アットウィキロゴ

阪中×ハルヒ いたずら

聞き慣れたチャイムの音が授業の終わりを知らせてくれる。
明日に土曜日を控えた金曜日の6時間目のことだった。
手短に行われたホームルームを終えると、後は家に帰るのみだ。
月曜日までは自由な時間を過ごせると言う開放感に私の気分は高揚していた。
明日はルソーとめいっぱい遊ぼうと考えて、席を立つ。
帰りの挨拶としようと涼宮さんの席の方を向く。
すると、そこには机につっぷして熟睡してる涼宮さんの姿があった。
「おい、ハルヒ。終わったぞ、起きろ」
「……んー」
「んー、じゃねえよ。起きろって」
「………あと30分」
キョン君が起こそうとしてるけど、涼宮さんは眠り続けている。
そういえば、6時間目に見たときも同じ体勢で眠っていた気がする。
よっぽど疲れているのだろうか。
「あの、キョン君」
「ん? どうした阪中」
私はキョン君に話しかけた。
男の子と話すのはあまり得意じゃないけど、キョン君は涼宮さんと仲良しだから大丈夫。
「よければ、私が30分経つまでここで待ってるのね?」
「いいんだよ、そんなの。勝手に寝かしてれば、その内起きるだろ」
キョン君は口ではそう言ってるけど、明らかに安心してるように見える。
「ちょうど教室に残る用事があるから大丈夫なのね」
嘘だけど。
「そうか、じゃあ頼むわ。今日は家の用事頼まれてるから、早く帰らないといけないんだ」
「任されたのね」
「わかった。じゃあな、阪中」
そう言って、キョン君は自分の鞄を持って教室から出て行った。
周囲を見れば、何人かが残っているだけで、ほとんどの生徒が帰ってしまったようだ。
あと10分もするころには誰もいなくなるだろう。
私はそっとキョン君の席に座ると、特に意味も無く涼宮さんを眺めることにした。





私の予想は正しかったようだ。
すでに教室に残っているのは、私と涼宮さんの二人だけになっていた。
二人きり、と意識するとわずかに緊張してしまう自分がいる。
「やっぱり、きれいなのね」
眠りの邪魔にならない程度に、そっと呟く。
小さな顔に、印象的な大きめ瞳は今は閉じられている。
代わりに形の良い眉毛と、長い瞼が目に入る。
無意識に手を伸ばした髪の毛は、自分に付いているものと同じとは思えないくらいに細い。
小さな寝息を漏らす姿はたまらなく魅力的だった。
私は涼宮さんに感謝している。
以前、ルソーの体調がおかしくなったとき、涼宮さんたちに助けてもらったことがある。
直接、ルソーを治してくれたのは長門さんだけど、涼宮さんがいなければ
長門さんと知り合うことも無かったはずだ。
そう考えると、感謝せずにはいられない。
だから、少しでも恩返しが出来れば、と思って教室に残ろうと思ったのだった。
でも、それとは別に全くの期待が無かったかと言うと、嘘になる。
以前から憧れていた涼宮さんともっと近づけるかもしれない、そう思った。
その涼宮さん本人は、すぐそこで気持ちよさそうに熟睡していて、ちょっとやそっとでは起きそうに無い。
手を伸ばせば、届く距離に、涼宮さんが眠っている。
その事実に、私の手が汗ばむ。
同時に、少しくらいなら、という考えが脳に浮かぶ。
ほんの数秒ほど、思案して、私はそれを実行することにした。
涼宮さんの前では、私の理性など秒殺されてしまうようだ。
「……少しくらいなら大丈夫なのね」
自分に言い聞かせるような独り言。
涼宮さんの右頬を隠すように、垂れた髪の毛をかき上げる。
わずかに紅潮した白い頬が露になった。
いつも見てるはずなのに、今は格別に色っぽく感じる。
左手で髪をかきあげたまま、私はそこに首を伸ばした。
心臓の音がうるさいほどに、高鳴っている。
手はすでに汗でびっしょりだった。
もし、涼宮さんが起きたら、どうしようか。
その思いは何度も出て、そして誘惑に負けていく。
とうとう私の唇は震えたまま、涼宮さんの頬に到達した。
それと、ほぼ同時だった。
涼宮さんの首が動いた。
「!?」
反射的に、私は飛びのく。
涼宮さんは眠気を残さないタイプの人なんだろうか。
さっきまで、熟睡していた人とは思えないようなテンションで言った。
「今、私になにかしたでしょ!?」
「いや、その、何もしてないのね」
「嘘おっしゃい! ちゃんとわかってるんだから」
さっき以上に、心臓が激しく鼓動する。
もしかして、ばれてしまったのだろうか。
「まあ、なにをされたかまでは分からないけどね」
涼宮さんはそう言うと、机の中から手鏡を取り出した。
「うん、落書きじゃあないようね」
「そんなことしないよ」
「じゃあ、なにしてたの?」
涼宮さんは私に一歩詰め寄る。
「そ、それは、その」
「阪中さん、私相手にシラを切ろうとはいい度胸ね」
「だって、あれは…」
「答えなさい!!」
すごい迫力で私に圧力をかける。
正直、このまま隠し通す自信が無い。
何度目かの、涼宮さんの脅迫、もとい要求でついに私は口を割った。
「………す」
「ん? なんて言ったの?」
「キス、しようと思ったのね」
たっぷり3秒、涼宮さんが固まった。
やっぱり変に思われたのだろうか。
「ごめんなさい!」
私は思いきり、頭を下げた。
許してくれるとは思えないけど、それでも謝りたかった。
「私、今からまた寝るから」
いきなり、涼宮さんはそう言った。
「立ったまま寝るわ。きっと凄く深い眠りだから、今度こそ何されても気が付かないはずよ」
「そ、それって」
私が顔を上げると、そこには、先ほどよりも紅潮した顔の涼宮さんがいた。
「いい、だから絶対に悪戯しちゃだめよ! 何されてもわからないんだからね!」
「わ、わかったのね」
「じゃあ、いい? 寝るわよ」
涼宮さんは目を閉じると、わずかにうつむいた。
私は涼宮さんの肩に手を伸ばす。
眠っている、ということになっている涼宮さんに反応は無い。
今度は唇に、私は悪戯することにした。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年01月10日 11:08
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。