真新しいダブルベッドの中心に腰を下ろすと、柔らかいシーツに体がわずかに沈んでいくのを感じた。
私があぐらをかくと、すかさず鶴屋さんが私の左隣に滑り込んできた。
その次に、ワイングラスを手に持ったみくるちゃんが右隣へと寄り添ってきた。
「ありがとう、みくるちゃん」
オレンジジュースが並々と注がれたグラスを受け取り、お礼にほっぺにキスをしてあげる。
「あ、あ、ありがとうございます!」
それだけで真っ赤になり、可愛らしく慌てる彼女を見るとついにやけてしまう。
「ハルにゃん、私もジュースのみたいにょろー」
私の腕にしがみ付くような体勢で、鶴屋さんが甘えた声を出している。
年上に甘えられるというのは、こそばゆい感じはするものの悪い気分ではない。
無論、上目使いにおねだりする鶴屋さんのお願いを聞かないけにもいかない。
私はジュースを口に含み、左手で鶴屋さんの顎を持ち上げる。
そして、唇同士を触れ合わせ、舌でやや強引にこじ開け、口内のジュースを流し込んだ。
抵抗なく、ジュースが鶴屋さんの喉を通過した音を聞いて、唇を離す。
「どう、おいしいでしょ?」
「これは美味だねえ。もっと味わわせて欲しいねっ!」
そう言われては仕方ない。
私は再び、ジュースを口に含んだ。
「あ、あの!」
それと同時に、みくるちゃんが声をあげる。
「どうかしたのかい?」
ジュースのせいで発言できない私の代わりに、鶴屋さんが聞いてくれた。
「私も、その、喉が渇いたんです。だから……えっと」
下を向きながら、言葉を濁すみくるちゃん。
「それなら、先にみくるに飲ませてあげるっさ!」
「あ、ありがとうございます」
そんなやり取りを聞いて、先ほどを同じように、みくるちゃんのジュースを口移しする。
みくるちゃんは、長く口の中にあったせいですっかり温くなってしまっていたそれを、美味しそうに飲み干した。
「次は私の番だねっ!」
「あの、その次はもう一回いいですか?」
「ちょっと、私が飲めないじゃない」
「じゃあ私が飲ませてあげようじゃないかっ!」
そんな会話をしながら、ふと思った。
ワイングラスを片手にしながら、美女二人をはべらす今の私。
それがまるで、古い映画に出てくるような悪役の姿みたいでおかしかった。
これで、膝元に猫でもいれば100点と言ったところか。
「有希、こっちおいで」
それなら、猫よりも可愛いものを膝元におけば200点だ。
私は、少し離れた場所を本を開いている有希の名前を呼び、ぽんぽんと膝を叩く。
「ほら、ここよ」
有希はしばらく固まっていたが、やがて四つんばいでベッドの上を移動すると、
そのまま私の膝の上に納まった。
しかし、その表情はいつも以上に固い。
こんなときの有希は大抵、寂しがっているのに、それを言い出せずにいるときの有希だ。
「ごめんね、有希。構ってあげなかったから拗ねちゃったんでしょ」
「違う」
しかも、そんな時に限って中々素直ではない。
「そうだったんですか? ごめんなさい、長門さん」
「違うと言っている」
「ありゃあ、長門っちには悪いことしたね」
「………」
「ほら、拗ねないの。いい、有希?」
「いい」
悪者よろしく、有希の髪をゆっくりと撫でてあげる。
それだけで、すぐに素直になれるのだから、やはりこの子は良い子なんだとじみじみ思う。
「ジュース」
「ん、なに?」
「あなたも私にジュースを与えるべき」
そう言われて、手元のグラスを見てみると、そこは既に空となっていた。
「すぐ、新しいのを入れてきます」
そう言って立ちあがるみくるちゃん。
「待てない」
しかし、そんな事もお構いなしに有希は私の方に向き直ると
「あなただけで我慢する」
そう言って、私の唇を奪っていった。
最終更新:2009年02月11日 10:19