アットウィキロゴ

長門×ハルヒ 「消失」出会い篇

きっかけはただの偶然、もしくは運命。
バレンタインの翌日、昨日までは世間の主役といわんばかりにもてはやされていたチョコレート達が
手のひらを返したとばかりに安売りされる。それを見越した私は寒空の中、バスを待っていた。
目指すは近所のデパート、毎年、チョコレートの在庫処分が盛大に行われているのだ。
特別、チョコレートが好きなわけではないけれど、かと言ってバレンタインをただ無視してしまうのも面白くない。
行事になるべき参加するのが私のポリシーだけど、チョコをあげようと思う相手もいない。
だから、こういう形でもバレンタインに関わってやろうという魂胆だ。
時刻表を見て、バスが来るまでまだ時間があることを確認した私はベンチに腰をおろした。
まだ時間も早いせいか、休日にも関わらずバスを待つのは私ともう一人、女の子がいるだけだった。
その女の子は日曜日だというのに、制服を着ている。
見覚えのあるその制服は、たしか坂の上にある北高のものだった。
黙々と本を読み続けるその横顔は知らない顔なのに、なぜか懐かしく感じる。
短くそろえた髪の毛の柔らかさを、私の指は知っている気がした。
あの白い頬の感触や、あの小さな体の体温を、まるで実際に触れたかのように思い出せる。
初対面で、ただ横顔を見ただけなのにそんなことを感じる自分でも不思議で仕方ない。
このまま考えていても埒が明かないので、話しかけようとしたその時、視界になにか白い物がうつった。
空から降ってきた白いそれは、ひらりひらりと空気の流れに身をまかせて地面に落ちていく。
朝から冷えるとは思っていたけど、寒いわけだと何故か感心してしまった私は意味も無く、それの名前をつぶやいた。
「ゆき」と。
本当に意味の無い、ただの独り言だった。
「なに?」
だから、それに反応があったことに私は強く驚いたのだ。
相手の女の子の方も驚いていたから、余計に意味がわからなかった。

「え?」
一瞬の沈黙。意味不明の気まずさが漂う空気。
そんな空気を察したのか、自分の勘違いに気がついたのか、制服姿の女の子が口を開いた。
「私の名前は有希。だから間違えた」
必要最低限の口数だけど、よくわかる。
つまり私の独り言が、自分を呼んでいるのと勘違いをしてしまったらしい。
そうとなれば、こちらに非があるわけで一応謝っておく。
「そう。ややこしい独り言でごめんね」
「いい」
彼女、有希は短く答えるとまた読書へと戻っていった。
私はと言うと、彼女への興味は強まるばかりだった。
短いなりにも会話したことが既視感を加速させる。
この女の子は私が守らなければいけないという、よく分からない使命感が勝手に燃え上がっていく。
私がどうやって話しかけようかと、有希が観察していると、どうも読書には集中はしていないようだ。
さっきから1ページも進んでいないし、ちらちらと横目で私のことを見ているのが分かった。
「ねえ、有希」
「なに?」
先ほどと同じように、やはり驚いた様子で有希が答える。
「ねえ、あたしたち初対面よね? もしかしてどこがで会ったりしてない?」
「ない」
私はずっと気になったことを聞いてみたけど、やはり初対面らしい。
「けど」
「ん?」
有希は本を静かに閉じると、私の目をまっすぐに見つめて
「私をあなたを知っている気がする」
戸惑いながらも、そう言った。
「そうよね!?」
自分と同じだったのが嬉しかったのか、あたしは思わず有希の手をとった。
「あたしも同じことが考えてたのよ!有希がこと知ってる気がするって!これって前世?前世に違いないわ!」
私の勢いに驚いたのか、手を握られたことが恥ずかしかったのか、それともその両方か。
有希の頬をわずかに赤く染まっている。

その反応は何故だかとても意外で、貴重で、なにより愛おしく思えた。、
私は手を離すと、勢いのまま有希をぎゅっと抱きしめた。
「あ」
一文字だけ発して、硬直する有希。
私は、初対面でやりすぎたかなと思うと同時に、既視感と同じの抱き心地に安心していた。
「ごめん有希、嫌じゃない?」
私は胸の中で固まっている雪に声をかける。
普通に考えて、初対面の相手にいきなり抱きしめられて嫌じゃないわけがないけれど。
「不思議」
「え?」
「こうしているのが嫌じゃない。安心する」
そう言ってわずかにではあるが、確かに微笑む有希を見て、私がさらに腕に力を入れるのであった。


バス停で初対面の相手と抱き合うという貴重な体験との引き換えとでも言うべきか。
私達が気付かないうちに、バスはバス停を過ぎ去ってしまったらしい。
「全く、気が利かない運転手ね! 声くらいかけてくれればいいのに」
「さっきまでの私達を見たら、通り過ぎるのが普通」
確かに、朝早くから女の子同士が抱き合ってるのを見たら、運転手もスルーしてしまうかもしれない。
「まあ、いいわ。それだけ有希と話せる時間が長くなったんだから、ね?」
有希は答えず、かわりにコクリとわずかに頷いた。
次のバスまで時間がある。これからどんな話をしようか、どんな事を聞こうか。
有希のことをもっと知りたいし、知って欲しい。
「あの」
「どうかした?」
「名前、まだ聞いてない」
ああ、そうか。そう言えばまだ名乗っていなかった。
お互いのことを知るには、まず自己紹介からすべきよね。
「よおく、覚えておきなさい! あたしの名前は――――」
これからずっと、おなたと一緒にいる私の名前を知ってもらうためにも。

オッワーレ

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年03月29日 23:24
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。