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長門×ハルヒ 貴方と思って

「じゃあ行くわよ、有希」
「………」
有希が無言で小さく頷いたのを確認してから、私は有希の手を取って歩き出した。
SOS団恒例の不思議探索の午後、公正なるくじ引きの結果、私と有希はペアになった。
有希はSOS団一の万能選手で凄くいい子なんだけど、あぶなっかしいところがある。
だから、こうやって手をつないであげてるの。
別に私の趣味とかじゃないわ。

私は有希を色々なところに連れまわした。
宇宙人、未来人、超能力者がどこに現れてもいいように町中を探す必要があるはずだから。
結局、今回も何も不思議は見つからなかったけどね。
でも、私は満足してるわ。
今日は楽しかったし、何より有希も楽しそうだったからね。
この子はあまり感情を表に出す方じゃ無いけど、私にはわかるの。
有希は私といて楽しかったんだって。
そう思うとなんだか嬉しくなってきちゃう。

キョン達との待ち合わせ場所に戻る途中、神社の傍を通ると縁日の屋台が出ていた。
そう言えば、今夜は神社で何か行事があったはずだ。
まだ日は明るいので屋台に群がる人は多くない。
それでも確かに商売をやっているようで、たこ焼きの香ばしい匂いやリンゴ飴の甘い匂いが鼻をくすぐる。

SOS団のみんなで後で来るのも良いかも知れない、そんな事を考えていると有希が急に立ち止まった。

見れば、お面の屋台に目が釘付けになっていた。
そう言えば、前にみんなで縁日に行った時もお面を欲しがってたわね。
「お面、欲しいの?」
「……欲しい」
それを聞くと、私はすぐに財布を取り出して、屋台のおじさんに言った。
「おじさん、これちょうだい」
屋台のおじさんは「はいよ」と気前のいい返事を返すと私からお金を受け取り
可愛らしい女の子のキャラクターのお面を私に差し出す。
「はい、有希」

私がそれを有希に手渡そうとしたが、有希は受け取らない。
もしかして、他のお面が良かったのだろうか? 視線からしてこれで間違いないと思ったんだけど。
「………お金払う」
有希はそう言って、スカートのポケットから小さな財布を取り出した。
「いいのよ、私が有希にあげたいから買ったんだから」
「でも、あなたからこれを貰う理由が私には無い」
有希は頑なに受け取ろうとはしない。
でも、それは私だって同じこと。有希のために買ってあげたんだから、お金なんて受け取りたくない。

「じゃあ、こうしましょう。お互いが幸せになれる名案よ!」
「名案?」
有希はわずかに首を傾ける。
「いい、有希はそれをずっと大事にすること。そうすれば買ってあげた私も嬉しい。
買ってもらえた有希も嬉しい。ね、これ以上ない名案でしょ?」
「………」
「わかった!?」
「………わかった」
有希は何か言いたそうだったが、私が念を押すと同意した。
私はそのまま続ける。

「いい、私だと思って大事にしなさい。約束だからね!」
「貴方と思って?」
「そうよ、だから失くしたりしちゃだめよ」

有希はこくりと、有希にしては大きめに頷いた。
「わかった、貴方と思う」

そう言うと、有希は私からお面を受け取り、そのままにお面を自分の口元に近づけた。
そして、有希の小さな唇と、お面のピンクで塗られたキャラクターの唇が重なった。
「ちょ、ちょっと、何してるのよ!」
私は慌てて、有希からお面を取り上げる。

徐々に辺りは暗くなってきていて、それと比例するように周囲の人通りは多くなっている。
「私が貴方にしたいと考える行為を実行した場合、貴方との関係に私にとって好ましくない影響を与える可能性がある。よってこのお面を貴方と仮定した上で、代替行為として私の希望は実現させた」
無表情を作ろうとして、照れが出てしまったような表情で有希は言った。

そして私の目を静かに見つめた。
不覚にもときめいてしまった。
なんて可愛いのかしら! ていうかこれはもう反則よ、反則!
心中で絶叫しながら、私は有希の目を見つめ返した。
見れば見るほど愛くるしい有希は、黙って私の言葉を待っている。
私は何も言わず、黙って有希の手を引いて走り出した。誰もいない場所を求めて。

ようやく人気の無い場所を見つけると、私は有希を思いっきり抱きしめて言った。
「我慢はしなくていいのよ」
少し、腰を落として、目を閉じた。

1秒後、私はお面と間接キスをすることになる。

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最終更新:2009年01月10日 10:36
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