「有希、お餅はいくつ食べる?」
「5つ」
三が日は過ぎてお正月気分から抜け出しつつある世間とは裏腹に、我が涼宮家はまだまだ新年の空気が漂っていた。
とは言っても、さすがに会社勤めの両親がそういう訳にもいかず、数日前からせっせと働き出している。
今、我が家にいるのは私と有希だけだった。
以前から有希が一人暮らしであることは知っていたので、大晦日と新年の予定を試しに聞いてみたら
「ない、一人」なんて答えが返ってきた。
それならば、というわけで大晦日から家に呼んで、両親に紹介して、こうして一緒に過ごしている。
私はお餅が焼けたことを確認してから、お皿に盛る。
それを炬燵の中で今か今かと待ち続ける有希の元へと持っていく。
「食べていい?」
「もちろん、どんどん食べなさい」
私の了解を取ると有希はお餅へと手を伸ばし、はむはむと餅をほお張り始める。
私はそんな有希の隣に座り、炬燵に足を入れた。
そして、お餅を咀嚼する有希をじっと観察する。
そうしていると、普段は真っ白で綺麗な雪の様に思える有希の肌が、今はお餅を食べているせいか
その頬がお餅のように見えてしまった。
「なに?」
視線に気がついた有希は、口内のお餅を飲み込んだ。
「お餅みたいで美味しそう、って思ってたところよ」
私はそう言って、有希の頬を指でつついてみた。
有希は自分の頬を手を当てると、10度ばかし首を傾けた。
「食べる?」
「そんなこと言ったら、本当に食べるわよ。有希なんだから美味しいに決まってるしね」
そう言って有希を力の限り抱き寄せる。
有希はされるがままに、私の胸に収まった。
「いい、食べて」
それ言って有希はじっと私を見つめている。
私はそっと有希の頬に舌を這わせた。
冷たさと柔らかな感触が舌先に伝わる。
くすぐったそうに目を細める有希は、本当に食べてしまいそうなくらい、可愛らしい。
「美味しい?」
「言ったでしょ? 有希なんだから美味しいって」
「そう」
有希はそれだけ言うと、またお餅を食べ始めてしまった。
これからもっと色々してやろうと思っていた私は少し悔しい。
「大丈夫」
「何が大丈夫なのよ、有希?」
「これを食べ終えたら次はあなた」
有希は餅を食べきると私に向って言った。
「あなたが美味しくないわけがない」
これから色々されると思って嬉しくなっている自分が少し悔しかった。
最終更新:2009年02月11日 10:55