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慟哭~事件後、自宅にて(佐伯独白)



165-166様にインスパイアされて勝手に書いた、赤い斑点・青山透の回顧録の続きです。
ネタ拝借失礼致します。
エロくはない、青山にされた事を佐伯が気づく、ちょっとダークなだけの話です。



事件後、自宅にて  佐伯優子の独白



警察の事情徴収が終わり、私が自分のアパートに戻った時には26日の朝になっていました。

あの人を乗せたパトカーが消えた事を、私は、事情徴収を受けている時に知りました。
あの人は、罪を償うこともなく、姿を消しました。
言葉も振舞いも、すべてが嘘だったあの人は、
ダムから助けたときに見せた涙さえ嘘だったのでしょうか。

私はこの二日間で、いろんなものをなくしました。
ただ一人の家族をなくし、信じた人に裏切られ、ひとりぼっちになりました。
それは、すべてひとりの男によって奪われたものでした。
でも、私があの男に奪われたものは、それだけではなかったのです。

アパートにたどり着いた私は、疲れ果てていました。

体のあちこちに虫刺されが目立ったけれど、痒くはなかったので特に気にしていませんでした。
その時までは。

これからのこと、考えなければいけないことは沢山あったけど、今は、ただ眠ろう。
シャワーを浴びて寝ようと、袖のほつれてしまったタートルセーターを脱いだ時、
私は、ある異変に気がついたのです。

腰や太股にも赤い痣。
腰なんて、セーターの下だったはず・・・


ぞくり。


その瞬間、私の中にひとつの可能性が浮かびました。

まさか・・・・そんな・・・・・
がたがたと体が震えだすのを感じました。

私は記憶を辿っていました。
あの時。あの朝、あの男は何て言った?



「ふぁあ・・・おはようございます。青山さん。
 ん、なにこれ!腕に虫刺されが、あ!足にもやだぁ、首にも!野宿って嫌ですね」
「そ、そうだね・・・・・
 ・・・・・。
 佐伯さん、体は大丈夫?」




『体は大丈夫?』

記憶の中でリフレインする男の声。
いつものように、穏やかに、心配そうに、思いやりに溢れた声。

あの時。
告げるようなことじゃないと思って口には出さなかった事。

あの朝、トイレに行った時、私は・・・・・微量のおりものと共に、出血していました。
ストレスと環境の変化で、生理が始まってしまったんだなと思っていました。
下腹部に感じた微妙な違和感も、鈍い、重い、それでいて裂けるような痛みも、
予定外の生理のせいだと・・・・そう思っていました。

私は、全ての着衣をそっと脱ぎ、おそるおそる・・・鏡の前に立ちました。



赤い痣は、胸にも、内股にもありました。
私は、その時、はっきりわかってしまったのです。
この赤い痣が何なのか・・・・

私は、あの人に・・・・・・
私は、震える体を両腕で抱きしめていました。

あの男は何もかも奪っていったのです。
お兄ちゃんの命も、そして・・・・・私自身も。

「・・・うっ・・・・」

涙がこみ上げてくるのを、私は抑えられませんでした。
恥ずかしさと、悔しさと、怒りと、悲しさと、・・・・愛しさと。

「青山さん・・・どうしてっ・・・・!?」

私は愕然としたまま、その男の名を口にしていました。
私がその男に寄せていた信頼も恋情も、最も残酷な形で裏切られていたのです。

「ぅぅっ・・・ぐすっ・・・うぁぁっ・・・」

体のあちこちに残る、消せない痕。
お兄ちゃんを殺した、あの男の痕。
私を大嫌いだと言い放った、あの人の痕。
自らを抱きしめたまま、私は、その場に崩れ落ち、
いつまでも、いつまでも・・・・・・・泣き続けました。


最終更新:2006年07月07日 22:40
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