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鶴屋さん×みくる あじさい

梅雨時ということもあり、昨晩から続いていた雨も昼過ぎになってようやく降り止んだ。
雨上がりの紫陽花が綺麗だから、と学校帰りに鶴屋さんに呼ばれた私は、
彼女と二人で大きな庭を歩いていた。
「今年もめがっさ暑くなってきたねっ!」
うーん、とめいっぱい両手を挙げて大きなのびをする鶴屋さん。
その夏服とスカートの間からは健康的なおへそが見えている。
それに気が付いた私は思わず口をつぐみ、目をそらしてしまった。
その様子がおかしかったのか、鶴屋さんはけらけらと笑い出した。
「みくるの反応は初々しくてかわいいね!」
鶴屋さんはそう言って、ちらちらと服の裾をめくって見せる。
「わわ、わ、鶴屋さん!?」
「くふふ、かわいいみくるにサービスさっ」
鶴屋さんはそう言って、見せるのをやめようとしない。
女の子同士なんだから、普通なら顔を赤くする必要も無いのかもしれないけど、
同じ女の子から見たって鶴屋さんは、すごく魅力的に違いない。
鶴屋さんに同じ女の子以上の気持ちを持っている私にとっては、そのサービスは刺激が強すぎた。
そんなことを知ってか知らずか、サービスを続けていた私の反応に満足したようだ。
「みくるが可愛いからちょっとからかってみたのさ」
そう言ってまた笑い出した。
「もう、ひどいですよぉ」
からかわれた事に対するわずかな怒りを表現するために、
鶴屋さんとは反対の方向にそっぽを向いて見せた。
それがいけなかった。

そのまま歩こうとした私の足は、さっきまでの雨で出来たぬかるみに置かれていた。
その足はまるで加速装置でも付いたかのように私の意志とは関係なく、ぬかるみの上を滑っていった。
上半身は、下半身の動きには全くついていけず取り残され、結果、私は後方に頭から転ぶ形となった。
「あぶない!」
「ひぃあああ!」
思わず悲鳴あげるが、結局私が直接地面に転ぶということは無かった。
すぐ近くにいた鶴屋さんが受け止めてくれたからだ。
私を抱きかかえるように受け止めた鶴屋さんは、そのまま勢いに負けて地面に尻餅を着くことになった。
受け止められた私は、鶴屋さんのひざの上でわざかに泥しぶきがかかるだけで済んだけれど
鶴屋さんはお尻を打っただけではなく、スカートと髪が泥まみれになっていた。




「ごめんなさい!」
着替えとシャワーを終えて戻ってきた鶴屋さんに、頭を下げた。
「気にしなくて良いのさ! 私が勝手にやったことだからねっ!」
鶴屋さんは笑いながら、ポンポンと私の頭に手を置いた。
「だって、鶴屋さんの綺麗な髪まで汚しちゃって……私のせいですよぉ」
「髪が汚れたのは私の髪が長すぎるせいさ。気にすることじゃないっさ」
「気にしますよぉ。鶴屋さんの髪、すごく綺麗なのに」
落ち込む私に見かねたのか、鶴屋さんは困った様子で自分に髪を撫で付けた。
「実はさ、元々明日にでも切ろうと思ってたのさっ」
あまりにも簡単に言うので一瞬、何を言ったのか分からなかった。
「………だ、だめですよ!」
たっぷり10秒、鶴屋さんの言葉を理解した私は、それを止めようとした。
もちろん、それは鶴屋さん私が決めることであって私が止める権利は無い。
それは分かっているけど、それでも鶴屋さんの長い髪は私にとって憧れだったから。
綺麗な黒髪を揺らして笑う鶴屋さんが大好きだったから、それがとても惜しく思った。


「今日、みくるを家に呼んだのは本当は紫陽花を見るたじゃないのさ」
急に鶴屋さんが話を始めた。
「紫陽花をみくると見たかったのは、本当だけどねっ。実際はみくるばっかり見てたよ」
「あの、鶴屋さん?」
「本当は、みくるに聞きたいことがあったんだよ」
鶴屋さんの様子が普段とは、違った。
いつも感じる彼女の余裕や、自信のようなものがない。
「聞きたいこと、ですか?」
「うん、その答え次第で髪を切ろうと思ってたのさ。
あ、こんな事言われると答えにくいねっ。今のなし、忘れるっさ」
それだけ言うと、鶴屋さんは黙ってしまった。
踏ん切りがつかないのか、先ほどから何かを言いあぐねている。
「あの、鶴屋さん、私もなんです」
私はなにか都合の良すぎることを期待しているのかもしれない。
答え次第で髪を切る、そのことが私に非常に都合の良い質問を期待させている。
「私も、紫陽花を見ないで、その鶴屋さんを見て、ました」
万が一にもあり得ないと、女の子同士だからと自分に言い聞かせていた未来を期待している。
「だから、聞かせてください」
期待せずにはいられなかった。
鶴屋さんは静かに頷いて、言った。

「私はみくるの事が好きっさ。めがっさめがっさ大好きさ! だから、私と付き合ってほしいのさっ」

期待していた未来と、期待以上の幸せがそこにあった。
私が言うべき言葉はもう決まっていて、それを言うと鶴屋さんがぎゅう、と抱きしめてくれた。
「あうぅ、鶴屋さん苦しいですよ」
「あ、ごめん。嬉しすぎてついやっちゃったさっ!」
私の大好きな恋人は、本当に嬉しそうに笑う。
見てるこっちまで、幸せになれる素敵な笑顔だった。
「優しくなら、もっと……してください」
そう言い終える前に、私は鶴屋さんの胸の中にいた。
鶴屋さんの両手は私を優しく包み込み、私の両手は彼女の髪に触れていた。
いつかこの髪を梳いてみたい。
そんなこと考えながら、彼女の温もりを感じていた。

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最終更新:2009年02月11日 10:22
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