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選択肢②

はじめて、有希を押したおした。
上にのっかって、有希からなにかできないように手をおさえて、でも有希の上半身は
起きているので、顔と顔の距離は、キス直前くらいまで近づいている状態だった.
有希に気持ちよくなってもらいたい、いつも気持ちよくしてくれる、お礼がしたい。
でも、私はそれを素直に言えない.
「今日は、有希がいっぱい声を出す番よ。いっぱいしてあ」
あげる、と最後まで言おうとして、言えなかった.
有希の唇が、私のお喋りを封じている。
目の前に、目を閉じた有希の顔があった.この姿勢だと、なんの支えもなしに
有希と唇でだけつながっている状態.
「いきなりなにするのよ」
甘えた感じの声になってしまわないように.私はまだ、有希の前で自分を作っていた.
「いつものあなたは、そんなことを言わない」
有希の目が、じっと私を覗きこんでいる.吸い込まれそうな瞳.
そう、私は有希の前でだけ、作っていない自分になる.
いっぱい甘える.有希のために家事をするのが楽しいと思う.そして。
私は有希の前でだけ、着ているものを脱ぎ捨てる。
でも今日は、有希にお返しをするために、自分を作っている。
「わたしは、いつものあなたが好き。だから、こうする」
有希の顔が近づく.有希が目を閉じたのと同時に。
またキスされた.有希の手は私が抑えこんでいるから、避けようと思えば避けられる
けど、避けられなかった.

唇が触れる.有希の舌が、私の中に入ってくる.
有希の舌が、私の舌を舐めまわす。さっき一緒に飲んだコーヒーの味がした.
有希も、私をコーヒー味で感じているのだろうか.それなら、砂糖を入れて、甘く
して飲んでおけばよかった。
「んっー」
唇がふさがれてるので、出た声は華に抜けてしまう.
有希の舌が、私の口の中で、上顎をつついている。ここが気持ちいいなんて、
知らなかった.
有希の舌をかんでしまうといけないので、有希にぎゅっとしがみついた.
バランスが崩れて、もつれるように、有希と二人で床に倒れこむ.でも、キスは
つづいていた。
私が有希の体ににしがみついたことで、手が自由になったからか。
有希の片方の手は、私の髪をなでている。
有希のもう片方の手は、私を抱きしめている。
唇が離れたのは、私の体の力が完全に抜けてからだった.そのときは、キスが中断
されたことで、ちょっとだけだけれど、不満な顔をしていたかもしれない。

でも、有希がなぜキスをおわらせたか、それは、
「今は、わたしに、あなたが作ったあなたを見せないでほしい」
「…え」
「わたしも、わたしが作った私を、あなたに見せない」
それを聞いて、わたしは、有希にしがみついて、ころん、と上下を入れ替えた.
今度は、有希に押し倒されている体勢。
「やっぱり、こっちがいいわ」
こんな時にいつもの口調になってしまう。でも、態度くらいは素直になろう。
そう思いながら、わたしは、目を閉じた。


翌朝、先に目を覚ましていた有希におはようを言うのと一緒に、昨日気がついた
疑問をぶつけてみた。
「有希も、キスのときは目を閉じるのね」
有希にキスをされるときは、私はすぐに目を閉じてしまう。だから、昨日まで
その事を知らなかった.
なんとなく、有希はキスの間もずっと目を開けて、キスされているときの私を
見ているものとばかり思っていた.
「キスをしているときは、目を閉じた方が、あなたのことがよく見える」
「じゃあ、こんどは、私がキスしてるときの有希の顔、よく見ておいてあげるわ」
目を開けたまま有希とキスしたのは、これがはじめてだった。

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最終更新:2009年02月11日 10:02
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