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鶴屋さん×みくる 陰謀ネタ

「突然来て泊めてもらって…本当にありがとうございます」
離れに残されたみくる…今はみちるだが…は、ちょこんと座ったまま頭をさげた。
みくるのようでちょっと違う…双子という設定らしいが、
このややこしい少女を連れてきたキョンを玄関まで見送った鶴屋さんは、そんなことは気にせずあっけらかんと笑っている。
「いいんだよっ!私とみくるの仲じゃないかっ!おっと、今はみちるだったね」
もう既に設定はどうでも良くなったらしい。
畳に上がってみちるの隣にぴたっとくっついて座り、不安そうな顔を楽しそうに覗きこんでいる。
「あの…、いつも姉がお世話に…えと…」
顔を近付けられたみちるは、つい今しがた決められたキャラクタを忠実に守ろうと目を泳がせながらセリフを選んでいる。
バレたら大変とばかりにおどおどしているが…。
その仕草が気に入ったのか、鶴屋さんは笑いをこらえてみちるの頭をぐりぐり撫でた。
「いやぁ、やっぱりかぁわいいねっ!たまんないよっ!」
「ふえぇ…」
右手で頭を掴んだまま背後に回って左手で抱き締めると、みくるはみちるを装うことも忘れてじたばたした。
もっとも、みくるが完璧に演じたとしても鶴屋さんは早い段階でお見通しだっただろうが。

「ねぇ、みくる?」
「はい」
はっと気付いて動きを止める。
「あ、いや…みちるですぅ」
鶴屋さんは「あぁそうだった」と言わんばかりに微笑んで、
「じゃあみちる。私はねっ、みくる…いや、あんたのお姉ちゃんが大好きなのさっ!めがっさ可愛くってねっ」
言い聞かせるように、小声だが歯切れよく呟いた。
さっきまで頭に置いていた手を下げ、両手で肩を抱きながら。
「もしお姉ちゃんに会えたら、私がみくるのこと大好きだって伝えて欲しいにょろ。直接は言いにくいっさ」
みちるからは見えていないだろうが、肩越しに話す鶴屋さんの顔は少し赤らんでいる。
“伝えてくれ”との言葉とは裏腹に、いつもの明るい笑顔のまま瞳をうっとりと輝かせ、みちるを抱く腕にぎゅうと力が入った。
「鶴屋さん…」
みちるは今にも自分がみくるであると打ち明けそうな顔をしたが、思い止まって肩にかかる鶴屋さんの腕にそっと手を添えた。
「姉も…。鶴屋さんのことが、大好きだと思います」

鶴屋さんは珍しく一瞬だけ驚いた顔になったが、すぐ「ありがとっ!」と言ってぴょこんと立ち上がった。
「いやぁ、危うくみちるちゃんを好きになるとこだったさっ!浮気はダメダメっ!」
口の前で指を交差させて、悪戯っぽく笑う。
「それにみちるちゃんは、みくるに会えたらすぐに帰っちゃうしねっ!ずっと置いときたいとこだけどさっ」
その言葉にみちるは…いや、みちるを演じるのを忘れたみくるは、
「私も…」
—いつかは未来に帰らないといけないんです。
言ってしまいそうだった。
自分が本当はみくるであることどころか、未来からやってきたということさえ…。
「いえ、な…なんでも、」
なんとかその場を取り繕おうとして言い訳を考えるみちるの顔の前に、ぴんと立てられた人差し指が突き出された。
「大丈夫だよっ!きっと忘れないし、ずっと大好きだからねっ!」
腰に手を当て胸を張って明るい笑顔で言われた言葉を、みくるは、みちるではなくみくるとして、
「はい」
と答えた。

「おっはよーっ!」
それから何日か経って元の時間に戻った次の日の朝、いつもの坂道を上るみくるの肩を、良く知った少女が叩いた
「あ、鶴屋さん!…あの、すみませんでした」
「えっ、何のことだいっ?」
鶴屋さんは解っている顔で爽やかに笑っていた。
「あ!と…その…あ、昨日の服、持って帰ってもらっちゃって…」
しまったという表情で、苦しい言い訳を絞り出す。
「いいよっ、そんなこと!みくるになら何時だって貸してあげるっさ!それより、早く行かないと遅刻しちゃうにょろ」
そのままくるりと回転して、校舎に向かって走り出す背中に、みくるは
「伝言、受けとりました」
と、小さな声で囁いた。
揺れる長髪が、少しだけ縦に頷いたような気がした。

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最終更新:2009年01月05日 20:46
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