はじめに

Dungeons & Dragonsロールプレイング・ゲームは剣と魔法の世界における物語を語るゲームである。子供のごっこ遊びの要素を併せ持っている。こうしたゲームと同様、D&Dは想像力によって進められる。嵐の夜空の下にそびえ立つ城を描写し、その場面に存在する挑戦にファンタジーの冒険者がどのように対応するかを想像するのである。
ダンジョン・マスター(DM):岩がちな峰を超えると、街道は突如として東に折れ曲がり、君たちの眼前にレイヴンロフト城が姿を現す。崩落した石の塔が、静かに入口となっている道を見守り続けている。それらはまるで放棄された営倉のように見える。その向こうには幅の広い裂け目が口を開いており、下の方は深い霧に包まれて見えない。裂け目には跳ね橋が下りており、城の中庭へ通じるアーチ形の門へと通じている。跳ね橋の鎖が風によってきしんでおり、その錆で腐食した鉄には、この重量を支えるのは酷なようだ。高い強固な壁の頂上からは、石のガーゴイルが虚ろな眼窩で君たちを睨みつけ、恐ろし気な歯を剥きだした笑みを浮かべている。入口の楼門のトンネルには、植物が茂っている、腐敗した木製の落とし格子が吊られている。その向こうには、レイヴンロフト城の大門扉が開かれて立っており、たくさんの暖かな光が中庭へと漏れ出ている。
フィリップ(ガレスをプレイしている):ガーゴイルを良く見ておきたいな。こいつらは本当の石像じゃない気がするんだ。
エイミー(リヴァをプレイしている):跳ね橋は危険そうに見える? どれくらい頑丈か見ておきたいんだけど。私はそれを渡れそうかしら? それとも私の体重を支えられずに崩壊しちゃうかしら?

ごっこ遊びとは異なり、D&Dは物語に構造を与え、その冒険者の行動の結果を決定するための方法が与えられている。彼らの攻撃が命中したか失敗したか、あるいは崖をよじ登ることができたかどうか、魔法のライトニング・ボルトの一撃を転がって避けることができたかどうか、他の危険な作業をこなすことができたかどうかを解決するために、プレイヤーはダイスをロールする(さいころを振る)。あらゆる事が可能であるが、ダイスがいくらかの結果を左右する。

ダンジョン・マスター(DM):オーケー、1つずつ解決していこう。フィリップ、君はガーゴイルを良く見てるんだよね?
フィリップ:うん。そいつらがほんとうはクリーチャーかもしれないとか、単なる装飾品じゃないとかの何かヒントはないかな?
DM:【知力】判定をやって。
フィリップ:〈捜査〉技能は適用できるかな?
DM:もちろん!
フィリップ(d20をロールする):わっ、7だ。
DM:君には装飾品に見える。それからエイミー、リヴァは跳ね橋を調査してるんだよね?

Dungeons & Dragonsゲームでは、各プレイヤーが1人の冒険者(これをキャラクターとも呼ぶ)を作り、他の冒険者たち(友人によってプレイされる)と協力する。協力し合って、グループは暗いダンジョン、廃墟の都市、幽霊の巣食う城、ジャングルの奥深くに失われた寺院、神秘の山の地底にある溶岩がいっぱいの洞窟などを探検することができる。冒険者たちはパズルを解決し、他のキャラクターと会話をし、幻想的なモンスターたちと戦い、信じがたい魔法のアイテムや他の財宝を発見することができる。
ただし、1人のプレイヤーは、このゲームにおける主要なストーリーテラーにして審判でもあるダンジョン・マスター(DM)の役割を果たす。DMはキャラクターたちのための冒険を作成し、その危険の運行と、探険した結果がどうなるかを決定する。DMはレイヴンロフト城の入口の様子を描写し、プレイヤーは彼らの冒険者が何をしたいのかを説明する。彼らは危険な風化した跳ね橋を渡るのか? 跳ね橋が動いて誰かが落下してしまう可能性を最小化させるために、お互いの体をロープで結びあうのか? あるいは呪文を発動して濠を跳び越えようとするのか?
その後、DMが冒険者たちの行動の結果を決定し、彼らが経験した事柄について叙述する。DMはプレイヤーが試みるあらゆる事柄に即興で対応することができるため。D&Dは無限の柔軟性を持ち、それぞれの冒険は活気に満ちて、予測不能なものとなりうる。
このゲームに真の意味での終わりはない;ある物語や探索行が結末を迎えても、次のものが始まり、キャンペーンと呼ばれる継続する物語を作り出していく。このゲームをプレイする多くの者たちは、彼らが成し遂げる物語を進めるために毎週のように友人と集まり、そのキャンペーンを何ヶ月にも、あるいは何年にも渡って継続し続ける。倒したモンスター、成し遂げた冒険、手に入れた財宝は継続する物語に単に加わるだけではなく、冒険者たちに新たな能力をも与える。このパワーの上昇は冒険者のレベルとして表現される。
Dungeons & Dragonsゲームには勝ち負けといったものはない―少なくとも、通常理解されているような意味では。DMとプレイヤーは互いに力を合わせて、容赦ない危険に立ち向かう勇敢な冒険者たちの刺激的な物語を作っていく。ときに冒険者は恐ろしい最期を遂げ、凶悪なモンスターによって引き裂かれたり、邪悪な悪役の前に倒されたりするかもしれない。そうなってさえ、他の冒険者たちが倒れた仲間を復活させる強力な魔法を探すことができるし、あるいはそのプレイヤーは新しいキャラクターを作ることもできる。グループが冒険の目的を果たすことに完全に失敗するかもしれないが、みんなで素晴らしい時を過ごし、記憶に残るような物語を作り上げたのなら、彼ら全員の勝利である。



出典:『Player's Handbook』

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最終更新:2016年09月12日 22:42