後から私の胸を勝手に揉みしだく鶴屋さん。
みくるちゃんがその様子を羨ましそうに見ているのは気のせいだと思いたい。
「はわあ、涼宮さん、すごいです」
止めさせようと口を開こうとしたが、それは有希の口によって強引に塞がれてしまう。
こうなったら無理矢理にでも振りほどこうとするも、口内と胸への心地よい刺激が私から反抗の意思を奪っていく。
頭が蕩けていくように、今自分が何をされているのかが分からなくなっている。
有希の下が引き抜かれたときには、私はすっかり快楽で腰の抜けた状態になっていた。
同時に、口内に物足りなさを感じていた。
「朝比奈みくるは行為の参加を拒否している。よって涼宮ハルヒは私のもの」
ずっと見ているだけのみくるちゃんに気がついたのか、有希がまた私の所有権を主張し始めた。
「そ、それはダメです!」
「何故?」
「決まってるっさ!みくるもハルにゃんが欲しいからっさ」
「そ、そうなんです」
「諦めるべき」
「いやです!」
私を置いて繰り返される私の所有権論争。
いや、そもそもSOS団の団長である私が団員の所有者であるべきじゃないかしら。
腰の抜けて歩けない私が現実逃避気味にそんなことを考えていると、
いつの間にか話がまとまったのか、みくるちゃんが私の前まで来ていた。
「ごめんなさい!」
みくるちゃんはそう言うと、両手で支えるように私の頬に手を当て、口を触れ合わせた。
最初は恋人同士が始めてするように初々しく、次にゆっくりと舌が私の唇をこじ開けてくる。
先ほどまでの有希とのキスで物足りなさを感じていた私は求められるままに、舌を絡め合わせた。
「これで、私のものですよね?」
長々と続いたキスが終ると、みくるちゃんが有希と鶴屋さんに向って言った。
しかし、すぐに有希が私を取り返そうとばかりに、キスを求めてくる。
みくるちゃんはそれに負けじと、私を抱きしめ、便乗して鶴屋さんと体をいやらしく触ってくる。
そんな行為が延々と繰り返される中で、私の堪忍袋の緒が切れた。
「いい加減にしなさーい! 私は誰のものでもないのよ、私は私のもの!
あなたたちがSOS団団長である私のものなのよ、わかった!?」
途端に静まり返る三人。
少し可哀想かとも思ったけど、このまま物扱いされてセクハラ地獄なんて冗談ではない。
そんな中、最初に口を開いたのは有希だった。
「わかった。団員として、あなたに奉仕を行う」
はい?
有希はそう言うと、先ほどまでより少しだけ優しく私の唇を奪ってきた。
「じゃあ私も奉仕させてもらうかなっ!」
「がんばります」
それに続けてばかりに、自称奉仕を行う二人。
結局、私が誰のものであろうと何一つ変わることは無かったようである。
いい加減、抵抗する気も失せた私は素直に快楽に身を任せながら、
こんな団長生活も悪くないのかもしれない、などと思うのだった。
最終更新:2009年02月11日 10:38