昼休み、ハルヒは昨日置き忘れた財布を取りにいくため、部室に向かっていた。
「もう!財布がなきゃ学食が買えないじゃない!」
蝶番が可哀相なくらい勢いよく部室のドアを開けるとそこには先客がいた。
「有希じゃない」
窓際でぽつんとパイプ椅子に座っていた長門は、今まで食べていた
コンビニ弁当に向けていた無感動な目を、たった今入ってきた少女に向けた。
「いつもここでお昼食べてるの?」
「そう」
ハルヒは柔らかな光を受ける長門の顔をじろじろ見た後、
彼女の手のコンビニ弁当を見て表情を変えた。
「っ有希!あなたもしかして毎日コンビニ弁当だったりする!?」
静止していた頭がかすかに動く。
「ダメよ!育ち盛りの高校生が毎日そんなんじゃ!だからそんな細いままなのよ!!」
長門が何か反応を返す前に、ハルヒは長門の手を右手で、
長机の上に放置されていた財布を左手でわしづかみにした。
「学食行くわよ学食!今日は私がおごったげるからじゃんじゃん食べなさい!!」
長門は左手にコンビニ弁当を、箸を持った右手をハルヒにつかまれたまま、
自分の手を強引に引いて走り出す少女に抵抗することもなく、足を動かし始めた。
学食の机に向かい合わせで座る二人の間には、カレーと定食Aとサラダとデザートが
美味しそうな匂いと湯気を立ち上らせながらずらりと並んでいた。
ちなみにカレーは長門が指定したもの、定食Aはハルヒの昼食用のもの、
サラダとデザートはハルヒが長門に食べさせるために独断で注文した。
長門が代金を払おうとするのをハルヒは強引に止めて、全ての代金を自分で支払った。
「さ!食べて!遠慮はいらないわよ」
長門は目の前に置かれたスプーンを手にとると、そのスプーンをカレーライスに
ゆっくり差し込み、カレーのからむライスをすくいあげて、自らの口に運んだ。
「美味しい?」
ハルヒが長門に問いかける。
長門はスプーンを口から出し、咀嚼し飲み込むと、よく見ていないとわからない程度に頷いた。
「そう、よかった。今日は好きなだけ食べなさいよ」
ハルヒは満足そうに微笑みながら言った。
長門は、先ほどとほとんど同じ動きでカレーライスをすくいあげると、
それをハルヒの顔の前にもっていった。
「?くれるの?」
ハルヒは少し驚いた様子でスプーンを差し出す少女を見る。
首がかすかに上下するのを見てハルヒは少し不思議に思いながらも
「じゃあいただこうかしら」
と言うと、横髪を手でおさえながらスプーンを口に入れた。
長門はスプーンがハルヒの口に入っていく光景を、人形のように静止したまま見つめた。
ハルヒはスプーンから口を離すと
「ちょっと甘いわねえ…私はもっと辛いほうが好きだわ」
と口をもぐもぐさせながら言った。
「よくわからないけどありがとね有希。でも残りはあなたが食べなさいよ!」
ハルヒはそう言いながら割り箸を小気味のいい音を立てて割ると、
自分の昼食である定食を食べ始めた。
長門はハルヒが定食に集中しているのを確認するように見つめた後、
ハルヒの口にカレーライスをからめとられて、今は何ものっていないスプーンの先端を軽くなめた。
そしてすぐにカレーライスをすくうと、ハルヒと同じようにもくもくと食べ始めた。
おわり
最終更新:2009年01月10日 10:31