「ここは....?」
E-05で、先刻まで幼少の残り香に包まれて床についていた少女、リーリエは目を覚ました。

数時間前の、母が引き起こしたウルトラビースト達の暴走、そして自らが付き添っていたポケモンの変貌を目にし、
それでも、母を追い、今度こそ彼女と向き合うために仲間と戦っていく決意をした、その晩の事だった。
身体に固い土の感触と、鬱蒼とした森林のひやりとした気配に彼女の感覚は現実へと引き戻された。

「.....夢.....じゃ、ないですよね....?じゃあ、何でこんな所に....?」

重い瞼をこすりながらも、土のついた手や衣類を確認し、ここが現実の光景だと悟る。
そして、足下に無造作にばら撒かれていたチラシを何気なく手に取り、絶句した。

「なに....これ.....!?」

書かれていたのは、単純な「鬼ごっこ」のルール。しかし、先程までこの世の物とは思えない異形の光景と対峙していたリーリエは、すぐにこの場所の危険、
つまりは形容しがたい「殺気」や「害意」のような「気質」がこの世界を占めている事を察知した。

恐らく、この紙が警告している「鬼」に捕まれば....ただでは、済まないと。本能が、そう呼びかけている。

「.......落ち着いて。逃げたいけど....どこにも、行くところなんてない」

周囲に張りつめた、危機とでも云うべき感覚に足をがくがくと振るわせつつも、それでも、立ち上がり、山を何とか下っていこうとした。
そして、少女は。下った進路の先に、暗い絶望をその眼に宿した少年を見た。


「あっ、あのっ....!」

リーリエは数m離れた先から、どこか悲しそうにうつむく少年を呼びとめようとした。
少年はリーリエより歳の離れた青年だったが、何か唖然とし、どうすればいいのかさえ分かっていないようだった。

「.....何だ」
「すみません、大丈夫ですか....!」

何となく幼さの残るその顔立ちと茫然自失とした態度から、親や「鬼」ではなく自分と同じ巻き込まれた「子」の参加者であると判断したリーリエは、少年と話をしようと駆け寄る。

「私も、ここに巻き込まれた一人です。よければ、お話を.....」
「逃げろ」

え、とその足を止めるリーリエ。直後、少年の眼が薄暗い黄金色に変貌する。

「俺は鬼だ。そして....人喰いだ。」
う、そ、という風に言葉にならない、小さな悲鳴をあげ、その圧力に気圧されるかのようにリーリエはズル、と後ずさりする。

「嘘じゃない!....今も、お腹が空いている」
先程まで少女を包んでいた殺気が、数倍に濃縮されて絡んでくる。

「....いつ君を襲うか分からない。だから.....生きるために、逃げてくれ」



そんな、と絶句する。
ボコボコと、血管よりも明らかに太く、不気味に光り脈打った筋が彼の口を浸食していた。

「逃げろ!」

それが、最期に残った少年――、千翼の理性の断末魔だった。
やがて身体が徐々に熱気に覆われ、今迄に聞いたことのない低い獣のうなり声が聴こえ.....
「ひ....っ......!」
リーリエはその姿に足が竦み、身体はもはや痙攣するかのように、がくがくと震えていた。
さっきまでいた少年はその姿とは想像をしようもない程に、形容し難きおぞましい阿修羅のような異形に姿を変えていた。
失禁しそうな程の重圧と、その異形から感じられる欲に満ちた感情.....つまり、食欲。
この人は....この、怪物は、本気だ。
喰われる。殺される。
はや、く逃げなきゃ.....
地を這い、無防備な背を向け、それでも殺気と食欲に包まれたこの贄の場から脱出しようともがくリーリエの首を、一厘の容赦なくその触手が巻き付ける。
「がっ..,あっ....!?」
ガラス細工で出来たような、白く細い少女の身体を浸食するように、四肢に触手が凄まじい圧で巻き付け、絞め落としていく。
「う....ァア」
「ぐ...ぎゃ...や....や...めて....」
そして数瞬その果てる様子を眺めた後、彼女の肉と骨を喰い貪ろうと唾液と牙に満ちた口腔をがぱり、と広げ....
「が....ァ....ァぞん.....」
『NEO』
ボキリ、と骨が折れるような力で意に反し、千翼の腕は制止を選んだ。


自分の身体が無理やり拘束具のように押し戻されるのを感じて、千翼は禁断症状のように怪物の欲求と人間の理性の狭間に苛まれる。
「がっは....ぁっ...がっ....ぐ」
生成されたアーマーに張り付く熱に耐えきれず、ベルトを外し、冷却された身体を投げだして、暫く俯いたまま、千翼は考える。

元の世界に生き返る、か。
無駄だろうな、とぼんやりと思っていた。護りたかった少女は死に、例え生き返ったとしても世界は己を無言でもう一度殺害するまでだろう。

「そうか....もう....」
「俺は、我慢しなくていいんだ....」

なら、もう.....自分の「人間」の、生きる意味なんて、ないじゃないか。
そんな思考をおぼろげに埋めていきながら、千翼は彼の生きる主導を、自らの怪物に任せた。



[E-05 森林地帯/深夜]
【千翼@仮面ライダーアマゾンズ】
[役]:鬼
[状態]:健康、強い食人衝動
[装備]:ネオアマゾンズドライバー
[道具]:四次元っぽい紙袋、他支給品三つ
[思考・行動]
基本方針:人を喰い、そして人喰いとして最後まで喰ってから死ぬ。
1:さっきの少女を追う。
2:もう容赦はしない。だから、もう.....殺してくれ。
『人物解説』
人間のタンパク質を喰らう人工生命体「アマゾン」の間に生まれた少年。
長い間、日本政府の組織「4C」に監視・飼育されていたが脱走。
組織から持ち出したアマゾンズドライバーを使い不良少年達とアマゾンを狩っていたが、
狩りの最中に死体にアマゾンの細胞を移植させられた少女・イユと出会い、
初めて喰らいたいと思わなかった彼女に心を寄せ、彼女を守るために4Cでアマゾンを狩る事を決意する。
しかし、彼の正体がアマゾン細胞を移植した人間、鷹山仁の息子である事、
そして感染した人間をアマゾンに変異させる細胞「溶源性細胞」を体内に持つ危険なアマゾンである事が判明。
イユと逃避行の末に父である鷹山仁とオリジナルを追っていたアマゾンの青年・水澤悠によって戦闘の末殺害される。
『アマゾンネオ』
千翼がアマゾンズドライバーを使って変身した姿。
右腕から発生するブレード・クロー・ニードルガンの三つの武器を駆使し戦う。
しかし、特筆すべきは防御力と回復力の高さであり、機関銃レベルではびくともせず、生身で受けても自然回復、
致命傷レベルの攻撃も恐らく食事程度で治癒される程であり、極めて驚異的。
『オリジナル態』
千翼の感情の暴走、及び極度のダメージを受けると変貌する六本腕のアマゾン態。
無数の触手を操り、武装した小隊・中隊程度なら軽く全滅させる程の殺傷能力を持つ。
その中で最も脅威と目されるのが攻撃した傷から体内に溶原性細胞を含む体液を混入される事であり、
混入された人体は一定の確率で感染・アマゾンへの変貌を行ってしまう。

[E-04 神塚山の麓/深夜]

【リーリエ@ポケットモンスターサン・ムーン】
[役]:子
[状態]:気絶中、熱風による火傷、触手の圧による四肢への打撲、精神ダメージ(大)
[装備]:
[道具]:四次元っぽい紙袋、他支給品一つ
[思考・行動]
基本方針:元の世界ヘ帰る。
1:・・・・・・(気絶中)
2:千翼への強いショック、恐怖。この「鬼ごっこ」への不安
3:母を止める為、この状況を打破するためにもっと強い気持ちが欲しい...
※アマゾンネオ変身時の熱風により麓まで転げ落ちました
『人物解説』
ゲーム「ポケットモンスター サン・ムーン」に登場する少女。
アローラ地方を拠点とする組織「エーテル財団」の代表、ルザミーネの娘。
財団が実験体としていた「ほしぐもちゃん」を連れて組織から脱出、ククイ博士の元へ身を寄せており、
新たに引っ越してきた主人公と島めぐりを続けていたが、途中で財団に捕まってしまい、ルザミーネと再開。
ほしぐもちゃんを媒体としストレスを与え続ける実験を行いウルトラホールを開いて
アローラ地方をスペースビーストで混乱に陥れ、異次元の中に消えた母親を追う決意を抱く。
時系列はポ二島に向かう前夜、すなわち「がんばリーリエ」の前。
最終更新:2018年06月24日 15:44