その日、私のクラスは担任の先生の都合でホームルームが行われず、そのまま下校になった。
鶴屋さんに別れを告げて、私はまっすぐに文芸部の部室に向かう。
案の定、私は一番乗りで普段なら誰よりも早く来て、部屋の片隅に鎮座している長門さんの姿もまだ無い。
いつものように、ハンガーにかけられたメイド服を手に取ろうとして
その横に見慣れない衣装がかけられていることに気が付く。
涼宮さんが着ていた赤くてきれいなチャイナドレスだ。
この服が涼宮さんの体を包んでいた。そう考えると、私におかしな欲求が生まれる。
私はそれをハンガーから外すと、そっと抱きしめた。
わずかだけど、確かに涼宮さんの匂いがした。
その時だった。
「やっほー! みくるちゃん一人? 有希がいないなんて珍しいわね」
ドアを蹴破るような勢いで涼宮さんが入ってきた。
「ひゃあー!」
私は思わず驚きの声をあげた。
「みくるちゃん、ちょっと驚きすぎよ。って……その服」
涼宮さんの大きな瞳は私の腕の中のチャイナドレスに見つめている。
「はっはー、なるほどね」
「いえ、これは、その違うんです!」
「恥ずかしがらなくてもいいのよ。みくるちゃんもついにマスコットとしての自覚が出てきたみたいね!」
「ふぇ?」
「自分からコスプレしようだなんて見上げたものだわ。でもサイズじゃみくるちゃんには小さすぎるから諦めなさい」
「いえ、そうじゃないんです」
「心配しなくていいわ。私がちゃんとみくるちゃん用のチャイナドレスを買ってあげるから。うん、きっとすごい可愛くなるわ!」
涼宮さんはそう言うと、パソコンを起動させた。
「最近は通販でなんでも変えるから便利よね。あ、安心しなさい。みくるちゃんのサイズはちゃんと知ってるから」
「あ、あの本当に違うんですけど」
「嘘おっしゃい。じゃあチャイナドレス持ってなにしてたって言うのよ」
「それは……その、えっと」
「チャイナドレスが欲しいんでしょ?」
「違うんです。私が欲しいのはチャイナドレスじゃなくて……その中身の方なんです」
「へ?」
……言っちゃった。
顔が燃える様に熱い。きっと頬は桃色に染まっているはずだ。
涼宮さんはまるで時間が止まったみたいに固まってままだったが、しばらくして、事態を把握したのか顔を真っ赤にした。
「なに馬鹿なこと言ってるのよ! だいたい私をみくるちゃんにあげれるわけないでしょ!」
そして、いつもの様に片手を腰に当て、もう片方を手で私を指差して言った。
「みくるちゃんは私のものなんだからね!」
はい。そう答えようと思ったときには遅かった。
私は涼宮さんにすごい力で抱きしめられていた。
最終更新:2009年01月06日 13:09