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第2部 - (2007/04/05 (木) 03:47:50) の編集履歴(バックアップ)


139 名前: わさび栽培(catv?) 投稿日: 2007/04/04(水) 17:57:54.25 ID:KShwnxl10
「いい?アンタは私が召喚した使い魔で、私がご主人様なのよ?」

「使い・・・・?初めて聴く言葉だ。」

「とにかく、まだ契約してないんだから・・・・その
 『コントラクト・サーヴァント』をするのよ」

――― 従者契約だと?
ますますをもって意味がわからない。
いったい何の従者契約なのか、それ以前に目の前の少女が信仰する
宗教はいったいどのような形態なのか。
以前、クルツに聞かされたことがある。
宗教において、契約という言葉を用い、肉体の一部を切り取ったり、
身体に刻印や焼印などの印を付けるものなど・・・・
さらには性行為に及ぶものまであると調子付いたところで、マオの
制裁が入り中断されたのだが。

「おい、待て!いったいその契約とは…」
「いいから!早く済ませないとコルベール先生に注意されちゃうの!!

 ――――我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

少女の淡い桜色の唇が近づいてくる。
いったいなんなんだこれは俺が何をしたというそうだ千鳥千鳥はどこだ
彼女がいればきっとハリセンでこの空気を変えて俺に正しい現状を怒鳴りながら
説明してくれるに違いないあぁそうだ俺を助けてくれ大佐殿!少佐ぁ!

141 名前: わさび栽培(catv?) 投稿日: 2007/04/04(水) 17:58:34.61 ID:KShwnxl10
「いや待て」
わしっ、と少女の両肩を抑えて静止する。
いかんパニック状態に陥ってしまった。大佐殿がセーフハウスに泊まりに
きた時のような嫌な汗が流れている。

「ちょっ…!!なんで止めんのよ!? 貴族である私が色々我慢して
 契約を結んであげようとしてるのにっ!!」

両肩をつかまれたままわめき散らす少女。顔面に紅潮が見られる。
興奮剤?アップ系の麻薬の摂取が疑われる。
とっさにそう判断し、僅かな逡巡と同時に少女をベットに組み伏せる。

「え…ひゃぅ!?」

ぼすっ

「やはりまともな宗教ではなかったようだな・・・・
 いったい俺にどのような薬物を投与する気だ」

「薬物?何の話よっ!
 私はただっ…アンタと契約をっ!
 なっ、な…何なのよアンタ!
 ねぇ離しなさいよ!! 私は貴族なのよ!?」

143 名前: わさび栽培(catv?) 投稿日: 2007/04/04(水) 17:59:13.67 ID:KShwnxl10
心の中で小さく舌打ちをした。少女の涙の混じり始めた声に顔をしかめ
そうになりながらも、確信した
完全に洗脳されきっている
恐らく出生からずっと異常空間での洗脳教育がなされていたのだろう。
これは……脱出は難しいかもしれんな。
こういた洗脳教育を施せる異常空間、そして先刻僅かながら確認した
この施設の規模…
まずい。と、そう直感した。

「君には同情してもいい。
 だがそれとこれとは話が別だ。
 俺を元の場所へ返せ。これは警告だ。
 先ほどそうしたように、シラをきる度に君の…指……」

「うぅ…えっく……ぁ…ぅ」

「……」

嗚咽が漏れている。天蓋付きの、周囲の装調と同じくやけに豪華なベット
に組み伏せた、桃色がかった金髪の、少女が泣いているのだ。

144 名前: わさび栽培(catv?) [sage] 投稿日: 2007/04/04(水) 18:00:07.00 ID:KShwnxl10
「なんあのよ…… ひっく
 私…… 私が何したっていうの…よぉ
 いつも、いっつも失敗ばっかりで…
 それでも今度こそはっ、って…えぐ
 そう思って挑戦した…サモン・サーヴァント……
 どんな使い魔なの、かな……って 
 ドキドキしてたのに… 

 なんでアンタみたいなのが召喚され…て

 なんで私がこんな目に……なっ、なんで…
 うわぁぁぁぁんっ」

組み伏せた腕を放した。
少女はベットにうずくまって、泣きじゃくっていた。
そしてようやく確信した。
少なくとも、この少女が悪いのではない、ということを。

◇◇◇




173 名前: わさび栽培(catv?) [sage] 投稿日: 2007/04/04(水) 18:23:22.16 ID:KShwnxl10
◇◇◇

「――――わかった。俺のできる限りの協力をしよう」

「ひっく…ぅ……… ふぇ?」
泣きはらした顔で少女―――ルイズといったか。
ベットの上で上半身を起こしたルイズが反応する。

「協力する、と言った。
 先ほどの謝罪もこめてな。」

「……ホント?」
疑心の眼でこちらを見るルイズ。組み伏せたり脅したりしたのが
トラウマになっているようだ。

「あぁ。本当だ。

 ただし条件がある。
 この条件が破られない限り、俺は君に従おう」

「……い、言ってみなさいよ」
ルイズは身をこわばらせた。シーツの裾(すそ)を強く握り締めている。
少しずつ目には活力が戻ってきているようにも見えた。

178 名前: わさび栽培(catv?) [sage] 投稿日: 2007/04/04(水) 18:24:25.13 ID:KShwnxl10
「1つ、君は俺がもとの場所へ戻れるように尽力すること。
 1つ、『この世界』の常識、法則、そして俺が疑問としたこと全てに解凍すること。
 1つ、寝床と食料の確保、以上の3つだ」
ルイズが話しやすいように『この世界』という単語を使ってみたが、
最低限この条件が満たされれば、あとはこちらで勝手に脱走し帰るだけだ。
そしてこの条件は「俺の疑問に答える」ということによって安全性を高めることにもなる。
さらに言うならばさして無謀な条件ではあるまい。

「アンタが言う『元の場所』っていうのがどこかはわからないけど…
 ゴハンと寝る場所ぐらいは用意してあげる…

 それと、説明もする。
 だから、アンタは私に…もうあぁいうことはしないで」
少しずつだが、確かに気力が戻りつつあるようだ。
シーツで身を守りながらも―――決して守れてるわけではないのだが、
精神的な防御だろう―――こちらを真っ直ぐ見つめ返してくる。

180 名前: わさび栽培(catv?) [sage] 投稿日: 2007/04/04(水) 18:24:57.57 ID:KShwnxl10
「いいだろう。お互いの条件はそろった。

 それでは、説明してもらおう。
 『コントラクト・サーヴァント』だったか?
 具体的に、何をするのかを説明してもらおう」
今後を円滑に進めるためにも、ルイズがやろうとしていたことに話をもどし、
こちらの条件どおり説明ができるかを訊ねてみる。

「それは…だから……
 アンタは使い魔として、この私に召喚されたの。
 だから使い魔として私と契約を交わして……
 キ…きっ……」
顔をぐしぐしと拭ってから、ルイズは気丈な雰囲気を取り戻し話し始める。
だが専門的な用語が多く理解に苦しむ内容だ。
確か陣代高校では男子生徒が、同じような単語を使っていた気がするのだが…
プログラムの話か?生憎だがソフトウェアには精通してるとは言いがたい。
AS用の動作プログラムが限界であり、その制作となれば…

181 名前: わさび栽培(catv?) [sage] 投稿日: 2007/04/04(水) 18:25:21.70 ID:KShwnxl10
き、…き……」

「よくわからんな、もっと具体的に言ってくれ」
少女の顔がみるみる赤面していく。
先ほどは薬物の反応かとも思ったが、おそらくこれは地のものだな。
千鳥や大佐殿もよくこういった現象に陥る。マオはあまりないが。
恐らく10代の女性だけがこういた現象をひきおこす体質なのだろう。

 ・ ・ ・
「具体的に何をすればいいかを言ってくれないのなら…」
「あぁもうわかったわよ!!キス!!キースーッ!!
 呪文を唱えた後に、私とキスをすればいいのよーー!!」
ルイズが両手をバンザイのように上げながら、半ば絶叫するように、
いや真実絶叫した。

「きす……
 あぁ、人工呼吸だな。唇を合わせればいいのだろう?」

「いやジンコーコキューとかは知らないけど…
 それ、で……唇を合わせるだけよ」

「……薬物は?」

「使わない!!」

182 名前: わさび栽培(catv?) [sage] 投稿日: 2007/04/04(水) 18:25:46.83 ID:KShwnxl10
意味がわからない。
つまりルイズはこう言っている。
呪文を唱えた後に唇を合わせれば、契約は完了だ。
―――これではまるで、おとぎ話ではないか。
イソップやグリムに影響されているのか…
いやそもそも宗教の存在すら怪しくなってきた。
俺はルイズにからかわれているだけなのか?

「じゃ、じゃあ…詠唱始めるから、そこで黙ってなさいよ?

 ――――わ、我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

しかし俺ひとりを完全に拉致しきるった事、
何よりその一部始終を完全に知覚できなかった手際を考えると、
それこと拉致誘拐などに長けた特殊工作部隊の存在を疑わざるを得ない。
そもそも宗教集団には、教祖を守るための私設部隊の存在はほぼセットであり、
何より―――

「こっち向きなさい」
「なん…っ」
志向に集中していたため、振り向いた瞬間にとっさの反応が遅れた。
ルイズの淡い唇が俺の唇と重ねられる。

184 名前: わさび栽培(catv?) [sage] 投稿日: 2007/04/04(水) 18:26:32.16 ID:KShwnxl10


やわらかい感触を感じ、目前に広がる桃色がかった金髪と千鳥の幻影。あと大佐殿がなぜか泣いている幻影。
そして思い出す

―――あぁ、人工呼吸だな。唇を合わせればいいのだろう?

息を吹き込んだ。 


◇◇◇




207 名前: わさび栽培(catv?) [sage] 投稿日: 2007/04/04(水) 18:52:27.69 ID:KShwnxl10
「――――っ!? けほっ けほっ…!」

「む、どうした?大丈夫か?」

ありえないありえないありえない!!
ここっ、このバカイキナリ空気を吹き込んできたっ!!
しかもすぐに離れたから無事だったけど、
なんか手が鼻と顎のあたりに伸びてきていた!
実際顎はすこし押し上げられて上を向かされるトコまではやられたのだ。
このケダモノはあろうことかこの貴族であり高貴な私に、
きっ、きき…キスまでさせておきながら『その先』まで進もうとしたのだ!!
あそこで身をかがめて咳き込んでいなければ、きっと今頃はそれこそもう
口にするどころか想像すら出来ないような汚らわしい真似をされていたに違いない。
絶対にそうだ。そういえばさっき押し倒されたときもなんか手つきがいやらしかったし、
こいつもの目もなんか絶対に危ない。ケダモノのギラギラした肉欲獣の眼だ。
たまにギーシュがあんな目をしてる気がする。……私にじゃないけど。

「あっ、あああ…アンタは……っ!
 なななっ、何をしてっ!!」

208 名前: わさび栽培(catv?) [sage] 投稿日: 2007/04/04(水) 18:53:26.58 ID:KShwnxl10
「言われたとおりにしたまでだ」

した!?『舌まで』!?
ああああやっぱりこいつはケダモノだったんだ。私の予想は1ミリも外れてなかった!
なんでわたしにばっかりこんな不幸が襲ってくるのよ!?
それに契約も交わしちゃったし……っていうことは、
これからコイツと!この発情狼と一緒に過ごさなくちゃいけないわけ!?
いやああああっ!!

「っ!?
 なっ、……これ、は……!!熱い!?
 おい、ルイズ!やはり薬物か!
 話せ!何をした!
 いや解毒剤を……!!」

またギラギラした眼でこっちを見てくる。もう襲おうとしてるようにしか見えない。
でもそう考えると少し恐怖が薄れた。コイツは頭の良い強い敵じゃなくて、
ただの発情したバカ犬なのだ。
それにさっき私の魔法で……動けなくする魔法が爆発しちゃったけど、
まぁ結局止められたし……

209 名前: わさび栽培(catv?) [sage] 投稿日: 2007/04/04(水) 18:53:53.15 ID:KShwnxl10
「すぐ終わるわよ。待ってなさい。
 使い魔のルーンが刻まれるだけだから」

ルーンを刻む、まで言ったところでコイツは急に顔が青ざめて私から距離をとったけど、
すぐに苦しむのをやめて、まじまじと自分の身体を確認し始めた。
これでアイツの身体のどこかに私の使い魔の証―――ルーンが刻まれた。

さて、これから使い魔らしく躾けなくちゃいけないわね。

「左手、見てみなさい」

「左手…?
 ……これは……、さっきまではこんなものは無かったはずだが」

「それが使い魔のルーン。私の使い魔である証よ。
 これで『コントラクト・サーヴァント』契約は終了したわ」

一応左手の甲を確認してみる。ルーンの文字が浮かんでいる。成功だ。
左手に触れた瞬間ビクっとしていたが何なんだろう?

「これでアンタは正式に私の使い魔よ。私がご主人様。
 ―――そうね、アンタの名前は?」

211 名前: わさび栽培(catv?) [sage] 投稿日: 2007/04/04(水) 18:54:45.53 ID:KShwnxl10
「前に言ったが……
 ソウスキー・セガール。もしくはサガラソウスケだ。」
ソウスキー・セガール…サガラ ソウスケ……
よくわからない。初めて聞く感じの名前だ。

「それで?私はどう呼べばいい?」
「仲間からはソースケ、やサガラと呼ばれている」

「そう。ならソースケね。
 改めて言うわ。私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラヴァリエール。
 ご主人様かマスターって呼びなさい。」

「…………なぜだ?」

さぁて、このバカ犬をこらしめて立場っていうものをわきまえさせないと。
そもそも平民の分際でこの私に暴力を振るったり泣かせたりした罰をあたえなくちゃいけないもの。

貴族たるもの、自分の使い魔は自分で躾けなくちゃね。
がんばろう。

それに、コイツの言ってる『元の場所』とか、コイツに何ができるのか、とか
色々知らなくちゃいけないし。
何よりこの肉欲獣バカソースケから自分の身を守ろう。
と、そう誓ったのだ。

◇◇◇



229 名前: わさび栽培(catv?) [sage] 投稿日: 2007/04/04(水) 19:32:43.19 ID:KShwnxl10
「―――なに?
 呼び出すことは出来ても、戻すことはできないということか?」

「そうよ。
 召喚の魔法『サモン・サーヴァント』は呼び出すだけ。
 使い魔を元の場所に戻す魔法なんて存在しないのよ」

ご主人様―――ルイズと話していてわかったことがある。
とかく、この世界には近代的な技術、電化、兵器が一切存在せず、
全てを魔法と自然によって行っているということである。
はっきり言って洗脳教育と考えるのが普通だが、
その話をしている最中に、ルイズが窓の外を見てみろと言ったので従ってみたが、
あろうことか日本のアニメにでも出てくるような青い龍が空を飛び、
魔法使い然としたローブ姿の少年や少女が階下を歩き回り、
極めつけと言わんばかりにその中の一人が空を飛び始めたのである。

信じる信じないの問題ではない。
これは紛れもない現実で。


恐らく俺はそういった秘術を研究する隠れ里のようなところに拉致されたのだ。


月はいったいどういう仕組みなのだろうか?
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