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みくる×ハルヒ 幸せな時間

「少しだけ待ってて下さいね」
彼女、みくるちゃんはそう言って部屋から去って行った。
私のためにお茶を入れるという行動をいつもと同じはずなのに、その行動にわずかな新鮮さ感じる。
それはきっと、いつものメイド服とは違う彼女の私服だからなのだろう。
不思議探索が行われた土曜日の翌日、つまり日曜日。
特に用事もなく出歩いていると、上機嫌で歩いているみくるちゃんに出くわしたのだった。
なんでも珍しい茶葉が手に入ったとか。
きっと天使がいるなら、こんな笑顔するだろうという程の笑顔で「早くみんなに飲んでもらいたいです」
なんていうもんだから、「じゃあ今すぐ飲ませてちょうだい」ってことで家まで押しかけてきたのだった。
一人暮らしなのは知っていたけど、実際に家まで来たことは無かったし、ちょうど良い機会かなとも思った。
私はみくるちゃんが出て行った後の部屋を見渡たす。
女の子ここにあり、といった感じの世界だった。
全体的に白を基調として、ところどころ柔らかいピンク、ベッドの上にはクマのぬいぐるみが鎮座している。
間違えても自分の部屋にしたくないが、みくるちゃんの部屋としてはこれ以上ないほど彼女らしい。
欲求に耐え切れずベッドに顔を埋めてみると、どこかで嗅ぎ慣れた甘い香りがした。
「そうか、みくるちゃんの匂いなんだ」
いつの間にか、彼女の匂いに慣れてしまっている自分がおかしくて、嬉しくて、ほんの少しだけ誇らしかった。
その時だった、視界の端におかしなものが見つけた。
と言っても、この女の子の世界にとっての「おかしなもの」であって、普通に考えると何もおかしくはない。
書道の作品である。
私が最初に座っていた場所から死角となる壁に、あまり上手ではない字で「未来」と書かれた半紙に飾られていた。
その横には小さく、朝比奈みくるの文字が確認できる。
そう言えば彼女はSOS団に入る以前は書道部に所属していたのだった。
おそらくはその頃に書いた作品なのだろう。

「すいませーん、開けてくださーい」
そうしているうちに、みくるちゃんの声が聞こえてきた。
私はベッドのしわを素早く直すと、ドアを開ける。
みくるちゃんは元いた場所に戻ると、私にお茶を注いでくれた。
私はそれを一気に飲み干す。
「美味しいわ! さすがみくるちゃんね」
不安そうに私の感想を待っていた彼女の表情がぱあっと明るくなった。
「よかった。そう言ってもらえて嬉しいです」
本当に嬉しそうにお茶をすする彼女を見て思った。
もしかするとこの子は天使よりも可愛いのかもしれない。
そんなことを考えながら、もう一度飾られた半紙に目をやった。
「あ、それは書道部にいたときに書いたんです。あまり上手ではないので恥ずかしいんですけど」
私の目線に気が付いたのがみくるちゃんが説明してくれた。
そんな彼女を見て、ふと嫌な考えが浮かんだ。
彼女はもしかすると書道部に戻りたいのかもしれない。
普段は彼女もそれなりに楽しそうだったし、私自身が彼女のいないSOS団なんて想像もできなかったから
考えたこともなかったけれど。
私のいるSOS団よりも、私のいない書道部の方が彼女は望んでいるのかもしれない。
嫌な考えだけど、一度頭に浮かんだものは消えはしない。
「書道部は楽しかった?」
「はい、とても」
そう言って彼女は書道部の思い出を楽しげに語ってくれた。
見るだけで幸せになれた彼女の笑顔が、今だけは見るのがつらかった。
彼女が書道部の思い出を語るほどに自分がいらないと言われているようで。
「すごく楽しい時間だったから、やめなきゃいけないときは残念でした」
「ふぅん」
みくるちゃんのテンションとは反比例して私の口から出た言葉はそれだけだった。
これ以上、書道部の楽しい思い出を語るみくるちゃんは見たくない。
帰ろうかな、そう思って腰をあげようとした。
「あ、でもですね。今は涼宮さんにすごく感謝してるんですよ」
「どうしてよ?」
「正直言うと、最初はすごく嫌だったんです。恥ずかしいことばっかりさせられるし。
でも、色々なことするうちにSOS団が好きになってきて、書道部も楽しかったけど」
みくるちゃんはそこまで言うと、話を区切って伺うように私を見た。
「続けて」
私がそれだけ言うと、彼女は本日最高級の笑顔で続きを口にした。
「SOS団はもっと楽しい時間なんです」と。
そんな事を言われては私としても、応えないわけにもいかない。
「それでこそ栄えあるSOS団のメンバーよ! わかってるじゃない!」
照れくさそうに、えへへと笑う彼女を見てきっと天使でもみくるちゃんにも適わないだろうと確信した。
みくるちゃんはSOS団の方が楽しいと言ってくれた。
それが私は彼女の傍にいて良いんだ、と思えて堪らなく嬉しかったのだ。
だから、湯飲みを置いたところを見計らって思い切って抱きしめてあげた。
ありがとうの意味を込めて。
「ふぇ? どうしたんですか?」
案の上、混乱してるみくるちゃんの耳元でそっと囁いてみた。
「私に抱きしめられてるのはどんな時間?」
耳まで真っ赤になるのを確認してから、私は返事をまった。
彼女の首元に顔を埋め、匂い慣れた香りを堪能しながら。

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最終更新:2009年01月25日 13:46
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