冬休みでだらけきった体が、ようやく学校生活のリズムを取り戻してきたと感じる今日この頃。
我らSOS団は何をしているのかと言うと、何故かまたもや機関紙作りに励んでいたりするわけだ。
と言っても今回は生徒会も古泉も関係ない。
ハルヒの純然たる思いつきによるものだ。
ちなみに今回の俺の分担は幻想ホラー。
はっきり言って何を書けばいいかわからんが、まあ恋愛小説よりは幾分かマシだ。
古泉と朝比奈さんは前回と変わらず、それぞれミステリと童話。
その二人は今はいない。
用事があると言って二人とも帰ってしまった。
そしてなんと言っても特筆するべきは長門の恋愛小説だろう。
俺の知る限り最も恋愛小説とは遠そうな人物であるだけに、興味はあるのだが。
果たして本当に長門が恋愛小説というものを書くことができるのだろうか。
当の長門はここ数日、キーボードを少し叩いてはフリーズして、また少し叩くという行動を繰り返している。
「有希、できた?」
早々に自分の分を書き終えたハルヒが長門の背後からパソコンを覗き込む。
「結構できてるじゃない。どれどれ」
ハルヒは長門の小さな肩に顎を置くと、そのまま読み始めた。
最初はふんふん、と頷きながら文章を追っていたハルヒだったが次第に様子がおかしくなっていった。
顔は軽く紅潮し、声にならない声をあげている。
ハルヒは長門から体を離すと、どこか恥ずかしそうに長門を見つめた。
「有希…あなた、これって」
長門は何も言わずにただコクリと頷いた。
ハルヒは小さく「そう」とつぶやくと更に顔を赤くして固まってしまった。
一体、どんな内容が書かれていたのだろうか?
俺は自分の席を立つと、長門の後ろからパソコンを覗き込んだ。
私の体にエラーが発生したのは、いつの頃からだっただろうか。
正確な時刻は私にはわからない。
しかし、その原因が彼女にあることだけは確かだった。
彼女と最初に会話をしたときのことは正確に記憶している。
彼女は、文芸部の部室で読書をしていた私の前に現れると、唐突に部室を貸して欲しいと言った。
私がそれに了承すると彼女はすぐにまたどこかに行ってしまった。
彼女がSOS団という組織を立ち上げ、私がそのメンバーに入っていることを知ったのは放課後になってからだった。
私は以前より彼女のことを知っていた。
私は彼女を知るために存在していると言った方が正確かもしれない。
そういう意味では、彼女と同じ組織に身を置くということは私にとって悪い話ではない。
彼女をより理解するために観察する日々が始まった。
彼女は感情豊かな人間だった。
感情というものの概念が理解できない私にとって彼女の行動は不可解なことが多かった。
私は彼女の観察を続けた。
次第に私個人としての意思が観察とは別の目的で、彼女の姿を目で追っている事に気がついた。
おそらくエラーが最初に発生したのは、この時からだと思われる。
発生当初は無視できるレベルだったエラーは次第に大きくなっていった。
気がつけば、私の思考の63%が彼女に対する任務とは無関係な事項で占められていた。
自分に与えられた役目をこなすに当たって、良くない影響を与える数値だったが私はエラーを消去できなかった。
消去しようとは思わなかったからだ。
それどころか私はいつの間にか、この正体不明のエラーを心地よく思っていた。
このエラーが何なのか、私は有機生命体によって書かれた資料に答えを求めることにした。
その結果、このエラーが有機生命体における恋愛の概念に酷似しているという結論に至った。
だが私と彼女は生物学的には同じXX染色体で構成されている。
だが子孫を残すためにプログラミングである有機生命体の恋愛は私には当てはまらない。
普通ならば別に原因があると考えるべきだろう。
しかし不思議なことに、何故だか私はこのエラーが彼女に対する恋愛感情であることを確信した。
その後、別の資料によると同姓同士での間に恋愛感情が発生することがあることを知った。
やはり私の確信は間違っていなかったようだ。
私の中のエラー、いや、恋愛感情は日を追うことに増大していった。
気が付けば脳内の仮定の中で彼女を弄んでいる自分がいた。
私は
そこで文章は終わっていた。
どうやら、まだ書きかけらしい。
しかしだな、これは……俺はどう反応すべきなのか。
「私には、有機生命体の感情を完全に理解することはできない」
いつの間にかハルヒの前に立っていた長門がそう言った。
「他者の恋愛感情を想定、構築することは困難を極める。よって自己の経験を記すことにした」
見ればハルヒはさっき以上に真っ赤になってやがる。
「有希!」
ハルヒはそのまま絞め殺してしまうんじゃないのかってほどの勢いで長門を抱きしめた。
おいおい、俺がいることを忘れてやしないか?
「ごめんね。有希が私のことそんな風に思っていたなんて、ちっとも気付けなかった」
「いい。今の状況に私は満足している。ただ」
長門は三秒ほど止まってから、言った。
「私はという個体はもっと貴方と触れ合いたいと感じている」
ハルヒは一瞬驚いたような表情をすると、俺の方を睨み付けた。
「キョン、ちょっと出て行きなさい!」
やれやれ、何する気だよ、全く。
さすがに出歯亀する勇気の無い俺はさっさと荷物とまとめて帰りましたとさ。
それからのこと? 悪いが知らんな。
それからハルヒは不思議探索が終わった後、そのまま長門の家に泊まるようになったことだけ付け加えておくよ。
最終更新:2009年01月06日 13:33