ついに、有希を押し倒してしまった.
学校からの帰り、そのまま有希の部屋に寄って。手をつないで一緒に座っていて、
こんなことになった。
今日はペアルックにしたくて、今までもっていたけれど着たことのなかった、
学校指定のカーディガンを制服の上にはおっている.
私の腕の下にいる有希も、同じ服装だ.違うところを探すと、私がニーソックスで
有希がハイソックスなところ。全部ペアルックにできなかったのがちょっと悔しい.
えーっと、こういうときは、まず唇にキスをすればよかったのかしら。それとも、
耳にキスした方がいい?
私が、有希を押し倒してから、必死にこの次に何をすればいいかか考えていると、
「え?」
突然、視界がぶれた。目の前にいる有希はそのままなのに、それ以外の視界が
ざっと流れた.
そして、上下感覚がなくなって。
わたしの背中は、床にくっついていた。一瞬にして、有希は私を押し倒していたのだ。
有希の両手は、わたしの両手首をしっかりと押さえつけている.そして、私の脚を
またぐように、膝をついていた.
まるっきり、さっきの私と、立場が入れ替わっている。
「ちょっと、どうして私が押し倒されてるのよ」
有希は、いつものように上から私を覗きこんで一言。
「レスリングの要領、今覚えた」
そういうことが訊きたいんじゃないのに、そう思っていると、有希は、淡々と
告げた.
「あなたをこうするのは、わたしの役目」
「今日は私がするって決めたの」
有希の体に力が入っている感じはなかった。それなのに、振りほどこうとしても、
私の腕は、手首から上がちょっと揺れるだけだ。
しっかり握られている手首も、全く動かないようにされているのに、痛くなかった.
「いつもなら、あなたは、わたしにこうするように求めている」
有希は、どうして?という顔をしていた。私にだけしかわからない、ほんとにかすかな
表情だった。
そりゃ、いつもなら、キスをねだったり、主人に恭順する子犬のように、無防備に
してみせたり、他の団員にはとても見せられないようなことを、有希に対しては
してみせてしまう。
でも、淡々と私の求めに応じてくれる有希を見ていて、不安になる。
有希の方は、気持ちいいんだろうか?
私と二人きりのときの有希の表情は、全く変わらない.表情が出ない子なんだと
わかっていても、そういうことをしている時くらいは、もうちょっと、そういう
表情をしてくれてもいいじゃない。
だから、今日は、後先考えずに有希を押し倒した.押し倒して、そういうことを
すれば、有希のもっと違う表情を確かめられるかな、と思った.
それなのに…私はいつもどおり押し倒されている。
「離しなさい、離して、有希」
今日は私が有希を押し倒すのよ。私は、位置をひっくり返そうとしてあばれる。
片脚は有希の腿にはさまれ、もう片方の脚は有希の…足首でおさえられているみたい。
「だめ」
有希は、体全体を使って私を抑えこんでくるのに、体重をかけてきている感じがない.
それなのに逃げられなかった.つまり、私の力を逃がしているということね。
有希は私をじっと覗きこんでいた.
「わたしは、あなたをこうしたい、だから、している」
「それだと、私だけしか気持ちよくないからだめなのよ…」
私の方が、有希の目を見ていられなくなった。
「それは誤解」
有希が、私の手を、セーラーカラーの間にもっていく。胸あての部分のスナップを
押し開けるようにして、ちょうど、心臓のあたりに手が滑り込んだ。
「確かめて」
有希は体温が低めなのに、その部分は暖かくて。
そして、指先に感じる鼓動は、とても早かった.
「あなたを押し倒して、こうなっている」
有希がこんな顔をするのを、はじめて見た。
一見するといつもの表情.他の誰も、きっとこの変化には気がつかないのだろう。
そして、私ははじめて、有希の切なげな溜息を感じた.有希の体の重みがかかり、
有希の少し冷たい体を受け止める.
「だから…あなたに、したい」
絡めた脚を、スカートがまくれるのも気にする余裕もなく腰を、制服越しに胸を、
首筋と頬をこすりつけてくる有希を、私は改めて愛しいと思った.
最終更新:2009年02月11日 10:03