建前は冬合宿、その実は今年度最後の大騒ぎ、または古泉劇団発表会の場となった鶴屋家別荘。
掘ゴタツに足を突っ込んで、俺達はハルヒと古泉が共同製作したスゴロクに興じていた。
「はい。次、有希の番ね!」
手元に転がって来たサイコロを拾い上げて、ハルヒが長門に手渡す。
長門はサイコロを手の平で受け止め、すぐに少しだけ手を傾けてテーブルに落とした。
「…に」
振ったサイの目に書かれた数を呟いて、長門はコマを二マス進めた。
げえ。それが俺が長門のコマが止まったマスの指令を読んだ感想だ。
「『団長を気分良くさせる言葉を五種類以上言う』…」
ぱちり、と一回だけ瞬きをして長門はそれを読み上げた。
どうする長門。お前は社交辞令とかには無縁な奴だよな。
天上天下唯我独尊が乗り移ったようなハルヒを褒めるなんて、罰ゲームにしかならないぞ。
そう俺が考えていると、
「有希?
その…できなくても別にいいのよ?
有希は素直だから、褒め千切るなんてできないだろうし、キョンみたいに罰金なんて言わないわ」
と、ハルヒが少し困ったように長門の顔を覗きこんだ。
何かもう、文句を言う気にもなれんな。この俺限定の不平等にも長門限定の気ィ使いっぷりにも慣れちまった。
あと暗にそれは褒め千切る天才の古泉は素直じゃないって言ってることになるぞ。
いや、その通りだが。
ハルヒや俺の心配をよそに、長門はコタツの中で身をよじって、ハルヒの正面を向くように座り直した。
お、パスしないのか。
「活発」
ひとつ目だな。まあ嘘ではないだろう。
「健康的」
ふたつ目。あれ、それってひとつ目のと意味被ってないか?
「物怖じしない」
みっつ目。あー、まあな、当てはまるわな。
「優しい」
よっつ目。長門限定だがな…ところでハルヒよ、今のお前に鏡を見せてやりたくてたまらんのだが。
なんつーだらしない顔だ。
よっぽど嬉しいんだろうな。
最後の一個。
五種類以上ってことは、いつつより多くてもいいと言うことだが、最低限のいつつでも上出来だろう。
なんてたってハルヒを褒める言葉だからな、いつつは多過ぎるくらいだ。
さーて、長門は最後に何と言うかな?
「…好き」
それは…褒め言葉なのか?個人的な感情じゃないのか??
長門の爆弾発言に、見ろ、朝比奈さんはおろか古泉まで固まってるじゃないか。
こんな時でも落ち着き払っている多丸さんは流石だな…鶴屋さん、大爆笑してるのなんてあなただけですよ。
いや、それよりも…おいハルヒ!!
なんだってお前はタコみたいに真っ赤になってるんだ!?
「わ、私もよ…」
もじもじ、と効果音を背負えるほど顔を更に赤く染めて言うハルヒに、
「そう」
とあくまで無表情な長門。
朝比奈さんが何となく寂しそうに見えるのは…俺の気のせいだ、うん。
終わり。
最終更新:2009年01月10日 10:33